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連合北海道2011春季生活闘争方針 |
はじめに
わが国経済は、リーマン・ショックによる世界同時不況から大きく落ち込んだものの、堅調な輸出に支えられここにきて回復の兆しを強めている。しかし、各国の自国通貨安への誘導施策によって想定を超える円高が進行し、また一方で金融破綻によってデフォルト寸前まで追い込まれる国が発生するなど、先行きへの不透明感が強いものとなっている。一方、労働者の雇用・生活は進行するデフレ経済のもとで、格差が拡大し、低年収層が大幅に増大するなど一段と厳しさが増している。失業率は5%台と高止まりしている。とくに若年者雇用の状況は厳しく、来春の新卒採用も過去最悪になることが懸念される。
このような深刻な状況となった背景は、90 年代初めにバブルが崩壊し、各企業は、債務・設備・雇用の3つの過剰解消という事業構造の再構築を迫られた。そういった調整圧力に対し、政府は財政支出を増大させ、超低金利政策をとり、企業は徹底したコスト削減を実施することで競争力を強化、倒産を最低限に抑えるやり方をとった。
しかし、長期間に及ぶ家計と企業のバランスの歪みは、労働者の雇用・生活を切り崩すとともに、日本経済の行き詰まりという結果をもたらした。賃金は、ピーク時から大幅に下落し、その結果、消費は低迷、国内需要は大きく縮小した。そういったなかで、海外への生産シフトがすすみ、産業空洞化が本格化し、人材の流出・技術流出も危機的な状況にある。政府は公的債務がGDPの2 倍を超えるという状況下で大規模な財政出動ができないでいる。
だが、経営側は、ミクロの論理に終始し、総額人件費の抑制による国際競争力強化という従来のやり方を変えていない。こういったやり方をこれ以上つづければ、低成長とデフレのわなから抜け出すことができず、近い将来、所得はより一層の「減少局面」を迎え、国民は現在の生活レベルを落とさざるを得ない必要に迫られる。そうなれば日本は崩壊への道を歩むことになりかねない。
今、求められるのは労働条件の復元、格差の是正をはかることであり、労使が危機感を共有し、家計・企業のバランスの歪みを修正・解消することである。それがデフレ脱却への道であり、そうした努力が個人消費の回復、働くモチベーションの向上につながり、産業・企業競争力の強化をもたらすこととなる。
特に北海道においては、景気や雇用情勢も回復基調を実感できない状況が長く続いており、取り分け若年層の雇用環境悪化や収入の減少が将来への展望をも暗くしている。
低下をつづける賃金を速やかにピーク時の水準まで復元し、企業部門から家計部門への所得移転をはかると同時に、この間もっとも犠牲になってきた非正規労働者の雇用と生活を向上させなければならない。成長を取り戻し、そして、その成長の適正な配分が消費拡大へとつながる好循環にしていかなければならない。
2011春季生活闘争は、国民の暮らしや生活に蔓延する「閉塞感」を打破するとともに、日本経済をデフレ循環から脱却させ、活力ある社会への転換、「希望と安心の社会づくり」をめざしていく。
T.取り巻く情勢
1.実質GDPは4四半期連続で拡大するも先行き不透明
実質GDPは、2009年10〜12月期から2010年7〜9月期まで4四半期連続して拡大した。しかし、成長の内容はエコカー補助金終了前の駆け込み需要などの政策効果で拡大した面もあるが、全体としては力強いものとはなっていない。とくに7〜9月期の成長は年率換算で3.9%増となったが、猛暑の影響や景気刺激政策終了間際の駆け込み需要、たばこ増税前の買いだめ等によるものが大きい。今後の景気動向も急激な円高や株価の低迷、海外経済の動向などに加え、国内ではエコカー補助金・エコポイント対象減などの景気刺激策廃止による需要の反動減の懸念があり、2010年10〜12月期では、マイナス成長になるとの見方もある。
日銀短観で先行き(2010年12月)の業況判断をみると、大企業、中小企業とも「悪くなる」とみる企業が増える傾向にあるが、中小企業の方が悪くなるとみる企業が多く中小企業の厳しさが窺える。
2.9月中間の企業収益は回復
法人企業動向調査によれば、2010年4〜6月期の経常利益は全産業(金融・保険を除く)で83.4%の増益(前年同期比、以下同じ)となり、3四半期連続で増益となった。中でも製造業は、輸送用機械、情報通信機械、電気機械などで回復・増益となった。一方、非製造業も運輸業、サービス業、卸・小売業を中心に回復し、全体で33.1%の増益となった。資本金別に見ると、小規模の方が回復のスピードは遅いものの3期連続の増益となっており、4〜6月期では、1億円以上10億円未満で84.1%の増益、1,000万円以上1億円未満でも90.4%の増益となっている。
2010年9月中間決算が出そろったが、海外への生産シフトや想定を超える円高、レアアースにみられる資源調達難と資源価格の上昇など下半期の見通しは厳しい状況にあり、年度決算の状況は予断が許されない状況にある。
3.依然として続く賃金の低下
デフレの原因として賃金の低下が指摘されてきているが、その低下は依然として続いている。毎勤統計を2010年に入ってからの動きでみると、現金給与総額は、所定外労働時間の増加と一時金の回復により1%前後の増加で推移している。しかし、所定内給与は、2009年頃の1%超の減少から改善傾向がみられるものの、0.2%前後の減少が続いている。
長期的にみても労働者の賃金、収入は減少している。毎勤統計で現金給与総額を1997年と2009年で比較すると、一般労働者で5.1%減となっている。賃金構造基本統計調査でみても賃金水準の低下傾向は明らかである。同調査(一般労働者)の所定内賃金を労務構成の変化の影響を除いた推計値で1997年と2009年を比較すると、全産業・規模計で7.0%減少、1,000人以上規模で5.8%減少、10〜99人規模で9.1%減少している。
4.デフレ下の厳しい勤労者生活
家計調査の賃金(実収入)と支出(消費)の動きをみてみると、賃金の減少にあわせて消費も減少していることがはっきりとわかる。1997年と2009年を比較すると、実収入は12.9%減、可処分所得も13.9%減少したのに対して、消費支出は10.8%の減少となっている。消費支出の減少幅が小さいのは、生活上必要な支出はすぐには削れないことを表していると考えられる。
5.厳しさが続く雇用情勢、若年層の雇用問題は深刻な状況
完全失業率は2010年6月の5.3%から徐々に低下し、9月は5.0%となったもののその水準は高い。また、有効求人倍率も0.5倍台となっており、依然として厳しい雇用状況が続いている。また、雇用形態別に4〜6月期の雇用者数(労働力調査)をみると、正規労働者は前年同期比2.4%減少したのに対して、非正規労働者は3.4%増加し、相変わらず非正規化の動きが続いている。しかし、派遣労働者はこの間激減し、2008年の10〜12月期には146万人であったものが2010年4〜6月期には90万人となった。
学生の就職活動の厳しい様子が伝えられており、高卒では、2011年春の卒業の有効求人倍率は0.67倍で前年同期を0.04ポイント下回り、調査開始(1985年3月卒)以来6番目に低い結果となっている。また、若年層(25歳以下)の失業率(9月)は若干下がったとはいえ8.0%に達し、失業者数は44万人(季節調整値)に達するなど若年層の雇用の深刻さがみてとれる。
6.ワーク・ライフ・バランスの実現めざし時短を
所定外労働時間は、これまでのピークに比べれば1割以上低い水準にあるが、2010年に入り 2ケタの増加基調(産業計)となっている。9月は6.3%と低い増加幅となった。これは、製造業の増加が20.4%とやや落ちついたためである。製造業は3月に61.6%増となるなど猛烈な勢いで所定外労働を増加させてきた。
賃金不払い残業もなくならない。2009年度の賃金不払い残業の是正企業は1221社、支払総額は116億円超となった。また、有給休暇の取得率も相変わらず低く2009年は47.1%にすぎない。有給休暇の取得率は、企業規模が小さいほど低くなり、産業別には、建設、卸・小売、サービス産業などで低い。
連合は、2010年に減少した労働時間をもとの長時間労働に戻させないことを提唱したが、ワーク・ライフ・バランスを実現するためには引き続きこの運動を推進するとともに、労働時間管理の徹底、不払い残業の撲滅などをはじめ、長時間労働を是正する取り組みを展開する。
7. 北海道の経済情勢
北海道内の今秋の経済概況について、総括的には「依然として厳しい状況にあるものの、持ち直しの動きがみられる」とされている。政府の景気対策による効果もあり個人消費、住宅建設、雇用面で持ち直しの動きが見られ、企業倒産件数や負債額についても非常に悪化していた昨年を下回っているが生産活動においては足踏み感が見られるとされている。自動車、電気においてはエコ関係補助金による特需により大きなプラスとなっているが、好調後のひずみが生じる時期に入ることから不安感は払拭できない。
北海道経済戦略のキーワード「健康・環境・観光・IT」に添った早期の施策展開及び、それらとリンクするしっかりとした雇用戦略が求められる。
特に、一次産業と発展型として注目される六次産業構築の準備、環境政策や国際化への対応など、北海道の特性を活かした政策の展開が待ったなしの状況といえる。
8. 北海道の雇用情勢
前期(7−9月)完全失業率は5.0%、10月の有効求人倍率は0.45倍となり、昨年1月から20ヶ月連続の0.3倍台を脱したものの全国と比較すると厳しい状況が続いている。また、3割がパート求人であることから実質的な雇用情勢の改善とは言い難い状況にもある。特に、新規学卒者を含め若年層や女性の就職が厳しい状況となっている。
昨年から大きな問題となっている新規学卒者の就職内定も10月末現在、高校生では37.1%(文科省発表33.6%)に止まるとともに、来春高校卒業の就職希望者は8,926名だが求人倍率は0.61倍となっている。
大学卒業者では、北海道・東北圏で内定55.6%(9月末現在)と昨年を下回っており、就職率も昨年の84.9%を下回る80%弱と予想されている。
昨年の経緯から新卒者への支援策も「就職サポーター配置」「トライアル雇用」「新卒応援ハローワーク」など多数講じられているものの、企業の採用予定数の減少などを鑑みれば来春の就職も一段と厳しいものと想定される。
U.2011春季生活闘争の具体的な展開
1.取り組みの柱
(1)全労働者を対象に適正な配分を
連合は、2011春季生活闘争を「すべての労働者の処遇改善」にむけた2年目の闘いと位置付け、配分を求め、より社会性を追求した運動を展開する。そのことで、デフレからの脱却を図り、労働者への配分の歪みを是正し、個人消費を喚起、経済の活性化を図っていく。
こうしたマクロ的な観点から、すべての労働者のために1%を目安に配分を求め、労働条件の復元・格差是正に向けた取り組みが必要と考える。
更に、経営者団体ごとに直面する課題の共有化のための労使協議を進め、労使合意が得られた内容については政府を含めた社会的合意形成を図ると共に、国民生活や産業政策の観点からの施策展開を求めていく。同時に技能の継承をはじめ現場の総合力を高めていくため、人づくりの観点から現在、政府がすすめている「実践的な職業能力育成制度の導入(日本版NVQ)」の論議にも積極的に参加・協力していく。
また、社会的キャンペーンなどの展開によって、非正規労働者の取り組みや配分追求の重要性について、広く社会へ波及をさせていく。
(2) 共闘連絡会議を中心に総がかりで要求実現を
5つの共闘連絡会議を中心に、構成組織・地方連合会などによる重層的な共闘態勢を構築し、総掛かり体制での取り組みを積み重ね、要求実現をめざす。パート共闘を軸に「非正規共闘」を新たに設置し、非正規労働者の正規化、処遇改善に向け、取り組みを推進する。また同時に、共闘連絡会議態勢のもとで中小共闘を一層強化し、中小企業労働者の職場と雇用を守り、規模間格差を是正する取り組みを連合全体の取り組みとしていく。
(3) 政策・制度を「運動の両輪」として取り組みの強化を
こうした労働条件闘争と共に、「運動の両輪」として、勤労者全体の雇用・生活条件の課題解決にむけ、政策・制度の取り組みを推進する。取り組みが時期的に一致しない面があるとしても、国民生活の維持・向上にとって経済・社会基盤の確立は不可欠であり、各種協議を通じて政府にはこの面からの施策遂行を求めていく。
具体的には、経済の活性化と雇用増加につながる予算編成を求めるとともに、9月発表の「新成長戦略実現に向けた3段構えの経済対策」等、「雇用を基軸とした経済成長」の具体化の促進、社会保障の充実など生活の安定・向上策を強め、雇用と生活の先行き不安の解消をめざす。また、労働法制見直しの取り組みとして、労働者派遣法や今後大きな課題となる有期労働契約に関する法制度の見直し等に関する取り組みも強化する。
(4) ワーク・ライフ・バランスの実現を
政府、経営者団体、労働組合で合意された「ワーク・ライフ・バランス憲章」をもとに「仕事と生活の調和推進のための行動計画」が策定されたのを受け、連合は 「ワーク・ライフ・バランスの具体的取り組み」を確認した。以上の方針にもとづき、雇用の維持・創出の観点も含めた総実労働時間の短縮と割増率の引き上げ、安全・衛生対策、子育て支援策などについて職場における取り組みを強化し、政策・制度の実現に向けた行動の展開でワーク・ライフ・バランスの実現をはかる。
2. すべての組合が取り組むべき課題(ミニマム運動課題)
すべての組合が共闘して取り組む課題として、以下の四つの項目を「ミニマム運動課題」として設定し、労働組合運動の求心力を高めるとともに、交渉結果の社会的波及をめざす。
◇ 賃金カーブ維持分の確保
◇ 非正規労働者を含めた全労働者を対象とした賃金をはじめとする待遇改善
◇ 企業内最低賃金協定の締結拡大と水準の引き上げ
◇ 総実労働時間の縮減、時間外・休日労働の割増率の引き上げ等
3. 具体的な労働条件の要求と取り組み
連合は、すべての労働者の生活を維持・向上するためには、成果の適正な配分を追求し、家計と企業の分配のバランスの歪みを修正・解消することが不可欠と考える。それがデフレ脱却への道であり、個人消費の回復、働くモチベーションの向上につながり、産業・企業競争力の強化をもたらすことになると考える。
われわれは、こうしたマクロ的観点から、すべての労働組合が1%を目安に賃金を含め適正な配分を求めていく。なお、産業・企業によってそれぞれおかれた環境には違いがあることについて相互に理解し合う。
(1) 賃金をはじめとする労働条件引き上げ
@賃金の維持・復元の取り組みについて
マクロでみて下がった賃金を近年のピーク時の水準にできるだけ早く戻すという観点から賃金水準の復元を追求する。
@)賃金カーブ維持をはかる事に全力を挙げ、所得と生活水準の低下に歯止めをかけるとともに、より賃金の水準を重視(絶対額水準)した取り組みを徹底し、個別賃金水準の維持をはかる。また、賃金制度が未整備な組合は、産別の指導のもとで整備に向けた取り組みを強化する。
賃金制度が未整備な組合は、連合が示す1歳・1年間差の社会的水準である5,000円(*1)を目安に賃金水準の維持をはかる。
A)低下した賃金(*2)水準の中期的な水準の復元・格差是正の観点から、取り組みを進める。
註(*1)賃金構造基本統計調査から全産業・規模計(組合員の基本賃金ベース)の1歳・1年間差は、5,000円(時間給では30円:月所定労働165 時間で計算)程度と推計する。
(*2) 厚労省・毎月勤労統計調査では、1997年と2009年で比較すると、一般労働者で5.1%減となっている。同・賃金構造基本統計調査では、平均所定内賃金(労務構成の変化の影響を除く)で1997年と2009年を比較すると、全産業・規模計で7.0%減少している。
A生活・職務関連手当等の引上げ
あらゆる労働条件を点検し、労働条件の復元や適正な成果の配分の観点から必要な取り組みを進める。
B企業内最低賃金の取り組みの一層の強化
@)全労働者の処遇改善のために、企業内最低賃金協定の締結拡大と水準の引き上げをはかることが必要である。このため、未締結組合は協定化の要求を行いすべての組合で協定化をはかる。こうした取り組みの強化で法定最低賃金へ連動させていく。
A)企業内最低賃金は、その産業に相応しい水準で協定し、その協定をもとに特定(産業別)最低賃金の水準引き上げに結びつけていくことが必要である。同時に、介護やサービス産業など第三次産業分野の新設をはかっていく。
C18歳高卒初任給の参考目標値…… 163,000円
産別方針をふまえ、初任給の決定に対して積極的に関与していく。
D生活防衛の観点からの一時金水準の確保・向上
一時金の水準は回復が伝えられているが、産業・単組別で見ればバラツキは大きく、生活防衛の面からみて問題を抱えているところも多い。基本的には、生活の基礎である月例賃金の維持・改善を最優先した闘争を推進していくが、一時金も生活給の補填部分でもあることから、一時金を含めた年間収入の確保・向上に努めていく。
(2) 非正規労働者の労働条件改善の取り組み
非正規労働者の労働条件改善の取り組みは、パート共闘を中心に、新たに「非正規共闘」を設置し、取り組みを展開する。
@非正規労働者に関するコンプライアンスの徹底については、すべての組合が取り組む。
A非正規労働者の正規化の促進をはかるため、正社員登用制度の創設をはかるとともに、パートタイム労働者だけでなく、派遣労働者等間接労働者を含む非正規労働者の労働条件改善の取り組みを展開する。
B非正規労働者の労働条件を正規労働者に近づけるために、均等・均衡を踏まえて時間給ベースで正規労働者を上回る賃金の引き上げ、福利厚生の適用・充実を追求していく。
(3) 規模間格差の是正、中小の取り組み(中小共闘センターの取り組み)
中小企業を取り巻く状況は大変厳しいが、企業数の99.7%、従業員の約7割を担う中小企業の経営基盤の安定とそこで働く労働者の労働条件の向上、人材の確保・育成は日本経済の健全な発展にとって不可欠な課題であり、これまで以上に「中小共闘」、構成組織の力を合わせて格差是正・底上げの取り組みの強化をはかる。同時に、公契約基本法・公契約条例の制定、下請法等に関する取り組みを強化し、中小企業労働者の生活や労働条件等を確保する。
(4) 男女間の賃金格差是正と均等法の定着・点検の取り組み
@男女間の賃金格差の是正
@)女性の昇進・昇格の遅れ、仕事の与え方が男女で異なることなど、男女間の賃金格差の背景と考えられる状況を踏まえ、女性に対する研修の実施や女性の少ない部署への優先配置など、ポジティブ・アクションを推進するよう、労使協議を行う。
A)生活関連手当の支給における「世帯主」要件の廃止に取り組む。
B)各単組の賃金データに基づいて男女別の賃金分布を把握し、問題点を点検、改善へ向けた取り組みを進める。
A改正男女雇用機会均等法の実効性の確保など、改正法の定着・点検
@)配置や仕事の与え方などの男女の偏りの点検と是正
A)昇進・昇格など基準の運用で、男女に偏りが生じていないかの点検と是正
B)妊娠・出産を理由とする不利益取扱いの点検と解消
C)セクシュアル・ハラスメント防止措置の実効性担保
(5) ワーク・ライフ・バランス実現のための取り組み
@総実労働時間短縮の取り組み
減少した所定外労働時間がもどりつつあるが、もとの長時間労働にもどさせないことなどにより、雇用の維持・創出につなげる。同時に、産業の実態等を踏まえた総実労働時間短縮の取り組みを展開する。
@) 健康を確保する観点から過重労働を是正する必要がある。このため、労働時間の上限規制(特別項付き36協定)を徹底し、その範囲内に収めることを徹底する。また、インターバル規制を設け、終業と始業の間の睡眠、食事などの生活時間を確保する。
A) 休日増をはじめとする所定労働時間の短縮、労働時間管理の徹底など、産業の実態に合わせた取り組みを推進する。なお、年次有給休暇の取得促進の取り組みを強化する必要があるが、取り組みにあたっては労働時間等見直しガイドライン(*3)も活用する。
B)中期時短方針(最低到達目標)の取り組み
◇年間所定労働時間2000時間を上回る組合は、2000時間以下とする。
◇年次有給休暇の初年度付与日数を15日以上とし、有給休暇の取得日数の低い組合員の取得促進をはかる。
◇時間外労働等の割増率が法定割増率と同水準にとどまっている組合は、上積みをはかる。
C)割増率の引き上げ
労基法改正に伴う労働協約整備への対応方針にもとづき、割増率については、以下の水準をめざして引き上げをはかり、代替休暇制度については導入しないことを基本とする。また、時間単位の年次有給休暇の取得については、日単位の取得が阻害されないことを前提に、労使協定の締結を進める。
◇時間外労働が月45時間以下30%以上
◇時間外労働が月45時間超50%以上(対象期間が3ヵ月を超える1年単位の変形労働時間制は、月42時間超を50%以上)
◇休日50%以上
註(*3) 政府は、年次有給休暇を取得しやすい環境の整備を図ることを目的に「労働時間等見直しガイドライン」(労働時間等設定改善指針)を改正し、2010年4月1日 から適用した。このガイドラインは、労働時間等の設定の改善を図るに当たり労働者と十分に話し合うことを求め、年次有給休暇の取得状況を確認する制度の導入や取得率向上の具体策の検討、取得率の目標設定、全労働者の長期休暇取得制度の導入など事業主が取り組む事項を定めている。
A両立支援の促進(改正育児・介護休業法、改正次世代育成支援対策法)
@)2012年6月末まで、3歳までの子を養育する労働者に対する短時間勤務制度と所定外労働の免除制度、介護休暇制度の導入が猶予される100人以下の企業について、積極的な制度導入に取り組む。
A)改正育児・介護休業法の定着に向け、以下の課題に取り組む。
◇契約期間が1年以上の有期契約労働者への適用を促進する。
◇育児休業、介護休業、子の看護休暇、短時間勤務、所定外労働の免除、介護休暇の申し出や取得により、労働者が解雇されたり、昇進・昇格の人事考課等で評価対象としない等不利益取り扱いを受けないよう、労使協議を行い、法の趣旨を徹底する。
B)改正次世代育成支援対策推進法の2011年4月施行(101人以上300人以下の企業の行動計画策定が義務化)を踏まえ、企業等の行動計画策定に積極的に対応する。行動計画策定では、@育児や介護を行う労働者を対象とする「両立支援のための環境整備」、A全ての労働者を対象とする「働き方の見直しに資する労働条件の整備」など、ワーク・ライフ・バランスの推進に向けた労働組合の方針を明確にし、労使協議を通じて、計画期間、目標、実施方法・体制等を確認する。
(6) ワークルールの取り組み
@労働関係法令の遵守の徹底
正規労働者はもとより、パート・有期契約・派遣・請負労働者等について、労働者派遣法、パート労働法や、「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」をはじめとする労働関係法令の遵守を徹底する。
A快適な職場づくり
労働災害のリスクを低減し、快適な職場づくりを推進するとともに、長時間・過重労働対策、メンタルヘルス対策、パワーハラスメント対策なども含め安全配慮義務の履行に向けた取り組みを進める。
また、職場における受動喫煙防止措置を事業者の義務とする労働安全衛生法改正の議論が進みつつある。その内容は、職場の全面禁煙もしくは、一定の条件を満たす空間分煙を求めるものであり、法施行前に職場における受動喫煙防止策を点検し、労使協議によって改善を求めていく。
B65歳までの雇用確保
2011年度から、高年齢者雇用安定法における300人以下の企業に対する経過措置(労使協議が調わない場合は、就業規則で対象者の基準設定ができる)が切れるため、対象となる組合は、希望者全員が65歳までの就労が可能となる制度の確立に向け労使協定を行なう。同時に、働きやすい職場を目指し労働環境の整備をはかるとともに、組合員化を推進する。
C障がい者雇用の促進
障がい者雇用を進めるため、職場における障がい者の実雇用率を点検し、それが法定雇用率(1.8%)に達していない場合は、その達成を労使協議で求めるとともに、障がい者が働きやすい職場づくりへの取り組みを進める。
4. 「運動の両輪」としての「政策・制度実現の取り組み」
「2011 年度政策・制度実現の取り組み」と「2011春季生活闘争における賃金・労働条件改善の取り組み」を「運動の両輪」として、すべての労働者を対象にした生活改善・格差是正の運動を強力に進める。
具体的には、春季生活闘争との関連で取り組むべき以下の政策課題の実現をめざす。
@デフレ脱却・消費回復に資する経済対策
・新成長戦略の推進による新たな雇用創出と安定的な名目成長の実現
・地域活性化に向けた中小企業・地場産業・農林水産業の育成
A労働者派遣法改正案の早期成立
B中期的な視点に立った最低賃金引き上げの実現
C求職者支援制度(トランポリン型の「第2のセーフティネット」)の確立
D有期労働契約の労働者保護のルールについての法整備
E公正な取引関係の実現
・公契約基本法と公契約条例の制定
F税制改革
・所得再分配機能の強化及び不公平税制の是正
・納税者権利憲章の制定と社会保障・税共通の番号制度の導入
G労働基本権の回復など民主的な公務員制度の確立
これらを強力に推進するため、政府との各レベルでの政策協議(「政府・連合トップ会談」、 「政府・連合定期協議」、「省庁別協議」)や民主党との政策協議などを通じて意見反映を行う。また、労働者派遣法改正案の早期成立や求職者支援制度の確立に関する世論喚起に向け、中央集会・街頭宣伝を含む各種広報活動を精力的に展開する。
なお、地方連合会における政策・制度実現の取り組みのヤマ場は2011年2月〜3月(2011年度地方予算編成)となる。地方連合会においても「運動の両輪」や2011年4月の統一地方選挙との連携を意識し、早期に実施可能な政策課題に取り組みつつ連合本部・構成組織と一体となった総合生活改善闘争を推進する。
5.2011 「地域ミニマム運動」の取り組みとミニマム設定
2010年度の地域ミニマム賃金実態調査には、36組合・2,244人が参加した(昨年度は28組合・1,411人)。連合北海道の地域ミニマムは、「全産業・男」の第1四分位(低い方から25%にあたる値)を設定条件としてきた。
2011地域ミニマムの設定にあたり、2010年度賃金実態調査に基づく主要年齢別ポイント賃金を2010年設定額と比較し、また北海道における世帯員別標準生計費、および生活保護費、また連合リビングウェイジ調査における北海道の最低生計費144,000円、高卒初任給147,000円等を参考とした。
これらの結果を踏まえ2009年度調査賃金と2010年度調査賃金を比較したところ、前年に比べ20歳ポイントのみ3,700円低下したが、25歳以上から40歳ポイントまで全て1,400円〜5,800円引き上った。
そのため、20歳のミニマム設定額を据え置きで151,400円とし、また25歳・30歳ポイントは昨年の設定額を上回る調査結果が出たため、20歳以上から40歳までの1歳1年間差 を4,500円としてそれぞれ設定した。
【2011地域ミニマム設定】 全産業、男子、第1四分位
151,400円/20歳 173,900円/25歳 196,400円/30歳
218,900円/35歳 241,400円/40歳 ※1歳1年間差 4,500円(昨年比+700円)
6.北海道の中心的な取り組み
2011春季生活闘争は、昨春の取り組みを更に進化させることが強く求められる。
北海道においては、経済情勢・雇用情勢が回復したとは言い難い状況が続いているが、特に、非正規労働者の処遇改善に向け、全ての産別や地域が連携を強め一体となって取り組まなければならない。そのためにも「総合生活改善闘争」の旗を掲げ、産別・企業内に止まらず、未組織労働者や地域住民を巻き込んだ取り組みへと発展させなければならない。
2011春は統一自治体選挙もある。その闘いと連動させ、デフレ循環からの脱却、経済・雇用の閉塞感打破、「希望と安心の社会づくり」に全力を尽くすこととする。
(1) 総合雇用対策本部と一体となった政策・制度要求の実現に向けた取り組み
@「新規学卒者・非正規労働者に関わる社会的キャンペーン行動」の取り組み
・政府・自治体、事業所等への要請と各界連携による世論喚起・PR活動
・新規学卒者の就職対策に重点をおいた、全道オルグ・街宣活動
(1月下旬以降、各地域開催の「春闘討論集会」に合わせ自治体等訪問)
A格差是正(季節労働者・非正規労働者の処遇・待遇改善)に向けた取り組み
・セーフティネット機能の強化に向けた学習会と相談体制確立
・組織化対策と連動した情報交換・集会などの開催
・集団的労使関係構築、労使協議による協定・協約締結運動の強化
・「官製ワーキングプア」課題の取り組み
・公契約条例制定、公正取引の推進に向けた地方議会対策
・地域最低賃金の引き上げと産別・企業内最低賃金引き上げ
B公務労働者の労働基本権、労働者派遣法など労働法制に関わる取り組み
C季節労働者対策に関する取り組み
(2) 組織拡大に向けた取組み
賃上げと同様、今春季生活闘争では非正規労働者との均衡・均等待遇の実現に向けた取り組みも重要となる。非正規労働者の処遇改善を意識した要求立て、交渉の強化と併せ、連合北海道としての組織拡大目標(2011年度8,800名拡大)の実現に向けて以下を重点に取り組むこととする。
@産別・単組内における非正規労働者を含めた組織化・組織拡大運動を強化する。
Aパート共闘と連携し、未加入職場における組合作り・組織化を進める。
BNPO法人「職場の権利教育ネットワーク」と連携した労働者教育の強化
そのために、組織拡大推進特別委員会において提起される「組織拡大方針」に取り組むこととする。
V.闘いの進め方
連合は、春季生活闘争における相場波及効果を高め、格差是正、底上げをはかるため、賃金カーブ維持分、回答、賃金水準などの情報開示を積極的に行い、中小や未組織労働者の賃金改善、処遇改善につながるよう運動を展開してきた。こうした運動をさらに前進させるべく共闘連絡会や有志共闘、新たに設置する非正規共闘など、それぞれの役割を積極的に果たすこととする。また、非正規労働者に関わる要求、回答状況については、産別を通じて集約することとした。
3月の最大のヤマ場に回答を引き出す「第1先行組合」と、その翌週の決着をめざす「第2先行組合」を新たに設定し、相場形成と波及をはかる。
賃金水準の形成をはかり、賃金の社会的横断化を追求する春季生活闘争を展開していく。加えて、非正規労働者を対象にした社会的キャンペーンの展開や、最低賃金等の引き上げ等によって全労働者の底上げに向けた取り組みを強化する。
■北海道段階の取り組み■
上記、または今後補強される本部方針を踏まえ、北海道としての取り組みを展開する。
(1) 連合北海道2011春季生活闘争本部の設置
「連合北海道2011春季生活闘争本部」を設置する。
(2) 中小・パート共闘、産業別部門連絡会議の強化
@中小・パート共闘の強化により、地場での取り組みを強化する。
特に、地域においては「全ての労働者を対象に」とすることを意識し、地域全体の取り組みとなるよう創意工夫する。そのために、各経済団体や各業界、自治体などに対しての要請や地域に向けても労働側の主張を展開するなど環境整備に努めることとする。
賃金引き上げについては、「給与総額1%の引き上げ」「パートの時給40円引き上げ」「1歳1年間差5,000円」「18歳高卒初任給163,000円」等の本部目安を踏まえ、具体については今後「闘争本部」「中小・パート労働条件委員会」で検討の上、別途提案する。
A2010春季生活闘争における産業別部門連絡会開催の成果を更に進化させるべく、連絡会内の合意形成を図り、闘争態勢・単組指導の強化、エントリーへの結集、情報の開示などを進めオール北海道体制を構築する。
Bまた、産別は政策・制度の取り組みと連動させ、全ての単組において非正規労働者に係る要求の提出を求めるとともに、単組所在地域の取り組みに参加するよう指導強化を図る。
C地場の単組、地域ユニオンにおいても「統一要求書(要請書)」等を活用し、全ての労組で賃金処遇の改善を求める行動を展開することとする。
(3) ヤマ場の集中化に向けた取り組みの強化
@ヤマ場の集中化に向け、闘争委員会等を開催し取り組みを検討する。
A共闘会議・部門会議を構成する産別は、回答引き出し時期ごとに、情報の開示を積極的に行い、より波及力を高めていく。
B地場集中決戦方式を踏襲し、集中回答日・ヤマ場の設定など、タテヨコ連携した取組みを展開する。
C労働基本権にこだわる闘争を目指し、闘争方針の徹底や教育活動を強める。産別は、地域の取り組み強化に向けて単組オルグを実施するなど指導を強める。
D地協・地区連合には、「闘争委員会」を設置し、地場中小組合の参加拡大と指導・支援体制の確立、春闘臨時専従を配置するなど地場中小労働組合への支援体制を強化する。
E地場中小単組(直加盟・地域ユニオン)に対してもエントリー参加を求め、情報開示に加わってもらうよう要請する。
F官公労働者は、「連合北海道官公部門連絡会」を中心に、民間と一体となった組織行動を展開するとともに、民間の交渉と連動する時期に要求・交渉を配置するよう連携を強める。
特に、地公三者との連携を強め、関係機関交渉の環境づくりを図る。また、自らの足下に存在する「官製ワーキングプア」「公契約・公正取引」問題については、学習会を開催するなど積極的に取り組む。
(4) 非正規労働者の処遇改善のための社会的キャンペーンと労働相談の実施
「連合北海道非正規労働対策委員会」と連携し、非正規労働者に関わる「職場から始めよう運動」等の取り組み(10月中〜)や放送媒体等の活用、地域での街頭宣伝等による社会的キャンペーンを展開するとともに、労働相談体制等も強化する。また、ヤマ場(3月中旬)にかけては全道総決起集会をはじめ各地域でも集中行動を展開する。
(5) 闘争日程
「2011春闘開始宣言中央決起集会」(2011.2/10)をもって2011春期生活闘争が本格スタートする。
@要求書の提出
産別方針に基づき、要求書は原則2月末までに提出する。(地場は3月末までに提出)
A集中回答日の設定
本部第1回戦術委員会において次の通り回答ゾーンが示されたことから、その期間を参考にして連合北海道第2回闘争委員会で決定する。
・3/14〜20 第1先行組合回答ゾーン(最大のヤマ場は3/16−17 )
・3/22〜27 第2先行組合回答ゾーン
・3/28〜4/1 中小集中回答ゾーン
・4/11〜15 中小回答ゾーン
・5〜6月以降の闘い方については別途検討する
B産業別部門連絡会
部門会議の取り組みについては、中央闘争委員会確認を受け、産業別部門連絡会(1-2月)の中で検討し「当面の取り組み」で決定するが、集中回答日前に2回、回答後にも総括的会議を持つなど連絡会としての意思統一を図る。また、今回取り組む「要求事項アンケート」に基づき、単組交渉の状況・結果などを把握し指導・連携を強化する。
C中小・パート共闘
共闘会議の取り組みについては、中央闘争委員会確認を受け、会議の中で検討し「当面の取り組み」で決定する。(2月)
第1回中小・パート労働条件委員会 12月9日(木)
D春季生活闘争地域討論集会の開催
各地協は、1月〜2月に春闘討論集会を開催する。
以下の3地協は、本部「北海道ブロック春季生活闘争推進会議」と連携して開催する。
◆渡島・檜山地協 2011年1月29日・30日
◆十勝地協 2011年1月29日・30日
◆空知地協 2011年2月5日
E各地域で「春闘討論集会」を開催する
その際、「新規学卒者支援」「非正規労働者の処遇改善」等の取り組みと連動するよう配意する。
(6) 相場波及、情報公開体制の強化等
@集計と公表を工夫し、相場波及効果を高める取り組みを展開する
Aマスコミ対応を強化する
B経営者団体との協議の促進と連合の主張の展開
C労働基本権にこだわる交渉を展開する。
D地場中小の自主交渉を促進し、早期解決をめざす。また、効果的な波及が行われるよう地場集中決戦
方式に取り組む。(エントリー組合の登録は2月中)
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