2004春季生活闘争のまとめ(案)
はじめに
北海道における2004春季生活闘争の大きな課題のひとつは、1994年から10年目を数える「地場集中決戦方式」をいかに活性化し、地域共闘の強化と地場中小組合の参加拡大を図ることであった。連合本部段階でも、今次春季闘争において初めて本格的に中小・地場共闘の強化に取り組んだ結果、経営側の賃金引き下げ論を打破し、賃上げ結果の低落傾向に歯止めをかける成果をあげた。
一方、全国状況に比べて雇用・経済情勢の回復が遅れている道内では、賃金引き上げ結果が昨年を下回るなど、依然として地場中小組合の多くが厳しい交渉を余儀なくされた。また、道内地場で要求・交渉を行うすべての民間組合が、地場集中決戦にエントリー(参加登録)するよう提起したところ、最終的に371組合が登録された。しかしながら、具体的な共闘行動の展開という点では、ハイ・タク最賃新設に係わる共同行動などいくつかの成果はあったが、地域における産別・単組と地協・地区連合との連携やパート労働者等非典型労働者の処遇改善、さらに地域の中小・未組織労働者の賃金・労働条件の底上げに波及させるという意味では課題を残している。
このような課題に取り組み、まさに春闘改革を継続・実践していくためには、今後とも職場点検を通じた日常的な組合活動や通年的な労使協議を徹底するとともに、政策制度要求の実現やワークルール確立に向けた社会的運動の強化をはからなければならない。
T.2004春季生活闘争の位置づけと課題
(1) 2004春季生活闘争を取り巻く環境は、景気回復の兆しはあるが、引き続くデフレ不況下と先行きの不透明感を抱えたなかにあった。企業レベルにおいても、企業業績は回復基調にあるものの、産業間・企業間・地域間・規模間のばらつきの大きさ、とりわけ中小企業の厳しさが浮き彫りにされていた。とくに道内企業の景況感は前年同期比では改善しているものの、相変わらず「下降」との判断が続いており、全国でも最悪水準にある。
また、雇用情勢は最悪の状況を脱しつつあるものの、経営側の賃金抑制や正社員から非典型労働者への置き換えなど、人件費コスト削減策の動きが続いている。加えて、労働者の可処分所得は、年収の低下と社会保険料の負担増などにより6年連続して低下するなど、雇用と生活に対する不安を抱えたなかでの取り組みとなった。
(2) 連合は、2004春季生活闘争を「雇用と生活の悪化に歯止めをかけ、働き方の改善と労働条件の底上げをはかる闘い」と位置づけ、経営側の「ベアは論外」「定期昇給制度の廃止・縮小」「ベースダウンも」との賃金抑制・切り下げ攻勢や、政府の負担増・給付減を押しつけようとする年金改悪の動きに対決することとした。
具体的には、2003春季生活闘争で掲げた、4つの「最重点課題」と3つの「ミニマム運動課題」を基本的に継承し、規模間・男女間・雇用形態間の格差改善や、失業と長時間労働の並存などの社会的アンバランスの改善など総合生活改善の闘いに取り組むこととした。
連合北海道も本部と同様のスタンスで2004春季生活闘争方針を示し、各構成産別、地協・地区連合を通じて、それぞれ加盟組合への指導・支援を強めるよう提起した。
(3) 「最重点課題」と「ミニマム運動課題」を基本的枠組みとした取り組みは、産別での方針化を含め、昨年より取り組みの前進がはかれている。
しかし、全ての組合が取り組むというミニマム運動課題の方針からすれば、その取り組みはまだまだ不十分であり、とくに道内でも中小・地場組合ほど賃金、労働時間など具体的要求化に必要な職場実態の把握が遅れている。これらは通年的な職場点検活動が不可欠であり、春季生活闘争時にとどまらない産別、地協・地区連合による指導・支援の強化が課題である。
(4) 今次春季生活闘争で連合本部が提起した中小・地場共闘の強化については、産別の協力による連携強化がはかられ、その結果、相場形成とその波及の取り組みは、賃金の下支えに機能し、デフレ下における賃金決定で一歩踏み出せたとして評価している。
連合北海道は、地場中小組合の闘いを支援し、賃上げ相場の底上げと早期解決をめざして戦列配置を行う「地場集中決戦方式」に取り組み始めて10年目を迎えた。本部の提起に先駆けたこの方式は、道内春闘では産別・地域組織にも定着した戦術となっていた。しかし、バブル崩壊後、とりわけ拓銀破綻以降の道内経済の冷え込みと雇用の悪化は、労使交渉のあり方にも大きく影響し、特に賃金制度が未整備な地場中小組合の賃金交渉は、極めて難しい局面を迎えることになった。
このような状況での地場集中決戦方式は、単に回答引き出しゾーンに戦列を配置するだけでなく、要求策定段階から交渉に至るまでのきめ細かな指導・支援と地域共闘体制の確立が欠かせない。産別と地協へのアンケートでは、「地場集中決戦方式が地域共闘を推進するうえで効果がある」と評価する回答が最も多い一方で、「地域段階で共闘強化をめざす状況があまり感じられなかった」との回答が次いでおり、今後の課題として取り組み強化を検討する必要がある。
(5) パート・派遣労働者等非典型労働者が急増するなか、雇用形態の違いによる労働条件の格差は放置できない。ミニマム運動課題として方針提起したパートも含む全従業員対象の企業内最賃協定の締結は、一部の取り組みにとどまっており、地域のパート労働者の処遇改善につながる波及効果を発揮する状況をつくり出すまでには至っていない。
連合は、組織労働者の労働条件の維持・向上はもとより、同一職場内の非典型労働者の組織化と労働条件の整備をはかるとともに、労働協約の整備や社会的運動の強化を通じて、それらの成果を確実に未組織労働者に波及させる取り組みを徹底する必要がある。
加えて、国会で継続審議となっている「パートタイム労働法」の制定や労働者代表制の整備による、政策制度課題としての取り組み強化をはかる必要がある。
U.2004春季生活闘争における具体的な取り組みの結果
1.賃金改定の取り組み
(1)要求状況について
@ 2004春季生活闘争における地場集中決戦エントリー組合は371組合にのぼるが、このうち平均要求方式ないし個別要求方式による賃上げ集計の対象となる組合は308組合である。賃上げ集計の対象から除外したのはハイ・タク関係労組で、これらは歩合給制度が一般的なため、通常の賃上げ要求・回答形式とは異なり集計システムへの入力ができないためである。
308組合の要求方式の内訳は、平均要求方式が297組合、個別A方式が3組合、個別B方式が8組合であるが、A方式の3組合はすべてベア要求を行っていない。また、B方式では3組合が定昇確認交渉にとどまり、賃上げ要求を行ったのは5組合でそのうち2組合は個別方式の要求に対して、会社側は平均方式で回答している。
A 道内地場組合の大半が平均要求方式のため、連合北海道は昨年と同額の「5,000円+α」を要求目標に掲げた。また、連合は賃金カーブ維持分の算定が困難な中小・地場組合の要求目安として、初めて5,200円という具体的な数値を示しており、連合北海道の要求目標もこれを踏まえたものとした。
7月末の段階で行った要求額の集計は、加重平均で4,944円・2.06%、単純平均で5,260円・2.33%となった。加重平均の要求額が目標を下回ったが、これは賃金カーブ維持分ないしは定昇相当分のみの賃上げ要求にとどめ、純ベアを要求しなかった組合が組合員数比で全体の多数を占めたことや、要求の基礎ベース賃金が昨年より低下したからと考えられる。単純平均でみた場合、各組合は概ね連合北海道の要求目標に対応する要求額を設定したものとみられる。
(2)賃金カーブの確保について
@ 賃金改定については、昨年と同様、2004春季生活闘争の「ミニマム運動課題」として「賃金カーブの確保」を掲げた。この課題については、方針通り取り組んだ組合が多いとする産別の割合が多い一方、賃金体系が未整備な中小組合を抱える産別ほど十分な取り組みができていないとしている。さらに中小・地場組合が大半を占める地協からは、この取り組みの難しさを訴える声が多い。
A 賃金カーブの確保の取り組みにあたっては、賃金制度の有無が重要なポイントであり、賃上げ率や決着時期を左右する傾向を示している。
賃金制度が整備されているところは、少なくとも定昇分を確保するか、あるいは定昇分に加えてベアも勝ち取り妥結している組合が多い。加えて、解決時期も3月内ないし遅くとも4月の解決促進ゾーンまでに決着している。
しかし、賃金カーブが維持できなかった組合も少なくなく、賃金制度がある組合とない組合における賃上げ率の「二極化」の傾向は改善されていない。
賃金改定の最低限の取り組みは賃金カーブの確保にある。連合北海道と各地協・地区連合そして各産別は個別賃金の取り組みへの移行を促すよう、各職場の賃金実態調査など基礎的な活動を徹底し、賃金カーブ確保を基本とした運動の強化をはからなければならない。
B 8月6日、人事院は、国家公務員の給与等について政府と国会に勧告した。2004人事院勧告では、月例給と一時金の改定が据え置かれ、99年から続いた年収マイナスに歯止めがかかり、6年ぶりに年収が維持される。あわせて、地域別の官民格差を考慮して俸給表水準を引き下げるなどの「給与構造の基本的見直し」に向けた報告も行われた。
焦点の寒冷地手当は「民間準拠」を理由に、支給地域の大幅縮小、支給額は約6割程度に削減されることになった。道内自治体の寒冷地手当も国公準拠を基本に今後見直しが避けられないが、寒冷地手当法が維持されたことを足場に、実施時期、経過措置、加算、地域区分など十分な労使交渉が求められる。
連合は、公務員制度等改革対策本部を中心に公務労協と連携し、公務員制度改革関連法案や地域給与の検討などに、必要な取り組みを行う。
(3)回答・妥結状況について
@ 地場集中決戦にエントリーした371組合中、7月末時点で302組合が決着したことが確認された。昨年は同時期に263組合が解決しており、今年はエントリー組合が増加した分上乗せされていると考えられる。
しかし、経営側の姿勢は昨年と同様に厳しいものがあり、賃上げより雇用確保、倒産防止を優先する態度だった、あるいは不況を理由とした低額回答が多かったとする産別が多い。また、合理化提案、労働条件の切り下げ、賃金制度の変更など経営側からの逆提案を受けて、交渉が難航した組合も少なくない。そのため定期昇給制度があってもベア要求を断念したところが9組合、賃金制度がない4組合では賃金要求そのものを見送っている。また、このほか賃上げは要求したものの17組合がゼロ回答で妥結を余儀なくされた。
A 平均要求方式による地場組合の妥結集計結果は、7月末現在、単純平均で3,054円(昨年比+142円)・1.36%(同+0.05)、加重平均で3,525円(昨年比−274円)・1.46%(同−0.11)となり、加重平均をみた場合、昨年を下回る過去最低の賃上げ水準となった。
また、加重平均による妥結集計を規模別でみると、集計人数の最も多い300人以上規模では、昨年より423円少ない3,782円に落ち込んでいるが、299〜100人、99〜30人、29人以下では、いずれも若干ではあるが昨年より妥結金額が上回っており、下落傾向に歯止めがかかった。
なお、連合本部による地方賃上げ集計(交通運輸を除く地場組合・加重平均)では、北海道は3,817円・1.56%となっており、全国計の4,058円・1.55%に比べて金額では下回った。
B 一時金の妥結状況は、業種・規模ごとのばらつきが大きく、また、賃上げが抑制されるなか、企業業績を一時金に反映させる近年の傾向がよりいっそう強まっている。
妥結集計結果は、年間協定を締結した110組合の加重平均で1,120,162円(昨年比−30,134円)・4.07ヶ月(同−0.04ヶ月)、単純平均で903,075円(昨年比−52,910円)・3.90ヶ月(同−0.09ヶ月)となった。また、昨年の支給金額と比較可能な96組合のうち、同額かそれ以上の組合は49組合、ダウンした組合は47組合で、企業業績による支給額の格差は拡大したと考えられる。
夏季分160組合の集計は、加重平均で559,989円(昨年比+2,802円)・2.11ヶ月(同+0.09ヶ月)、単純平均で442,024円(昨年比+3,235円)・1.92ヶ月(同+0.03ヶ月)と前年実績を上回っている。短期的には、企業業績がやや改善する傾向を示したものと推測される。
(4)闘争日程と地場集中決戦の結果
@ 3月17日〜19日の中央主要組合の一斉回答に続いて、北海道は3月22日〜31日を第1次地場集中決戦ゾーンに設定し、なかでも22日〜24日を最大のヤマ場として回答引き出しをはかった。また、設定した第1次ゾーンに先駆けて、中央の集中回答日と同時期に回答を引き出し・妥結した地場組合が22組合あり、中央の結果を待つのではなく、積極的に早期解決に打って出る組合が増えたのも特徴的なことである。
この第1次ゾーンでは、最大のヤマ場の3日間で34組合が妥結し、ゾーン最終日までに先行妥結組合も含めて昨年より12組合多い92組合が決着した。昨年に比べると交渉の前倒しが進み、ゾーンへの集中度が高まったと言える。
A 年度あけの4月初旬に照準を合わせ、また4月内決着に向けて弾みをつけるべく4月5日〜9日を第2次地場集中決戦ゾーンに設定した。この期間中には27組合が解決し、昨年の20組合に比べて増加した。この第2次ゾーン終了時点で累計127組合が決着しており、昨年より20組合増えている。
B 4月内総決着をめざし、4月19日〜25日を解決促進ゾーンに設定して追い上げを図るとともに、4月16日の闘争委員会において「賃金カーブ維持分および昨年実績の確保、または3,200円以上の獲得」とする妥結ミニマム基準を示して、早期解決と地場相場の水準確保を図ることとした。
その結果、解決促進ゾーンまでに189組合が妥結し、さらに4月末までには昨年より38組合多い208組合が決着しており、この時点でエントリー組合の56%が解決した。なお、4月末時点の妥結集計は加重平均で3,650円となり、総体的には妥結ミニマム基準を上回る状況で推移した。
C 5月以降にもエントリー組合の約半数近くが決着を持ち越しており、その多くは地区中小労連、地域ユニオンや地区直加盟組合、そして交通・運輸関係の地場中小組合などである。長年、これらの中小・地場組合の早期解決を課題としてきたが、今日なお克服し切れていない。地域・地区段階での支援のあり方を、産別とも連携してより深く検討する必要がある。
3.パート労働者の処遇改善と企業内最低賃金の協定化
(1)パート労働者の処遇改善と組織化
@ 連合北海道は、ここ数年パートの賃上げ要求基準を設定してきた。2004春季生活闘争においても昨年と同様、格差是正分も含めて10円以上の引き上げに取り組むこととした。
パートの時給引き上げを要求した組織では健闘したところが多く評価できる一方、状況把握ができている組合数は増えず、パートの賃上げの取り組みは限定的となっている。道内ではパートを組織化している11組合が時給で3円から30円の引き上げを勝ち取っている。
A パート労働者の賃金・労働条件など処遇改善に取り組んでいるのは、主に流通・製造関係でパート労働者を組織化している組合である。正社員からパート労働者などの非典型労働者への置き換えが進み、すでに基幹的労働者に位置づけられている。
企業内最低賃金やパート採用給について、正社員との初任賃金における時間換算額と合わせる取り組みや、育児・介護休暇制度等における処遇を合わせる取り組みなど、具体的均等待遇の取り組みを進めなければならない。これらの地道な取り組みに加え、組織化と合わせた取り組み強化が求められている。
(2)企業内最低賃金の協定化
@ ミニマム運動課題である「全従業員対象の企業内最低賃金の協定化」については、その取り組みには産別間で大きなばらつきがあり、全体の取り組みからすると十分だとは言い難い。
A この取り組みは、とくに中小・地場組合の賃金底上げをめざし、併せて法定最賃の引き上げにつながる課題であり、より多くの産別・単組が協定化をはかることによって社会的波及効果を期待することができる。また、現在新設をめざしているハイ・タク最賃についても、企業内最賃協定の締結を進めることは極めて重要な課題である。
4.不払い残業の撲滅と総労働時間の短縮の推進
(1)「不払い残業撲滅」の取り組み
@ 昨年来、連合が行ってきた不払い残業撲滅のキャンペーンが奏功して、社会的問題意識は急速に高まり、労働行政としても積極的に取り組む姿勢を示している。しかし、相談ダイヤルには相変わらず不払い残業を訴える声が絶えず、この問題の根深さと広がりは依然として解消されていない。
(2)総労働時間の短縮
@ 総労働時間の短縮を推進していくための基本は、何よりも適正な労働時間管理を徹底することである。多くの産別で労働時間管理についての協定化などの方針化がなされているが、単組段階では取り組んだ組合は少ないとみている産別が多く、この課題の職場への浸透度はまだまだ十分とはいえない。
5.政策・制度課題と雇用確保の取り組み
(1)年金を中心とする政策・制度課題への対応
@ 負担増、給付削減を中心とした政府の年金制度改革案に対して、連合は安心と信頼の年金制度確立を求めて全国的な改悪反対キャンペーンの諸行動を全国的に展開した。
連合北海道は、独自にキャラバン行動や署名行動を実施し33万筆を集めたほか、3月に「年金何でも相談」を全道一斉に行い、1日で327人にのぼる面談や電話相談に対応し、年金問題に対する道民の関心の高さを物語った。
A 年金問題は、7月の参議院議員選挙の一大争点となり、政府案に対する国民の不信や小泉首相の不誠実な対応への不満が現れ、与党の退潮につながった。
連合は、公平・公正で、真に国民皆年金となる制度の確立をめざし、基礎年金の税方式を柱とする抜本改革実現のため、引き続き組織内外の取り組みを強化し、その実現をはかることとする。
(2)季節労働者の雇用と生活の安定
季節労働者の通年雇用安定給付金制度(冬期雇用援護制度)が、2004年度から見直されることとなり、連合北海道は当該産別と連携して、国に対して見直し案の弾力運用を求めるとともに、適用除外とされる仕事のない季節労働者の雇用・生活対策の実施を道や市町村に求めてきた。
(3)経営者団体との雇用対策等に関する基本的合意
本道の2003年の年平均完全失業率が6.7%と前年より0.7%上昇するなど過去最悪となっていることから、連合北海道は北海道経営者協会との間で「雇用対策等に関する基本的合意」の締結を行った。この中で、雇用情勢に対応した取り組みとして、@雇用の維持、安定の取り組み、A失業なき労働移動の取り組み、B若年者、高齢者雇用等の取り組み、C北海道地域労使就職支援機構を活用した取り組み、について合意をはかった。
これらに加えて、政府の年金改革法案に対しては、年金制度の安心と信頼を強めるよう検討すること、さらには税制、医療・介護保険制度等を含む総合的な社会保障制度の確立を求めることについて合意した。また、労働時間の適正な管理に努めることについても一致したが、とくに「不払い残業」問題に触れて文書化することに対しては、経営側は難色を示した。
V.今後の検討課題と方向性について
1.全体の枠組み
連合・産別・単組の役割の明確化と社会的労働運動強化を柱とした、春闘改革は着実にその歩みを踏み出している。われわれは、この歩みを確実なものとするため、4つの最重点課題と3つのミニマム運動課題の具体的取り組みを検証・総括し、今後の取り組みについて、さらなる機能強化を求め再整理する。
地方連合会としての連合北海道の役割は、この全体の枠組みを踏まえつつ、産別タテと地域ヨコの有機的な連携を構築して、春闘改革の息吹を地場春闘のなかに定着・発展させていくことである。
2.賃金改定の取り組みについて
連合本部は「2004春季生活闘争のまとめ」において、賃金改定の取り組みについて以下の課題と検討方向を示している。
(1) わが国の景気や企業業績は回復基調にあるものの、産業間・企業間・地域間・
規模間でのばらつきは大きくなっている。連合は、賃金闘争の強化に向けて、マ
クロ経済的にみた所得分配のあるべき姿について、その理論構築を進めるとともに、
その示し方等を検討する。
(2) 企業業績の還元における一時金での対応傾向は、賃金の変動費化を進展させて
いる。連合は、賃金の安定性確保に向け、月例賃金と一時金の性格と役割の違い
を整理し、企業業績の配分において月例賃金を重視するとともに一時金の安定化
に取り組み、年収の維持・向上をはかる。
(3) 賃金改定の波及において「上げ幅」は有効な指標ではあるが、個別賃金の基本
はあくまでその水準自体である。賃金制度の有無による賃上げ結果の2極化等、
平均方式での賃金カーブ確保には課題が大きい。賃金カーブ確保に向けた「上げ
幅」指標の示し方と最低到達目標水準の示し方を改めて検討する。加えて、生活
保障賃金の活用による賃金下支えの目標設定のあり方等を整理し、賃金底上げの
取り組みを徹底する。
(4) 連合は、組織労働者の賃金改定結果を未組織に波及させる取り組み強化策を検
討する。こうした賃金底上げや企業内最低賃金協定の取り組み強化を通じ、地域
別最低賃金の引き上げや産業別最低賃金の拡充の取り組みを強化する。
とくに、総合規制改革会議等で提起された、産業別最低賃金制度の検討につい
ては、暗に廃止の方向性が盛り込まれていることに留意する必要がある。連合は、
すでに産業別最低賃金について、その機能を継承・発展させる見直しを表明して
いるが、積極的な改定審議や新設の申し出等、具体的取り組みでその姿勢を明確
にしていく。
(5) 地方連合・中小共闘・登録組合に区分されている賃金改定集計は重複しており、
その簡素化を検討する必要がある。加えて、定昇相当分や賃金引き上げ分の単組
報告は毎年減少傾向にあり、波及に向けた効果的情報発信を基本に単組情報の集
約方法等の見直しを検討する。
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(1) 連合北海道は、本部が提起する検討課題を受けて、道内地場・中小組合を念頭に置いた賃金改定の取り組み強化策を具体化していく。
そのためには、地域ミニマム運動への参加拡大を通じた、個別単組における賃金実態の把握と賃金の底上げと格差是正につながる賃上げ要求の策定である。平均要求方式が大勢を占める道内の地場・中小組合において、自分たちの賃金水準がどのような位置にあるかを知り、企業内における不合理な格差や同業他社間との格差を埋める作業が必要である。
また、これらの取り組みを契機として賃金制度の整備・確立に結びつけていくことも課題である。
(2) ミニマム運動課題である「パートを含む全従業員対象の企業内最低賃金の協定化」に積極的に取り組み、各職場から賃金底上げの機運を高めるとともに、地域最賃の引き上げ運動に結びつけていく。
(3) 道内地場組合には、産別加盟組合に加えて地区中小労連や直加盟組合、地域ユニオン加盟組合があり、これらを含めた賃上げ集計を行い波及に向けた情報発信機能を高めていくよう、地域・地区との連携を強める。
3.地場集中決戦方式の強化に向けた課題
(1) 2004春季生活闘争では、道内地場民間組合すべてが地場集中決戦に参加することを提起したが、必ずしもその目標は達成されていない。しかし、産別や連合北海道の地域・地区組織が支援し、単組が孤立しない闘いを作り上げていくためにも、地場集中決戦への参加拡大をめざし、地場中小共闘を強化していく必要がある。
(2) 今次春季生活闘争における回答・妥結状況の推移をみると、第1次、第2次、解決促進の各ゾーンでの集中度は、昨年より増している。しかし4月内総決着をめざしたゾーン設定だけでは、約半数強の組合が決着するにとどまっており、5月以降の闘いをどう構築していくかを検討する必要がある。
(3) 早期解決や妥結水準の引き上げと相場波及といった地場集中決戦の効果を高めていくためには、中小・地場組合の交渉力を強化していくことが課題である。そのためには、職場の賃金・労働時間などの実態調査を秋季・年末段階から取り組み、各組合が要求作りに向けた職場討議などを意識的に積み上げていく必要がある。また、各地協・地区連合は、地場中小組合に対して取り組みを働きかける必要がある。
4.パート労働者等の処遇改善に向けた取り組み
(1) パート労働者等の処遇改善に向け、均等待遇実現のための労使の認識一致に向けた具体的取り組みや多様な要求目標設定とその具体的取り組みについて検討する。各組合はそれらを踏まえ、時間当たり賃金の改善と全従業員対象の企業内最低賃金協定の取り組みをすすめる。
(2) 国会で継続審議となっている「パートタイム労働法」の制定や労働者代表制の整備等、政策制度課題として連合本部とともに取り組み強化をはかる。
(3) パート労働者との対話・交流などの具体的取り組みを通じた組織化の取り組みを強化する。
以 上