減給処分としてボーナスが減額された
就業規則の定めがあれば違法ではないが、制限がある

 
就業規則において賞与を減給制裁の対象とする旨の定めがあれば違法ではないが、賞与も賃金であるから減給制裁の制限規定が適用される。【労基法第91条】
 

減給制裁の制限
 
まず、減給制裁が適法たるには、それが就業規則に定められることを要する。また、懲戒権の濫用・公序良俗違反とならないような適正な運用が求められる。
労基法91条は、減給制裁の制限として、
(1) 1回の額が平均賃金の1日分の半額
(2) 総額が一賃金支払期の賃金総額の10分の1
以内でなければならないとしている。
 

一時金(賞与)からの減給

 
行政解釈は、「制裁として賞与から減額することが明らかな場合は、賞与も賃金であり、法第91条の減給の制裁に該当する」としているから、上記の制限の適用がある。そしてこの場合の総額とは、賞与総額を意味することになる。
 
1回の額と複数事案の取扱い
 
1回の額とは、対象となる事案1件のことである。したがって、同一事案について数日間にわたって減給処分を重ねることはできない。また、複数の事案についてそれぞれごとに減給処分を行う場合には、その複数事案に対する減給の総額につき上記(2)の制限を受けることになる。
 

不就労時間の取扱い

 
いわゆる賃金カットには、減給制裁として行われるものと、不就労時間に対する措置として行われるものとがあるから注意を要する。遅刻・早退などの不就労時間に相当する賃金の減額(賃金カット)は、労務の提供がないのであるから、それに応ずる範囲内である限り違法ではない。
 

賃金計算の端数の取り扱い

 
(1) 遅刻、早退、欠勤等の時間の端数処理
  5分の遅刻を30分の遅刻としてカットをするというような処理は、労働の提供のなかった限度を超えるカット(25分についてのカット)について、賃金の全額払の原則に反し(法第24条)、違法である。なお、このような取扱いを就業規則に定める減給の制裁として、法91条の制限内で行う場合には、全額払の原則には反しないものである。
(2) 割増賃金計算における端数処理
 

次の方法は、常に労働者の不利となるものではなく、事務簡便を目的としたものと認められるから、法第24条及び第37条(割増賃金の支払い)違反としては取り扱わない。
1か月における時間外労働、休日労働、及びに深夜業の各々の時間数の合計に1時間未満の端数がある場合に、30分未満の端数を切り捨て、それ以上を1時間に切り上げること。(昭63・3・14 基発150号)

 

罰則

 
労基法91条、24条違反は30万円以下の罰金、労基法37条違反は6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金。
<参照条文> 労基法 91,24,37

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