2024年度連合北海道「幌延深地層研究監視連絡会」開催報告

【連合北海道・政策情報No.11(2024年8月28日)】

連合北海道は2024年8月25日(日)、「2024年度 幌延深地層研究監視連絡会」(以下、監視連絡会)を開催し、監視連絡会の構成メンバー内の地協・地区連合会のほか、他の地協や構成組織を含めて20名が参加した。

国立研究開発法人日本原子力研究開発機構・幌延深地層研究センターは2001年4月、高レベル放射性廃棄物の地層処分に関する調査研究を目的として幌延町に開設した。同センターは、1998年に策定した「深地層研究所計画(仮称)」に基づき研究目的・内容が規定され、研究期間を20年程度として設置された。
開設にあたっては、北海道・幌延町・核燃料サイクル開発機構(現・原子力研究開発機構(以下、原子力機構))の三者が、放射性廃棄物の持込使用を行わないことや、研究終了後は地上の研究施設を閉鎖し地下施設を埋め戻すこと等を約束した「幌延町における深地層の研究に関する規定」を2000年11月に締結した。併せて、北海道は2000年10月、「北海道における特定放射性廃棄物に関する条例」を制定し「特定放射性廃棄物の持込みは慎重に対処すべきであり、受け入れ難いことを宣言する」と定め、放射性廃棄物の道内への持ち込みを拒否する意思を明らかにしている。
原子力機構は2020年1月、「令和2年度以降の幌延深地層研究計画」を策定した。その計画期間は、「20年程度」としていた研究期間を延長するものであり、2020年度以降、第3期・第4期中長期目標期間の9年間(2028年まで)、研究に取り組むこととしている。
このような流れをもとに、連合北海道は2002年から監視連絡会を開始し、視察等を通じた監視活動をはじめ、国や道政に対する政策要求や、北海道と幌延町が三者協定第14条に基づき設置している「幌延深地層研究 確認会議」(以下、確認会議)の確認等の活動を行ってきた。

本年の監視連絡会では、はじめに、同研究センターより①原子力機構(JAEA)における研究開発拠点や、②核燃料サイクルの再処理で発生した高レベル放射性廃棄物(ガラス固化体)の貯蔵保管数、③人工バリアによる地層処分システム、④日本の地層処分計画の進展、⑤世界の地下研究施設、⑥計画スケジュールと建設状況など、幌延深地層研究計画に関わる概要説明があった。その後、幌延深地層研究センターで行っている高レベル放射性廃棄物の地層処分技術に関する研究内容を紹介する施設「ゆめ地創館」地上施設および西立坑(地下250m調査坑道)を2班に分かれて視察した。

視察当日は、350mの調査坑道への立ち入りが難しいことから250m坑道での視察となった。坑道に入る者全員が作業着に着替え、長靴やヘルメット、軍手、ペンライト、落下防止の携帯ケースなどを身につけ、人キブル(工事用エレベーター)に乗って地下250m調査坑道まで移動し、坑道内のポイントごとに研究センター側から説明を受けた。坑道内では、地下250mの地震計データ(地表と地下の揺れの違い)の測定値や幌延国際共同プロジェクトの実施内容を示した、パネル展示のほか、幌延地域の珪藻質泥岩等による地層に触れることができる「幌延の窓」の紹介もあった。参加者は、地上より7℃くらい温度が高く、湿度も高いという過酷な労働環境でもある地下施設の現場を肌で感じることができた。
地上施設見学先の「ゆめ地創館」では、地下350mの調査坑道に実際に実物大の人工バリア(ガラス固化体の代わりにヒーターを内蔵した模擬オーバーパックと緩衝材)を見学したほか、放射性物質を吸着し、その移動を遅らせる性質も持ち人工バリアとして用いることで地下水や放射性物質の移動を抑制することができる性質を持つ、ベントナイト(天然に産出される粘土)に触れ、実際にベントナイトの吸水力を体験するコーナーもあった。

視察後は、「ゆめ地創館」内の会議室において、2024年度監視連絡会を開催した。開会に先立ち、本連絡会の代表である和田事務局長は「三者協定に基づき、監視連絡会構成メンバーや、構成組織・地協との意見交換を踏まえて、連合北海道として今後の幌延深地層研究計画に関する取り組みを進めていきたい。日本は現在も、経済活動と原子力エネルギーが密接に関係している。また、原子力エネルギーに関連する施設で働く仲間もいることを前提に、今後のエネルギー政策を考えていくことが重要である。他方、世界における高レベル放射性廃棄物地層処分計画をみれば、アメリカ合衆国やカナダなどでは研究が進んでいない。その理由等についても掘り下げていく必要がある」と挨拶した。

続いて、永田総合政策局長から2023年度活動経過報告と2024年度の取り組みについて報告があった。2024年度の取り組み状況については、すでに2024年3月に決定した本連絡会の役員体制を確認した上で、国や道に対する「要求と提言」のなかで幌延深地層センターに関わる要求事項及び中央省庁との意見交換内容について説明したほか、今年4月23日に開催の確認会議の場で道や有識者、幌延深地層研究センターがやりとりした「令和6年度調査研究計画」などの議事内容について概要説明を行った。連合北海道は「幌延町における深地層の研究に関する協定書」と「北海道における特定放射性廃棄物に関する条例」の遵守を基本に2028年度の確実な研究終了に向けた要請行動や監視連絡会などの監視活動を継続することを確認し、本連絡会を終了した。

以上

地下250m調査坑道 視察の様子
上:原子力機構から説明を受ける監視連絡会の参加
下:幌延地域の泥岩地層が露出した「幌延の窓」
地上施設「ゆめ地創館」での視察の様子
監視連絡会の主催者挨拶に立つ和田事務局長
監視連絡会の取り組み状況等を説明する永田総合政策局長
監視連絡会 全体の様子