(第29号) 2005年4月26日
政策調査情報  連合北海道 政策道民運動局

年金制度改革の取り組み


●与党の強行採決により成立した2004年改正年金法(第159通常国会)
 2004年の第159回通常国会で、多くの国民の反対を押し切って成立した年金関連法は、「空洞化」解消などの抜本改革が行われず、14年連続の保険料アップと大幅な給付削減の内容となっている。しかも、基礎年金の国庫負担1/2への引き上げ等も先送りされており、基礎年金の税方式化や年金制度一元化など、抜本改革の早期実現が求められている。
■主な内容
@厚生年金保険料2017年まで毎年0.354%引き上げ18.3%で上限固定。
A給付水準を被保険者数の減少を反映して大幅に削減するマクロ経済スライド導入。
B在職老齢年金の改善、育児休業期間中の保険料免除の拡大や離婚時の年金分割導入。
C基礎年金の国庫負担1/2への引き上げ2009年度までに段階的実施と実質先送り。
Dパート労働者等の厚生年金への適用拡大先送り。

●その後の動向
・経済財政諮問会議「社会保障費総額管理」の導入や年金一元化の在り方など議論。
・「社会保障の在り方に関する懇談会」(2004年7月30日、内閣官房長官のもと設置)
  これまで7回の会議を開催し、税と年金・介護・医療の各制度、生活保護、少子化対策等社会保障全般の見直しなど協議。連合から笹森会長が参加。2006年度を目途に結論とりまとめ予定。
・年金制度の抜本改革に向けた連合と民主党との協議 
   〜 基礎年金の税方式化による一元化などを確認 〜  資料参照「確認事項」
・「社会保険庁の在り方に関する有識者会議」(略称;有識者会議)
  社会保険庁の改革を議論する。労使、学者、マスコミなどで構成。連合は草野事務局長が参加。第1回会議を8月1日に開催しこれまで8回開催。
・社会保障に関する「両院合同会議」
  4月1日衆参両院の本会議での決議に基づき設置を確認。第1回合同会議が4月22日に開催され、年金空洞化、無年金者問題が議論された。社会保障の在り方に関する懇談会との関係などが重要な課題。


<2005〜07年度 政策・制度連合方針>

年金空洞化の解消と皆年金の確立に向け、基礎年金の税方式化や年金一元化を実現し、老後生活の基本を支える安心と信頼の年金制度を構築する。  

(1) 2004年の年金改正によって導入された、14年連続の保険料引き上げと「マクロ経済スライド」を改め、次の点を柱とした年金制度に抜本改革し、真の皆年金を確立する。
 抜本改革にあたっては、「社会保障の在り方に関する懇談会」における社会保障の見直しに関する一体的議論の中で具体的な改革案をまとめることとし、2008年9月まで(厚生年金保険料率が15%に達するまでの間)に実現する。

@ 基礎年金の「空洞化」を解消し、「皆年金制度」を再構築するため、2009年に全額税方式へ転換する。

a) 基礎年金の財源、1/2一般財源、1/3「年金目的間接税」、1/6事業主負担(社会保険料相当分)。
b) 「年金目的間接税」の導入にあたっては、現行消費税の欠陥是正措置を実施(インボイス方式の導入、軽減税率の措置等)。
c) 基礎年金を税方式に転換した場合の受給要件(略)
d) 全額税方式に移行するまでの間の経過措置(略)

A 介護保険その他の負担が増加する今後の老齢期の生計費の基本部分を担うものとするため、全給付期間を通じ、税・社会保険料を除く手取りベースで現役労働者賃金の55%の水準を確保する。そのため、2000年改正で削減された報酬比例部分の5%相当分、基礎年金を引き上げた上で、可処分所得スライドを復活させる。

B パート・派遣労働者や中小・個人事業所等のすべての雇用労働者の均等待遇と、年金の「空洞化」や違法な脱退等を是正するため、すべての雇用労働者が厚生年金に原則適用とする制度に改める。

a)当面は、適用基準を労働時間要件「2分の1(20時間)以上」、ないし年収要件「65万円以上」(給与所得控除の最低保障額)の何れかの要件に該当すれば、厚生年金を適用。また、5人未満および未適用業種の事業所についても厚生年金への強制適用とする。被扶養者の年収要件(第3号要件)は65万円とする。
b)基礎年金を全額税方式化するまでの間は、パート労働者等の厚生年金への適用拡大、被扶養者認定の年収要件の見直しで、極力、第3号被保険者の対象者を縮小する。

C 失業中も障害年金や遺族年金などの受給権を確保するため、厚生年金への「継続加入制度」を創設する。

a) 継続加入期間の保険料負担は2年間を限度に猶予し再就職後に追加分納。
b) 追納の保険料は、労使分、本人分(給付算定は半額)、免除制度(障害・遺族年金の対象)との3選択制。
c) 追納期間は猶予期間の2倍(4年)以内。

D 年金制度の一元化にあたっては、次の点に留意しつつすすめる。

a) 雇用労働者への厚生年金の完全適用を図った上で、2001年3月の閣議決定に基づく国家公務員共済年金および地方公務員共済年金の財政単位の一元化の実施を踏まえ、関係者の合意を得つつ、完全な情報公開のもとで、被用者年金の一元化に向け推進をはかる。
b) 納税者番号制度や消費税へのインボイスの早期導入などによる所得捕捉の徹底をはかり、自営業者の所得比例年金制度の創設を目指す。
c) 自営業者等の保険料負担(事業主負担)の在り方を整理し、被用者年金と自営業者の所得比例年金との一元化を展望する。

(2) 労使の参加による年金制度の実施・運用を実現する。

@ 年金積立金の運用など年金制度の運営に、保険料を負担している被保険者、事業主の代表が直接参加する協議機関を創設。

A 年金積立金は、逓減して、高齢化のピーク時でも給付総額の1年分程度とする。

B 年金積立金の運用にあたっては、以下の還元融資の実施で市場運用枠を削減するとともに、国債などの債券運用により元本確保、安定運用を基本とする。

a) 次世代育成支援策として、年金積立金から若者に対する低利子奨学金の貸し付け制度や、自己啓発費用への融資などを創設。
b) 労使が拠出した保険料を活用して建設した施設については、運用実態を抜本的に検討し、労使団体や自治体による利用計画等を含めて、国民資産として積極的な活用をはかる。

C 年金積立金管理運用独立行政法人の業務運営にあたって、次のとおりとする。

a) 被保険者と事業主の代表が運営に参加し、運用実績を含む業務の外部チェック機能を持たせる。
b) 四半期ごとの運用実績、融資実績等の情報公開を徹底する。

(3) 雇用と年金の接続を確保するため、次のとおり措置する。

@ 基礎年金の繰上げ受給減額率を、現行の5年で30%から、現在の平均寿命をより反映し25%へ早急に改善する。

A 在職老齢年金非適用者(労働時間要件3/4未満、共済年金受給者、賃金以外の収入の)、ある者との公平性を確保するため、現行の在職老齢年金制度を廃止し、総収入(賃金、高年齢雇用継続給付金、事業所得、家賃、配当・利子等)をベースに、年金額を調整する制度に抜本的に改める。

(4) 年金課税の見直しに伴う税収増は、年金財政に全額繰り入れる。

(5) 年金事務費については、年金保険料を充当する特例措置を直ちに廃止し、全額国庫負担に戻す。

(6) 遺族厚生年金の見直しについて、以下のように措置する。

@ 当面、遺族年金の支え手である被保険者の年収とのバランスをはかる観点から、年収850万円未満の遺族に支給される現行制度について、遺族となった者の年収に応じて、年収600万円程度から段階的に年金額を調整するしくみに改める。また、適用認定については、毎年の年収を基に認定する仕組みに改める。

A 遺族厚生年金の支給要件の男女差(男55歳以上)については、将来の遺族年金の在り方、方向性と整合性をはかりつつ、格差縮小に向けて見直す。

(7) 雇用労働者である国民年金第1号被保険者についても、育児休業を取得した際の保険料免除措置を導入する。

(8) 障害者年金について、次のとおり措置する。

@ 20歳以上で障害基礎年金を受給していない無年金障害者について、所得保障の対象を拡大する。

A 障害基礎年金の支給を、障害厚生年金にあわせて3級障害者からとし、給付水準を引き上げる。

(9) 年金保険料の徴収を徹底し、収納率の向上に努める。

@ 社会保険庁「緊急対応プログラム」に掲げるさまざまな保険料徴収の徹底策を確実に実施し、年金保険料の収納率の向上に向けて全力を挙げる。

A 国民年金第1号被保険者の保険料徴収業務を市町村の法定受託事務とし、国民健康保険料徴収との連動などを検討する。

B 市町村の税務事務との連携を強化し、所得がある者の強制徴収を徹底する。

C 市町村と連携し専門実務家の協力を得て信頼ある年金相談業務を充実する。

D 転職等に伴って年金保険料の未納や年金制度からの未加入状態にならないように、被保険者資格喪失の通知と国民年金第1号被保険者への切り替え促す通知を行う。

E ポイント制の導入による年金個人情報の定期的な通知にあたっては、加入者が具体的な給付見込み額を確認しやすい仕組みとする。

(10)賃金の後払いとしての性格と老後の生活保障としての機能を有する企業年金については、安心して確実な給付を受けられる制度を構築する。

@ 厚生年金基金の「代行」制度の廃止、および特別法人税を廃止する。

A 「確定給付企業年金法」については、受給権保護のため支払保証制度の導入などにより、本来の「企業年金基本法(仮称)へと抜本的に組み替える。その上で、将」来的には退職一時金と企業年金を包括する退職給付保護制度の制定をめざす。

B 税制適格年金の廃止に伴う他の企業年金制度への移行にあたっては、加入者および受給権者の受給権保護の観点から、円滑な移行のための十分な措置を講ずる。

C 確定拠出年金については、加入者が運用リスクを負うことから、企業年金の性格を踏まえ、受給権保護の視点から、事業主が従業員に対して導入時および導入後の継続的な投資教育を行うことを法律で義務づける。

D 確定拠出年金の運営管理機関の業務撤退に伴う資産移管手数料について、運営管理機関の責任であることを明確にする。

E 企業年金や退職金が手薄な中小・零細企業で働く労働者の格差是正をはかるため、中小企業退職金共済制度と勤労者財形制度の拡充をはかる。


■資料<民主党と連合との確認事項>

国民生活の根幹である国民皆年金制度を維持するため、全ての国民が信頼して負担 し、制度の適用を受ける、ゆるぎない制度をつくる。
1.基礎年金(最低保障年金)については、全額税方式による一元化を実現する。
2.二階部分については、負担と給付のあり方について、今後引き続き協議する。
3.納税者番号制度を早期に導入する。
4.全国民を対象とする年金制度の一元化を目指す。
   以上の方向を踏まえ、今後実務者レベルで協議する。以上を確認した。
 2004年9月28日

以上