2025年度「道政に対する要求と提言」及び「ラピダス課題の要請」北海道への要請を実施

【連合北海道・政策情報No.10(2024年8月6日)】

連合北海道は2024年8月2日(金)10:30~11:00、鈴木直道・北海道知事に対する要請を実施し、道庁副知事応接室にて、三橋副知事に対し「2025年度 道政に対する要求と提言」及び「ラピダスの北海道進出に係る北海道に対する要請書」について、2つの要請書を手交した。

和田事務局長から三橋副知事へ要請書手交

「2025年度 道政に対する要求と提言」に関する要請書については、①良質な雇用創出と定着、②地域産業の振興及び観光の推進、③地域公共交通の確保、④エネルギー・環境政策、⑤社会保障制度、⑥防災関連、⑦自治体財政、⑧消費社会、⑨ジェンダー平等、⑩教育、⑪平和、⑫人権など12の大項目、176項目の要望項目数で構成し、その内、重点要望項目は47項目とした。
一方、現在、千歳市において次世代半導体工場建設が進められ、2025年に試作ライン稼働予定、2027年度に量産開始予定となっているラピダス社の道内進出に伴う課題をもとに取りまとめた「ラピダスの北海道進出に係る北海道に対する要請書」については、これまでにない急速な地域社会の変化を伴うことから、連合北海道として働く者の立場または生活者の視点から作成した。すでに道が把握している事項や対応している事項も含まれているかもしれないが、組合員のおかれた状況と率直な思いと受け止めて課題解決を図るよう要請した。

和田事務局長の挨拶

冒頭、連合北海道・和田事務局長が、三橋副知事に要請書を手交した後、「『道政に対する要求と提言』については、労働政策はもとより、地域公共交通や社会保障制度、地方自治財政、教育など多岐に渡る要請内容となっている。また、本要請内容については、10月に道との意見交換を行う予定となっていることから、関係部局との活発な意見交換の場としていきたい。また『ラピダスの北海道進出に係る道要請』については、道内の製造業の活性化、道内経済の活性化に繋がるものとして、労働組合としても応援していきたい。一方で、ラビダス社進出に伴う労働環境や人材確保、フッ素化合物等の排水問題など切実な課題も挙げられる。このような課題解決に向け、先日連合北海道は、経済産業省に対し、道やラピダス社と連携するよう要請してきたところである。道としても、道内の更なる経済活性化に向けて誠意ある対応をお願いしたい」と挨拶した。

要請趣旨を説明する永田総合政策局長

次に、連合北海道・永田総合政策局長が今回の要請趣旨について、「今年6月には国策として、所得・住民税などの一時的減税措置が図られたものの、減税・給付金などの一時的な変動所得ではなく、賃上げのベースアップといった恒常的所得の上昇が重要と考える。道は、賃金に影響が及ぶ労務費の価格転嫁など、より一層取り組んでほしい」と強調した。その上で、①「2024年問題」の対象産業となる建設業・医師・自動車運転業務の人材不足の深刻化をはじめ、②道外大学とのUJIターン就職促進に関する連携強化、③道内14振興局単位においても地方版政労使会議の設置、④社会的養護を担う児童養護施設で働く児童指導員等の労働条件の改善、⑤治療と仕事の両立の障壁となるがん治療後のアピアランスケア助成事業の促進、⑥カスハラ条例の制定と道内企業等に対するカスハラの周知徹底、⑦次世代半導体の国産化を目指す民間企業が、製造過程等で懸念される有機フッ素化合物や処理水の排水等の課題、⑧道内の観光振興税導入に際しての課題、⑨業務委託など曖昧な雇用でのライドシェアの契約禁止、⑩道として、高レベル放射性廃棄物最終処分場の選定に向けた「概要調査」に反対する姿勢を国に表明することや、最終処分地の社会的合意プロセスの整備、⑪道内の再エネ設備全般の国産化に向けた支援、⑫幌延深地層研究センターに係る協定・条例の遵守、⑬道内の訪問介護事業所の減少に伴う地域包括ケアシステムの深化・推進への逆行を阻止すべく訪問介護の基本報酬の改善、⑭介護人材の不足に伴う人材確保策の1つとして介護・福祉関連の研修費の負担軽減、⑮道内各自治体による「福祉灯油」の財政支援による交付基準額の統一や、ツルツル路面対策として市町村への財政強化、⑯道内各市町村における子ども医療助成の対象年齢の乖離をなくす施策の実施、⑰道内地方部における5疾病に対応した2次医療圏内の医療提供体制や在宅医療等の拡充、⑱窃盗・万引き犯罪防止対策の推進に伴う道警との連携、⑲道内の教育現場におけるICT支援員の効果的な配置、⑳部活動の社会教育への移行など、20項目について要請項目の概要を説明した。
続けて、連合北海道・永田総合政策局長が「ラピダスの北海道進出に係る北海道に対する要請書」に関する趣旨を説明した。永田総合政策局長は「連合北海道の構成組織や地域協議会から連合北海道に対し、①労働環境、②人材確保、③交通、④学校教育・保育、⑤自治体への支援、⑥住まい等確保への対応、⑦電力供給・上下水道・排水等のインフラ、⑧災害時対応、⑨他産業・他地域への配慮など、多くの意見が寄せられている」と述べた。とりわけ、現在ラピダス社から発注を受けている会社において「ラピダス社からの要望・変更が多いことから、設計等が予定通り進まず、時間外労働や休日出勤が月80~100時間程度発生している」旨のヒアリング内容を踏まえて、永田総合政策局長は「国策事業でもあるラピダス社の工場建設は今後より一層、工期厳守となり、過重労働あるいは法令遵守ができない可能性がある。北海道知事には、労働基準に係る法律を守るよう北海道労働局と連携を図るなど、リーダーシップを発揮してほしい」と要望した。また、連合北海道が7月に実施した中央省庁要請において厚生労働省からは「ラピダス社の工場建設において労働環境が悪化することのないよう、厚生労働省としても北海道労働局に指導する」旨の回答を得ていることについても触れ、永田総合政策局長は「人が犠牲になっての成功はあり得ない」と語気を強めた。

連合北海道の要請趣旨に対し挨拶する三橋副知事

次いで、三橋副知事は連合北海道の要請趣旨を踏まえたうえで、「コロナ禍以降、道内においても人流が増え経済活動が活発化したものの、中小企業はエネルギー価格や原材料が高騰の影響で未だ厳しい状況にあると認識している。道としても労務費の価格転嫁など支援に努めたい」と述べた。また、三橋副知事は物価上昇による道民の暮らしにも触れ「道民の『稼ぐ力』が重要である。これまでの北海道総合開発計画は、『食と観光』がメインで進められてきたが、今後はデジタル化やゼロカーボン、GX、DXなどといった、新たな需要に『稼ぐ力』を繋げたい」とし、「『稼ぐ力』が労働に結びついて、安心して暮らしてもらえるような地域づくりや、少子化対策も意識しながら今後の北海道総合開発計画に反映していきたい。道内への人材誘致や呼び戻しも大事な課題であり、氷河期世代や女性、高齢者の労働参画も重要であることからしっかりと取り組んでいきたい」と述べた。他方、ラビダスに関する要請について三橋副知事は、「労働環境や人材確保、インフラなどの要請であると認識している。労働環境については、ラピダス社や北海道労働局から法令違反があったとの確認は取れていないものの、いかなる状況であっても法令違反はあってはいけない。ラピダス社の道内進出に伴い、雇用創出の期待が高まっている一方で、今回要請いただいた懸念事項については、国や関係市町村ときちんと協議していきたい」と述べた。

最後に和田事務局長は、「北海道の広大な土地で、道内における製造業の活性化や、ものづくりの発展に期待するとともに、道民の所得をあげていくといった労働政策を実現したい。今回要請した176項目の『道政に対する要求と提言』及び『ラビダスの北海道進出に係る北海道に対する要請書』の要請事項については、9月上旬までに全項目について回答いただきたい」と述べ、締めくくった。

以上