思いやり予算訴訟 資料
 甲一二五号証「『思いやり予算等』の異常性を公開情報をもとに検証する」、甲一二六号証「『思いやり予算を返せ』訴訟資料」は、いずれも米軍の公開情報をインターネットを通して入手した原告の丸山和夫が分析、解説したものであり、甲一二五号証は総論、甲一二六号証は各論である。
 詳しいことは、右同書証をじっくりと読み、かつ見ていただきたいが、総論的には原告丸山の分析にあるように、
(1) 海外駐留の米軍の人員数は、九〇年の湾岸戦争の際は約六〇万人にまで増えたが、の後は減少を続け、九七年には二二万六千人と湾岸戦争時の三分の一まで減少した。
 とくにドイツでは激減している。しかし日本、韓国の場合はほとんどその数は変わっていない。
(2) 米軍の駐留に対する受入国の支援について日本は九六年度において七八・三%と他国に比べて極端に高くなっている。因みにドイツの場合は二六・八%である。なお日本の七八・三%という数字は米国が二〇〇〇年九月の目標値としている受入国の支援率七五%を既に超えている。
(3) 米軍駐留費負担額も日本の場合は、四五八四・六一万ドルとドイツの一三〇二・五二万ドルの三倍となっている。ところが駐留米軍人の数は、わずかながらであるが、ドイツの方が多い。ということは在日米軍人一人当りに対する日本の負担額はドイツにおける米軍人の場合の約四倍ということになる。
(4) 米軍駐留費負担額を考えるとき直接支援と間接支援(基地の地代等の免除など)の割合が問題となるが、日本の場合は直接支援が八〇%以上を占めている。これに対しドイツではわずかに四%と極端な違いとなって表れている。
等の特徴があることが分かる。
 各論的には甲一二五号証に明らかなように米軍の各キャンプでは施設の写真入りの「WELCOME TO THE CAMP ×××」と施設のゴージャスさを競った写真入りのパンフレットを作成し、米軍兵士の勧誘をなしていることに驚く次第である。
例えば海兵隊岩国航空基地の解説には以下のような具合である。
  「中央体育館:古株の連中が“新体育館(ニュージム)”とよぶこともあるこの体育館は、私にとって健全な精神を維持していくのに実に大切なところだ。まず、ウエイトリフティイング用の部屋とフィットネス用の部屋がある。このジムは私の体験した海兵隊基地のなかで一番大きくかつ設備も最高である。屋内ロッククライミングができるトレッド・ウォールはすばらしい設備で、息子はぞっこんだ。さらにでっかい屋内体操場があって、バスケットボール・バレーボールなどができるオリンピックサイズの屋内プールもあり(冬場たまらん)、ロッカールームにはサウナもある。子どもたちのための水泳教室や水中エアロビクス教室(ここに来れば私に会える)などいろんなことができる。四面のラケットボールコートは私が見た中では最も美しいものだ。エアロビクス教室や空手教室などがエアロビクスルームで開かれていて、かゆいところに手が届くとはまさにこのことだろう。しかも、スナックやジュースが飲める軽食堂、そして食事もできる気の利いた中庭まである!」
  「ここ岩国では、変わらぬものを探すのは大変だ。実際のところ、状況は常に変化しているように見えるし、その変化はいつもいい方へ向かっている。新しい建物の建設とそれに付随した整理・統合によって、基地のどこに何があるかが分かり易くなったし、我々にとっても、客の要望に答えやすくなった。過去五年間、MWR(Morale, Welface, and Recreation:軍隊の志気を高めるための福利厚生事業部門)の努力によって、スポーツ、フィットネスセンター、クロスロード・モール(ショッピングモール)、オートミニマート(自動車部品屋)建設することができた。基地内の人々の要望の多かったトリイ・ビデオの移設と開店時間の延長もできた。またSMP(Single Marine Program:独身者や単身赴任の海兵隊員のためのプログラム)活動の中心地としてのホーネッツ・ネスト(という集会場兼遊技場)もできあがった。さらに、短期宿泊施設である“錦帯イン”もオープンして一年になる。
    現在、屋内ホッケーリンクの建設が始まっている。完成すれば、コンサートなどに利用できる多目的施設の規模が二倍になる。さらに、トライ・モド・クラブ(という社交場)の建設も始まった。これによって、基地内にある倶楽部、つまり、準士官クラブ・士官クラブ・下士官/兵士用クラブ、の三つが全て同じ建物の中に入ることになる。」
 
 このような米軍施設が、私達が支払った税金で賄われているのである。
 ところでNATOにおける米軍と日米安保、地位協定における米軍とは同じ駐留でもその経済的側面から見た場合に著しく異なるものであることは、前述した両者の直接支援と間接支援との比率、すなわち直間比率の著しい違いから明らかとなる。
 NATOにおける米軍駐留に対する受入国の支援は基地等の無料使用を中心とするものである。ところが、日本の場合には地位協定により、さらには地位協定にもない「思いやり予算」という名の下に米軍施設(それもディスコやフィットネスクラブ、学校さらには教会などまでも)の建設及び維持費が支出されているのである。このような事実を見るとき果して日本は主権を有する独立国であろうかという疑問を禁じ得ない。