特定秘密保護法案の衆議院強行採決に対する談話

連合北海道事務局長 出村 良平

11月26日、安倍政権は、衆議院本会議において、特定秘密保護法案を数の力を背景に強行採決した。本法案のパブリックコメントでは8割にものぼる国民が反対した。直近の世論調査においても賛否が拮抗し、「知る権利」については6割以上が守られないとし、最終となる福島での地方公聴会では参考人全員が慎重審議や反対を求めたにもかかわらず強行したことは、あまりにも横暴であり、国民不在の政治姿勢は決して許されるものではない。

特定秘密保護法案は当初より、「行政機関の長」の判断で恣意的に「秘密」と指定でき、公務員が秘密を漏洩した場合は最高で懲役10年とし、民間人も罰則の対象とするなど、国民の知る権利や言論や表現、報道の自由が侵害される危険性が指摘されていた。

国会での審議が進むにつれて、特定秘密の基準や期間が曖昧で、行政機関の判断で国民の共有財産である情報が永遠に隠匿される可能性が一層明らかとなった。罰則の範囲も、秘密の漏洩にとどまらず、取得行為、それらの未遂、教唆、扇動、共謀、過失による漏洩まで対象となるなど、一般市民にまでもおよび、社会全体を萎縮させ、監視国家となる恐れもある。

とりわけ、労働組合に対しては、「スパイ活動防止」や「テロ活動防止」の分野を理由として、体制批判を行うような集団的示威運動、デモ行進、集会開催などの活動を敵視し、恣意的に秘密を指定して、結社の自由など間接的に制限を加えてくる危険性も否定できない。

第三者機関の設置についても、「独立した公正な立場で検証、監察できる新たな機関の設置を検討する」として、具体的な内容は盛り込まれていないばかりか、閣僚を指揮・監督する首相が第三者的に関与するなど、特定秘密への拡大解釈の疑念は、さらに深まってきた。また、国会への特定秘密の提供の是非は政府が判断するとされており、国会による「国政審査権」が十分に機能しない可能性もあり、三権分立さえも脅かしている。

各国が秘密保護法制を進める上で、国民の知る権利を蔑ろにしないため、国際指針として秘密の範囲や期間などを限定する「国家安全保障と情報への権利に関する国際原理」(ツワネ原則)を定められているが、本法案はこれにも反し、情報開示を進める国際潮流に逆行している。

民主主義の砦とも言われる表現・言論の自由など、国民の権利を制限して、行政権力を巨大化させ、暗澹たる社会に導くような法案を成立させるわけにはいかない。連合北海道は、本法案の廃案を求めるとともに、働くことを軸とする安心社会の実現に向け、今後も憲法講座をはじめ、基本的人権、平和、民主主義を守る観点から運動を強化していく。

以 上