週休二日制で休日の土曜日に出勤したが割増率が25%で計算された
労基法上35%以上の割増率が求められるのは、法定休日の労働である

 
変形労働時間制による場合を除き、1日・1週の法定労働時間を超えた労働が時間外労働であり、法定休日は割増賃金(35%・25%)の違いからあらかじめ定めなければならない。労基法は最低基準であり、労使で法を上回る取扱いを定めたときは、それによる。
【労基法第37条】
 

所定労働時間と法定労働時間
 
労働時間とは実労働時間である。就業規則等に定められた労働時間を所定労働時間といい、法定労働時間は1日8時間・週40時間である(週については特例がある →法定労働時間)。
労基法にいう時間外労働とは、法定労働時間を超えた労働時間であり、所定労働時間を超えても法定労働時間以内であれば、その時間に対する割増が支払われなくても法律上は問題がない。
たとえば、週休二日制の下で所定労働時間を1日7時間とした場合における8時間までの1時間及び35時間(7時間×5日)を超え週法定労働時間に達するまでの時間は、時間外労働ではないから通常の賃金で足りる、とするのが最低基準たる労基法の取扱いである。この法定労働時間以内の「所定外」労働時間について、労使で法を上回る取扱いを定めたときは、労基法より優先する取り扱いとなる。
 

休日労働

 
労基法上35%以上の割増率が求められる休日労働とは、1週1回又は4週4日の法定休日における労働である。週休二日制は、法定休日の他に1日の休日を設けるものであるから、その日に労働しても休日労働ではない。この「所定外」休日労働についても、労使で法を上回る取扱いを定めたときは、それによることになる。
 
週法定労働時間との関係
 
なお、上記の「所定外」休日労働の場合は、週法定労働時間との関係から時間外労働に注意が必要である。
例:完全週休二日制、所定1日7時間労働(週法定40時間)土曜日(休日)7時間勤務した時
1
8 7 7 8 7 (7)
2
7 8 7 9 9 (7)
1の場合は週の総労働時間が44時間となり、4時間(44-40)が時間外労働となる(土曜日勤務が3時間以内であれば法定時間外労働とはならない)
2の場合は木・金曜日各1時間が8時間を超えて時間外労働となる。週総労働時間47時間のうちすでに支払うことになっている2時間を加えて土曜日の5時間(47-2-40)の計7時間が法定割増賃金の対象となる。
ただし、法定内時間外 (40-35)の5時間の扱いは労使協定で決められる。なお、12ともに35時間を超え40時間までの5時間分については時間賃金の支払が必要。
 
割増率
 
割増率は次の通りである
*時間外労働

25%以上

*休日労働(法定休日) 35%以上
*深夜労働 25%以上    
 
割増賃金の算定基礎
 
割増賃金計算の基礎となる「通常の賃金」とは、
*時給の場合

その全額

*日給の場合 日給÷実労働時間
*月給の場合 月給÷実労働日数÷実労働時間
で計算された時間給額で、家族手当、住宅手当(注)、通勤手当、一時金などは計算基礎から除外される。
(注)実態として、住宅扶助としての性格を有するものである手当に限る。家賃、住宅ローンの返済額などに無関係に一律に支給する制度の場合は、計算基礎に含まれる。
<具体例>
1. 住宅手当に当たる例
(1)

住宅に要する費用に定率を乗じた額を支給する。
例えば、賃貸住宅居住者には家賃の一定割合、持家居住者にはローン月額の一定割合を支給することとされているもの。

(2) 住宅に要する費用を段階的に区分し、費用が増えるにしたがって額を多くして支給する。
例えば、家賃月額5〜10万円の者には2万円、家賃月額10万円を超える者には3万円を支給することとされているようなもの。
2. 本条の住宅手当にあたらない例
(1) 住宅の形態ごとに一律に定額で支給する。
例えば、 賃貸住宅居住者には2万円、持家居住者には1万円を支給することとされているようなもの。
(2) 住宅以外の要素に応じて定率又は定額で支給する。
例えば、 扶養家族がある者には2万円、扶養家族がない者には1万円を支給することとされているようなもの。
(3) 全員に一律に定額で支給することとされているもの。
 
パートの場合
 

パートがその所定労働時間(契約時間)を超えて労働した場合でも、法定労働時間に達するまでの時間は通常の時間給賃金の支払で足りる。
この場合も労使で法を上回る取扱いを定めた場合はそれによることになる。

 

適用除外者

 
労基法における労働時間、休憩及び休日に関する規定は、(1)農業、畜産・水産業の事業に従事する者、(2)「監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者」、(3)「監視又は継続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けた者」には適用されないことになっているが、(2)(3)については、その実態から判断することになる。
使用者がこの労基法41条を口実にして時間外・休日労働に対する賃金を支払わない場合には(特に(2)の悪用が多い)労基法違反であり、残業代未払いの問題になる。
 
管理・監督者等
 
「監督若しくは管理の地位にある者」とは、労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的立場にある者をいうとされており、名称にとらわれず、実態に即して判断される。(昭22.9.13発基17号、昭63.3.14基発150号)
<管理監督者にはあたらないとされた例>

一般従業員と同じ賃金体系・時間管理下におかれている名ばかりの「取締役工場長」(橘屋事件大阪地裁判決昭40.5.22)。

昇進前とほとんど変わらない職務内容・給料・勤務時間の「課長」(サンド事件大阪地裁判決昭58.7.12)。
出退勤の自由がなく、部下の人事考課や機密事項に関与していない「銀行の支店長代理」
(静岡銀行事件静岡地裁判決昭53.3.28)。
材料の仕入・売上金の管理等を任されているが、出退勤の自由はなく、仕事もウェイター、レジ係等全般に及んでいる「レストラン店長」(レストラン「ビュッフェ」事件大阪地裁判決昭61.7.30)。
<管理監督者にはあたるとされた例>
労働時間の自由裁量、採用人事の計画・決定権限が与えられ、役職手当を支給されている「人事課長」(徳州会事件大阪地裁判決昭62.3.31)。
 
機密事項取扱者
 

「機密の事務を取扱う者」 とは、「秘書その他職務が経営又は監督もしくは管理の地位に在る者の活動と一体不可分であって、厳格な労働時間管理になじまない者」とされている。(昭22.9.13発基17号)

 
監視・断続労働従事者
 
(1)

「監視労働」とは、原則として一定部署に在って監視するのを本来の業務とし、常態として身体又は精神的緊張の少ないものをいい、交通関係の監視、車両誘導を行なう駐車場等の監視等精神的緊張の高い業務、プラント等における計器類を常態として監視する業務、危険又は有害な場所における業務は該当しない(昭22.9.13発基17号等)。

(2) 「断続的労働」とは、実作業が間欠的に行われて手待時間の多い労働のことであり、手待時間が実作業時間を超えるか又はそれと等しいことが目安とされている。
また、実労働時間の合計が8時間を超えるときは、該当しないとされている(昭22.9.13発基17号、昭23.4.5発基535号)。
(3) 使用者は、いずれの場合も行政官庁の許可を得なければならない。
 
残業代金未払への対処
 
<証拠確保と請求>
算定の裏付けとなる、労働時間管理記録、業務記録、就業規則等を確保し、その上で請求する。実労働時間を正確に記載していない虚偽の労働時間管理記録もよくあるので、注意を要する。労働時間管理記録が現実より過少に記載された虚偽内容の場合は、これを覆すための実質的な証拠収集が重要である。
※裁判上の請求では労基法114条による付加金や遅延損害金等も請求できる。
 
賃金不払い残業(いわゆるサービス残業)や裁量労働制に注意
 
(1)

日本の企業ではいわゆるサービス残業が広く行われており、労働者が実残業時間どおりの残業代を請求すると、昇進できなくなるなど不利益を被ることがある。これは違法なことであり、労組などによる集団的労使関係を通じて改善させるべきである。

(2) 日本の企業では管理職の肩書付の従業員が多く、実質的には労基法41条の条の管理・監督者に該当しないのに、それに該当すると思わされている労働者が多い。労基法41条の適用除外者に該当しなければ実労働時間に基づいて残業代を請求できるので、このような誤解をとく必要がある。
(3) 正しく残業代を算定するには、正しく実労働時間を計測することが必要であるが、企業によっては、裁量労働制(労基法38条の2第4項)を法の定める要件をみたさないのに違法に導入し、実労働時間の計測をしていないところがあるので、注意する。このような場合は、労働者自身に実労働時間の記録を作成させるなど工夫を要する。
→上記残業代金未払への対処参照
 

時間管理

 
いずれの場合も労働時間管理の責任は使用者が負う。
 

罰則

 
労基法36、37条違反は6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金
<参照条文> 労基法 32,35,36,37,41,114条 割増賃金令

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