2008.12.17/第40回地方委員会
 
第2号議案
 
総合雇用政策確立に向けた取り組み方針
 
 
1.はじめに〜雇用対策本部の設置から今日までの取り組み経過〜
 
(1)米国の住宅価格バブルの崩壊に端を発する金融危機は、サブプライムローン危機にとどまらず、世界的な規模で信用収縮をもたらしている。
 各国の中央銀行は、大量の資金供給を行うとともに、政策金利の引き下げ、金融当局は預金保護の強化、銀行間債務の保証、金融機関への公的資金注入など金融システムの安定化に努めているものの、金融危機は世界的な経済危機へと転化し始めている。
 
(2)わが国の企業経営を取り巻く環境も、上記の世界的な需要の落ち込みや株式の乱高下、為替の大変動に加え、内需も原材料価格の高止まりや家計の改善の遅れから急激な悪化を招いている。その結果、雇用情勢は一変し各企業の採用内定取消、採用延期、解雇、雇い止めが多発している。
 
(3)本道においても、輸送用機械製造や半導体製造業などは、円高や世界的な景気後退等による外需の減少、観光関連産業は大幅な為替変動による外国人観光客の大幅な減少、内需生活関連産業も自動車販売台数の大幅な落ち込みに見られるように急速な消費(販売)不振に陥るとともに、雇用・賃金調整が加速化している。
 
(4)こうした世界的な金融危機の背景と原因による雇用不安と失業問題を踏まえると単なる個別産業や業種、企業における雇用・離職者対策では、状況を改善することは出来ない。今回の私達が直面する経済・雇用危機は、市場原理一辺倒の新自由主義、金融資本主義の限界、破綻によるものである。従って、「効率と競争最優先」の社会から「公正と連帯」に基づく社会へのパラダイムの転換を図り、「完全雇用」を中心とした福祉社会の実現に向けた経済政策、金融対策、雇用・失業対策、社会保障政策等の再構築が求められている。
 
(5)こうした状況を踏まえ、連合北海道は第21回年次大会における特別決議に基づき2008年11月27日の第1回執行委員会で全構成産別、全地協参加で柳薫会長を本部長とする総合雇用対策本部を設置し、当面、@緊急雇用110番開設による雇用相談の実施 A構成産別の民間全単組に対する「緊急雇用調整等動向調査」の取り組み B雇用・失業問題に関する緊急要請行動を展開するとともに今次雇用問題の背景要因となっている金融危機の現段階と見通しに関する学習会などを開催してきた。
 
(6)連合北海道が独自に設定した12月5〜6日と連合本部が全国統一の取り組みとして9日から12日まで実施した雇用と労働に関する相談ダイヤルには、延べ100件を超える相談が寄せられた。相談内容は、採用の内定取り消しに関する件はなかったが(北海道労働局調査7件、道外企業)
 正規労働者の経営不振による解雇(整理解雇)や退職強要、派遣労働者、有期契約労働者の中途契約の解除、契約の更新の拒絶(雇い止め)の他、雇用保険の離職理由や派遣労働者の寮からの退去による住宅問題などの相談が寄せられた。
 明らかに整理解雇4要件を満たさぬ解雇権の濫用や契約が反復更新され、期間の定めのない労働契約と同視すべき違法解雇が横行しており、また雇用対策法で30人以上の離職者を発生させる使用者のハローワークへの届出義務や再就職援助計画の作成、提出を行わないなど、非正規の離職者問題がヤミに葬られていることなどが明らかとなった。
 
(7)また、連合北海道傘下の民間産別における緊急雇用動向等の調査では、12月12日現在、94単組から回答が寄せられたが、これによると賃金・雇用調整が実施されている単組は30%であり、今後、賃金、雇用調整が見込まれる単組も39%、34%となっていることが明らかとなった。
 
(8)こうした実態を踏まえ、連合北海道総合雇用対策本部は12月10日、北海道知事、北海道労働局長、北海道経営者協会に対し、雇用に対する緊急の申し入れ、要請行動を実施した。(資料1)合わせて、民主党北海道に対しても雇用、離職者対策等に関する立法措置を求めたところである。しかし、道側の雇用情勢の危機認識は薄く、道民生活安定・安心の基盤である雇用対策を道庁の各部、各局の機能を発揮して雇用維持や離職者の生活対策や雇用創出を図る姿勢を欠いている。また、厚生労働省の北海道の出先機関である北海道労働局も本道の雇用調整の全体像を掌握しておらず、我々が求めた緊急対策についても本省に伝達するとの回答に終始している。
 
(9)一方、我々など連合の緊急雇用対策要望を踏まえた民主党は、資料2の通り、第1に採用内定取消規制法、第2に派遣労働者等解雇防止特別措置法、第3に派遣労働者や雇用保険受給未資格者等に対する住まいと仕事の確保法、第4に雇用保険の受給要件と季節労働者の特例一時金を含む雇用保険の給付日数の延長などの雇用保険法の改正、第5に有期労働契約遵守法を今国会に提出することとなった。
 
(10)また、政府側も雇用対策を含む第二次補正予算を打ち出しているが、麻生政権は、崩壊寸前にあり、雇用政策内容も、その場しのぎの、ちぐはぐな一貫性のないものとなっている。
 いまこそ、国民の審判を踏まえた民主党を中心の政権による経済、雇用対策の実施と次の時代の国づくりに向けた社会制度の構築が求められる。
 連合北海道総合雇用対策は、直面する雇用危機を産別、地協組織と連携を強化し乗り切るとともに、この危機を21世紀の労働を中心とした福祉社会づくり第1歩ととらえ、関係する経済、金融、社会保障政策、地域政策、雇用政策の総合的な改革に取り組まなければならない。
 
 
2.闘いの指標
 
 今次の世界的な金融危機と経済、雇用危機は新自由主義の市場原理一辺倒の限界を示すものであり、雇用の維持、安定、離職者の雇用機会の確保、雇用の創出を当面の国政、道政、市町村の最重要課題と位置づけ、2010年時点での本道の完全失業率を4%以内に抑制するとともに、「労働を中心とした福祉型社会の実現」に向けた社会保障制度の再構築など「公正と連帯」を重視した社会システムの転換を図る。
 
 
3.当面の取り組み
 
(1)産業別組織と単組の任務、役割
@雇用の維持、安定に向けた取り組みの強化
 直接雇用はもとより、間接雇用労働者(派遣労働者)、関連、系列を含む労働者の雇用維持についても労使協議の対象とし、安易な雇用調整は認めないこと。雇用調整を回避するため、賃金調整を受け入れる場合、必ず復元措置を協定化すること。
A整理解雇、雇い止めのワークルールの徹底
 経営不振による解雇が避けることが困難な場合でも整理解雇の4要件の遵守や解雇に関する法理を徹底するよう経営側に求めること。
B退職諸条件と再就職支援 
 退職慰労金の支給、退職金の上積みなど退職者の退職諸条件の確保を図るとともに、退職者の再就職援助計画の作成など雇用責任を果たすよう求めること。
 
(2)連合北海道総合雇用対策本部の任務・役割
 連合北海道総合雇用対策本部は、道内の雇用・失業情勢・企業に対する金融機関の資金の仲介機能の状況などの実態調査などを踏まえ、金融、経済など雇用に係わる政策の改善や予算の要求について取りまとめ、その実現のため道民運動を展開するとともに連合本部、民主党道連と連携を密にし国や道に対し以下の政策化、予算化を図ることとする。
 当面は、民主党が提出した緊急雇用対策4法案の現臨時国会での成立に全力を傾注するとともに年明け以降は、2009年度道予算に関する要求の実現に向けて統一行動を提起する。具体的内容については、連合北海道総合雇用対策本部幹事会(連合北海道常駐執行部で構成)で協議決定する。2009年2月以降の取り組みについては、2009年1月の執行委員会で提起する。
 
(3)地協・地区連合の任務・役割
 各地協は、連合北海道総合雇用対策本部に準じて1月末までに地域雇用総合対策本部を設置し、地域の雇用・失業情勢を踏まえ、管内市町村自治体や商工会議所、商工会、ハローワーク、労働基準監督署などの関係先に対する要請行動を展開すること、また管内の事業所において、大量の離職者の発生が予想されるときは、離職者の生活資金対策等、住宅、子供の教育問題、再就職に向けた教育訓練の実施、特別な求人開拓などきめ細かな対策を関係機関が取り組むよう求めていくこととする。
 
 
4.最後に
 
 以上のように産別・単組、連合北海道、地協、地区連合の各々の役割、任務と連携を基本に年内から2009年へと間断なき運動を展開することとします。
 現下の金融・経済危機は、戦時を除くと1929年の世界恐慌以来の、最も深刻な状況と言われています。このような厳しい時こそ、労働組合、労働運動の真価が問われています。雇用を守ることを第一義に正規であろうが、非正規であろうが不当な解雇は認めないということを基本に、連合の団結力を発揮して、この雇用問題に全体で取り組む必要があります。
以  上
 
【要求書:例】
 
 1.緊急雇用・生活対策の強化
 緊急的な雇用対策の強化に向け、地方自治体として以下の事項に十分配慮した施策を行うとともに、政府に必要な施策の実現を求める。
(1)派遣労働者、有期契約労働者の解雇・雇い止めに対する雇用対策を行う。また、都道府県の労働関係担当部局に雇用・労働に関する相談窓口を設置し、積極的に対応する。
(2)解雇・雇い止めに伴うフリーターや派遣労働者等の住宅困窮者に対する住宅支援対策を講じる。
(3)大学生等学生の採用内定取り消しに対する対策を行う。
(4)長期失業者、フリーター、母子家庭の母等の訓練機会に恵まれない者に対する職業訓練を充実し良質な雇用機会を提供する。雇用・能力開発機構の機能は存続させ、全国あまねく公平な能力開発が実施できる体制を堅持するとともに、都道府県立職業能力開発校における体制を強化する。
(5)外国人労働者の雇い止めなど雇用・労働に係わる相談窓口をハローワークや総合労働相談コーナーに開設し、通訳を配置するとともに、母国語によるリーフレットを出入国管理局や市町村の窓口を通じて周知する。
(6)雇用保険の給付改善と適用範囲の見直しを行う。また、国庫負担を堅持するとともに、雇用保険料率および雇用保険2事業の料率引き下げは当面は行わない。
(7)現在政府で検討されている2兆円「生活支援定額給付金」は、中低所得者層等への物価上昇分の補填に限定する。緊急対策として、医療、介護、雇用対策など社会的セーフティネットの機能強化に重点的な財政措置を行う。
 
2.経済・金融対策の強化
(1)金融機関の貸し渋り対策(信用収縮対策)
 地方における中小・地場企業への信用収縮対策をすすめるとともに、政府に次の政策を求める。
@中小・地場企業に対する政府系金融機関への資金提供を拡充する。
A信用保証制度の抜本的拡充と適正な制度運営をはかる。
B金融検査マニュアル(中小企業融資編)の趣旨・内容を周知徹底し、画一的・一律的な検査を行わない。
 
(2)雇用創出、消費回復、地域経済の再生など内需の拡大につながる政策運営を行う。
@福祉型社会において不可欠なサービス部門を中心に、政府、自治体の予算を増額し、公共 的セクターでの雇用拡充をはかる。
A福祉、教育、環境、防災等国民の暮らしに直結した歳出項目への予算措置の重点化をはか る。
Bものづくり産業における技術・技能労働者確保等への支援措置を拡充する。
C食糧自給率向上に向け、農林水産業の振興をはかる。
D地域経済の回復・再生に向け、「地域力再生機構法案」の早期成立を求める。
 
(3)物価安定対策の実施
@燃料費を軽減するため揮発油税等の暫定税率を凍結・廃止するよう求める。
A寒冷地における「福祉灯油制度」を整備徹底する。
 
(4)所得税制度改革
 政府に次の政策を求める。
@物価上昇分に相当する家計支援策として、中低所得者層を中心に所得税減税を実施すると ともに、生活困窮世帯に対する補助金制度を創設する。低所得者層に対する「負の所得税」 (給付つき税額控除)の制度創設について検討する。
A所得税の累進性や資産課税を強化し、税の所得再配分機能を高める。
 
3.国民の安心感を高めるための社会保障の機能強化等
(1)地方自治体を中心に次の政策を推進するとともに、政府への支援を求める。
@生活保護の申請受付等の改善をはかり、現行の生活保護水準を維持する。
A産科・小児科、緊急医療等の医師不足対策、地域医療のネットワーク等の体制整備を早急に はかる。
B住宅困窮者に対し、公営住宅、民間賃貸住宅等への入居支援(就労・生活相談センターの 活用等による公的な保証人制度の創設等)、住居入居資金の低利貸付け制度を拡充する(社 会福祉協議会の生活福祉資金の活用等)
C待機児童の解消など保育サービスの拡充、児童手当等の拡充など子育て支援を抜本的に拡 充する。
 
(2)医療・介護・福祉・年金等の社会保障機能を強化するため、政府に次の政策を求めるととも  に、地方自治体として必要な対応をはかる。
@毎年度2200億円を圧縮する社会保障費抑制策を撤回する。
A年金記録問題を早期に解決し、基礎年金の国庫負担引き上げ、「最低保障年金」創設、全雇 用労働者への厚生年金摘要など、安心と信頼の年金制度を構築する。
B介護労働者の賃金改善、人材確保に向け、2009年度の介護報酬を引き上げる。
C後期高齢者医療制度と前期高齢者の制度間財政調整を廃止し、地域保険と被用者保険  の自立性を確保する「突き抜け方式」型の医療保険制度を構築する。
D公的職業訓練等と社会保障政策との連携、社会保険・労働保険の機能強化(第1層)、長期 失業者等への「就労・生活支援給付」制度の創設(第2層)、住宅扶助の社会手当化など生活 保護制度の抜本改革(第3層)等、三層構造による新たな生活保障制度を構築する。
 
 
以 上