環境目的税(産業廃棄物循環促進税)に
対する連合北海道の対応について
第9回執行委員会(8.21)
1. はじめに
 
 道は、資源循環型社会を形成するため税負担を通じて、環境汚染物資の排出量の削減などに努めるよう誘導するとともに、特別の財政需要に対して、その財源に充てる法定外目的税として、「環境目的税」の導入を検討している。道が検討している環境目的税は、産業廃棄物に対する「産業廃棄物循環促進税」(産廃税)と化石燃料に対する「北海道地球温暖化対策税」(炭素税)の二つの税からなり、「産廃税」は第3回定例北海道議会(9月開会予定)に提案される予定である。一方、「炭素税」については、国が温暖化対策税の導入に向けた動向にある状況から、提案は見送られると見られる。以下、環境目的税とりわけ産業廃棄物循環促進税の制度・目的など概要とともに、産廃税に対する連合北海道の対応について、明らかにする。
 
2. 産業廃棄物循環促進税(以下、産廃税)の目的・内容等の概要について
 
 (1) 産廃税は、環境の世紀にふさわしい産業活動を構築するため、排出事業者に課税を行い、その税収を産業廃棄物の再生利用や適正な処理などに要する費用に充てる税であり、道内における産業廃棄物の排出・埋立の抑制や再使用・再生利用等の促進を図ることを目的とする、法定外目的税である。
 (注)産業廃棄物:事業活動に伴って排出されるゴミで、廃棄物処理法では20種類(汚泥、がれき   類、木くず、ばいじん、金属くず、その他)
 
 (2) 税制度の概要は次の通りである。
@ 納税義務者は産業廃棄物排出事業者(推計約24万)であり、道内の最終処分場又は中間処理施設への産業廃棄物の搬入量に応じて課税される。
A 税率は最終処分1トンにつき1,000円、中間処理焼却、油水分離は1トン400円、脱水、乾燥等は1トン700円、破砕、中和等は1トン1,000円。
B 税収の見込みは年間で約26億円(平成10年度実績から推計)で、新税の導入効果、産業廃棄物の発生・排出、減量化やリサイクルの状況を点検する必要があることから5年間で条例を見直すこととし、導入時期は平成15年4月1日としている。(一定の再生利用、または熱回収施設に搬入される産業廃棄物は課税免除)
C 産廃税収の使途は、産業廃棄物の排出抑制や循環的利用を促進する次のような費用に充てられる。未利用資源の再資源化等の研究開発や事業化支援、循環的利用施設への補助と廃棄物の資源化情報ネットワークシステム構築、循環的物流システムの構築への補助、不法投棄防止対策強化など。
 
 (3) 排出事業者の税負担分布の推計(平成10年度ベース)
 税収見込み約26億円の産業別の推計税収は、建設業が11億円(42%)、製造業が9億円(34%)、電気・ガス・水道業が2億円(8%)でこの3業種で22億円(84%)。また、産業廃棄物を年間1千d以上排出する多量排出事業者は約6億円(24%)と推計している。
 
3. 環境目的税等に対する連合北海道の基本的な考え方
 
 (1) 地球温暖化防止に向けた取り組みは喫緊の課題である。1997年の京都議定書で温室効果ガス削減目標が定まり、日本は98年6月に「地球温暖化対策推進大綱」を策定し、温室効果ガスの6%削減の国際公約の達成を目指している。温室効果ガスを削減するための方法には、「規制的手法」(法令により基準値と遵守事項を定め強制的に守らせる手法)、「経済的手法」(環境負荷の小さい生産形態や消費行動へ誘導する手法で、環境税・課徴金、排出量取引など)、「自主的取り組み」(企業・業界による自主的取組み)、「情報提供による手法」(環境意識の向上を目的とした普及啓発等)などがある。わが国が、温室効果ガス6%削減を達成するためには、様々な手法を有効に活用することは勿論、税制を活用した経済的な刺激や誘導策の導入を積極的に検討しなければならない状況にある。
 
 (2) EU諸国では90年代初頭から「環境税」の導入がはじまり、90年代後半には京都議定書で温室ガス削減目標が定まったことから、様々な手法を組合せながら「環境税」の導入が進んでいる。わが国では、中央環境審議会が本年(平成14年)6月に、「わが国における温暖化対策税制について」の中間報告で、「現在政府が検討をしている税制改革全体の中で、税制面から温暖化対策の取り組みが位置付けられるべき」だとして、「温暖化対策税を導入すべき」であるとの中間報告をとりまとめた。こうしたことから、温暖化対策の観点にたち「課税のあり方と使途」の両面から税制が見直される動きにある。
 
 (3) 環境目的税である産業廃棄物に関する税の他府県の状況については、三重県が2002年4月1日より既に導入し、岡山県、広島県、鳥取県及び北九州市は導入することを決定している。この他、検討中の地方団体は31都県である。(2002年6月現在)尚、産廃税を「全国的に一律・一斉に課税するのが良いか」、「地域の事情が異なるため、地方公共団体でそれぞれ課税を行うか」について、国の産業廃棄物行政に関する懇話会報告(2002年6月)では両論併記となっている。
 
 (4) 連合北海道は昨年(2001年)11月に、「2002年度道予算に関する要求と提言」の中で、環境税の導入を求めてきた。現在、道が導入を検討している環境税は、大量生産・大量消費・大量廃棄の社会経済システムは地球環境問題を発生させているとの認識の上に、「循環型社会の実現」「二酸化炭素の排出量削減」を通じて、環境重視型社会を実現しようとするものであり、連合北海道と共通の基本認識にたっており、その導入に向けた姿勢は評価できる。また、産廃棄税はクリーンな北海道、豊かな自然環境の北海道づくりという道独自の政策を国に依存せず推進する法定外目的税であり、地方分権の推進という面からも意義がある。
 
4. 北海道に於ける産業廃棄物の現状と課題について
 
 (1) 北海道における産業廃棄物の現状
 北海道における産業廃棄物は、1988年に2,364万d、1994年に4,293万d、1998年度に3,842万dへと、10年ほど前と比較して大幅に増加している。景気の低迷・産業構造の変化に伴い変動するが、傾向的には増加すると見られる。
 産業廃棄物の処理状況を見ると1998年度で再生利用が約1,500万d、減量化(脱水・乾燥など)が約1,100万d、自己保管等が約960万d、埋め立て処理が約270万dである。また、同年の産業廃棄物の種類別排出状況は、総排出量の約半分は動物の糞尿など「農業系廃棄物」、以下、「建設廃棄物」が約15%、「電気・ガス・熱供給業、水道業」が約14%、「食料関連業」が約7%となっている。
 
 (2) 産業廃棄物に関わる道の現行施策と課題
 地球環境の保全を図りながら産業活動を行うためには産業廃棄物の排出抑制やその再生利用など「循環型社会」を実現することが重要である。北海道は「ごみゼロ・プログラム北海道」(2000年3月)や「北海道廃棄物処理計画」(2001年12月)を策定し、ごみの発生・排出の抑制、リサイクルの推進などに取り組んでいる。
 産業廃棄物に関わる道の現行施策は、@排出抑制施策として「多量排出事業者に対する産業廃棄物処理計画の作成指導」等、A循環的利用施策として、再生利用拡大、リサイクル運動、農業系資材のリサイクル、建設副産物のリサイクル等、B適正処理推進施策として、排出事業者等の施設等の監視指導、家畜ふん尿処理施設の整備推進、分別解体技術資料の提供と普及啓発などがある。しかし、前述の通り産業廃棄物は増加傾向にあり、現行の施策の延長で「循環型社会」の実現を図ることは困難であることから、道は、産廃税を導入し、その税収を活用して、産業廃棄物のより一層の減量化・資源化を進めようとしている。新税により、平成10年度時点で埋め立てられている最終処分量の50%削減(270万d→136万d)、再生利用率の向上(39%→70%)等が目標とされている。
 
5. 連合北海道の産業廃棄物循環促進税導入に対する評価と見解について
 
 (1) 産業廃棄物循環促進税の評価について
 大量生産・大量消費・大量廃棄の社会経済システムは、豊かな生活や利便性をもたらした一方で、オゾン層の破壊や地球温暖化問題、資源の枯渇など招いている。また、ダイオキシン等人体に危険な物質も増大しており、これまでの大量に廃棄物を排出する産業活動を、「環境の世紀」にふさわしい産業活動へと転換する必要がある。
 産廃税は、排出者責任の原則にたち、事業者が排出する産業廃棄物に課税することを通じて、排出の抑制や再生利用が事業者の経済的負担を軽減するというインセンティブ(動機付け)となる。産業廃棄物の排出・埋め立ての抑制、再資源化をより一層推進するため、税制度を活用することは有効な手法と云える。都道府県で初めて産廃税を導入した三重県では、企業がリサイクルや減量化に大きく動き出しており、本道に於いてもその効果が期待できる。
 連合北海道は、法定外目的税である産業廃棄物循環促進税の導入は、有効な手法であり、その効果も期待できる新税であると判断する。なお、新税は道民の理解と協力のもとに資源循環型の「ゴミゼロ社会」を実現することが目的である以上、新税導入前から事業者が排出抑制・減量化に向けた取り組みに積極的に対応できるよう諸対策を講じなければならない。したがって、以下の必要な対策を新税導入の条件とし、道に見解を求めることとする。
 
 (2) 導入に必要な対策と意見について
@ 条例の制定から十分な周知期間を設け導入すること。
A 税の導入前に事業者が産業廃棄物の減量化・再資源化などに対応するための準備期間を確保するとともに技術開発の支援強化及びそのための設備投資等に対する助成制度・融資制度を明らかにし、前倒して実施すること(あらかじめ支援策)。
B 産業廃棄物の再資源化の促進に伴い発生する「資源ゴミ」の利活用を促進するため、企業と企業を結ぶ情報提供システムを構築すること。特に、多量排出事業者の産廃については、十分な対策を講じること。
C 産業廃棄物の発生・排出抑制、減量化、再資源化のマニュアルを策定し普及・啓発に取り組むこと。
D 他県からの産業廃棄物の道内持ち込みについては、「北海道における廃棄物の処理に係る指導指針」により厳格に対応すること。
E 税の活用の内容・税収実績等について、条例の中に説明責任を盛り込み、道民の理解と協力を得られるように努めること。
F 不法投棄対策を強化すること。
 
 (3) 産別に於ける取り組み
 事業活動に伴い排出される産業廃棄物の排出抑制・再資源化など、経営側に対し労働組合の立場から積極的に働きかける。その際、新税の導入前の予め対策を重視し、その対応に必要となる設備投資などにあたっては、各種制度資金を活用するとともに、労働諸条件の低下とならないように対応を図る。
以上
 
■参 考
 検討されている北海道地球温暖化対策税(炭素税)の概要
 (1)炭素税は、二酸化炭素の排出量が急激に増加し、その温室効果により地球温度化が進んでいることから、化石燃料に課税することで、二酸化炭素の排出量の削減に道民や事業者が取り組むように誘導・促進することを目的にしている。炭素税は、地球温暖化の主因である二酸化炭素排出量の削減に向けた、省エネルギー・新エネルギーの研究開発や普及促進、森林など北海道の豊かな自然環境の保全・整備の費用に充てられる。二酸化炭素削減の取り組みを強化し、道民の環境意識の高揚を図ろうとする狙いから検討されている。 (2)化石燃料にはガソリン、ジェット燃料、軽油、灯油、重油、石油ガスの石油系燃料の他に石炭、天然ガスがあるが、道の炭素税は、灯油、重油、石油ガス、天然ガス及び石炭の5品目を課税対象としている。一方、ガソリンには揮発油税、地方道路税が、軽油には軽油取引税が、ジェット燃料には航空機燃料税が、自動車の燃料となる石油ガスには石油ガス税がそれぞれ課税されており、課税の対象外である。また、鉄鋼生産など工業過程で還元剤として用いられる石炭はこれに代わる還元剤がないことなどから対象外とされ、価格競争力が低い国内炭も需要を確保する必要があることから課税対象外とされた。(3)税率は民生用で炭素1トン当たり200円で一世帯あたり年間平均負担額は約455円程度となる。産業用では炭素1トン当たり80円。課税期間は産廃税と同様の理由で5年間。税収規模は約10億9千万円と見込んでいる 。(4)なお、炭素税の導入時期については明記されていない。その理由は、現在、国において検討されている温暖化対策税と基本的性格が同一であることから、道独自で炭素税を先行導入する意義が小さくなるという背景からである。