第1号議案
 
2006春季生活闘争の中間まとめ(案) 
 
 
1.06春季生活闘争の情勢と課題
 
 06春闘の闘いにあたり、連合の基本スタンスは、「マクロ的には“労働側に1%以上の成果配分がなされるべき”との認識のもとに、マクロの生産性向上に見合った労働側への成果配分と可処分所得の引き上げをめざす。そして、二極化の流れに歯止めをかけるために、組織化促進と均等待遇実現に向け「パート共闘会議」を設置し、「中小共闘」の更なる強化と情報の開示によって、未組織を含めた全雇用労働者に底上げの社会的メッセージを発信する。」ことに定めた。いわゆる“真水”を獲得する闘いをめざす決意であった。
 一方で経営側は、「賃金決定は個別企業の労使の話し合いで決める事である」「生産性三原則の重要性は経営側も十分に理解しているが、最近の労働分配率の低下傾向は、正常な水準に至る過程として解釈すべき」など、連合の切実な要求に真摯に応える姿勢とはならなかった。
 結果として、06春闘全体としては、先行産別を中心に「賃金改善分」を獲得し、賃金デフレに歯止めをかける手がかりをつかんだと評価できるが、いまだ様々な課題で労使交渉を継続しており、全体の評価としては、8月の連合「最終まとめ」と10月の連合北海道第19回年次大会まで議論を続け、07につながる総括にする必要がある。
 
 政策制度の闘いは、定率減税の全廃が決定された後も、所得控除の引き下げなどのさらなるサラリーマンねらい撃ち増税や社会保障制度の改悪の動きがあり、また、“職場破壊”といわれるように、長時間労働の蔓延による仕事と生活の調和の破壊、非正規労働の拡大による均等待遇の後退、いたずらに定員削減のみを要求する公務員制度改革など、市場原理主義を貫く小泉内閣と圧倒的に多数の与党体制のもとで、二極化・格差社会の拡大に歯止めをかける闘いとして挑まれた。これらの課題はこれからも大衆行動を積み重ね、労働契約法や教育基本法改悪・国民投票法案問題などとともに、広く国民世論の形成を続けなければならない。
 
 
2.取り組みの経過
 
 連合北海道06春季生活闘争は、05年12月に第1回闘争委員会を開催し、06闘争方針の確認と闘争本部の設置、連合総研との共催による情勢学習会を開催して活動を開始した。
 その後、5月までに8回の闘争委員会を開催して、当面の取り組みその1〜4で状況の統一化と具体的な取り組み課題を提起してきた。
 北海道の闘いは、様々な経済・雇用指標が他都府県ほど回復基調を示さない中での闘いとなった。また、道庁の財政再建を理由とした人件費削減をはじめとする地方公務員への人件費削減提案、季節労働者の冬期雇用援護制度の廃止問題、ハイタク労働者の最低賃金違反の蔓延、パートタイマーなど非正規雇用の雇い止め・解雇など、相変わらず厳しい状況下の闘いとなった。さらに、「道州制特区法案」など北海道をねらい撃ちする政府のリストラ政策によって、道民生活や経済に不安をかき立てる事象が相次いだ。
 しかし闘いの中では、連合白書を討論集会の資料としてはじめて使い、情勢把握と意思統一に深みを与える試みを行い、また、パートなど非正規労働者の集会や公共サービスに関する学習会を開催するなど、二極化や格差に挑戦する闘いを重視して取り組んだ。
 北海道における取り組みの結果としては、情報の共有化の点や月例賃金の重視面などで課題を残したが、規制緩和の悪影響や公共事業の大幅削減などにより、経済状況が低迷する中で、昨年並みを確保できたことは成果と考えられる。
 
 
3.具体的な取り組みと課題
 
(1)賃金改善の闘い
 
@ 賃金改善の要求状況
 闘いの大枠として12年目を迎える地場集中決戦方式を据え、今年も390組合をエントリー組合として登録し、平均方式327組合、個別A方式2組合、個別B方式3組合の要求を集約した。
 要求の基準は、賃金カーブの算定が可能な組合は「賃金カーブの確保」とカーブ維持分の労使確認十賃金改善分2,000円以上、賃金カーブの算定が困難な組合は賃金カーブの確保相当分4,500円(目安)+賃金改善分2,000円以上、定昇込み 6,500円以上、環境が整っている組合の格差是正要求は格差是正分として、上記に上乗せすることを目標として取り組んだ。
6月16日段階での集計では、加重平均で5,672円(2.44%)、単純平均では5,516円(2.46%)となった。
A 地場集中決戦の取り組み
 第2回闘争委員会(1月25日)で決戦ゾーンの設定について連合本部の設定と同様に確認し、3/15〜18を第1のヤマ場に、3/20〜31を第2のヤマ場に設定した。また、解決促進ゾーンは、4/3〜8を第1次解決促進ゾーンに、4/17〜22を第2次解決促進ゾーンとした。
 3月10日には北海道厚生年金会館で全道総決起集会を開催し、「厳しい状況下ではあるが負けることのできない闘い」と意思統一し、季節労働・ハイタク・公務員制度など様々な課題をともに闘う決意を表明した。
 
 第1次先行ゾーンでは20組合が決着し、妥結平均5,071円(+537円)、2.25%(+0.53%)と、額・率ともに昨年を上回った。
 第2次ゾーンではさらに36組合が決着し、第1次・第2次合わせた56組合の加重平均で4,034円(+354円)、1.67%(+0.22%)となった。
 
B 回答・妥結状況
 
 このゾーンにおける中央産別の闘いは、連合中央集計で1,693単組が加重平均5,664円 1.88%と昨年に+393円、+0.16%の成果を上げ、月例賃金以外でも、一時金はもとより、諸手当や時間外割増率、65歳までの継続雇用の制度化と育児・介護・出産休暇制度などの改善を実現し、賃金改善以外でも多くの成果を上げていることについて、連合高木会長は「賃金のあり方や昇進・昇給制度等をめぐる論議を活発化させ、人事労務政策全般に及ぶ、労使の論議を深める契機となった。」とコメントし、健闘をたたえた。道内でも、パートなど非正社員の底上げにつながる多くの成果が報告されている。
 
 4月からの解決促進ゾーンでは、以下の連合本部中小共闘確認事項を参考に早期決着をめざして闘いを強めることとした。
○賃金カーブの算定が可能な組合は賃金カーブ確保相当分を確保し、1,000円以上を上積みする。
○賃金カーブの算定が困難な組合は方針と集計結果をふまえ、5,000円以上を獲得する。
○企業環境が厳しい組合は妥結ミニマム基準を示す4月中旬まで、ねばり強い交渉を展開する。このゾーンでは、一時金のみの妥結も含めて98組合が妥結したが、賃金の妥結79組合の集計では加重平均で妥結額4,028円(+281円)、1.64%(+0.15%)となって、額・率とも前年を上回り、厳しい情勢に抗して健闘が続いた。各産別・単組・地協・地区連合はこの結果を生かし、月例賃金の改善を勝ち取るため、あらゆる手段を行使して立ち向かうこととするとの意思統一を行った。
 また、妥結ミニマム基準の設定について以下の通り意思統一した。
@ 賃金カーブの算定が可能な組合は賃金カーブ確保相当分を確保する。
A 賃金カーブの算定が困難な組合は目安として示した4,500円以上を確保する。
 
 連合本部が解決促進ゾーン中に発表した集計結果によると、回答・妥結組合数は2,770組合であり、月例賃金では、同一組合平均方式の比較で5,605円、1.88%(昨年比+481円、+0.15%)であった。賃金カーブ維持分を確保したうえで、引き続き500円程度の賃金改善分の獲得がはかられている状況となった。また、連合本部の中小共闘では、4月11日までに妥結した1,380組合の単純平均(定期昇給含む平均賃上げ方式)は4,492円、1.79%、加重平均では、4,620円、1.82%となった。昨年との比較では、妥結をした同じ組合の単純平均で+415円、+0.16P、加重平均で+385円、0.14Pのプラスとなった。これは、妥結組合の49.1%が、賃金カーブ確保相当分目安として示した4,500円以上を確保し、昨年同時期の34.5%を14.6P上回った。
 
 北海道では、390の登録組合のなかで、賃金改定を要求した組合のうち、6月16日現在で152組合が妥結した。平均要求方式の単純平均で3,145円(昨年比−42円)、1.39%(昨年比−0.03%)、加重平均で3.690円(昨年比−60円)、1.56%(昨年比−0.02%)となった。
 特徴的に、ほぼ昨年と同額を確保することができたといえるが、先行きの見通しが立たない経済状況であることは労使の共通認識であり、流通関係を除き月例賃金の改善は進まなかった。しかし、一時金は、多くの産業で成果配分を求める結果となった。
 登録組合のうちまだ半数が、未解決あるいは未報告であることを考えると、「現状維持」の判断は早計かもしれないが、現状の評価としては、単組の健闘の結果、現状維持がはかられたと評価したい。
 
(2)労働条件確保の闘い
 
@ パートなど非正規労働者の待遇改善と均等化の闘い
 
 「中小パート労働対策委員会(森副会長 委員長)」を春闘期間のみ名称変更した「パート共闘会議」を設置し、雇用形態間の格差拡大の流れに歯止めをかけ、均等待遇実現への道をきりひらくことを目標に取り組んだ。
 パート共闘会議(中小パート労働対策委員会)は、「パートなど非正規社員等の集い」を4月25日開催し、連合本部のパート共闘の取り組みやパート労働法に関する学習を深めるとともに、交流会では日頃の問題などについて産別枠をこえた交流が行われた。
 また、同じ職場で働くパート・有期契約・派遣・請負等労働者の待遇改善(休暇制度や一時金支給など)のために、単組は、未組織やパート等の全ての労働者を意識した交渉を進めることを目標とした。
 課題としては、連合本部の枠組みでは地域のパート共闘が意識されておらず、情報の共有化は縦産別で行われるのみとなっているが、07春闘に向けて枠組みが変更されるとするならば、より強い取り組みとしなければならず、体制のあり方について議論が必要となっている。
 
A 最低賃金の取り組み
 
 すべての労働者が、最低限の生活ができる賃金水準を実現すべく、社会的な水準規制を行うことは、公正取引の基本であることについて意思統一し、すべての組合で企業内最賃の協定化とその引き上げを行い、法定最賃引き上げに結びつけることを目標に取り組んだ。具体的には、全従業員対象の企業内最賃の目標水準を時間額840円以上に設定し、パートなど有期雇用労働者の企業内最賃では成果を獲得した単組がある。
 北海道としては、ハイタク最賃問題、とくに全道で1割のハイタク労働者が最賃違反をおこしている実態について、全道キャラバンを行い、実情把握と行政に対する取り組み強化、経営者団体に対する申し入れ等に取り組んだ。
 ハイタク最賃問題は、当面の地域最賃違反の一掃とともに、プロ運転者にふさわしい賃金体系の確立に向けて、企業内最賃・保障給の設定要求へと運動を進めていく必要がある。
 
(3)政策制度の闘い
 
@ サラリーマン増税反対
 
 2006年度税制改正案には、各種所得控除の縮小は含まれなかったが、定率減税の廃止が盛り込まれた。連合は、不公平税制の是正が行われていないなかで、定率減税を廃止することは問題であることを主張し、全国統一キャンペーン行動(給料日早朝街宣)などに取り組んだ。定率減税は2007年1月以降の廃止が可決されたが、給与所得控除の見直しなどサラリーマンねらい撃ち増税に対し、引き続き、公平で透明な税制改革の実現を目指し、取り組みを進めていく必要がある。
 
A 社会保障制度の改悪に対する闘い
 
 「社会保障制度の在り方に関する懇談会」(官房長官の私的諮問機関)が、5月26日、最終報告書を取りまとめた。しかし、4月末に閣議決定された政府の被用者年金一元化の基本方針など、従来の個別制度見直しの方向を追認した程度であり、当初の目的であった「社会保障全般の一体的改革」にはほど遠く、全く不十分な内容である。報告書には、連合が主張してきた「基礎年金の税方式と厚生年金の保険料15%上限」に関する意見が「別添」として添付されただけであり、「格差拡大や二極化」を是正する社会保障機能を重視する視点もない。
 また、2006年春の重要政策課題のひとつである医療保険制度改革関連法案については、第164回通常国会で審議が行われた。連合北海道は、3月から4月にかけ道内4カ所でのセミナーを開催して法案の問題点・課題について理解、学習活動に取り組むとともに、道内各地での街頭宣伝活動、道高齢・退職者団体連合も連携した集会・デモ行進を実施して、広く道民に給付減・負担増の医療制度改革を批判する行動を展開した。
 しかし、5月18日、衆議院厚生労働委員会で与党は法案を強行採決し、翌日の本会議で可決し参議院に送付された。連合北海道は、退職者連合や民主党北海道とともに、採決強行に抗議する座り込みを札幌大通り公園で敢行、参議院での慎重審議と法案の修正を求め大衆行動を展開した。
 
(4)道内課題の取り組み
 
@ 公務員制度改革と人件費削減反対の闘い
 
 道は財政運営を健全化するためと称して、06・07年度の2年間に限り、道職員・教員等の賃金10%・一時金15%・退職金5%・管理職手当20%など、大幅な賃金の削減提案を行った。
 これに対し、地公三者(自治労道本部・全道庁・北教組)は、職員生活の破壊と公共サービス・教育の質低下につながると強く反対し、諸行動を展開した。
 その他、道内約180市町村あまりのうち約130(7割)が最大で10%の賃金削減提案を受け、国家公務員も同様な賃金削減を受けつつある。
 連合本部は「公共サービス・公務員制度のあり方」をまとめ、官と民の間に位置する「新しい公共」の考えを提起するとともに、総人件費改革の基本方針に反対し、労働基本権を付与して労使間で解決を原則に、労使双方と納税者の納得できる、公平で公正なあり方を主張している。
 北海道では、公務・公共サービスの比重が北海道GDPの15%と、他府県に比べ倍ぐらいの比率となっている。したがって、総人件費削減の影響は様々な民間企業の賃金決定にも大きく影響することが懸念されることから、公務員制度のあり方を含め「公共サービスに関する学習会」を、北海道公務労協と共催で道内4カ所で開催し、主に現状認識を一致させる活動に取り組んだ。労働基本権付与を含めた組織内の意思統一を今後も進める必要がある。
 
A 季節労働者の生活と雇用を守る闘い
 
 本道にはいまだ14万余の季節労働者がいるが、多くは建設労働に従事しているため毎年12月に解雇され、50日分の雇用保険給付と講習等の援護制度で不安定な生活を余儀なくされていことについて、政府は「循環雇用は雇用保険制度になじまない」と、冬期援護制度を来年3月には打ち切ろうとしている。
 これに対し、北海道知事を先頭にオール北海道で生活を支える制度の存続・改善を求める活動に取り組み、3月末には厚生労働大臣にオール北海道の要請を行った。また、各職場での署名とカンパにも取り組んだ。
 情勢は全く予断を許さないが、行政改革に絡んで雇用保険全体が見直される状況の中で、短期特例一時金(50日分)に見直しについても議論されるなど、季節労働に対する情勢は極めて厳しい。
 今後は、夏の政府予算概算要求などに向けて大衆行動を含め取り組みを強化しなければならない。
 
 
4.中間のまとめ
 
 06春闘の結果を中間的にまとめるために考察すると、この春闘の結果は、国内における二極化が著しく現れたものといえる。有効求人倍率が1.0を超える地方と、北海道や東北・四国・九州の一部など、その半分程度しかない地方との間では、成果に大きな格差が生じていることは明白だ。その地方では、賃金カーブの確保どころではない状況が相変わらず続いている。春闘討論集会の中でも、地場中小組合からは「労使間では解決できない」格差問題が提起されており、この問題に立ち向かう方針は連合運動の柱にしなければならない。
 
 とはいえ、この間の取り組みにおいて数点の課題も浮き彫りになっている。
 第1に、道内における産別機能の低下の問題である。産別の専従体制の縮小や大産別化によって、産別が傘下単組の情報を把握しきれない状況にあると思われる。したがって、連合北海道の集計に困難な状況が生まれ、正確な情報交換に支障をきたすこととなりつつあり、この解決は大きな課題である。
 第2に、多くの企業が経済見通しの不安を理由に、月例賃金の改定にはほとんど応じない実態にある。上がった成果はしたがって一時金に反映されると言うところが散見されることから、そのシフトについての評価は今後の課題となる。労働条件委員会等で、年収比較などの比較・評価を検討する必要がある。
 第3にパートなど非正社員・有期労働者の対策の強化である。全雇用労働者に占める比率はすでに3分の一をこえており、企業内によっては基幹労働の一部となりつつあるとの報告もされている。したがって、労基法36条協定や労働協約締結にも大きな影響が出ており、組織化を含めて対策の強化が望まれている。現状は流通を中心に進められているが、その他の多くの職場でもパート・派遣・契約・偽装請負など非正社員・有期労働があることは明らかなことで、今後は、パートなど非正社員・有期労働者のネットワーク作りを心がけ、公務職場における臨時職員の無権利状態の解消や、「同一価値労働=同一報酬」のILO100号条約の実現に向けた連帯の運動を強める必要がある。
 
以 上