日米新ガイドライン 横路講演 要点記録
 1997.6
1. 「日米防衛協力に関する指針」見直しの背景
 
米ソ冷戦の崩壊 「仮想敵」がなくなった。
アジアには継続した「不安定要素」
「ナイ・レポート」 東アジア10万人体制の維持
 
2. 問題点
 
 本来は、日米安保条約の実質改造となるので、条約・協定として国会の承認必要なものである。「周辺事態法」など関連法が廃案になった場合でも、そのガイドラインは生きているので、日米共同作戦が運用される。
 「基本計画」をはじめ、すべてにわたる国会の関与と「周辺事態」の対象を狭くするための修正が必要。
 
(1)「対象地域の拡大」
日米安保条約 第5条 日本有事の際の米軍支援 自衛隊が第一義的対応
        第6条 米軍への支援・提供(極東の平和と安全の維持)
 
新ガイドライン〜アジア・太平洋へと日米の協力を拡大
台湾(米国の台湾関係法)、朝鮮半島、インドネシア、南沙諸島など
自衛隊の領域外活動を前提
 
(2)「相務的関係」へ
旧ガイドラインは米軍の片務的関係(思いやり予算6,200億円ではあるが)
自衛隊の専守防衛からの脱皮 「日本国土への直接攻撃」なくても米軍支援
「米軍支援」で自衛隊がアジアの地域紛争に介入する危険
 
(3)「米軍の行動理念」
国連軍〜朝鮮戦争
多国籍軍〜湾岸戦争など
国連総会決議に基づく派遣〜イラン・イラク
米国の自衛権行使
同盟国への攻撃に対するもの〜集団的安全保障
米国民の保護・救出〜パナマ麻薬王のノリエガ将軍の拘束
人権侵害などによる人道的支援介入〜ルアンダ、ソマリア
コソボ 当初「解放戦線」はテロと規定していた
想定されるもの 中国のチベット隣接地域
 
(4)「事態」の規定曖昧
  いずれにせよ「日本が攻撃されていないのに加担する可能性」
 「周辺事態の決定」
政府答弁〜日米双方が決定、日米間で齟齬ない 事実上の米軍依存
 
 「武力紛争」 起きた場合
起きうる場合                
終わってからの不安定〜 朝鮮半島を想定
難民の発生
国連経済制裁・封鎖決議に基づく行動
ある国の内部の政治混乱による内線の拡大 〜台湾を想定
 
「民主党」〜修正を求めた内容は、「日本の平和と安全に重大な影響を与える事態であって、そのまま放置すれば日本が攻撃される恐れのある事態」に限定すべきこと。
「自由党」〜「日本が攻撃された場合」は「事態」の例示の一つ。
(枠を掛けることになっていない)
 
3. 米軍の期待・意図
 
(1)「包括的メカニズム」
       防衛庁だけでなく、全省庁の協力体制
(2)「調整的メカニズム」
 
(3)「運用面における日米の協力」(英文では「日米共同作戦」)   別表参照
警戒監視 情報の統合化
機雷除去 湾岸で機能実証済み
海・空域の調整 空港・港湾使用
捜索・救難
後方支援 補給・輸送・整備・医療・警備・通信
 
4.「日米協力」の過去・現在
(1) 対潜哨戒
   アメリカ核戦略の三手段
@ 大陸間弾道弾(ICBM)、
A 核搭載爆撃機(B52・B-1)、
B 潜水艦発射弾道弾(SLBM)
   ソ連の動向監視を日本が担った オホーツク海・バレンスキー海
   P3C対潜哨戒機 100機(配備90、予備10)
(2) 機雷掃海 米空母の周辺・紅海(湾岸戦争)での実践
現在も日本海(朝鮮半島対象)で活動中
(3) 冷戦後にプラスされたもの
 AWACS(早期警戒機)がイージス艦(電子洋上防空艦船)と情報直結で 共同行動
(4) 新たに付加されるもの
   @「後方支援」
日本政府の契約と米軍の契約がある。
民間との契約が中心で、「自衛隊活動」の制約受けないため、広範囲
政府答弁では、「日米合同委員会」で決定すれば「法律いらぬ」
日本列島全域が「後方支援基地」
   A「暗号・デフコン・ROEの統一」
デフコン〜防衛基準体制(有事から平時まで)
ROE〜交戦規則
 
4. 朝鮮半島、台湾の情勢
 
(1)「アメリカのアジア政策」   世界戦略の基本は、核拡散防止(弾頭・発射手段)
 
@ 2国間安保条約の遵守 日米・米韓・米台
A 多国間はASEAN・ARF
B 中国に封鎖政策を採らない
C 朝鮮半島の紛争抑止
 
※ 日本の外交防衛政策 外交戦略なし、有事対策のみ
米国評「戦争熱にうかされている」
 
(2)「各国の朝鮮半島政策」
アメリカ〜  朝鮮戦争「遺骨収集」接触機会の拡大
食料支援
KEDO(朝鮮半島エネルギー開発機構)による核兵器開発阻止と 南北協力の開始
中 国〜 当面、金正日政権を維持するために援助する。
韓 国〜 経済の低迷で、「自立」を求める 「太陽政策」
日 本〜 国交交渉もとん挫 交渉テーブルにつくべき