(第28号) 2005年4月5日
政策調査情報 連合北海道 政策道民運動局
 
道州制に向けた支庁制度改革と市町村への権限移譲
に関わる「要求と提言」  〜道の回答〜
 
 3月10日に提出した、「要求と提言」に対する道の回答です。3月31日、道は支庁制度改革プログラムなど正式に決定しました。(これに対する見解は、後日発表)
1.道と市町村は対等の原則で協議し、市町村の実情を十分配慮する
 北海道町村会は「支庁制度改革」、「道州制に向けた市町村への事務・権限移譲方針」
 など道州制に向けた道の一連の取り組み方針に関し、「町村の実情に配慮すること
 なく道の一方的なスケジュールで行われている」と批判し、「その対応に苦慮」し
 ていると率直な意見を表明しています。現在、市町村合併に関わる対応に追われて
 いる市町村の実情については十分な理解が必要です。
  支庁制度改革や事務・権限の移譲が円滑に進められ、よりよい道州制が実現され
 るためには、道内における分権及び地域行政の主体である市町村の理解と協力が不
 可欠です。今後においては、道と市町村は対等であるとの立場に立ち、市町村の実
 情に配慮し、意見・要望を真摯に受け止め協議が進められるよう要請します。
■回答
 移譲方針(案)の検討に当たっては、移譲の基本的な考え方、策定のスケジュール、役割分担の考え方、移譲対象となる項目など、その段階ごとに、市町村に文書でご意見を伺うとともに、あわせて、各地域で意見交換会を開催し、議論を積み重ねてきたところです。
 また、市町村及び道民の方々からのご意見を踏まえて、さらに検討を進め、年度内を目途に、移譲方針を策定してまいりたいと考えており、策定後は、毎年度、具体的な協議を進め、協議が整ったものから、順次市町村に移譲してまいりたいと考えております。
 
 
2.市町村への事務・権限の移譲方針は凍結する
 これからの分権時代における基礎自治体の大きな課題は、より自治能力が高められ
る、行政体制の充実と強化にあります。市町村合併は、そのための一つの選択肢では
ありますが、広大な北海道では合併協議が多くの地域で破談しています。道は、将来
の基礎的自治体のあり方を模索している市町村の悩める実態について理解を示し、有
効な提言や助言を行っていません。まず、市町村合併先にありきではなく、多様な選
択肢による自治のあり方を確立することが優先されるべきです。市町村の自治のあり
方により事務・権限の移譲に関わる進め方、内容、手順も異なることになります。「合
併」だけでは、市町村の行政体制を充実・強化することは困難な状況にあると認識しています。
(1) 事務・権限の移譲について、道は、平成17年度から市町村に照会し、要望のあ ったものから市町村と協議し、整ったものについては平成18年度から移譲すると しています。平成17年度においては、4月から施行される合併新法のもとで、市 町村は、広域連合、自立、合併など、これからの自治のあり方について困難な検討 が継続されるという実情に配慮するとともに、こうした検討の結果を踏まえてから 協議、具体化が図られるべきと考え、それまでの間については、「事務・権限移譲 方針」は凍結すること。
(2) 協議の再開にあたっては、道から市町村への一方通行的な事務・権限の移譲で はなく、市町村間や道・支庁と市町村による広域連合、そして、合併による「市町 村再編」など、分権改革の時代にふさわしい多様な基礎自治体の確立を前提とした 事務・権限移譲こそが、全国一広大な行政区域にあって、市町村が協力し合わなけ ればならない道内自治体の現実的要請であるとの認識にたって、「事務・権限移譲 方針」を再検討し、支庁単位に、道・支庁・市町村との検討協議の場を設置して協 議すること。
 
■回答
 道では、地域主権型社会の実現を目指した取り組みの一つとして、道から市町村への事務・権限の移譲を位置づけているところであり、移譲方針の検討に当たって、市町村の側から積極的に移譲を受けたいとの意向も示されていることから、これに対応するためにも、道としての基本的な考え方を早期にとりまとめる必要があるものと考えており、今年度中の策定を目途に検討を進めてまいりたい。
 支庁管内単位の検討の場としては、各支庁ごとの町村会が、町村職員による検討組織(一部の支庁においては、市職員がオブザーバーとして参画)を設けており、道としても、支庁職員がオブザーバー参加し、必要な協力を行っているところです。
 
 
3.地域の実情を踏まえた北海道らしい分権・自治のシステムを構想する
(1) 道内における市町村合併は、行政コストの問題や行政サービスの低下をもたらす ことなどから破談となるケースが増えています。北海道が広大な地域であるがゆえ に合併という画一的な方針は、北海道の実情に則したものとはいえません。
  知事は、4月から合併新法が施行となることを踏まえ、合併の推進に関する構想 を策定することを明言していますが、合併による「市町村再編」ばかりでなく、「市 町村の広域連合」、「道・支庁と市町村による広域連合」など、分権改革の時代にふ さわしい、多様な分権・自治のシステムについて、市町村ともに協議して構想を策 定すること。
(2) また、仮に合併の推進に関する構想を策定する場合には、合併を強制する「合併 協議会の知事による勧告権」は発動せず、あくまでも住民の意向を尊重し、自主的 判断に基づく合併とする姿勢であることをあらかじめ明確にすること。
 
■回答
(1) 道としては、住民に最も身近な基礎自治体である市町村が、今後予想される人口の減少や厳しさを増す財政状況の下で、多様化する住民ニーズに的確に対応していくためには、行政体制の充実・強化を図ることが必要と考えています。
 こうした中で、市町村では、これまでも消防や介護保険など具体的な課題に応じて、個々の市町村の行政を補完するものとして、広域連合などの広域行政を進めてきており、今後においても、地域の実情に応じ、そうした取組が行われることが考えられます。一方、合併は、これからの分権型社会において、市町村が期待される役割を果たしていけるよう、市町村の行政体制そのものを充実・強化しようとする取組であり、道としては、いずれの市町村においても、合併の問題について積極的に検討していただきたいと考えています。
 今後、合併構想の策定に当たっては、これからの北海道における自治のかたちについて、有識者による審議会で十分検討いただくとともに、市町村とも率直に議論を深めたいと考えています。
 道としては、合併についての最終的な判断は、市町村が住民の方々に十分な情報を提供し、その意向を踏まえて自主的に行うべきものと考えています。
(2) 本年4月から施行される新しい合併特例法においても、自主的な合併を推進するという基本的な考えに変わりはありませんが、合併構想の策定や合併協議会の設置勧告など、都道府県の新たな役割が定められていることから、道として役割は重みを増すものと認識しております。
 このため、道内の合併協議がさらに円滑に進められるよう、今後、市町村との意見交換を行う中で、合併構想を策定し、これに基づき、地域の実情を踏まえ合併協議会の設置を勧告することを含め、道としての役割を積極的に果たしていきたいと考えています。
 
4.支庁制度改革プログラムは再検討する
 支庁制度改革プログラムでは、市町村合併等を念頭に、道の事務・権限を市町村に移譲し、支庁の将来方向として、「支庁機能は順次縮小し、将来的には地域における最小限の道州行政の執行を担う出先機関」とするとしています。また、事務・権限を市町村に移譲するまでの過渡的措置として「地域行政センター」を設置し、地域行政センターの機能は、順次縮小し、将来的には廃止するとしています。
 これでは、平成14年11月の「支庁制度改革に関する方針」の大転換であり、道の役割・責任を放棄し、事務・権限の移譲に名を借りた、「道の行財政改革」との批判を免れません。
 平成14年11月の「支庁制度改革に関する方針」では、支庁制度改革の意義を、「支庁は、分権時代の基礎的自治体としての市町村行政の拡充に向けた取り組みを支援するとともに、広域的自治体としての道の責務を果たすという重要な役割をもつ組織へと転換しなければならない」と謳っています。また、支庁は「市町村との対等の関係を基本としながら、自主的な市町村合併や広域連合制度の活用、自治体間の事務の共同処理など様々な手法を含めた広域的な取組を支援する」などの役割についても明記しています。
 こうした改革方向にたつならば、本「要求と提言」で提起している通り、広域連合を含む市町村の多様な自治の姿を早期に示し、市町村行政の充実・強化に向け、これを道が支援していくことこそ道の役割と責務であると考えます。

(1) 支庁制度改革について、「道の責務を地域で果たすという重要な役割をもつ組 織へと転換する」という改革方向を示した「支庁制度改革に関する方針」(平成1 4年11月)を、支庁制度改革プログラムでは、「最小限の道州行政の執行機関」 としたことは、大きく転換したと受け止めるが、道としての見解を明らかにするこ と。
(2) 支庁制度改革にあたっては、道の本庁から支庁への事務・権限の移譲を先行し、 支庁は広域的に市町村と連携し、円滑に市町村との権限移譲や広域行政の推進を担 う等のプロセスを重視し、道民の立場にたって、地域課題に総合的に対応できる分 権改革とすべきです。このような観点から「支庁制度改革プログラム」については、 再検討すること。



 
■回答
(1) 地域主権型社会を目指す上では、補完性の原理に基づき、道と市町村がそれぞれ必要な役割を担っていくことが望ましいと考えており、このためには、住民に最も身近な市町村が行政サービスの中心的役割を担えるよう、道から市町村への事務・権限移譲を進めていくことが必要と考えています。
 しかし、市町村の体制が十分整備されていないなどの理由により、すぐに市町村に移譲できない事務・権限があることが予想されますので、 支庁は、これらを過渡的に担いながら、地域の実情に応じた道行政の執行事務などを行っていくこととしています。
 道では、地域の総合的な行政主体となるのは、「市町村」であり、支庁は、こうした市町村の確立に向けた支援を行うとともに、市町村の体制が充実するまでは、市町村の状況などを考慮しながら、地域と一体となって地域政策をつくり実施する役割などを担うものと考えています。
 更に、市町村の体制の充実に応じて、こうした役割は縮小し、将来的には地域における最小限の道州行政の執行を担う出先機関となるものと考えています。
 こうした考え方をもとに、現行の「支庁制度改革に関する方針」や、その「実施計画」に替わるものとして、今般、「支庁制度改革プログラム(案)」を策定したところであり、今後、この「プログラム」に基づき、支庁の機能等について具体的な検討を進めて参りたいと考えております。
(2) 支庁制度改革を進めるに当たっては、住民に身近な行政サービスは、住民に最も身近な基礎自治体である市町村が担っていくことを基本に、道から市町村への事務・権限の移譲や市町村合併などの地方分権改革の取組と一体的に検討・推進していく必要があると考えております。
 このような考え方をもとに、今回、取りまとめた「支庁制度改革プログラム(案)」においては、地方分権の進展に伴う将来的な支庁の姿を明らかにし、それに向けた取組を進めるとともに、過渡的には市町村体制の充実の状況に応じた、地域における効果的な道行政を推進するなど、中長期的な視点に立った改革を行うことを基本的な考え方としてお示ししているものです。 
 道としては、基礎自治体である市町村が、地域における総合的な行政主体として必要な役割を担うためには、道から市町村への事務・権限の移譲を進めていくことが必要と考えておりますが、市町村が担うべき事務・権限の中には、法改正や体制整備が必要なものがあることから、過渡的に支庁がこれらを担いながら、市町村体制の充実に向けた取組の支援や法改正の国への働きかけなどを行い、市町村への事務・権限の移譲が円滑に進むよう取り組んでいきたいと考えております。
 また、道から市町村への事務・権限の移譲の取組を踏まえ、住民に身近な行政はできる限り住民により近いところで処理することができるよう、また、本庁・支庁の二層構造による非効率性の改善を図るため、支庁での事務の完結性を高め、支庁が地域ニーズに柔軟かつ機動的に対応できるよう、本庁から支庁への権限の委譲についても進めていくこととしております。
 なお、「支庁制度改革プログラム(案)」は、これまで市町村や道民の方々のご意見をお聴きしながら検討してきたものであり、成案後においても市町村などの意見を十分お聴きしながら推進して参りたいと考えております。
 
 
5.今後の進め方について
 国と地方の役割分担も含めた道州制のビジョンが明確に示されない中で、支庁制度改革プログラムと事務・権限移譲方針が先行的に提起されています。
 今後は、道は地方自治の主役である市町村の姿(広域連合など多様な姿)を示し、そこに至る方向性を明確にしたうえで、支庁制度改革、道州制を「三位一体」で推進することを改めて提言します。
■回答
 道では、平成16年4月にとりまとめた「道州制プログラム」において、国と地方の役割分担など、道としての道州制のビジョンを提示しているところであり、地域主権型社会の実現を目指した取り組みとして、移譲方針と支庁制度改革プログラムのとりまとめを進めているところ。
 また、地方自治の主役である市町村の将来の姿は、地域が自ら住民とともに検討すべきものであり、道としては、検討に必要な協力を行ってまいりたいと考えております。
 もとより、道州制は地域主権の確立を目指した取り組みであり、基礎自治体である市町村が地域主権型社会における行政の主役となることが必要であるとの認識に立って、事務・権限の移譲と支庁制度改革、さらには市町村の行政体制整備を一体のものとして整合性を図りながら推進する必要があるものと考え、取り組みを進めてまいりたいと考えております。
以上