はじめに
連合の「なんでも相談ダイヤル」は、中小企業・パート労働者など未組織労働者の悩みや相談のアドバイザーとして、通年で取り組んでいる活動です。1990年1月にスターとした「相談ダイヤル」は、今では47都道府県の全ての地方連合会に設置されているだけでなく地域協議会での取り組みも活発化し、労働組合の結成の成果も報告されるなど、連合運動の発展に大きく寄与しています。

雇用環境の厳しさが続く中、不当解雇をはじめ権利の侵害など弱い立場の中小企業・パート労働者・不安定雇用労働者へのシワ寄せが強まってきています。寄せられる相談では、労働基準法違反の実態だけでなく、「おかしいと思っても社長がワンマンで何も言えない」という悩みが訴えられています。

相談活動では、第一に個々の問題解決を図るための適切なアドバイスを行うことにありますが、さらに進めて「労働組合の存在意義」を認識してもらい、常に労働組合づくりの可能性を念頭に置いた対応が必要です。

この「相談マニュアル」は、法改正等に対応しながら改訂を重ねておりますが、今改訂は労基法や派遣法等の改正に対応するものです。補強すべき点などお気づきの点がありましたら忌憚のないご意見をお寄せください。

2005年1月       

連合中小労働対策局
「なんでも労働相談ダイアル」への対応の基本」
@ 相談者の立場に立って問題を受けとめる
 労働相談で大切なことは、相手の話をよく聞くことです。場合によっては内容が悩みごとや“人生相談”に近いものもありますが、聞くことだけで相談となることもあります。一方、同情や怒りにより相談所の見方だけにかたよらない冷静さも必要です。

A 相談者のおかれた状況をつかむ
 相談内容とも関連して、まず相談者のおかれた状況や環境を正確に知ることが大切です。たとえば相談者が組合活動の経験があるか、家族を抱えているか、職場に支援は等によって、問題解決にも異なった対応が求められてくるものです。

B 相談者が何を求めているかを正確につかむ
 相談者が単に知識・情報を求めているのか、具体的対応を必要としているのかを把握します。ただ、相談者自身が決断しかねていることも多くあります。その場合は、問題点の分析をできるだけ的確に示していくことや、どの点を重視して取り組むのか等をアドバイスします。

C 相談者の主体的な行動や解決への努力を促す
 相談者の希望に無責任に迎合するのでなく、本来どうあるべきかを明確にし、まず本人ができることをアドバイスし、その上で援助の手立てを講じます。

D 知識でなく、パートナーとして解決方法を求める姿勢
 相談者によっては、すぐ「法律ではどうなっているのか」、「裁判ではどうなっているのか」などと性急に結論を聞きたがります。こうした時は、一応その質問に答えつつも、具体的な解決方法としては、個々のケースで異なることや多様な方法があることを認識してもらうことが大切です。

E 直本人にあって相談を受ける
 電話相談は、概括的な事実や状況・データを把握し、一定のアドバイスをするには有効ですが、ケースによっては、面接しての相談へ移行させるのが必要であることを考えておくべきです。 特に、組織化の可能性がある場合や、実案が重大な場合などには、是非直接に会う必要があります。

F 必要な相談者への配慮
 本人ではなく、母親や妻など家族が訴えてくるケースが増えていますが、事実が不正確になるばかりではなく、時には嘘が入ったり、無責任なものにもなるので、本人と直接コンタクトをとることが必要となります。 また、氏名を名乗らなかったり、会社名も明かさないというケースは、「秘密を守ること」、「あくまで相談者の同意があるまでこちらが勝手に動くことはない」ことなどを告げて、相手側に安心を与えるよう心掛けます。 相談者の氏名・住所・連絡先を聞くのも、相談の始めの時点でなく、ある程度のやり取りの中で、信頼関係が作られた時点(通常は相談の終わり)で聞くなどの配慮も重要です。 ただし、仕事の内容・従業員数・組合の有無などは、相談の内容に影響しますから、相談の前半に聞くようにします。

G 解決方法について
 問題解決のための手法には下記のように様々なものがあります。
1 本に対応させる。
2 会社側へ電話をするか、文書を送る。
3 会社へ直接出向いて話しをする。
4 対応者のところへ会社側を呼ぶ。
5 労働基準監督署・労政事務所・職業安定所等へ働きかける。
6 関連労働組合・弁護士を活用する。
7 組織化し労組として対応する。

H 組合結成の可能性を念頭に置く
 労働問題の場合には、個々の問題が解決すれば一件落着ということはありません。 一つの問題が職場全体に影響を及ぼすことが多いことから、「同じような問題を抱えている人はいないか」、「同じ意見をもっている人はいないか」などを把握しつつ、絶えず労働組合結成の可能性を念頭に置きながら、職場全体の改善を通じて問題解決を図ることを促します。

本編の構成
当該項目に関するもっとも代表的なケースを取り上げ、Q&Aの形でポイントを示しました。
その根拠となる法律について、その概要と出典を揚げました。(できる限りその条文や関連する法律を参照してください)

相談に応じるに当たって必要な法律的な知識のほか、相談の際の具体的なアドバイスも随所に盛り込みました。

行政機関の活用法
相談のケース 対応 相談先・紹介先
社会保険、税金などについて相談 事務局ないし専門部局の担当者が対応 社会保険事務所
国税庁
求職・求人の申し込み、雇用保険、雇用関係助成制度などについて 職安などに照会して回答 公共職業安定所
(ハローワーク)
賃金や退職金など就業規則違反、解雇、契約打ち切り、賃金未払いなど労働条件に関する相談 労働組合がない場合は、当該地域の行政機関に対応を依頼 労働基準監督署 
労政事務所 
県商工労働部 
県労働局
男女雇用機会均等法、育児・介護休業法、パートタイム労働法、セクハラ等について 行政機関に指導を依頼 都道府県雇用均等室
安全衛生、健康管理、労働災害、職業病、労働保険に関する相談 手続きについては事務局で説明。労基署を紹介 労働基準監督署 
県労働局
労働組合の結成 
上部団体への加盟
関係の構成組織を紹介
外国人労働者からの相談 行政機関の専門部局を紹介 県労働局労働基準部など
人権侵害 行政機関に指導を依頼 法務局人権擁護部

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