連合北海道第17回年次大会

会 長 挨 拶

2004年10月29日

 

 連合北海道・第17回年次大会にご参集の大会構成員の皆さん、大変にご苦労様でございます。この一年間、各構成組織ならびに地協・地区連合の皆さんには、連合北海道の運動推進に対しまして、大きなお力を賜りましたことに心から感謝を申し上げます。

 また、本日は多くのご来賓の皆様にご臨席を賜っておりますが、大会構成員を代表致しまして御礼を申し上げる次第でございます。誠にありがとうございます。

 

 本年は台風被害が相次ぎ、道内におきましても台風18号が大きな被害をもたらしました。

また、その後の兵庫における水害、さらにはつい先日発生した新潟中越地震など、多くの皆さんが被災されるとともに、幾多の尊い人命が失われています。 

大会冒頭にあたり、心からのお見舞いと犠牲となった皆さんのご冥福を衷心よりお祈り申し上げる次第でございます。

 

 さて、極めて限られた時間でありますが、私の方からはこの1年間の活動を振り返りながら、幾つかの運動テーマについて課題提起をさせていただきたいと存じます。

 

 一つは連合運動の再生と活性化、そして社会的責任の遂行についてであります。

 企業経営に関わる各種の不正行為が多発しています。また、内部告発や当局の調査によりまして不払い残業として摘発された企業が全国1200社、金額で280億円にのぼっていますが、摘発されたものは氷山の一角に過ぎないとの報道があります。

深刻なことは、それらの多くは労働組合が存在する企業であり、真に申し訳ないことに、北海道ではありませんが、私の出身産別関係企業の一部でも同様のことがあったことが判明しています。

今、労働組合は自らの姿を律しつつ、毅然とした労使関係のもとに組織内の信頼を確立することが急務となっているのではないでしょうか。

申し上げるまでもなく、そのことは構成組織の運動の延長線上に存在する連合運動、なかんずく連合北海道のあり方に関わる問題でもあります。

構成組織とともに連合北海道としての内的な改革を進め、信頼を取り戻す努力をしなければならないと決意をしているところであります。

連合北海道運動の再生、活性化について申し上げます。

運動の再生、活性化に向けて最も肝心なことは、個々の運動に具体的目標を掲げて成果を追求することであり、その結果の徹底した分析の上にたって、運動のスクラップ&ビルドを日常的に行うことであろうと思います。

厳しい言い方になりますが、ややもすると、言いっぱなし、やりっ放し、昨年と今年に何の違いがなくとも平気、という組織的睡眠状態に陥っている懸念なしとはしません。

 次に、外部からみた運動の価値をどう創るかということについて申し上げます。

連合北海道は社会から見て本当に有用な価値を持つ存在なのかどうか、

勤労者はもとより多くの社会団体から何をどのように期待され、信頼とか尊敬の対象になっているのかどうかを常に見極める努力をしなければならないと思います。

そのためには引込思案の組織から脱すること、つまり、これまでの交流の範疇を超えて多くの社会団体との活発な交流に先ず踏み出さなければならないと考えます。

この取り組みは連合運動の新たなミッション(使命)を見いだすことであり、政策実現力を含めて、今、われわれが現実に感じている連合運動の閉塞感を払拭する糸口となるのではないかと考えるところであります

次に、未組織労働者との連帯システムを創るという取り組みについてであります。

実は、昨年も未組織労働者との連帯について、ビジターという概念を用いて同様のことを申し上げました。

今年はそのことに具体的な糸口を得るために、十分とは言いかねますが人材と組織ならびに資金の手当てをさせていただき着手したいと考えています。

仮称を「組織化センター」として後ほど提案をさせていただきますが、産別運動とリンクした新たな組織化行動システムの概念設計や、多分、ケータイ・パソコン社会における未組織労働者との効果的な連帯システムとして期待できる、サイバー・ユニオンの北海道版造りの足がかりを得る取り組み、さらには組織化に関わる人材育成にもトライをしたいと考えます。

道内の非典型労働者の比率が37%を超え、パートタイム労働者が40万人を超えるという現実の中で、幅広い労働者連帯や組織化の取り組みは、従来の取り組みの概念を超えたところにしか成果を求めることはできないと感じています。

ただ、われわれのトライアルは、風車に挑むドン・キホーテのようなところがあるのかもしれません。難しい取り組みになることを率直に申し上げ、構成組織、地協・地区連合の大きな支援・協力を要望しておきたいと考えます。

 

 二つには雇用と生活に関わる課題への対応についてであります。

 ひと頃よりは失業率や有効求人倍率は改善されています。

しかし、その絶対値は極めて不十分な水準であるとともに、雇用の質はさらに悪化する傾向にあります。また、若年者の失業は10%を越えていると言われており、NEET(Not in Employment, Education or Training)と呼ばれる存在の拡大と相俟って、近い将来における大きな社会不安の火種となることが懸念されます。

加えて所得水準の格差拡大と総体的な水準低下という事態もまた、ボクシングで言うところのボテー・ブローのようにわれわれの生活体力を弱らせています。

 雇用問題を打開する道筋は極めて困難なものがあります。

勿論、現在においても政治、行政の課題として雇用対策が講じられていますが、いわばツギハギのパッチ・ワークのようなものであり、その政策効果は限定的なものにとどまっていると言わざるを得ません。

このような状況を放置した場合は、社会保障制度における一定程度以上の加入率や保険料収入という前提条件を崩壊させるとともに、階層的な対立に拍車をかけ社会の大きな混乱要因になると指摘せざるを得ません。

 結局のところ市場経済主義と言われるものは、若者から雇用を奪い教育の機会も与えないということ。そして、若者のみならず中堅以上の労働者に対しても、経済、社会の急速な変化に対応するための能力形成の機会を奪っていることが明確になったと断言できるのではないでしょうか。

今こそ、「雇用問題はこの国の社会構造の根幹に関わる課題」と捉えた抜本的な雇用政策に転換し、政治の責任はもとより、雇用に関わる企業あるいは経営者の責任についても一層具体的な形で遂行を求めるべき時代に入っていると考えます。

 もとより、小泉政治に代わる「労働を中心とする福祉型社会の実現」を標榜する政権を早期に誕生させることが最も効果的な雇用政策となることは言うまでもありません。

 所得水準格差の拡大問題についてごく簡単に触れます。

 所得格差の拡大に歯止めをかけなければなりません。

そのキーワードは雇用形態に影響を受けない均等待遇の早期実現であろうと思われます。

しかし、均等待遇の実現が早期に図られることを期待することは現実的ではありません。

従いまして、その前段における企業内最賃協定締結組織の拡大と、企業内最賃の延長線上における法定最賃水準の底上げが重要な取り組みとなります。

企業内最賃協定については、05年の春季生活闘争の中で心してかからなければならない課題としてご認識をいただきたいと思います。

 また、その意味でも6年越しの取り組みで新設申請に辿り着いたハイタク最賃につきましても、申し上げた観点から、何としても現実のものにしなければならないと考えるところであります。

 

三つには道政課題への対応について申し上げます。

 先ず、高橋道政下で明らかになった道警報償費問題についてであります。

警察組織に対する道民の信頼をこれ以上失墜させることなく、全容を解明したうえでその結果を開示するとともに再発防止策と責任の所在を明確にするなど、不条理を不条理のままに葬ることなく処断することが、知事としての道民に対する責務であることは論を待ちません。

そして、そのことは取りも直さず、そのような不正に関わることなく道民の安全のために、日々黙々と業務に精励している圧倒的多数の警察官の名誉に関わるものであると考えるからであります。

次に、高橋道政についてであります。

道政運営については、常に様々な角度から評価がなされるべきものと考えます。

ただ、現在の道庁は道民生活や地域社会の劣化を最小限に抑えながら、地域主権が確立された新たな地方政治に辿りつく手前の急峻な坂道を前にして、どのルートをどのように登ろうかと思案している状況にあると形容できるのではないかと思います。

従いまして、こんにちの自治体が置かれている環境条件から申し上げますなら、どなたが知事であっても、多くの道民が合格点をつける運営は期待できないと思います。

また、評価と言いながら自分の立場からの一方的な要求や、不平不満を言い募ることも私としては潔しとしません。

ただ、1年半を要して知事を頂点とした道庁組織の一体性が整ったかどうか?基礎自治体たる市町村との密接な連携プレイが可能になったのかどうか?知事の道政づくりに対するメッセージが具体的に道内各界に伝わり、各界からの協力の形が整いつつあるのかどうか?…について問われた場合は「未(いま)だしの感あり」と答えざるを得ません。

ましてや、道州制特区問題に関わって政権党の議員が国の出先機関を恫喝するというような知事周辺の構造については、これまた感心できないと言わなければなりません。

 改めて申し上げるまでもなく、少なくとも連合北海道が目指す「労働を中心とした福祉型社会」と高橋道政の基本スタンスが同一のカテゴリーに属するとは考えていません。

私たちが目指す社会に相応しい知事の誕生に向け、連合北海道として努力を続けていくことに変化がないことを明確にしておきます。

 

最後は政治活動と国民・道民運動課題についてであります。

 先の参議院議員選挙は連合の8候補が全員当選し、民主党は50議席を獲得して改選議席では第一党になりました。ただ、民主党の真の実力による勝利というよりも、小泉政治への批判の受け皿という要素が大きいことを率直に受け止めなければならないと思います。

また、党のみならず連合も、8候補が獲得した記名の票が組織人員の24%にとどまったことは、大きな課題として受け止めなければなりません。

さて、第二次の小泉改造内閣の最も重要な課題は「郵政民営化」の実現だということであります。しかし、国民が切実に願うのは郵政民営化ではなく、経済対策であり、雇用対策であり、信頼できる社会保障政策の実現であり、安全と平和に関わる課題であることは調査をするまでもなく明確なことです。

小泉政治は、国民の感性と完全な“チャンネルずれ”を起こしています。

 政権奪取に向けた闘いまでの時間は、さほど遠くはないと思います。

 

 しかし、忘れてはならないことに、政権奪取に向けた民主党の内的な課題、すなわち憲法問題を始めとする政策の収斂に関する問題があります。

一方、それ等のことは連合の課題でもあり、写し鏡の問題でもあると言えます。

有事法制、日米関係、イラク自衛隊派遣、国際貢献、社会保障制度、税制、教育基本法、地方分権、道州制、地方財政、郵政民営化…等々、多岐にわたり微妙な差異があります。

 連合組織内部が不一致状態を解消しなければ、政党に持ち込むことはできません。

 これらの政策課題について、各級の連合組織において勇気をもって論議に入るべき時期を迎えているという認識を、連合北海道内における共通項にしたいということを提起させていただきたいと存じます。

また、一方において、待ったなしの政局が想定される中において、政党側の論議と選択を見守る度量も持たなければならないと考えるところであります。

 このことに加えて、小泉政治の終焉に向けた民主・連合としての強固な闘争体制づくりについては、申し上げた課題を置いてでも心してかかるべきであると申し上げておきます。

 

なお、先の参議院選挙において、公職選挙法違反容疑により網走地協関係者5名が逮捕されました。4名は既に罰金刑が確定し、残る1名は公判中という状況にあります。

 釈明はいたしません。連合北海道の立場からは、選挙にあたってのコンプライアンスに関わる指導の不徹底について心からお詫び申し上げますとともに、今後の再発防止に向けた取り組みの強化に全力を尽してまいりたいと考えます。

また、事案発生以後の関係組織の献身的なご協力に感謝を申し上げたいと存じます。

 

 以上、大まかには四つの課題について提起し、大会論議の素材に供したいと存じます。

 

 さて、今年は例年になく天変地異に見舞われた不幸な年でありました。

 しかし、一方においては、オリンピック、パラリンピック、駒大苫小牧高校野球部の全国制覇、日ハムのプレイオフ進出、大リーグの松井・イチローなど、各選手の活躍と感動的な闘いを通じて、「チャレンジすればできる」という勇気を沢山いただいた年でもあります。本大会におきましては、連合北海道の運動に勇気と元気を吹き込み、明日からはあの選手達のように果敢なチャレンジができますよう、 活発なご論議を賜りますことをお願いして会長挨拶といたします。ご静聴ありがとうございました。

以上