第41回地方委員会
第1号議案
 
2009春季生活闘争中間まとめ(案)
 
2009春季生活闘争のまとめについては、最終集計(7月1日〆切)の結果をもとに、7月16日の第22回中央執行委員会に提起し、確認する予定であるが、4月段階の解決状況をもとに「2009春季生活闘争の中間まとめ」をとりまとめる。この「中間まとめ」は、5月19日の第5回戦術委員会(第26回三役会)、5月21日の第6回中央闘争委員会(第20回中央執行委員会)の議論を経て、6月2日の第55回中央委員会に提案し、討議する。
 
T.2009春季生活闘争の結果と評価について
 
1.2009春季生活闘争の展開と背景
 
(1) 闘争推進に対する基本姿勢
連合は、消費者物価の上昇によって目減りする労働者の生活を守ることと、相場波及の効果を引き上げることを基本姿勢とし、「@賃金カーブを維持し、物価上昇分に見合うベアの獲得、A社会的所得分配メカニズムの機能強化のため共闘連絡会議を立ち上げる」ことを中心とする方針を確認した。
同時に今次闘争は、これまでの方針を継続し、格差社会からの脱却と分配の歪みの是正をめざすとともに、2008年9月のリーマンショック後の世界的な信用収縮と実態経済の悪化の中で、これ以上日本の景気と雇用を悪化させないためにも、賃金の引き上げと雇用確保を中心とする政策・制度の取り組みを一体化した闘争の推進を確認した。
 
(2) 経済・雇用情勢など取り組み環境の激変と闘争の推進
2002年以降の景気回復期において日本経済は、これまで以上に外需依存体質を強めてきたこともあって、世界的な景気後退に直撃され、輸出産業を中心に生産は急激かつ大幅に縮小されることになった。この影響は瞬く間に、非正規労働者の雇い止め・中途解約、新卒者の内定取り消しとなって表れ、雇用情勢を一気に悪化させた。さらに、交渉時においては、一時帰休の動きも広がり、雇用調整助成金の申請は大幅に増加した。
このような状況の中で、一部の産別からは「賃金だけでなく、雇用の取り組みも強化すべき」との意見もあがった。また、マスコミなどを中心に「非正規労働者が雇い止めをされている時に、賃上げ要求するのはおかしい」とか「正規労働者の賃金を引き下げて、非正規労働者の雇用を維持すべき」などの労働組合批判の声が高まった。こうした動向に対して連合は、これは背後にある企業と家計の歪んだ配分構造問題にフタをするものである。企業体力が増強されてきた中での雇用問題の発生であり、賃上げによって景気が回復すれば、雇用問題も改善できると強調する一方で、11月初めから雇用への緊急対策を政府へ申し入れるなど、産別、地方連合会を含め総力をあげて取り組みを推進した。
連合は、雇用を守ることと実質生活の維持は、労働組合として当然の取り組みであり、2009春季生活闘争は雇用と生活のため、賃上げによって消費を喚起し景気悪化を阻止するための闘いである。景気が回復すれば雇用も改善する。このため、「賃金も、雇用も」必要との姿勢を堅持し闘争を推進した。
 
 
2.賃上げの結果について
(1) 賃上げ結果
2009年の闘争方針は、これまで3年間続けた「賃金改善」という取り組みの考え方から、賃金カーブを維持したうえで、過年度物価上昇分に見合う賃金アップ分を純ベアとして獲得を目指して闘争を進めた。また、未曾有の経済危機と言われる中で、「賃金(ベア)も雇用も」必要との考え方にもとづき、最後まで、連合全体が粘り強い交渉を展開したことは、運動の前進として評価できる。同時にこのことは、「定昇さえも困難」とした経営側の姿勢を跳ね返し、ほとんどの組合で賃金カーブを維持し、一部の組合ではあるもののベアの獲得につながった。産別による企業連・単組への指導を強化し、これだけ経済・雇用情勢が厳しい中にあっても、全体として賃金カーブ維持のための財源を確保し、ベアを獲得したことは評価できる。
しかし、4月21日現在の回答集約を見る限り、物価上昇に見合うベアの獲得によって「組合員の実質生活を維持する」、「消費の拡大、内需主導型経済への転換」、「労働分配率の歪(株主重視、従業員軽視)を是正」するとの闘争方針からは、決して満足のいくものではなく厳しく受けとめなければならない。
 
(2) 定昇の実施と経営側の主張
今次闘争において一部の経営者から、定昇の実施は困難、定昇の凍結が必要との主張があったことを重く受けとめておく必要がある。定期昇給制度は、長年にわたり労使で積み上げてきた賃金制度の根幹をなすというだけではなく、職場における仕事の経験や知識の積み上げによる能力アップを処遇につなげる基本的な仕組みとして、極めて重要なものと認識しておく必要がある。また、1歳1年先輩の賃金の後を追うことによって、仕事に対する意欲の維持につながるものであり、業務コスト削減などの観点から軽々に扱ってはならない。
一方で、定昇制度そのものが無いところも多いが、このような企業では、労働者の努力や能力の向上が制度的に汲み上げられないばかりか、賃金格差が拡大する要因の一つになっている。したがって、定昇制度の無いところでは、その相当分を必ず確保する必要がある。
今次闘争の経営者側の主張は、組合員の生活には目を向けず、企業の都合によるミクロ論に終始したものであり、これまで積み上げてきた労使関係を軽視するものであると言わざるを得ない。
 
(3) 進捗状況の遅れ
厳しい環境の中で今次闘争の解決状況は、組合数で全体の4割、組合員数で7割程度の回答状況(4月現在)となっており、昨年比で1割程度の遅れとなっている。これは、取り組み環境が激変するもとで交渉の進捗に遅れが出たことや、第1のヤマ場を3/16〜19としたこと、要求の再検討をせざるを得ない組合があったこと、要求そのものを見合わせた組合が出たことなどが影響していると考えられる。引き続き闘争の進捗に留意し、必要な対応を進めていくこととする。
 
(4) 共闘連絡会議の発足
一方、今次闘争から相場の波及力の強化に向けて、5つの共闘連絡会議を発足すると同時に、中核組合(360組合)を改めて設置、闘争体制そのものの枠組みを大きく変え、取り組みを推進した。そこに結集した38産別は、この場を重視し相互に連携を持ちつつ足並みを揃えヤマ場に向けて取り組みを展開したことの意義は大きい。また、中核組合を設置し交渉を進めたことが運動の前進につながったといえる。
 
(5) ヤマ場への集中化・前倒し
また、3/17〜19の最大のヤマ場に、従来以上に各産別・単組の回答の集中化を達成、各産別が回答の前倒し努力に向けた取り組みの軌跡を残すことができた。そして、最大のヤマ場直前の3月16日に、26組合の回答状況を公表できたことは、共闘連絡会議や有志共闘による取り組みの積み重ねが、結果につながったと評価できる。
 
(6) 企業内最低賃金協定の締結
企業内最低賃金協定の締結拡大、水準の引き上げについては、一部での成果があった。今後も、企業内最低賃金協定の締結拡大や水準の引き上げは、賃金の底上げや格差是正を進めるうえで極めて重要な取り組みであり、運動を強化する。
 
(7) 賃金カーブ維持分の情報開示
連合は、従来から賃金カーブ維持分の情報開示を行ってきたが、今年は制度の重要性や各産別の定昇水準などの情報が概ね適確に伝わり、マスコミ報道も含め、定昇とベアを区別することの必要性など理解が進んだと受けとめる。
 
(8) 中小共闘の推進
しかし、中小労組の回答の引き出しは例年になく遅れており、回答内容も厳しい集約状況となっている。中小労働者の格差是正のためには労働条件の取り組みだけではなく、取引の適正化、公契約運動、中小企業対策等の政策・制度面も含めた取り組みの一層の強化が必要である。また、地域ミニマム運動の拡大とともに、格差是正につながる地域共闘の一層の強化をはかっていく。
 
(9) パート共闘会議の闘争
パート共闘会議による取り組みは、パートタイム労働者の処遇改善に取り組む組合数(2,152組合)が大幅に増加したことや、時間給の改善等着実な前進も見られた。また、重点的項目として設定した正社員への転換制度等にも前進がみられた。今後も、これまで以上に参加産別・単組の拡大を図りながら、ガイドラインと連動した政策課題への取り組みや組織化の強化が必要である。
 
(10) 男女間の賃金格差の是正
男女間の賃金格差是正に取り組んだ組合は195組合で、うち解決は18組合にとどまっている。人事・処遇制度等の整備は進みつつあるが、運用面や賃金の実態把握を行い、その分析にもとづき格差是正に向けた取り組みを進める必要がある。
また、この賃金格差の要因は、男女間だけではなく就業形態の違いも大きく影響していると考えられ、正規・非正規労働者間の賃金実態の違い等も分析しつつ、均等・均衡待遇の実現に向け取り組みを進めていく。
 
 
3.社会的所得分配メカニズムの機能強化(共闘連絡会議の立ち上げ)
(1) 共闘連絡会議の運動
共闘連絡会議は、発足1年目の取り組み展開ということもあり、スタート当初の手探りという状況もみられたが、共闘連絡会議を重ねるごとに共闘の理解も進み、相互の連携のもと取り組みが前進したと考える。今後の一層の強化に向け取り組みを積み重ねていく。
 
(2) 情報開示と具体的な共闘(賃金)指標の整備
今年から新たにスタートした中核組合を中心とした情報開示によってし、波及力を高めるための取り組みは、枠組みとしては大きく前進したといえる。しかし、中小労組や未組織労働者、地域への波及力を高めるためには、一層の情報開示の努力が必要であり、別途、どのように労働諸条件を把握していくかについて調査を含めて検討していくこととする。また、今次闘争では、産業ごとの賃金指標を参考として提示したが、今後は、それとは別に具体的な運動に結びつく賃金の水準(指標)について検討を行う。
 
(3) 共闘連絡会議の相乗効果
また、本年は従来に比べれば最大のヤマ場への集中化が進んだと受け止めるが、これらについても共闘連絡会議を設置し取り組みの相乗効果を求めたことの成果が出たと考える。
 
(4) 共闘連絡会議の一層の強化
以上の結果から、共闘連絡会議は、今後の共闘に向けた共同行動の第一歩を踏み出すことができたものと受けとめる。しかし、労働市場が大きく変化する中で、労働条件の社会化などの必要性も高まっており、今後どのように対応していくかを含め、産別間の相互信頼を醸成しつつ、共闘連絡会議の一層の強化に向け、取り組みを進めていくこととする。
 
 
4.ワーク・ライフ・バランスの実現、長時間労働の是正
(1) ワーク・ライフ・バランス実現と雇用の確保に向けた時短
今次闘争は急激に悪化する経済、雇用状況の中で、賃金交渉が難航を極めたこともあって、ワーク・ライフ・バランス実現のための労働時間短縮の取り組みにも大きな影響を与えることになった。しかし、この取り組みは仕事と生活の両立をはかるということだけではなく、雇用の確保という観点からも極めて重要な取り組みであり、今後、どのような取り組みでいくのか改めて整理していくこととする。
 
(2) 割増共闘の推進
昨年に引き続き割増共闘(16産別)を推進した。労働基準法が改正されたことなど取り組みを後押しする状況変化もあったが、結果は18組合(時間外の45時間以下)の引き上げにとどまった。今後、労基法の施行にあわせ、どのように取り組みを展開していくか等について、連合全体の取り組みとして、強化の視点を含め整理していくこととする。
(3) 中期時短方針の具体的取り組み
連合「中期時短方針」は、2009年度末を最低到達目標実現の最終年としている。いまだに、各産別の実態には大きな違いがあるが、それぞれの取り組みの前進に向けた対応の強化をしていくこととする。
 
 
5.ワークルールの確立、労働協約関係
ワークルールの課題については、今後とも重要な取り組みとして運動を推進していかなければならない。今次闘争で取り組んだ、「@労働関係法令の遵守の徹底、A快適な職場づくり、B労働時間管理の徹底、C管理監督者の取り扱いの適正化」については、職場における法令遵守を徹底することが必要不可欠であるため、引き続き職場における運動を継続・徹底していく。
また、改正均等法の定着に向けた職場点検や、両立支援の促進のため、今後の国会審議の動向も視野に入れて労働協約の締結等に継続して取り組む必要がある。
 
 
U.政策・制度の取り組みについて
 
1.政策・制度要求 春の取り組みについて
景気の回復と生活の安定をはかっていくため、2009春季生活闘争では、従来以上に政策・制度との連携を強めた運動を展開することとした。政策・制度の取り組み経過と成果については、7月の最終報告でとりまとめる。
中小企業対策としては、「@金融機関の貸し渋り対策、A中小・下請労働者の雇用確保」等の必要性から取り組みを進めた。雇用労働者の7割を占める中小企業労働者の雇用を確保するためには、金融対策の拡充による倒産防止が重要であり、このため、行政、経営者団体に対する要請や意見交換など活発に行ってきた。
この結果、中小企業に対する緊急保証制度の拡充や、研究開発支援などに成果をあげた。引き続き、公正な取引の確保(下請ガイドラインの拡充等)や公契約基本法、公契約条例の制定などの取り組みを進めていくことが必要である。
 
 
2.雇用情勢悪化への取り組み
(1) 雇用確保に向けた連合の緊急取り組み
米国発の金融危機からはじまる世界的な不況の中で、2008年秋以降、非正規労働者を中心とした雇用問題が深刻化した。このため、連合は、2008年11月13日、厚生労働大臣に対して、「@派遣労働者の契約解除に伴う就労・住宅・生活支援の拡充(外国人労働者問題への対策も含む)、A雇用・就業形態の多様化に対応した雇用保険制度への改革、B企業の雇用維持に対する支援、C採用内定取り消し問題への迅速な対応」等の要請を行った。
また、この取り組みに続いて12月を緊急取り組み期間として、2009年度予算案に対して、連合、産別、地方連合会の力を結集し、雇用安定のための取り組みを展開した。12月4日の政労会見を皮切りに、2009年2月末にかけて民主党、社民党、国民新党、自民党、公明党など各政党、財務省、経済産業省等、日本経団連等経営者団体、全国知事会、市長会等に対する要請を行った。
さらに、3月26日には、財務大臣に対して、「@内需拡大、需要創出に資する経済対策の強化、A雇用の維持・創出に向けた対策の強化、B国民の安心感を高めるための社会的セーフティネットの機能強化」など「経済・雇用危機に対する緊急要請」を行い、2009年度予算の補正を求めた。
これらの要請をはじめ連合、産別、地方連合会が一体となった取り組みによって、雇用調整助成金の拡充や就労促進のための住宅・生活支援策の拡充など、要求内容の多くが、政府の予算及び補正予算等に盛り込まれた。
しかし、こうした取り組みにもかかわらず、今尚、雇用情勢は悪化が続いており、引き続き、雇用の維持・安定、180万人の雇用創出、社会的セーフティネットの機能強化等の実現をめざして、連合、産別、地方連合会が一体となり取り組みを強化していかなければならない。
 
(2) 雇用確保のための諸行動
連合は、2008年末には緊急雇用実態調査を行い厳しい雇用実態を把握するとともに、2008年11月から2009年4月までに毎月、要求実現に向けた集会を開催してきた。同時に、非正規労働者の雇用問題や採用内定取り消しに関する相談ダイヤルを全国的に実施した。また、雇用と就労・自立支援カンパ活動などの行動やキャンペーンを展開した。
 
(3) 政労使合意による取り組み
連合は、1月15日に日本経団連と「雇用安定・創出に向けた共同宣言」を行ったが、これに続いて3月4日には連合・日本経団連の「雇用安定・創出の実現のための労使共同要請」、3月23日には「雇用安定・創出の実現に向けた政労使合意」を行った。さらに、3月26日、政府に対して内需拡大と雇用創出、社会的セーフティネットの機能強化等、「経済・雇用危機に対する緊急要請」を行うなど、内需拡大と需要創出、雇用の創出、セーフティネットの強化に関する政策の実現を強く求めてきた。今後も、雇用創出をはじめとする取り組みを実現するために、国会や行政への要請等、連合全体であらゆる場を通じて運動を展開していく。
 
(4) 産別・職場、地方連合会の取り組み
産別は、産業別労使協議会、労使懇談会等への要請(雇用、能力開発、新卒採用等)、個別労使間の労使協議(有期契約労働者の雇い止めガイドラインの遵守、雇調金・助成金の活用による雇用維持、新卒採用等)、職場における相談窓口の設置等を行い、非正規労働者の雇用問題に対する取り組みを行った。
同時に地方連合会においても、首長要請(地方公共団体が行う対策の強化、中央政府への要請)や地方経営者団体への要請などの行動を展開した。また、労働・生活相談の実施や、ワンストップサービスの展開等行った。
 
 
V.2010年春季生活闘争に向けた課題
 
1.2010春季生活闘争の取り組みの組み立て方
闘争を取り巻く環境は、厳しい局面が続くと考えられる。一部、在庫調整が進み、生産が回復するとの見方もあるが、これは最悪の状況を脱しつつあるというものであり、マクロ経済、雇用動向は厳しい状況が続くと考えられる。こうした中で、2010年闘争の課題は、次の3つのバランスをどのように取るかが課題になると考えられる。
@ 内外需バランスのとれた経済へ転換させる
A 正規・非正規労働者の処遇バランスの実現
B 雇用と所得のバランスの確保(配分の歪の是正)
景気が回復に向かうとはいえ、マクロ経済は水面下の状況におかれ、消費者物価はデフレ基調に転ずると予想される中で、賃金カーブを維持し、賃金水準をダウンさせないことが課題となる。また、そのためには雇用の維持・確保と所得のバランス(配分の歪の是正)をいかに取るかが課題となる。
非正規労働者との均等・均衡処遇の確保も社会的要請として、取り組み課題と認識する必要がある。また、労働時間短縮の取り組みを含め、2010年闘争をどのように組み立てるか、検討を進めていく。
 
 
 
2.賃金の引き上げについて
(1) 賃金の引き上げ
これまで以上に賃金カーブ維持を徹底し、賃金水準を低下させないための取り組みを強化していく。そのうえで賃上げについて、前記1.の議論を踏まえたうえで検討していくこととする。
 
(2) 企業内最低賃金協定の取り組みの強化
正規労働者とパートタイマー等の非正規労働者との均等・均衡処遇の実現をめざすうえでも、企業内最低賃金協定(締結拡大と水準引き上げ)の取り組みの強化が必要である。
 
(3) 全労働者を対象にした処遇改善
正規労働者と非正規労働者との間で、どのような均等・均衡処遇を実現していくか、また、賃金・労働諸条件の底上げ、下支えのための仕組みをいかに作り上げていくかなどについて、検討を深め、すべての労働者の処遇改善に向けた取り組みを推進していく。
 
 
3.労働時間短縮闘争、割増率の引き上げについて
(1) ワーク・ライフ・バランスの実現に向けた労働時間の短縮
ワーク・ライフ・バランスの実現のためには、過重労働の撲滅をはじめ長すぎる労働時間の短縮をはかる必要がある。産業や職種によって労働時間の実態は大きく違うため、それぞれにあった方法で時短を進めていく必要がある。同時に、労働時間の短縮が雇用の確保につながるという観点からも、具体的な時短の推進について検討する。
 
(2) 最低到達目標の達成(2009年度末)に向けた取り組み
今次闘争では、「@年間所定労働時間2000時間以下、A年次有給休暇の初年度付与日数を15日以上と取得促進、B時間外労働割増率の引き上げ」について提起したが、2010年の取り組みは、産別の実態をふまえながらどう取り組むか。また、中期時短計画を推進する観点からどのように取り組むか議論を進めていく。
 
(3) 割増率の引き上げ(割増共闘)
労基法改正に対応した取り組みが必要であり、割増共闘から連合全体の運動へ展開していくことが必要である。また、労基法改正は、2010年4月1日施行であることから、2009年秋の取り組みも視野に入れた連合方針を早急に検討する。
 
 
4.共闘連絡会議の強化に向けた取り組みについて
(1) 共闘連絡会議の強化
共闘連絡会議の一層に強化によって、賃金の波及力や相乗効果をあげるため、具体的な対応について検討を進める。また、同時に共闘のヨコ串機能を高めるための取り組みについても対応を進める。
(2) 相場波及に向けた役割・機能の強化
中核組合(2009では計360組合の登録)の相場波及に向けた役割・機能の強化。賃上げ内容や賃金水準をはじめとする基本的労働条件の情報開示による相場形成に向けた波及効果を強める取り組みを進める。
 
 
5.中小共闘、パート共闘会議の取り組み、底上げ、男女平等、均等・均衡待遇の実現をめざす取り組みについて
(1) 底上げと格差是正
ポイントで見た中小企業労働者の賃金水準は下落傾向にある。格差是正だけではなく、これ以上賃金水準をダウンさせないためには、賃金カーブを確保する取り組みが必要であり、その取り組みを強力に推進する。
 
(2) 均等・均衡待遇の実現
パート共闘会議の運動強化とともに、企業内最低賃金協定の締結拡大と水準の引き上げや、全労働者を対象とした処遇改善の取り組みの推進など、複合的な取り組みが必要であるが、それぞれの運動の強化と着実な進展をはかっていかなければならない。
 
(3) 男女間の賃金格差の是正
男女間の賃金格差を是正するためには、前記Aの運動を推進していくとともに、正規労働者の男女間では、人事・処遇制度における運用面や賃金の実態把握を行い、その分析をもとに是正に向けた取り組みを進める必要がある。
 
 
6.ワークルールの取り組みについて
  (別途)
 
 
7.改正育児・介護休業法への対応について
改正育児・介護休業法の国会審議動向をみながら職場の取り組み方法について検討していく。
 
 
8.その他(別途)
@ 春季生活闘争おける連合と産別の役割について
A その他
連合北海道「09春季生活闘争・中間まとめ(案)」
 
経過
その(1)09.01.28 産業部門別連絡会議、「ワークシェアリング」に関する談話
その(2)09.02.18 2009北海道地域最賃の取組み
その(3)09.03.11 地域ミニマム運動の取り組み  マンスリー「春闘号外」
その(4)09.04.13 「第1の山場」「第2の山場」を越え、地場中小の闘いへ
 
《主な日程》
@2009春季生活闘争勝利 全道総決起集会
3.11  北海道厚生年金会館「大ホール」
A解決促進集会
4.20  渡島地協函館地区解決促進集会
4.27  石狩地協札幌地区解決促進集会
 
 
T.2009春季生活闘争の結果と反省
 
はじめに
  連合は、「賃上げこそ最大の景気対策」「賃金も雇用も」と訴え、外需偏重の是正・内外需バランスのとれた経済への転換、「労働を中心にした福祉社会の実現=パラダイムシフト」を目指して2009春季生活闘争をスタートさせた。
  未曾有といわれる経済危機下の賃上げ交渉となり、先行した大手産別の多くは、定昇分はほぼ獲得したものの一部産別を除きベアや一時金上乗せを獲得し切れない厳しい状況となっている。
今後に向けては、人事院の一時金減額勧告への対応、地場・中小を含めた未決着組合への支援など、産別・単組、地域が一体となり総労働体制で取り組みを強めることとしている。
全国的に厳しい経済情勢は、低迷を続けてきた北海道経済にも大きな影響を及ぼしている。木の城たいせつの倒産ショックが抜け切らない中で、道内デパートの老舗・丸井今井の民事再生法申請は道民にとって大きな衝撃を与えた。
企業倒産、派遣切りや雇い止めに遭い失業者が増加する一方で、新社会人として期待を大きくしていた新学卒者の就職内定も進まず雇用環境においても嘗てなく厳しい状況での春季生活闘争となった。
 
1.北海道の独自課題の取り組み
大手産別が苦戦を強いられる厳しい状況下での闘いとなったが、道内においては「サービス・流通」「交通・運輸」が先行奮闘し、対前年を上回る回答を引き出した。不況と言われる中でも比較的好調な企業もあり、全体の牽引役として大きな役割を果たすとともに、逆に、私鉄総連では厳しい状況のなかでも数次に及ぶ粘り強い交渉を経て成果を挙げた。正に、「要求なくして成果なし」を現実のものとした。また、パート・契約社員の処遇改善に向けては、商業・流通関連組合を中心に平均12.5円の時給アップを引き出した。最低賃金に張り付く状況にある道内労働者の賃金水準のアップに直結することであり、非常に大きな成果と評価される。
 同時に、本部方針に沿って取り組んだ「エントリー単組」の拡大においても、昨年280余のエントリーだったが今年度は366へ増加した。これは地域・産別における賃金水準を設定する基礎となるものであり、今後、秋季闘争を経てより確かな賃金水準の確定に結び付け、地域連帯の力となるよう発展させなければならない。
 今回の賃上げ交渉結果は6/8現在、121労組が妥結し、加重平均4,101円1.63%(昨年4,485円1.8%)となり昨年に比べ額・率とも厳しい結果で推移している。また、一時金についても年間妥結から業績による支給を盾に先送りされた産別が目立っている。更に、国家公務員、地方公務員問わず人事院における一時金の一部カット勧告は、これまでの労使協議の経過やそれに至る説明も不十分のまま進められており、人事院勧告制度においても大きな問題を残したものと言わざるを得ない。今回の勧告が今後予定される未決着組合の交渉にも色濃く影響するものと危惧されることから、各産別においては産業別部門連絡会の意思統一を深めつつ、傘下単組への指導・支援を強めることとする。また、地域においても共闘・連携を強め早期決着を目指すこととする。
 
2.政策・制度要求の実現に向けた取り組み
「派遣切り」「雇い止め」が多発し、社会問題となったが、産別・単組、そして地域においても雇用維持・確保に対するスタンスや情報交換について更に連携を強化するべきだったと総括される。
経営側から経営環境の悪化に伴い「賃上げはもってのほか」「ワークシェアリングをすべき」と叫ばれ出したのを皮切りに、「派遣切り」「雇い止め」が半ば公然と強行され、多くの労働者が仕事も住む家さえも奪われた。前日まで普通に働いていた労働者が雇用保険受給資格も与えられず、生活保護や路上生活に追い込まれた事実を重く受け止めなければならない。
「将棋の駒のような存在…」から、人としての尊厳、生活・労働の権利を回復する取組みを強め、ワークルールを二の次に置く経営姿勢に厳しく対応することが求められる。労組としての対応力・交渉力の強化を図り、特に身分の不安定な非正規社員との関わり方について大胆に内部議論を進めるとともに、組織化、組合結成などを急がなければならない。
 また、今回の経済危機を通して労働を巡るセーフティーネットの不備が明らかになった。
労働者派遣法の抜本改正はもとより、失業から再就職・自立に向けたサポート策、産業再構築とリンクした雇用の創出などを求めることとする。
 
3.組織拡大に向けた取り組み
労働環境が悪化する中「駆け込み寺」や「労働相談ダイヤル」、「トブ太カンパ」には困難な実態と協力的な声の双方が多数寄せられている。職場の同僚や労働組合、連合が最も身近な存在としてなければはならず、現在の組織率18%程度という事実に甘んじることは許されない。
連合北海道が主催する「ユニオンスクール」「オルガナイザー会議」では、組織拡大に向けた理論と実践学習が開始されており、各産別から多くの参加者が集まっている。
各労働組合の影響力発揮、未組織労働者の組織化、「労働を中心にした福祉型社会」の実現に向けて、構成組織は総力を挙げることとする。
 
 
U.秋闘と2010春季生活闘争に向けた取り組み
 
  今期の経済情勢から、当面は厳しい局面が予想されている。来2010春闘に向けての本部提起の柱は、@内外需バランスのとれた経済への転換 A正規・非正規労働者の処遇バランスの実現 B雇用と所得のバランス確保(配分歪みの是正)となっている。
  これまでの取り組みと異なる点を理解し合うとともに、「地域ミニマム」「賃金水準作り」に向けて秋期闘争、一時金の攻防に全力を挙げなければならない。
  同時に、「水準」作りに向けては、賃金を含めた処遇や各種制度について公表・議論を深めての意思統一も求められる。アンケート調査なども重要や取り組みとなることから、秋闘を目処に準備を進めることとする。
 
《今後の課題》
*地場中小未解決組合への産別関与と地域組織の指導
*地域ミニマム運動拡大、格差是正に向けた運動の構築賃金アンケートへの協力など)
*「産業別部門連絡会」等を開催し、09春闘の総括から2010春闘の骨格を意思統一
 
 
以 上