(第25号) 2005年3月10日
政策調査情報 連合北海道 政策道民運動局
道州制に向けた支庁制度改革と市町村への権限移譲方針
に関わる「要求と提言」を提出
道が2月にまとめた「支庁制度改革プログラム」(案)並びに「道州制に向けた道から市町村への事務・権限移譲方針」(案)に対し、道町村会から道の方針や進め方が、拙速で一方的とする意見書が提出されている。
連合北海道は、道内の市町村が合併問題の対応に追われ、合併協議の破談が続発している実態に加え、基礎自治体である市町村の今後の方向性も不透明な中で、道が、事務・権限移譲や支庁制度改革を拙速に進めているとの状況判断のもと、緊急ではあるが、本日(3月10日)、道に「要求と提言」を提出した。その主な内容は、次の通り。
@ 道と市町村は対等の原則で協議し、市町村の実情には十分配慮すること。
A 事務・権限の移譲方針は凍結すること。
B 地域の実情を踏まえた北海道らしい分権・自治のシステムを構想すること。
C 支庁制度改革プログラムは再検討すること。
D 今後は、広域連合など多様な自治の姿を示し、支庁制度改革、道州制を「三位一体」で推進すること。
連合北海道佐藤富夫副事務局長は、道の前川克彦地域主権推進室長に対し、「要求と提言」の主旨が今後の対応に生かされることを求めた。「要求と提言」に道は、あらためて文書で回答する。
●要求と提言の内容
1.道と市町村は対等の原則で協議し、市町村の実情を十分配慮する
北海道町村会は「支庁制度改革」、「道州制に向けた市町村への事務・権限移譲方針」など道州制に向けた道の一連の取り組み方針に関し、「町村の実情に配慮することなく道の一方的なスケジュールで行われている」と批判し、「その対応に苦慮」していると率直な意見を表明しています。現在、市町村合併に関わる対応に追われている市町村の実情については十分な理解が必要です。
支庁制度改革や事務・権限の移譲が円滑に進められ、よりよい道州制が実現されるためには、道内における分権及び地域行政の主体である市町村の理解と協力が不可欠です。今後においては、道と市町村は対等であるとの立場に立ち、市町村の実情に配慮し、意見・要望を真摯に受け止め協議が進められるよう要請します。
2.市町村への事務・権限の移譲方針は凍結する
これからの分権時代における基礎自治体の大きな課題は、より自治能力が高められる、行政体制の充実と強化にあります。市町村合併は、そのための一つの選択肢ではありますが、広大な北海道では合併協議が多くの地域で破談しています。道は、将来の基礎的自治体のあり方を模索している市町村の悩める実態について理解を示し、有効な提言や助言を行っていません。まず、市町村合併先にありきではなく、多様な選択肢による自治のあり方を確立することが優先されるべきです。市町村の自治のあり方により事務・権限の移譲に関わる進め方、内容、手順も異なることになります。「合併」だけでは、市町村の行政体制を充実・強化することは困難な状況にあると認識しています。
(1) 事務・権限の移譲について、道は、平成17年度から市町村に照会し、要望のあったものから市町村と協議し、整ったものについては平成18年度から移譲するとしています。平成17年度においては、4月から施行される合併新法のもとで、市町村は、広域連合、自立、合併など、これからの自治のあり方について困難な検討が継続されるという実情に配慮するとともに、こうした検討の結果を踏まえてから協議、具体化が図られるべきと考え、それまでの間については、「事務・権限移譲方針」は凍結すること。
(2) 協議の再開にあたっては、道から市町村への一方通行的な事務・権限の移譲ではなく、市町村間や道・支庁と市町村による広域連合、そして、合併による「市町村再編」など、分権改革の時代にふさわしい多様な基礎自治体の確立を前提とした事務・権限移譲こそが、全国一広大な行政区域にあって、市町村が協力し合わなければならない道内自治体の現実的要請であるとの認識にたって、「事務・権限移譲方針」を再検討し、支庁単位に、道・支庁・市町村との検討協議の場を設置して協議すること。
3.地域の実情を踏まえた北海道らしい分権・自治のシステムを構想する
(1) 道内における市町村合併は、行政コストの問題や行政サービスの低下をもたらすことなどから破談となるケースが増えています。北海道が広大な地域であるがゆえに合併という画一的な方針は、北海道の実情に則したものとはいえません。
知事は、4月から合併新法が施行となることを踏まえ、合併の推進に関する構想を策定することを明言していますが、合併による「市町村再編」ばかりでなく、「市町村の広域連合」、「道・支庁と市町村による広域連合」など、分権改革の時代にふさわしい、多様な分権・自治のシステムについて、市町村とともに協議して構想を策定すること。
(2) また、仮に合併の推進に関する構想を策定する場合には、合併を強制する「合併協議会の知事による勧告権」は発動せず、あくまでも住民の意向を尊重し、自主的判断に基づく合併とする姿勢であることをあらかじめ明確にすること。
4.支庁制度改革プログラムは再検討する
支庁制度改革プログラムでは、市町村合併等を念頭に、道の事務・権限を市町村に移譲し、支庁の将来方向として、「支庁機能は順次縮小し、将来的には地域における最小限の道州行政の執行を担う出先機関」とするとしています。また、事務・権限を市町村に移譲するまでの過渡的措置として「地域行政センター」を設置し、地域行政センターの機能は、順次縮小し、将来的には廃止するとしています。
これでは、平成14年11月の「支庁制度改革に関する方針」の大転換であり、道の役割・責任を放棄し、事務・権限の移譲に名を借りた、「道の行財政改革」との批判を免れません。
平成14年11月の「支庁制度改革に関する方針」では、支庁制度改革の意義を、「支庁は、分権時代の基礎的自治体としての市町村行政の拡充に向けた取り組みを支援するとともに、広域的自治体としての道の責務を果たすという重要な役割をもつ組織へと転換しなければならない」と謳っています。また、支庁は「市町村との対等の関係を基本としながら、自主的な市町村合併や広域連合制度の活用、自治体間の事務の共同処理など様々な手法を含めた広域的な取組を支援する」などの役割についても明記しています。
こうした改革方向にたつならば、本「要求と提言」で提起している通り、広域連合を含む市町村の多様な自治の姿を早期に示し、市町村行政の充実・強化に向け、これを道が支援していくことこそ道の役割と責務であると考えます。
(1) 支庁制度改革について、「道の責務を地域で果たすという重要な役割をもつ組織へと転換する」という改革方向を示した「支庁制度改革に関する方針」(平成14年11月)を、支庁制度改革プログラムでは、「最小限の道州行政の執行機関」としたことは、大きく転換したと受け止めるが、道としての見解を明らかにすること。
(2) 支庁制度改革にあたっては、道の本庁から支庁への事務・権限の移譲を先行し、支庁は広域的に市町村と連携し、円滑に市町村との権限移譲や広域行政の推進を担う等のプロセスを重視し、道民の立場にたって、地域課題に総合的に対応できる分権改革とすべきです。このような観点から「支庁制度改革プログラム」については、再検討すること。
5.今後の進め方について
国と地方の役割分担も含めた道州制のビジョンが明確に示されない中で、支庁制度改革プログラムと事務・権限移譲方針が先行的に提起されています。
今後は、道は地方自治の主役である市町村の姿(広域連合など多様な姿)を示し、そこに至る方向性を明確にしたうえで、支庁制度改革、道州制を「三位一体」で推進することを改めて提言します。
以上
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