「自民党政策パンフレット」に対する連合の反論
2005年9月1日
連合総選挙対策本部事務局
自民党が小泉総理の主張をもとにした政策パンフレット「改革を止めるな」を出しており、各地で自民党候補がこのパンフを参考にしながら民主党攻撃を行っています。内容は、たいへん一方的な主張で、心ある人々は相手にするのも嫌だと思っているでしょうが、その反面、きちんとした反論の根拠が欲しいという要望も寄せられました。
そこで、選対本部事務局として「連合の反論」をまとめましたので、各労組での組合員への説明や候補者等の街頭宣伝等にご活用ください。なお、ページ数は自民パンフのページですが、2ページは3ページ以降の集約なので、3ページ以降の個々の課題についての反論を参考にしてください。
◆「小さな政府をつくります」について(3ページ)
自民党が言う「小さな政府」が、政府の経費を少なくするという意味であれば、この間
の自民党政権は何もしていない。政府の人件費と経費の支出である政府最終消費支出は2000 年度4 年間で名目5.4%、実質では9.4%も増加している。小泉内閣は、はじめは国債発行30兆円枠を掲げたが、結局それを達成できていない。それどころか、4年間で国債発行額は170兆円も増加している。4年間出来ないことが、同じ政権でいきなり出来るようになるのか、という素朴な疑念を持たざるを得ない。そもそも「小さな政府」「大きな政府」という考え方は、公務員の数や経費の大小ではなく、「政府がやるべき仕事の数」を問題にしているはずである。単に人件費を削減するだけで、仕事の量は減っていないのであれば、人件費が物件費に移るだけである。自民党は、政府がやるべき仕事はなにか、民間が担うべき分野はなにか、国民へのサービス水準をどうするのか、そうした議論に踏み込まず、やみくもに「民営化」ばかり唱えている。本気で政府の仕事を効率的にするのであれば、「民営化」とは別次元で、首相自らのリーダーシップによって大ナタを振るうのが先決である。それを放棄して「民営化すれば全てバラ色」と安易に言うのは無責任である。
◆「数字はウソを言いません」について(4ページ)
都合のよい数字を使っているにすぎない。自民党が使いたがらない数字としては、以下があげられる。
@ 名目GDP(国内総生産)は回復していない(2000 年度513兆円→2004 年度506兆円)
A 株式市場全体はまだ就任時以前の状態
(東証株価指数(TOPIX):(01.4.27 就任時)1366.46→770.62(03.3 月)→1114.58(公示日)
B 政府の経費と人件費:名目5.4%、実質9.4%増(00 年度と04 年度の政府最終消費支出の比較)
C 国債発行額は170 兆円増(2000 年度367.6 兆円→2005 年度538.4 兆円)
D 毎年自殺者が増えている(2001 年3万1千人→2003 年3万4400 人)
E 勤労者の現金給与総額は2001 年以降連続減少(02 年−2.7%、03 年−0.9%、04 年−0.3%)
F 貯蓄なし世帯の増加(2001 年16.7%→2004 年22.9%)
G 生活保護受給者の増加(2001 年114 万人→2003 年134 万人)
◆「郵政民営化」について(5ページ)
@ 小泉内閣の郵政民営化とは当初、民業圧迫をやめる、4社を完全分割するというものだった。しかし、その後の政府と与党の妥協によって、民営化後も4社のグループ経営が可能となった。これでは、新たな巨大金融グループが民間企業としてフリーハンドを与えられ、これまで以上に肥大化、民業圧迫に走る恐れが大きい。「改革」と言いながら、その中身は改革に逆行している。しかも、小泉内閣は、米金融業界を代弁する米政府の要求に沿って郵政民営化を行おうとしている。そのことは、アメリカ政府の年次要求書や、アメリカ通商代表部と竹中郵政担当大臣との蜜月ぶりからも明らかである。
A 小泉内閣は、法案提出の入り口でも間違いを犯している。憲法では、今ある法律を誠実に実行することが定められている。郵政公社を作った法律(中央省庁等改革基本法)では「民営化をしないという」法律がある以上、これを修正してから民営化法案を出すのが筋である。しかし、小泉内閣はそれを怠った。法治国家の首相としては信じがたい行為である。
B 民営化や規制緩和が進んだアメリカやイギリスでさえ、郵便事業は国営を維持している。ニュージーランドなどでは、郵政事業の民営化に失敗し、お年寄りが年金を受け取る手段がなくなるといった問題が頻発し、結局、郵便銀行を再び国営化するといった事態が起こっている。なぜ、諸外国の情勢に逆行し、郵便も含めて民営化しようとするのか、国会審議において明確な説明がなかった。国会審議においても、上記の懸念に対する十分な答弁は見られず、民営化すれば全てバラ色になるといった主張ばかりが展開された(国会でのやり取りは衆参両院ホームページで見ることができる。是非チェックして頂きたい)。また、先のレイバーサミットの際、イギリスのブレア首相は笹森連合会長に「日本だけが逆行しているようですね」と皮肉を言ったということであり、このことに特徴的に表れている。
◆「公務員の不正や腐敗は目に余る」について(7ページ)
税金のムダ遣いを止めること、公務員の不祥事には厳正な対処をすることは当然である。しかし、一部の公務員の不祥事を公務員全体にすり替えることは、国民の厳しい目にさらされながら期待に応えようと努力している多くの公務員をないがしろにするものである。とくに、これまでの自民党政権が、不祥事をチェックし、再発防止のリーダーシップを取ってこなかったことについて、何ら反省していないことの方が問題ではないか。
◆「民主党の年金政策」基礎年金の国庫負担について(8ページ)
国民年金の4割が空洞化していることについて、この選挙戦の間、自民党は明確な言及をしていない。自民党政権は、空洞化を放置したまま保険料を引き上げている。これは、まじめに保険料を払っている者へのシワ寄せである。当面、財源が心配だからその手当てをつくろっただけであり、決して100年プランの名に値するものではない。「民主党は基礎年金を全額国庫負担しろといっている。けしからん」といった趣旨の文章が入っている。しかし、基礎年金の国庫負担は与野党で合意しているはずである。それを無視して、野党攻撃のために利用するという矛盾は許されない。
◆「官公労は公務員制度改革に大反対している」という記述について(9ページ)
官公労を「改革反対勢力」に仕立てあげるために、意図的に事実をねじ曲げている。連合と公務労協は、公務員制度改革の実現に向けて、すでにキャリア制度の廃止、天下りの規制、新たな人事管理システムの導入、労働基本権の付与を柱とした提言を行っている。労働基本権が付与された上で、労使協議によって労働条件が変化したとしても、当該組合はそれを受け入れる覚悟をしている。この提言をもとに、この間、政府・与党との間で協議を行ってきたが、これをまともに取り上げなかったのは政府・与党の方である。公務員に労働基本権を付与することは、これまでの人事院勧告制度から、労使交渉の結果を政治=国民がチェックする透明な仕組みに変えることである。労使交渉の結果は議会が承認しないと発効しない。場合によっては労働組合も痛みを受けることになる。それでも透明な制度を労働組合自らが求めているのに対し、協議に応じようとせず、一方的な批判を繰り広げる自民党の方が無責任である。
◆「野党は労働組合のしがらみから抜け出せず」について(10ページ)
労働組合と政党とは、性格と機能を異にし、相互に独立・不介入の関係にある。それぞれが独立して意思決定をすることが大前提であり、このことは、連合の政治方針でも明確にしている。自民党こそ、企業から人・モノ・カネの支援を受け、そのしがらみから抜け出そうとしていない。それは、定率減税の見直し議論で明らかになっている。同じ「恒久的減税」である法人税や所得税の最高税率の減税措置に関しては全く議論をせず、定率減税だけを一方的に縮小した。法律では、景気回復を条件に「恒久的減税」を見直すと明確に規定している。自民党が言うように景気が回復しているというのであれば、法人税や所得税の最高税率をなぜ見直さないのか。あるいはなぜ見直さなかったのか。見直しの議論すらせず、真面目に汗して働いている勤労者にのみ負担を強いようとしているのは自民党の方である。
◆その他「サラリーマン増税」について
自民党は政権公約の中で、「政府税調のサラリーマン増税の考え方は取らない」としている。しかし、同じ8月に自民党が公表した「重点政策2006」では、サラリーマン増税についてまったく言及していない。6月に政府税調が論点整理を公表してから2ヶ月経過しており、本気でサラリーマン増税をしないと言うのであれば、なぜ「重点政策」に書き込まなかったのか。サラリーマンも含んだ国民全体に増税を求めると読むべきではないか。マニフェストもどきにあわてて書いても、いままでの選挙公約と同様の扱いにされ、反古にされる。これまでもそうだった。国債発行高30兆に抑えるという公約は、破られ、そのことを追及されると「たいしたことじゃない」と開き直ったことをみれば明らかである。連合は、国民一人一人がお互いに社会を支えあう社会が実現できるのであれば、必要最小限の負担まで拒むものではない。むしろ、国の借金を返すためだけで、その先のビジョンもないまま一方的に負担を求める自民党の方が、国民をないがしろにするものである。自民党が擁立した刺客候補を見れば、「勝ち組」が並んでいる。なかには、株を右から左に移しただけで巨額な利益を得た者もいる。しかし、現行の税制度では、額に汗して働いている者よりも税金の負担割合が低い。
以上