<解雇予告除外事由 1> |
法第19条及び第20条に規定する「天災事変その他やむを得ない事由のため事業の継続が不可能になった」として、認定申請がなされた場合には、申請理由が「天災事変その他やむを得ない事由」と解されるだけでは充分ではなく、そのために「事業の継続が不可能」になることが必要であり、また、逆に「事業の継続が不可能」になってもそれが「やむを得ない事由」に起因するものでない場合には、認定すべき限りではないこと。 |
(一) |
「やむを得ない事由」とは、天災事変に準ずる程度に不可抗力に基づきかつ突発的な事由の意であり、事業の経営者として、社会通念上採るべき措置を以てしても通常如何ともし難いような状況にある場合をいう。 |
(1) |
次の如き場合はこれに該当する。
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事業所が火災により焼失した場合(ただし、事業主の故意又は過失に基づく場合を除く)・震災に伴う工場、事業所の倒壊、類焼等により事業の継続が不可能になった場合。 |
(2) |
次の場合は、これに該当しない。
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事業主が経済法令違反のため強制収容され、又は購入した諸機械、資材等を没収された場合。 |
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税金の滞納処分を受け事業廃止にいたった場合。 |
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事業経営上の見通しの齟齬の如き事業主の危険負担に属すべき事由に起因して資材入手難、金融難に陥った場合。個人企業で別途に個人財産を有するか否かは本条の認定に直接関係ない。 |
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従来の取引事業所が休業状態となり、発注品がなく、ために事業が金融難に陥った場合。 |
(二) |
「事業の継続が不可能になる」とは、事業の全部又は大部分の継続が不可能になった場合をいうのであるが、例えば当該事業所の中心となる重要な建物、設備、機械等が焼失を免れ多少の労働者を解雇すれば従来通り操業しうる場合、従来の事業は廃止するが多少の労働者を解雇すればそのまま別個の事業に転換しうる場合の如く事業がなおその主たる部分を保持して継続しうる場合、又は一時的に操業中止のやむなきに至ったが、事業の現況、資材、資金の見通し等から全労働者を解雇する必要に迫られず、近く再開復旧の見込が明らかであるような場合は含まれないものであること。(昭和63.3.14基発150号) |
<解雇予告除外事由 2> |
「労働者の責に帰すべき事由」とは、労働者の故意、過失又はこれと同視すべき事由であるが、判定に当たっては、労働者の地位、職責、継続勤務年限、勤務状況を考慮の上、総合的に判断すべきであり、「労働者の責に帰すべき事由」が法第20条の保護を与える必要のない程度に重大又は悪質なものであり、従って又使用者をしてかかる労働者に30日前に解雇の予告をなさしめることが当該事由と比較して均衡を失するようなものに限って認定すべきものである。「労働者の責に帰すべき事由」として認定すべき事例を挙げれば、 |
(1) |
原則としてきわめて軽微なものを除き、事業所内における盗取、横領、傷害等刑法犯に該当する行為のあった場合。また一般的に見て「きわめて軽微」な事案であっても、使用者があらかじめ不詳事件の防止について諸種の手段を講じていたことが客観的に認められ、しかもなお労働者が継続的に又は断続的に盗取、横領、傷害等刑法犯又はこれに類する行為を行った場合、あるいは事業所外で行われた盗取、横領、傷害等刑法犯に該当する行為であっても、それが著しく当該事業所の名誉もしくは信用を失ついするもの、取引関係に悪影響を与えるもの又は労使間の信頼関係を喪失させるものと認められる場合。 |
(2) |
賭博、風紀紊乱等により職場規律を乱し、他の労働者に悪影響を及ぼす場合。これらの行為が事業所以外で行われた場合であっても、それが著しく当該事業所の名誉もしくは信用を失ついするもの、取引関係に悪影響を与えるもの又は労使間の信頼関係を喪失させるものと認められる場合。 |
(3) |
雇入れの際の採用条件の要素となるような経歴を詐称した場合及び雇入れの際、使用者の行う調査に対し、不採用の原因となるような経歴を詐称した場合。 |
(4) |
他の事業へ転職した場合。 |
(5) |
原則として2週間以上正当な理由なく無断欠勤し、出勤の督促に応じない場合。 |
(6) |
出勤不良又は出欠常ならず、数回に亘って注意を受けても改めない場合。 |
の如くであるが、認定に当たっては、必ずしも右の個々の例示に抱泥することなく総合的かつ実質的に判断すること。
なお就業規則に規定されている懲戒解雇事由についてもこれに拘束されることはないこと。
(昭和23.11.11基発第1637号、昭和31.3.1基発第111号)
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