第41回地方委員会
U.今後の雇用対策の取り組みについて(案)第7回執行委員会確認
1.はじめに
連合北海道は、昨年11月27日米国のサブプライムローン問題に端を発した世界同時金融危機、同時不況の影響が道内経済・雇用に及んでいる状況を踏まえ、総合雇用対策本部(本部長 柳 薫連合北海道会長)を設置し雇用維持・安定・創出や離職者の生活支援、住居支援に係わる政策要求や企業倒産と労働債権確保の闘い、「契約」やワークルールの遵守を図る雇用・労働相談とその解決に取り組んできた。特に札幌本願寺別院の協力を得て実施した「札幌駆け込み寺」の取り組みからは、非正規労働者が直面している多くの問題が明らかになった。(有期雇用問題、賃金格差問題、福利厚生問題など)
政府は、5月13日15兆円に上る雇用対策を含む2009年度補正予算を衆議院で可決した。しかし、これまで与党が進めてきた市場原理主義政策による格差の拡大と地域経済の衰退を何ら反省することもなく、様々な考え方の政策を集めたに過ぎず、福祉社会をどう築き上げようとしているのか全くビジョンは見えてこない。まして、全雇用者の35%にも達している非正規労働問題や深刻化する貧困問題に真正面から取り組む姿勢は感じられない。
北海道の雇用状況は、依然として厳しい状況にある。今年4月の有効求人倍率は0.32倍(前年同月0.46倍)と前年同月を0.14ポイント下回り、30ヶ月連続で前年同月を下回っている。このような雇用環境から、さらなる雇用調整や企業の合理化が危惧される。各産別・単組は、雇用の維持・確保に全力を挙げなくてはならない。
仮に、企業が合理化せざるを得ない場合においても、ワークルールの徹底、退職金など退職諸条件の引き上げなどの取り組みが重要である。また、やむを得ず離職となった労働者に対しては、就労のための生活給付つきの教育訓練創設やすべての労働者への雇用保険適用など社会的セーフティネットの確立が求められる。
特に派遣切り・雇い止めの対象とされる非正規労働者に対しては、組織化の取り組みが重要であり、正規職員との均等待遇の法制化、退職金共済制度の創設、有期労働契約の労働者保護ルールの整備、労働者派遣法の抜本改正などが求められる。
今次の世界的な金融危機と経済、雇用危機は新自由主義の市場原理一辺倒の限界を示すものであり、雇用の維持、安定、離職者の雇用機会の確保、雇用の創出を当面の国政、道政、市町村の最重要課題と位置づけ、「労働を中心とした福祉型社会の実現」に向けた社会保障制度の再構築など「公正と連帯」を重視した社会システムの転換を図ることが重要である。
2.経過と課題
(1)連合北海道の取り組み
@ 連合北海道総合雇用対策本部は昨年11月27日の設置以降、北海道や労働局、道経協に対する緊急申し入れ(12/10)、年末12月30日まで断続的に行った労働相談の対応、函館市と苫小牧市での雇用調査の実施(1/19・20)などを通じて、非正規労働者等の緊急雇用対策や必要な情報収集などを行い、悪化する雇用の実態を確認してきた。
これらの行動を踏まえて1月22日には北海道に対して「緊急雇用対策および雇用の安定に関する要求と提言」を提出し、離職者に対する職業訓練の拡充や道の10万人「雇用創出計画」の前倒しなど、危機的な雇用情勢に対応する2009年度道予算の確立を求めた。
さらに道経協との「労使共同宣言」の確認(2/5)、人材派遣協会への要請(2/10)、「さっぽろ駆け込み寺」の開設(2/14〜4/30)、合同就職面接会の開催(3/25)など様々な課題に取り組み雇用対策の強化を図ってきた。
A 第一定例道議会で成立した2009年度道予算における雇用対策関係費は、厳しい雇用情勢を受け前年度の6倍以上となる総額117億円が計上された。主なものとして緊急雇用創出事業のための基金に53億円、ふるさと雇用再生特別基金に33億円が配分されたが、いずれも国の景気対策に伴う財政措置を背景とした予算措置である。加えて国からは「地域雇用推進費」が交付税措置され、地方自治体の雇用対策予算を補強することになった。
他方、政府は2度にわたる08年度補正予算、2009年度本予算及び15兆円規模の補正予算を組んだが、「定額給付金」や不可解な基金の乱造など景気対策の名目でいたずらに膨張させた予算は、選挙目当てのバラマキと言わざるを得ない。しかも子育て支援や就労・生活支援策などは本来、恒久的制度とすべきであるにもかかわらず時限措置とされ、我々が求める抜本的な政策転換には程遠いものである。
B いま、国や道行政としてやるべきことは、緊急の雇用創出対策をどう進めるかであるが、雇用が悪化する一方で、農業や林業・水産業などの第一次産業や介護・福祉の分野では人手が足りない状況にある。必要なことは、このギャップを埋める政策を地域や現場の声を活かして立案し予算を充てるかであり、国や道に対する要求を強めていくことが課題である。
(2)産別・単組、地域における取り組み
2008年秋以降、特に金融を中心とした世界経済の悪化は日本にも波及し、「派遣切り」「雇い止め」などに象徴されるように雇用環境を大きく狂わせ社会問題となった。
道内においては、大規模な企業倒産や事業所の廃止などが起こるとともに有効求人倍率が0.4を下回る事態に陥った。特に、丸井今井の民事再生法申請を巡っては各自治体市街地の顔・地域活性化としての役割云々だけではなく、関連企業を含めると5,500人に及ぶ労働者の雇用・生活の問題として北海道経済に大きな打撃を与えるものとなっている。また、常設、期間開設を問わず「労働相談ダイヤル」に寄せられる労働者の悲鳴や迷いの多くは人間の尊厳や生活破壊に直結する事案であり、労基法違反に問われる経営側の姿勢に起因するものである。
北海道経済と地域活性化の問題、企業経営と雇用・生活問題が不離一体の課題であり、地域内での交流や連帯の強化、単組・産別における経営チェック機能と雇用問題への関わりの強化が求められる。また、非正規社員の組織化や未組織企業における組合結成がその防止策としても極めて重要であることから、全組織を挙げて組織拡大に取り組むこととする。
3.当面の取り組み
積極的雇用政策と社会保障の拡充による新たな社会的セーフティネットの構築を図り、国民・道民の生活不安や雇用不安を払拭し、将来の安心を確かなものとするため、イ)労働行政の充実と派遣法など労働関係法令の改正、ロ)抜本的・恒久的な就労・生活支援制度の確立、ハ)「グリーン・ニューディール」を基本とした雇用創出策の推進と中小企業支援、ニ)雇用対策に関わる地方財政措置の拡充、ホ)地域医療や福祉・教育など社会的基盤の整備など、政策・制度課題の実現を国や道・市町村に対して求めていくこととし当面、地域・職場段階で次の課題に取り組む。
(1)安心・信頼の社会的セーフティネットの構築
@ 政策委員会で論議・策定する「2010年度政府予算に関する要求と提言」に基づいて中央要請行動を実施し、地域社会における雇用や生活全般に係わるセーフティネット基盤の確立を中核とする政策・制度の実現を求めていく。(7月)
A 地方議会での意見書採択の取り組みを通じて、地域から国に対して政策実現の声を集中していく。(6月)
B 医療・介護に従事する労働者の賃金を始め労働条件の改善・充実を求め、国に要請する。(7月)
(2)地域雇用政策の積極的展開
@ 「ふるさと雇用再生特別対策事業」や「緊急雇用創出事業」の政策効果を検証するため現地調査を実施し、調査結果に基づき「北海道ふるさと雇用再生特別対策事業地域協議会」等への意見反映や対道要請、議会対策に取り組む。(7〜8月)
A 各地協・地区連合は、当該市町村における「ふるさと雇用再生特別対策事業」や「緊急雇用創出事業」の実施状況・課題を把握・検証し、連合北海道が取り組む国や道への要請に反映させていくほか、各市町村における政策要求活動として展開する。(7〜8月)
A 今秋までに策定する、2010年度道予算に関する「要求と提言」において、第一次産業の振興や介護・福祉分野の雇用創出を中心に、道の雇用対策の充実・強化を求めていく。(10月)
(3)職場・地域段階で取り組みを強化する課題
@「安心できる労働環境作り」に向けて
※雇用の安定に関する労働協約の締結に務める。
※労働・社会保険加入点検活動を含めた職場点検を強化する。
※集中労働相談の開設(組織化の連結)に努める。
A「労働者の地位・処遇の向上」に向けて
※非正規の組織化の推進と未組織職場における労働組合結成に努める。
※季節労働者対策を強化する。
※最低賃金の引き上げに全力を挙げる。
4.最後に
連合北海道総合雇用対策本部は、直面する雇用危機を産別、地協組織と連携を強化し乗り切るとともに、この危機を21世紀の「労働を中心とした福祉型社会」づくりの第1歩ととらえ、関係する経済、金融、社会保障政策、地域政策、雇用政策の総合的な改革に取り組まなければならない。また、広く道民に呼びかけ合意形成に努めていくとともに、その牽引車としての役割を果たしていく。
また、国民の審判を踏まえた民主党中心の政権による経済、雇用対策の実施と雇用・生活の安心と将来不安の解消、連合がめざす「労働を中心とした福祉型社会」実現のために「政策と政治の転換」を求めて運動を展開して行かなければならない。
以 上