業績不振で事実上倒産。2か月分の給料を残して退職した
賃確法による立替払を請求する
「未払賃金の立替払制度」は、企業が倒産したために賃金が支払われないまま退職した労働者に対して、その未払賃金の一定範囲について、労働福祉事業団が事業主に代わって立替払するものである。(賃確法<賃金の支払の確保等に関する法律>第7条)
対象となる倒産
倒産は、事実上の倒産である私的整理と、法律上の倒産である破産、会社更生、民事再生、会社整理、特別清算に類型される。
(1)
労災保険の適用事業で1年以上事業活動を行ってきた企業(法人・個人を問わない)が、法律上の手続きをとって倒産した場合。
(2)
中小企業に限り事実上倒産状態にあることを労働基準監督署長が認定した場合。認定の基準は、会社の事業活動が停止し、再開する見込がなく、かつ会社に賃金などの支払い能力がないこと。
中小企業(中小企業基本法)の範囲は、
製造業・建設業・運輸業
300人以下又は資本金3億円以下
卸売業
100人以下又は資本金3億円以下
サービス業
100人以下又は資本金5,000万円以下
小売業
50人以下又は資本金5,000万円以下
対象労働者
(1)
企業の倒産に伴い退職し未払賃金が残っていること(ただし未払賃金の総額が2万円未満の場合は立替払を受けられない)
(2)
倒産について、裁判所や労働基準監督署長に申し立てた日から起算して6か月前の日以後2年間の期間内に退職していること。
対象となる未払賃金の範囲
退職の日の6か月前の日からの定期賃金又は退職手当の未払い分。定期賃金とは毎月一定日期日に決まって支払われる賃金(税金、社会保険料など法定控除前の額)で、毎月の賃金から控除されている社宅料や貸付金返済金は、未払賃金から除かれる。退職手当とは退職手当規程に基づいて支給される退職一時金及び退職年金。
限度額
立替払される額は、未払賃金の総額の80%相当額であり、退職日における年齢に応じて上限額が定められている。
立替払の限度額
退職日における年齢区分
未払賃金の上限額
立替払の上限額
退職日における年齢
45歳以上
370万
296万
30歳以上45歳未満
220万
176万
30歳未満
110万
88万
証明・認定・確認等及び請求書
破産等の場合は管財人・清算人・管理人が証明者となる。
中小企業の事実上倒産の場合は労基署長に確認申請書を提出する(退職日の翌日から6か月以内に申請が必要)。
立替払の請求書は労働福祉事業団に提出する。請求できる期間は、裁判所の破産等の決定の日又は労基署長の認定の日の翌日から起算して2年以内。
賃金債権について
立替払いを受けた場合、労働者の賃金債権は労働福祉事業団が立替払金に相当する額について代位取得し、本来の支払責任者である使用者に求償することになる。
倒産のきざしがある場合
(1)
組合を作ること。
(2)
働いた日の認定のためのタイムカードのコピーや、手帳やカレンダー等に労働日と労働時間を記しておく。
(3)
未払賃金の金額確定のため過去の給料明細書を保存しておく。
(4)
賃金の遅配・欠配・未払いが発生した時は、会社から未払い証明書(社印のあるもの)をもらっておく。
(5)
賃金や労働条件に関する書類を整備しておく。
倒産した場合
(1)
組合を作る。
(2)
倒産でも無条件に解雇は認められず、合理的理由が必要。偽装や計画倒産等雇用を不当に奪う要素があれば認められない。解雇予告か予告手当の手続きは当然に必要である。
(3)
職場や施設、資材、商品を確保する。
(4)
外部の債権者がドサクサまぎれに、会社財産を持ち出さないよう従業員が結束して泊り込み体制(24時間)で監視する。
(5)
実力で債権者が持ち出そうとする時は窃盗として警察を呼ぶ。