2002.10.30/第14回年次大会
第2号議案
 
連合北海道
2003春季生活闘争・基本構想(案)
 
 
はじめに
 
 春季生活闘争は、近年の経済・産業構造の変化とそれに伴う企業業績や雇用情勢の悪化を背景に、従来のような相場形成・波及パターンが通用しなくなり、春闘の位置づけや課題、闘争体制のあり方について見直しが求められてきた。そのため春闘改革2年目を迎えた連合は、「2002春季生活闘争のまとめ」の中で、@春季生活闘争の中期的枠組み、A社会的合意形成による運動の強化、B「ミニマム運動課題」を中心とする取り組み、C通年的取り組みの強化と中小・地場組合への個別支援・指導態勢の整備、に関わる諸課題を春季生活闘争改革の検討方向として示し、2003春季生活闘争において具体化させることとした。
 連合北海道は、以下に掲げる春季生活闘争改革の基本的考え方に基づき、産別・単組と地域が一体となった地域共闘を軸に中小・地場組合の闘いを支え、道内勤労者・未組織労働者への波及をめざして2003春季生活闘争に取り組むこととする。
 
 
T.春季生活闘争改革の基本的考え方

  総合生活改善に向けた中期的目標を設定し、景気回復・雇用を柱とした政策要求
 実現、賃金については中小・地場組合やパート労働者などの「底上げ」に全力をあ
 げるとともに、不払い残業撲滅などの社会的運動を進める。
 
(1) 春季生活闘争を総合生活改善闘争におけるメリハリのある共闘と位置づけ、賃金等労働諸条件の改善結果を未組織労働者に波及させる取り組みとして毎年構築する。
 
(2) 「労働を中心とした福祉型社会」の実現に向け、政策課題と協約課題を含め、めざすべき働き方とくらし方の中期的な運動目標を明確にしたうえで、2・3年先を展望した計画的な運動を組み立てる。
 
(3) 連合は、雇用を中心とする政策制度要求の実現とともに、中小・地場組合やパート労働者などの労働条件の下支え・底上げを重視し、各部門・産別の調整と政労使の社会合意の推進等をはかる。そのため、協約改善を通じてすべての組合が参加する「最重点課題」として、労働時間管理の協定化による不払い残業の撲滅や、パート労働者を含む企業内最賃協定などを設定し、交渉結果の社会的波及をめざす。
 
(4) 各産別は、労働条件の維持・向上について基本的に責任を持つとともに、政策制度要求や連合が設定する「最重点課題」実現の取り組みに積極的に参加する。
 
(5) 連合北海道は、「最重点課題」の実現に向けた地域における社会合意形成などに取り組むとともに、中小・地場組合の雇用確保や賃金の底上げについて、産別との連携により個別の支援態勢を強め、解決促進と相場形成をはかるため地場集中決戦方式を基本とした共闘態勢を構築する。
 
 
U.春季生活闘争改革の具体的展開

1.総合生活改善闘争強化の視点から、政策課題と協約課題を含めた中期的な運動
  目標を掲げる。

 
(1) 当面の運動目標として、下記の課題を中心にさらに具体化する。
@ 働き方の見直しと雇用拡大をめざすワークシェアリングの実施
A 均等処遇や解雇規制などのワークルールの確立
B 雇用と生活のセイフティネットの確立と社会保障ビジョンの実現
C 働く者の立場に立った税制改革
D 賃金の底上げと最低規制
E 個別賃金を通じた社会的賃率の形成と規模間・男女間賃金格差の是正
F 労働時間の適正化と不払い残業の撲滅(ノーペイ・ノーワーク)
 
(2) それらの課題について、a)政策制度要求、b)政労使または労使の社会合意、c)労使交渉を通じた労働協約のそれぞれのレベルで実現すべき課題を明確にするとともに、連合・地方連合会、産別・産業部門別連絡会、単組の役割を明確にする。
 

2.それらを実現する中期的な活動計画のなかで、メリハリのある共闘として春季
  生活闘争を位置づけ、すべての組合が参加する「最重点課題」を設定する。

 
(1) 当面の「最重点課題」として次の項目を設定する。
 @ 景気回復と雇用を中心とした政策制度要求の実現
 A 賃金カーブの確保と中小・地場の賃金底上げ
 B パート労働者の労働条件引き上げと企業内最賃の協定化
 C 不払い残業の撲滅とワークシェアリングの推進
 
(2) 連合傘下のすべての組合がこれらの「最重点課題」に取り組み、労働組合運動の求心 力を高めるとともに、交渉結果の社会的波及をめざす。
 
(3) 規模間格差の是正、取引問題の改善、中小・地場組合の賃金制度と労働協約の整備、雇用・合理化対策などは、通年的取り組みとして強化し、必要に応じて集中期間(例えば「労働時間法制遵守月間」)の設定を行う。
 
目 的
 
政策制度要求
 
社会合意
 
通年的取り組み
 
春季生活闘争
 
<雇用>
 雇用の安定
 完全雇用
雇用創出   雇用安定宣言           65歳までの雇用
               事前協議制の確立
セイフティネット再構築 
   雇用・合理化対策
<働き方>
 働く側の選択肢拡大
 仕事と家庭の両立
無原則な規制緩和に対抗    不払い残業撲滅
                        労働時間の短縮
       ワークシェアリング         パート処遇改善
<賃金>
 格差是正
 公正な賃金決定
法定最賃           賃金制度整備   賃上げ
       社会的な評価基準         一時金
               地域ミニマム運動 退職給付
<生活>
 生活重視の経済社会再生
政府の政策転換        産業政策
社会保障ビジョン       取引関係の改善
 
 

3.働き方の見直しなどに関する政労使あるいは労使の社会合意の取り組みをさら
  に推進する。
 
(1) 働き方と暮らし方のトータルな見直しに向け、社会合意の取り組みを強め、時間外労働大幅削減など時短と、均等処遇を前提とした短時間正社員制度など、働く側の選択肢の拡大を目指す。また、取引関係の改善に向けた話し合いも推進する。
 
(2) ワークシェアリングについては、良質な雇用の創出を求め、「多様就労型ワークシェアリング」の政労使合意をはかる。そこでは、「働く側の選択肢」「仕事と家庭の両立」を念頭においた、労働時間管理と均等処遇の具体化に取り組む。
 
(3) ワークシェアリングや雇用創出などに関わる、地方レベルでの(政)労使合意についても、取り組みを強める。
 
(4) 部門や産業、業種ごとの労使協議の場を拡充し、産業構造の転換などへの対応を強める。また、企業を越えた職業能力開発の場の設置や再就職支援活動などに取り組む。
 
 
V.「最重点課題」実現に向けた取り組み

1.景気回復と雇用を中心とした政策制度要求の実現
 
(1) 景気回復に向けた政策転換と雇用創出策の強化をはかる。当面、雇用・生活・経済対策を盛り込んだ補正予算と2003年度予算の編成、公正な税制改革、雇用保険の安定強化、公務員制度の改革、医療改革などの実現を重点に取り組む。そのため秋の段階から、各種行動の盛り上がりをはかる。
 
(2) ワークルールについては、規制緩和に名を借りた労働基準の無原則な緩和を阻止し、労働契約法、労働者代表制、均等処遇の法制化をはかるなど、労働者の権利確立の取り組みを強化する。春季生活闘争時には、各労働協約の整備・改定をはかる。
 

2.賃金カーブの確保と中小・地場の賃金底上げ
 
(1) 連合は、全労働者の視点とマクロ経済の視点に立った賃金改善の役割を果たす。そのため、連合総研シュミレーションに基づいた指標の設定を検討する。また、法定最低賃金の見直しと取り組み強化について検討を行うとともに、「生活できる賃金」のセーフティーネット化など社会的な賃金底支えの仕組みづくりにチャレンジする。
 
(2) 賃金改定に当たっては、絶対水準を重視した個別賃金の取り組みを強化し、水準の社会化・横断化の取り組みをベースとし、連合・部門・産別の役割の明確化をはかる。
 
(3) 各組合は、賃金の実態把握を通じ、賃金カーブ、同業他社との格差、個人別・グループ別賃金のばらつき等を把握し、賃金水準の維持・格差是正についての労使協議を進め、賃金制度の整備をはかる。春季生活闘争時には、「賃金カーブの確保」を最低限に、企業業績に応じた水準の引き上げをはかるとともに、情報開示に努める。
 
(4) 各産別は、「賃金カーブの確保」を最低限に、組織実態にあわせたベア要求と中小・地場対策に責任を持つとともに、適切な情報開示に努める。また、共闘強化のため、産業別部門連絡会との連携や連合北海道・地協・地区連合との連携を強める。
 
(5) 2003春季生活闘争で連合は、生計費をベースとした35歳ミニマム基準と年齢ポイント毎の到達目標、最低到達目標などの参考値を示す。
 
(6) 具体的な目標(到達目標水準や引き上げ幅など)の設定は、部門連絡会の調整を踏まえて各産別で設定する。また、連合北海道は格差是正を念頭において地場賃金の水準引き上げめざし、地場・中小組合のための統一的な要求目標を設定する。
 
(7) 「地域ミニマム」運動をさらに強化するとともに、中小組合をかかえる各産別との連携のあり方や妥結基準の設定などについて、連合北海道全体の取り組みとして強化する視点で検討を進める。
 

3.パート労働者の労働条件引き上げと企業内最賃の協定化
 
(1) パート労働者の処遇改善と雇用の安定に向け、「パート・有期契約労働法」の制定をはかる。また、企業内における均等待遇の取り組みを進めるとともに、春季生活闘争時には、全従業員対象の企業内最低賃金の協定化をはかる。その水準については、高卒新規採用給の時間当たり賃金との均等をめざす。
 
(2) 連合はパート労働者の賃金引き上げに向けて、@賃金引き上げ目標と、A企業内最賃の目標を示す。
 

4.不払い残業の撲滅とワークシェアリングの推進
 
(1) 労働時間については、総労働時間短縮に向け、職場の点検活動と職場等の労使協議を徹底し、不払い残業の撲滅、恒常的時間外労働の削減、年次有給休暇の促進の取り組みを強化する。春季生活闘争時には労働時間把握の労使確認に基づく「労働時間管理の協定化」をはかるとともに、労働時間法制遵守キャンペーンを通じ、「ノーペイ・ノーワーク」の社会運動を進める。
 
(2) ワークシェアリングの視点に立った労使協議を進め、これ以上職場から失業者を出さない取り組みを徹底する。また、企業・企業グループの経営に関するチェックと労使協議を徹底するとともに、春季生活闘争時には雇用安定の確認と人事条項と事前協議制の協約整備、60歳以降の継続雇用制度の確立・改善をはかる。
 
 
W.闘いの進め方

1.闘争機関の設置と闘争態勢の確立
 
(1) 12月上旬に闘争方針を決定したのち、直ちに連合北海道に2003春季生活闘争本部を設置する。また、闘争本部のもとに闘争委員会(執行委員会で構成)を設置し、闘争指導機関として具体的な戦術決定を行う。
また戦術決定にあたっては、5つの産業別部門連絡会をはじめ、労働条件委員会、中小・パート対策委員会などの各専門委員会との連携をはかる。
 
(2) 地域においては、各地協・地区連合ごとに闘争委員会を設置し、闘争本部と連携して地域共闘への参加気運を高めていくため、地場中小組合の情報交換や学習・交流の機会の設定、短期専従者の配置、「一地区・一要求」運動を進めていく。
 

2.本格交渉前段における取り組み
 
(1) 全ての組合は、秋季年末段階から本格交渉の前段における取り組みとして、企業の経営実態や経営方針、労務政策や雇用確保の問題、賃金のあり方などについて労使協議の徹底をはかる。とくに賃金については、賃金カーブ維持の必要性と定昇相当分の確保について労使確認をめざすこととし、各産別は加盟中小組合への取り組み支援を強化する。
 
 
以 上