連合北海道と中華全国総工会は、94年に定期交流の約束を交わし、今まで都合6回の交流を行ってきました。
 今年は12月9日から16日までの間、4名の代表団が来道しました。
 その中で、連合北海道との懇談で提起された「中国とその労働組合の課題」をお知らせします。
 連合北海道 国際部

定期交流 代表団
団 長 李 永順 黒龍江省総工会副主席
団 員 馬 貴春 遼寧省総工会副主席
     宋 貴超 吉林省総工会常務委員、宣教部長
     王 明然 中華全国総工会国際部処長

中華全国総工会 国際部日本処 王 明然 処長 講演
 
○ 中国の政治経済
 
 政治情勢は安定している。GDPは昨年1兆ドルに迫り、今年は突破するだろう。
工業生産は+9.3%、経済成長は+7.3%で、外貨準備も2,000億ドル台となった。
国民の預金は7兆元(約84兆円)まできたし、今年から第10次5カ年計画が始められて、今後も安定的に成長するだろう。
 
○ 重大な失業問題
 
 特殊事情として「シャガン労働者」の問題があり、1,100万人いる。このうち600万人は再就職を実施したが、500万人残っている。
(注 シャガン労働者とは、籍は企業に存続するが、つくべき仕事が無い実質的失業状態にある労働者で、社会主義市場経済路線に変換以降出現している)
 
 中国のWTO加盟は公営企業の経営と国際競争力に影響があり、シャガン労働者の拡大をはじめ、失業が拡大される傾向になるだろう。雇用創出と維持を課題にしたフォーラムを欧米諸国とともに開催したり、努力している。
 失業率は3%台であるが、これは登録労働者のみの数字なので、実際は5%台になるだろう。古い産業や競争に負ける企業(紡績、炭鉱、軍需、機械)や、中高年齢者・低教養労働者、単一技能労働者などが多く失業している。女性が半分だ。
 総工会は労働に関する立法や政策協議に参加しているし、技能訓練(ハイテク分野への職種転換)は組合所有の教育施設でも実施している。また、総工会が就職斡旋も行い、組合が経営する4,000カ所の施設で150万人の雇用を創出したし、自営市場(バザール)を運営して、4万カ所で65万人の雇用をつくった。生活応援基金を創設した。
 
○ 社会主義市場経済下で労働組合は変わりつつある
 
 労働関係は大きく変化している。中華全国総工会の任務も拡大されているが、同時に方針転換の時期でもある。95年の第12期第5回執行委員会でも「労働者の合法的利益の擁護」を確認した。
 特に92年に労働法が制定され、労働協約制度や労使協議(平等協議)ができてから、@従業員代表大会(組合総会)における民主的企業管理の徹底、A会社事務の公開、B賃金交渉の開始、が進んでいる。
(注 中国は「経営者」ではなく「企業管理者(総経理)」で、組合員でもある。原則的に社会主義経済となっている。(一部外国資本や郷鎮企業を除く))
 
○ 組織拡大に成功
 
 市場経済で私企業が増える中、国営企業の株式会社化や民営化により労働組合が無くなることがあったため、中華全国総工会の組織数も9,000万人まで下がったが、今は2億5千万人の労働者のうち1億3千万人を組織している。
 外資系の企業も6〜7割を組織化できた。
 労働法では25人以下の企業では組織を作れないが、これに働く労働者を吸収するため「地域ユニオン制度」を進めている。
 
○ 全国規模の社会保障制度の創設が急務
 
 今まで企業ごとの保障制度であったものが、企業の弱体化で機能不全になりつつある。社会保障制度はこの救済であるとともに、企業にとっても、分離することにより競争力の向上に寄与している。
 たとえば、3,170万人の年金を企業から分離して社会保険年金にした。
 また、医療保険も、320地域で新たな医療制度法案をつくり、そのうち284地域で4,332万人が参加している。問題は自己負担額の設定である。
 その他の社会保険も創設されている。失業保険は1億408万人、労働災害保険は4,350万人、生産奨励保険もある。
 総工会は創設に関与したとともに、実施状況のチェック、財源の監督を重視し、企業・労組・政府の3者による監督委員会で行っている。
 そのほか、組合独自に補完的な保険も持っている。480万人が参加している。
 
○ 中華全国総工会の課題
 
 中国では1956年に労働法が制定され、労働組合も創設されたが、92年に4箇条が改訂され、2001年1月10日成立した改訂では57箇条が改訂された。全面的な改定である。
 社会主義市場経済の現実に合わせた主な改訂は@労働組合の機能を明確にした(労働者の合法的利益の擁護)、A労働組合の政治活動を是認、B組織活動の強化(妨害・結成阻止の禁止)、C役員の保護・解雇禁止(雇用期間が終了しても役員である間は解雇できない)、D経費の確保(組合費は0.5%)と財産の保護、E罰則を創設し、司法提訴可能に。
(注 組合の経費は組合費0.5%と、企業負担2%で成り立っている。ただし企業負担を実際実行しているのは6割程度らしい)
 総工会は今後も労働法制の確立と雇用問題に取り組む。
 
○ 遼寧省の状況(馬 副主席の室蘭講演)
 
 面積は14.5万平方キロ、人口4,700万人。1,000万人が労働者で省総工会は819万人を組織している。
 産業は重化学が多く、製鉄・石炭・石油・化学・重金属などで、軍需産業も多い。
 渤海と黄海に囲まれ、交通も要衝となっている。
 省内は14の地域に分かれ、それぞれに地域総工会がある。専従は31,000名で、省総工会には130名が専従している。
 省内に22,000社の企業がありそのうち500社が大・中企業で、全国の1/10である。
 遼寧省総工会は@労働者の利益の保護、A労働関係の調整などを主な任務としているが、やはり最大の問題は雇用問題である。