「勤務成績が悪い」という理由で解雇を通告された
退職する意思がない場合は、はっきりと意思表示を

 
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして無効(第18条の2)
労基法上の手続としては、少なくとも30日前にその予告をするか、予告をしないときは平均賃金の30日分以上の支払いを要する。
 

解雇、退職・辞職のちがい
 
 

退職勧奨と退職強要とは?

 
「退職勧奨」は、労働者が自由意志で退職する気持ちになるよう誘いかける行為。「退職してもらえないだろうか」とは労働者が何らの拘束なしに自由に意思決定ができるものでなければならないし、どんな場合でも労働者に勧奨に応じる義務はない。また、退職勧奨が社会通念を超えて違法性を帯びる場合は「退職強要」になる。
 
パートアルバイト等、有期労働契約者の雇止め
 
パートタイマー、契約社員、嘱託、臨時社員、アルバイトであっても、労働契約の反復更新により実質的に期間の定めのない労働契約となっている場合には、労基法20条が適用される。
契約が更新により1年を超えている場合で、当該労働契約を更新せず満了により終了させる場合(いわゆる雇止め)は、30日前の予告をするよう、また、理由を告知するよう基準が定められている。(→厚生労働省告示参照【PDFファイル】
 

法令で定める解雇の禁止・制限

 
以下の解雇は法令で禁止され、無効となる。
(1) 国籍、信条又は社会的身分を理由とする解雇(労基法3条)
(2)
制限期間中の解雇(労基法19条)
1 業務上の傷病のため療養する期間及びその後30日間(注)
2 産前産後の休業期間及びその後30日間
(3) 申告を理由とする解雇その他の不利益な取扱い(労基法104条、労働安全衛生法97条、賃確法14条、じん肺法43条の2)
(4) 女子労働者の結婚、妊娠、出産又は産休を理由とする解雇(雇用機会均等法8条)
(5) 育児・介護休業の申出又は育児・介護休業をしたことを理由とする解雇(育児・介護休業法10条、16条)
(6) 労働組合活動を理由とする解雇=不当労働行為(労組法7条)
(7) 労働協約、就業規則に違反する解雇
(8) 信義則・権利の濫用・公序良俗に反する解雇(民法1、90条)
(注)補償を受ける労働者が、療養開始後3年を経過しても傷病が治癒せず、使用者が1,200日分の平均賃金を打切補償として支払った場合(法第81条の規定によって打切補償)、および天災事変などで事業の継続が困難になったときには制限は適用されない(労働基準法第19条但書)。
 

整理解雇の4要件

 
会社の業績悪化や企業規模の縮小など、経済上の都合による人員整理、倒産に伴って解雇される整理解雇の場合、次の4つの要件が判断基準とされている。
人員削減の十分な必要性があるのか
会社の維持・存続を図るために人員整理が必要で、かつ最も有効な手段であること。
解雇回避の努力義務を尽くしたか
新規採用の中止、希望退職の募集、一時帰休の実施などの努力をした上での解雇なのか?
解雇対象者の選定が公正・妥当で合理性があるか
基準が合理的・公平なもので、そのすすめかたも合理的・公平であること。
説明・協議手続きを尽くしたのか
解雇の必要性、規模・方法・基準などについて十分説明をし、納得を得られるように努力したか?
 

解雇予告制度(解雇予告手当の支払)

 
使用者は、労働者を解雇しようとする場合には、
(1) 少なくとも30日前にその予告をしなければならない。
(2) 30日前に予告をしない場合は、30日分以上の平均賃金=解雇予告手当を支払わなければならない。なお、1日について平均賃金を支払った場合には、その日数を短縮することができる(たとえば、20日前に予告し10日分以上の平均賃金を支払う)。ただし、上記の手続きを踏んだだけでは、解雇は自由に行えず、解雇の正当かつ合理的理由を明らかにしなければならない。
裁判上は労基法第114条による付加金と判決確定の翌日から法定利率による遅延損害金の請求もできる。
 

解雇予告制度の例外と解雇予告除外認定

 
上記の解雇予告制度は、(1)日々雇い入れられる者、(2)2か月以内の期間を定めて使用される者、(3)季節的業務に4か月以内の期間を定めて使用される者、(4)試の使用期間中の者については適用されない。ただし、(1)については1か月を、(2)(3)については所定の期間を、(4)については14日を超えて、引き続き使用されるに至った場合は、適用されることになる。
また、天災事変その他やむを得ない事由により事業の継続が不可能となった場合及び労働者の責に帰すべき事由により解雇する場合には、その事由について労基署の解雇予告除外認定を受けて、予告なしに解雇することができる。なお、両者の取扱いについての認定基準が定められている。
 

解雇予告除外の認定基準

 
<解雇予告除外事由 1>
法第19条及び第20条に規定する「天災事変その他やむを得ない事由のため事業の継続が不可能になった」として、認定申請がなされた場合には、申請理由が「天災事変その他やむを得ない事由」と解されるだけでは充分ではなく、そのために「事業の継続が不可能」になることが必要であり、また、逆に「事業の継続が不可能」になってもそれが「やむを得ない事由」に起因するものでない場合には、認定すべき限りではないこと。
(一) 「やむを得ない事由」とは、天災事変に準ずる程度に不可抗力に基づきかつ突発的な事由の意であり、事業の経営者として、社会通念上採るべき措置を以てしても通常如何ともし難いような状況にある場合をいう。
(1) 次の如き場合はこれに該当する。
事業所が火災により焼失した場合(ただし、事業主の故意又は過失に基づく場合を除く)・震災に伴う工場、事業所の倒壊、類焼等により事業の継続が不可能になった場合。
(2) 次の場合は、これに該当しない。
事業主が経済法令違反のため強制収容され、又は購入した諸機械、資材等を没収された場合。
税金の滞納処分を受け事業廃止にいたった場合。
事業経営上の見通しの齟齬の如き事業主の危険負担に属すべき事由に起因して資材入手難、金融難に陥った場合。個人企業で別途に個人財産を有するか否かは本条の認定に直接関係ない。
従来の取引事業所が休業状態となり、発注品がなく、ために事業が金融難に陥った場合。
(二) 「事業の継続が不可能になる」とは、事業の全部又は大部分の継続が不可能になった場合をいうのであるが、例えば当該事業所の中心となる重要な建物、設備、機械等が焼失を免れ多少の労働者を解雇すれば従来通り操業しうる場合、従来の事業は廃止するが多少の労働者を解雇すればそのまま別個の事業に転換しうる場合の如く事業がなおその主たる部分を保持して継続しうる場合、又は一時的に操業中止のやむなきに至ったが、事業の現況、資材、資金の見通し等から全労働者を解雇する必要に迫られず、近く再開復旧の見込が明らかであるような場合は含まれないものであること。(昭和63.3.14基発150号)
<解雇予告除外事由 2>
「労働者の責に帰すべき事由」とは、労働者の故意、過失又はこれと同視すべき事由であるが、判定に当たっては、労働者の地位、職責、継続勤務年限、勤務状況を考慮の上、総合的に判断すべきであり、「労働者の責に帰すべき事由」が法第20条の保護を与える必要のない程度に重大又は悪質なものであり、従って又使用者をしてかかる労働者に30日前に解雇の予告をなさしめることが当該事由と比較して均衡を失するようなものに限って認定すべきものである。「労働者の責に帰すべき事由」として認定すべき事例を挙げれば、
(1) 原則としてきわめて軽微なものを除き、事業所内における盗取、横領、傷害等刑法犯に該当する行為のあった場合。また一般的に見て「きわめて軽微」な事案であっても、使用者があらかじめ不詳事件の防止について諸種の手段を講じていたことが客観的に認められ、しかもなお労働者が継続的に又は断続的に盗取、横領、傷害等刑法犯又はこれに類する行為を行った場合、あるいは事業所外で行われた盗取、横領、傷害等刑法犯に該当する行為であっても、それが著しく当該事業所の名誉もしくは信用を失ついするもの、取引関係に悪影響を与えるもの又は労使間の信頼関係を喪失させるものと認められる場合。
(2) 賭博、風紀紊乱等により職場規律を乱し、他の労働者に悪影響を及ぼす場合。これらの行為が事業所以外で行われた場合であっても、それが著しく当該事業所の名誉もしくは信用を失ついするもの、取引関係に悪影響を与えるもの又は労使間の信頼関係を喪失させるものと認められる場合。
(3) 雇入れの際の採用条件の要素となるような経歴を詐称した場合及び雇入れの際、使用者の行う調査に対し、不採用の原因となるような経歴を詐称した場合。
(4) 他の事業へ転職した場合。
(5) 原則として2週間以上正当な理由なく無断欠勤し、出勤の督促に応じない場合。
(6) 出勤不良又は出欠常ならず、数回に亘って注意を受けても改めない場合。
の如くであるが、認定に当たっては、必ずしも右の個々の例示に抱泥することなく総合的かつ実質的に判断すること。
なお就業規則に規定されている懲戒解雇事由についてもこれに拘束されることはないこと。
(昭和23.11.11基発第1637号、昭和31.3.1基発第111号)
 

雇用保険の受給日数の違い

 
雇用保険の基本手当の受給日数は、離職理由によって異なり、自己都合の退職になると、給付の受給時期が、会社都合による退職や解雇の場合よりも3か月遅れる。
解雇なのに、「自己都合退職」扱いにされたような場合には、会社に離職理由の書き直しを求めたり、職業安定所に解雇理由を確定できる資料を持って出向くなどの方法が考えられる。
 

不当な解雇には

 
解雇通告に納得がいかない場合、まず、(1)解雇理由を文書などで明らかにさせ、(2)口頭か文書で、解雇は了解できない旨を通告し、(3)解雇予告手当を一方的に支払ってきた場合でも、給料分として受領した旨を明示しておく必要がある。その上で解雇の不当性を主張し、労働基準監督署か裁判所に申し立てることになるが、裁判には時間と費用を要するので、できるだけ早い時期に労働組合が介在して経営側と交渉することが望ましい。
 

罰則

 
労基法3、19条、20条、104条違反は6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金。労組法第7条違反は1年以下の禁固、若しくは10万円以下の罰金。
<参照条文> 労基法 3,19,20,21,114,119 労基則 7
労働基準監督署の対応について【PDFファイル】

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