沖縄県 地位協定要請
 
   要請事項の内容及び説明
  要請事項 内容及び説明
1 第2条関係(施設・区域の提供等)
 
(1)日本国政府及び合衆国政府は、日米合同委員会を通じて締結される個々の施設及び区域に関する協定の内容について、関係地方公共団体から、住民生活の安全確保及び福祉の向上を図るため要請があった場合は、これを検討する旨を明記すること。

(2)日本国政府及び合衆国政府は、前記の検討に際しては、関係地方公共団体の意見を聴取し、その意向を尊重する旨を明記すること。
また、施設及び区域の返還についての検討に際しても、関係地方公共団体の意見を聴取し、その意向を尊重する旨を明記すること。

(3)日米合同委員会を通じて締結される個々の施設及び区域に関する協定には、施設及び区域の使用範囲、使用目的、使用条件等を記載する旨を明記すること。
 
 米軍基地が県土総面積の約11%、沖縄本島の約19%を占めている本県においては、基地の多くが県民の住宅地域に近接しているため、これらの基地の運用等の法的根拠となっている日米地位協定の内容及びその運用は、県民の生活に直接影響を及ぼす重大な問題であります。
 しかしながら、現行の日米地位協定には、基地の提供、運用、返還等に関して最も大きな影響を受ける周辺地域の住民や地元地方公共団体の意向が反映できるような仕組みが設けられていません。
 県としては、米軍基地から派生する諸問題の解決を図るためには、米軍基地と隣り合わせの生活を送っている周辺地域の住民や地元地方公共団体の理解と協力を得ることが不可欠であると考えます。
 そのためには、日米合同委員会を通じて締結される個々の施設及び区域に関する協定の締結や内容の変更について、地方公共団体から、住民生活の安全確保及び福祉の向上を図るため要請があった場合、地元の声を協定に反映できるような仕組みを日米地位協定の中に設けることが必要であると考えます。また、同様に、施設及び区域の返還についての検討に際しても、地元の声を反映できるような仕組みを日米地位協定の中に設けることが必要であると考えます。
 さらに、周辺地域の住民や地元地方公共団体の意向を踏まえた上で、個々の施設及び区域の使用範囲、使用目的、使用条件等、運用の詳細に関して明記した協定の締結及び当該協定の内容の公表が必要であると考えます。
 なお、ドイツにおいては、ボン補足協定第48条第3項(a)及び同協定署名議定書「第48条について」第4項に基づき、NATO軍に提供される施設について、施設の規模、種類、条件、提供期間等を記載した協定が締結されることになっています。
2 第3条関係(施設・区域に関する措置)


 
(1)合衆国軍隊は、施設及び区域が所在する地方公共団体に対し、事前の通知後の施設及び区域への立入りを含め、公務を遂行する上で必要かつ適切なあらゆる援助を与えること。ただし、緊急の場合は、事前通知なしに即座の立入りを可能にする旨を明記すること。


(2)航空機事故、山火事等合衆国軍隊の活動に起因して発生する公共の安全又は環境に影響を及ぼす可能性がある事件・事故については、施設及び区域内で発生した場合においても、速やかに事件・事故に関する情報を関係地方公共団体に提供すること。また、災害の拡大防止のため、適切な措置を執る旨を明記すること。

(3)合衆国軍隊の演習、訓練、施設整備等の諸活動の実施に対して、航空法等の日本国内法を適用する旨を明記すること。

 
 県では、米軍基地に起因する事件・事故が発生する度に、県民の不安を払拭する等のため、必要に応じて、基地内への調査のための立入りや速やかな事件・事故に関する情報の提供を求めてまいりました。
 日米両政府においては、平成8年12月のSACO最終報告や日米合同委員会合意によって、施設区域への立入許可手続きや事件・事故発生時における通報手続きを整備、実施されました。
 しかし、その後も、地方公共団体による米軍基地内への立入りについては、地方公共団体が求めている速やかな立入りが実現しているとは言い難い状況にあります。
 また、事件・事故発生時の地方公共団体への通報についても、現行の手続きにおいては、米軍基地内で発生する事件・事故は通報の対象から除外されているため、適時、的確な情報公開によって県民の不安を払拭するという観点から、通報手続きの更なる検討が必要であると考えます。
 さらに、我が国においては、いわゆる航空特例法によって、米軍に対しては、航空法第80条の飛行禁止区域や第81条の最低安全高度の遵守の規定等の適用が除外されていますが、ドイツにおいては、ボン補足協定第45条第2項及び第46条第2項に基づき、NATO軍の演習・訓練に対しても、関連するドイツ国内法が適用されることになっています。
 県としては、このようなドイツの例に倣い、我が国においても、航空機騒音や事故の危険性を軽減するため、米軍航空機も民間航空機と同様に、関係する日本国内法に従って運航する必要があると考えます。
 このほか、道路法第47条に基づく車両制限令、原子力災害対策特別措置法、文化財保護法についても、米軍の演習、訓練、施設整備等の諸活動の実施に対し、適用する必要があると考えます。
 道路法第47条に基づき、車両の幅、重量、高さ、長さ等を規定している車両制限令については、同政令第14条に基づき、米軍に対する適用が免除されておりますが、道路交通の安全を確保する観点から、米軍に対しても当該政令を適用する必要があると考えます。
 また、昨年成立した原子力災害対策特別措置法については、米国の原子力軍艦の放射能事故等を対象から除外しておりますが、原子力軍艦が寄港する港湾周辺に居住する住民の不安を解消するためにも、米軍に対して同法を適用し、万が一放射能事故等が発生した場合の災害対策を講じる必要があると考えます。
 さらに、文化財保護法第57条の5や第57条の6によると、土地の占有者が住居跡、古墳等遺跡と認められるものを発見したときは、関係機関に届出や通知を行うことになっていますが、米軍が実施する施設整備工事等に対してはこれらの文化財保護法の規定が適用されないため、埋蔵文化財が発見された際の適切な保護措置が執れない状況にあります。したがって、文化財の保存を図るためには、米軍に対しても、これらの文化財保護法の規定を適用する必要があると考えます。
 
3 第3条A(施設・区域の環境保全等)※新設

 下記の内容の環境条項を新設する旨を明記すること。

@合衆国は、合衆国軍隊の活動に伴って発生するばい煙、汚水、赤土、廃棄物等の処理その他の公害を防止し、又は自然環境を適正に保全するために必要な措置を講ずる責務を有するものとする。
また、日本国における合衆国軍隊の活動に対しては、環境保全に関する日本国内法を適用するものとする。

A合衆国軍隊は、施設及び区域におけるすべての計画の策定に当たっては、人、動植物、土壌、水、大気、文化財等に及ぼす影響を最小限にするものとする。
また、当該計に基づく事業の実施前に、及び実施後においては定期的に、当該事業が与える影響を、調査し、予測又は測定し、評価するとともに、調査結果を公表するものとする。さらに、日米両政府間で、当該調査結果を踏まえ、  環境保全上の措置について協議するものとする。

B合衆国軍隊の活動に起因して発生する環境汚染については、合衆国の責任において適切な回復措置を執るものとする。そのための費用負担については、日米両政府間で協議するものとする。
 米軍の活動に起因して生じる米軍航空機の騒音、実弾演習や廃弾処理に伴う騒音や振動、山火事や赤土流出による自然環境の破壊、油や汚水の流出、PCB等有害廃棄物の処理等米軍基地から派生する環境問題については、基地に隣接して生活している県民にとって、生命、財産の安全に直結する重大な関心事であります。
 ドイツにおいては、ボン補足協定第53条第1項に基づき、NATO軍の施設の使用に対しても、原則としてドイツ国内法を適用しています。また、第54条A第2項に基づき、NATO軍が環境影響評価手続きを実施し、「不可避の環境被害に対して適切な回復措置又は清算措置」を行うことになっています。
県としては、このようなドイツの例に倣い、我が国においても、深刻な環境被害が発生する前の未然防止の観点から、合衆国軍隊に対して、環境保全に関する日本国内法を適用する必要があると考えます。特に、我が国の環境影響評価に関する国内法が対象としている事業に相当する米軍の事業について環境影響評価手続き及び日常的な環境監視を実施すること、日米両政府間で当該調査結果を踏まえ環境保全上の措置について協議すること、環境汚染が発生した際の調査及び浄化対策等を実施すること等の制度を確立する必要があると考えます。
 また、万一、環境汚染が生じた場合においても、適時、的確な回復措置が執れるように、汚染原因者としての米国の責任を明記する必要があると考えます。
 なお、合衆国軍隊に対する国内法の適用に向けて、土壌の汚染防止等に関する国内法の整備も必要だと考えます。
4 第4条関係(施設の返還)
 合衆国軍隊が使用している施設及び区域の返還に当たっては、事前に、日米両政府は、合衆国軍隊の活動に起因して発生した環境汚染、環境破壊及び不発弾等の処理について、共同で調査し、環境汚染等が確認されたときは、環境浄化等の原状回復計画の策定及びその実施等の必要な措置を執ること。そのための費用負担については、日米両政府間で協議する旨を明記すること。

 現行の日米地位協定では、米国は施設及び区域の返還に伴う原状回復義務を免除されているほか、施設及び区域の返還に伴う環境調査及び環境浄化の実施手続きについて明確な規定がありません。
 しかし、施設及び区域の返還に伴う環境調査や環境浄化については、円滑な跡地利用を図る観点から、施設及び区域の返還前に取り組む必要があります。
 そのためには、当該施設及び区域を使用していた米国の協力が必要不可欠であり、汚染原因者としての責任の観点からも、米国政府は、施設及び区域の提供者である日本国政府と共同で対処する必要があると考えます。
 特に、本県の場合、米軍提供施設面積の約66%は民公有地であるため、米軍基地が返還された後に、土地所有者が安心して土地を使用できるように、また、跡地利用が円滑に実施できるように、返還に伴う環境調査及び環境浄化手続きを明確に規定し、早急かつ十分な原状回復措置を実施する必要があると考えます。
5 第5条関係(入港料・着陸料の免除)
(1)民間航空機及び民間船舶の円滑な定期運航及び安全性を確保するため、合衆国軍隊による民間の空港及び港湾の使用は、緊急時以外は禁止する旨を明記すること。

(2)第5条に規定する「出入」及び「移動」には、演習及び訓練の実体を伴うものを含まない旨を明記すること。
 県はこれまで一貫して、日米地位協定第5条に基づく米軍機の民間空港使用については、米軍に対し自粛を要請してきたところですが、去る2月15日にも、民間航空機の離発着及びエプロンの使用が過密な状況にある石垣空港に、米海兵隊の航空機が給油の目的で着陸したため、地元住民や県民から強い反対の声があがりました。
 多くの離島からなる本県にとって、航空機や船舶は県民の日常生活はもとより、観光立県を目指す本県の産業振興を図る上からも重要な輸送手段であることから、航空機及び船舶の円滑かつ安全な運行を確保するためには、米軍による民間空港及び港湾の使用については、天候不良、機体の異常、乗務員の発病等緊急時以外は禁止する必要があると考えます。
 また、日米地位協定第5条を根拠に、実質的には演習又は訓練であると見なさざるを得ない合衆国軍隊の施設及び区域からの「出入」又は「移動」が行われているとの指摘があります。
 県としては、演習又は訓練については、提供されている施設及び区域内において行われるべきであると考えており、施設及び区域からの「出入」又は「移動」の定義を明確にし、演習又は訓練の実体を伴う「出入」や「移動」については、明確に禁止する必要があると考えます。
6 第9条関係(合衆国軍隊構成員等の地位)
 
 人、動物及び植物に対する検疫並びに人の保健衛生に関して、国内法を適用する旨を明記すること。
 
 米軍人等が我が国に入国する場合、あるいは、動物及び植物を入国させる場合の手続きについては、SACO最終報告において、新たに合意された手続きを実施することが示されました。特に、従来の日米合同委員会の合意内容には明記されていなかった植物の検疫手続きが新たに設けられたことは、一定の前進であると考えています。
 しかし、ドイツにおいては、ボン補足協定第54条第1項に基づき、NATO軍に対しても、人間、動物及び植物の伝染病の予防及び駆除並びに植物の害虫の繁殖の予防及び駆除に関するドイツ国内法が適用されることになっています。
 県としては、我が国においても、海外からの伝染病の侵入に対する基地周辺地域の住民の不安を払拭するためには、人、動物及び植物に対する検疫並びに人の保健衛生に関する日本国内法を適用し、米軍に対しても日本国当局による検疫を実施する必要があると考えます。
7 第13条関係(租税)
 合衆国軍隊の構成員及び軍属並びにそれらの家族の私有車両に対する自動車税及び軽自動車税について、民間車両と同じ税率で課税する旨を明記すること。
 米軍人等の私有車両に対する自動車税については、平成11年2月の日米合同委員会合意に基づく自治事務次官通知を踏まえ、「アメリカ合衆国軍隊の構成員等の所有する自動車に対する自動車税の特例に関する条例」が改正され、平成11年4月から税率が一定程度引き上げられました。
 しかし、この改正後においても、米軍人等の私有車両に対する自動車税は、民間車両に課税されている税率に比べると、依然として、著しく低い税率になっています。
 また、この税率の格差については、軽自動車税の場合においても同様であり、米軍人等の私有車両に対する軽自動車税は、民間車両よりも著しく低い税率になっています。
 本県の場合、米軍人等の私有車両は約25,000台にのぼっており、これらの車両の通行に伴う行政需要の増加及びそのために要する県の財政上の負担は、決して小さいものではありません。
 これらの米軍人等の私有車両に対して民間車両と同じ税率の自動車税を課した場合、年間で約7億8千万円の税収の増加が見込まれており、財政基盤の脆弱な本県にとって、米軍人等の私有車両に対する民間車両並みの税率の引き上げは、自主財源の充実を図る上で、重要かつ緊急な課題であると考えます。
8 第15条関係(諸機関の管理等)
 第15条第3項を改正し、施設及び区域内の諸機関が提供する役務についても、物品の販売の場合と同様に、日本人に対する役務の提供を制限する旨を明記すること。
 日米地位協定第15条に規定する諸機関による物品の販売、処分については、同条第3項に基づく日米合同委員会合意によって、具体的な制限の内容及び処分手続き等が定められています。
 しかし、施設及び区域内におけるゴルフ場でのプレーやセスナ機への搭乗等、諸機関が提供する役務や施設の利用については、日本人が利用する際の制限の内容及び利用手続き等に関して、明確な規定がありません。
 これらの諸機関は、第15条第1項(a)に基づき、日本国の租税が免除されており、日本人が諸機関の役務や施設を利用する際の具体的な制限の内容及び利用手続き等についても、課税の公平性の観点から、物品の販売、処分に準じた明確な規定を設ける必要があると考えます。
9 第17条関係(裁判権)
 合衆国の軍当局は、日本国の当局から被疑者の起訴前の拘禁の移転の要請がある場合は、これに応ずる旨を明記すること。
 日本国が裁判権を行使すべき合衆国軍隊の構成員又は軍属たる被疑者の拘禁については、平成7年10月25日の「刑事裁判手続きに関する日米合同委員会合意」によって、凶悪な犯罪の場合、合衆国は、日本国の「被疑者の起訴前の拘禁の移転についてのいかなる要請に対しても好意的考慮を払う」こととされ、一定の前進が図られたものと考えています。
 しかし、この合意に基づく手続きを実施するためには、日米合同委員会において日本国が提起し、協議しなければならないため、相当の時間を要することが予想されます。
 また、凶悪な犯罪ではない場合については、日本国の起訴前の拘禁の移転要請に対して、米国は日本国の「見解を十分に考慮する」としているのみで、米国が起訴前の拘禁の移転を承認するのかについては必ずしも明確ではありません。
 平成10年10月7日に北中城村で発生した女子高校生ひき逃げ事件の際は、我が国の警察当局が被疑者たる米軍人の起訴前の逮捕、拘禁ができなかったため、県民の間から、強い憤りの声が起きました。
 その後、当該被疑者は程なく起訴され、我が国の警察当局に身柄が引き渡されましたが、本県では、過去に、米軍が身柄を拘束していた被疑者が米軍基地から米国内に逃亡した事例もあるため、平成7年10月の日米合同委員会における合意内容では不十分であり、日米地位協定を見直して、全ての事案について、被疑者の起訴前の拘禁を日本国が速やかに行えるようにすることを求める県民の声には根強いものがあります。
 ドイツでは、ボン補足協定第22条第2項(b)(U)において、NATO軍は「特定の事件においてドイツ当局が提出する抑留の移転の要請に対しては好意的考慮を払うものとする」と規定していますが、国民の生命、財産等の基本的人権を保障する観点から、標記の事項について、日米地位協定の見直しを行っていただく必要があると考えます。
10 第18条関係(請求権の放棄)
(1)公務外の合衆国軍隊の構成員若しくは軍属、若しくはそれらの家族の行為又は不作為によって損害が生じた場合において、被害者に支払われる損害賠償額等が裁判所の確定判決に満たないときは、日米両政府の責任で、その差額を補  填するものとし、補填に要した費用負担については、両政府間で協議する旨を明記すること。

(2)合衆国の当局は、日本国の裁判所の命令がある場合、合衆国軍隊の構成員又は軍属に支払うべき給料等を差し押さえて、日本国の当局に引き渡さなければならない旨を明記すること。
合衆国軍隊の構成員又は軍属が公務外で起こした事件・事故等の際の被害者に対する補償については、平成8年12月のSACO最終報告によって、「慰謝料」や「見舞金」の支払手続き、前払いの請求、無利子融資制度等に関する日米地位協定の運用の見直しが示され、一定の前進が図られたものと考えています。
    しかし、この日米地位協定の運用の見直しにおいても、被害者に対する日米両政府による支払いについて法的義務として認めたものではなく、「支払いを行うよう努力する」ことにとどまっております。
    また、同様に、前払いの請求手続きや被害者に対する無利子融資制度についても、法的制度として確立したものではありません。
    したがって、県としては、合衆国軍隊の構成員又は軍属、あるいはそれらの家族により被害を受けた者の迅速かつ十分な補償を図るためには、国内法の整備を含め、日米両政府の法的責任で被害者の損害を迅速に補填する制度を設け、被害者の補償を受ける権利を法律上明確に規定する必要があると考えます。
   また、本県では、米軍人等の子供を出産した女性が、その子供の養育費を米軍人等に支払ってもらえないため、生活に困窮している事例がしばしば見受けられます。
    日米地位協定第18条第9項(b)には「合衆国軍隊が使用している施設及び区域内に日本国の法律に基づき強制執行を行うべき私有の動産があるときは、合衆国の当局は、日本国の裁判所の要請に基づき、その財産を差し押さえて日本国の当局に引き渡さなければならない。」と規定していますが、合衆国政府が米軍人等に支払う給料等の債権に対する差押え等に関する規定はありません。
    ドイツでは、ボン補足協定第34条第3項において「軍隊の構成員又は軍属に対して、その政府が支払う給与に対するドイツ裁判所又は当局の命令に基づく差押え、支払禁止、その他の強制執行は、当該派遣国の領域において適用される法律が許す範囲においてのみ行われる。」と規定されており、我が国においても、米軍人等に支払われる給料等に対して、我が国の裁判所の差押え、支払禁止等の強制執行を可能にする旨を明記する必要があると考えます。
 この他、本県に駐留していた米軍人等が退役し、又は日本国外へ居所を移転したため、残された女性との連絡が途絶えた場合、離婚や認知等の身分問題あるいは養育費の請求等の財産問題に係る民事訴訟の提起や強制執行手続き等が著しく困難になる事例が数多く見受けられます。
 県としては、米軍人等が退役し、又は日本国外へ居所を移転し、日米地位協定の対象から離脱した後の母子の生活権を保障するためには、公的機関が母子に代わって養育費を請求、徴収するためのいわゆる「チャイルドサポート」制度等に係る新たな二国間協定を設けるとともに、これらの協定を実施するための国内法の整備が必要であると考えております。
11 第25条関係(合同委員会)
 日米合同委員会の合意事項を速やかに公表する旨を明記すること。
 米軍基地の多くが県民の住宅地域に近接している本県においては、日米地位協定や日米合同委員会合意に基づく米軍基地の運用は、周辺地域に居住する住民及び地元地方公共団体にとって、重大な関心事であります。
 日米両政府においては、平成8年12月のSACO最終報告において、「日米合同委員会合意を一層公表することを追求する」との日米地位協定の運用の改善を行い、日米合同委員会合意の公表について理解を示されました。
 しかし、その後の日米合同委員会合意に関する公表の実施状況については、必ずしも十分とは言えない状況にあります。
 県としては、日米合同委員会の合意事項を迅速に公表することが、駐留する合衆国軍隊と地域住民及び地方公共団体との信頼関係を構築する礎になるものと考えており、合意事項の速やかな公表を明確に規定する必要があると考えます。