第2号議案
 
連合北海道「2009春季生活闘争まとめ」
 
 
1.2009春季生活闘争の結果と反省
(1)はじめに
連合は、「賃上げこそ最大の景気対策」「賃金も雇用も」と訴え、外需偏重の是正・内外需バランスのとれた経済への転換、「労働を中心にした福祉社会の実現=パラダイムシフト」を目指して2009春季生活闘争をスタートさせた。
 未曾有といわれる経済危機下の賃上げ交渉となり、先行した大手産別の多くが定昇分はほぼ獲得したもののベアや一時金上乗せを獲得し切れない厳しい状況となった。
 
(2)取り組み環境の激変と闘争の推進
2002年以降の景気回復期において日本経済は、これまで以上に外需依存体質を強めてきたこともあって、世界的な景気後退に直撃され、輸出産業を中心に生産は急激かつ大幅に縮小されることになった。この影響は瞬く間に、非正規労働者の雇い止め・中途解約、新卒者の内定取り消しとなって表れ、雇用情勢を一気に悪化させた。さらに、交渉時においては、一時帰休の動きも広がり、雇用調整助成金の申請は大幅に増加した。
このような状況の中で、一部の産別からは「賃金だけでなく、雇用の取り組みも強化すべき」との意見もあがった。また、マスコミなどを中心に「非正規労働者が雇い止めをされている時に、賃上げ要求するのはおかしい」とか「正規労働者の賃金を引き下げて、非正規労働者の雇用を維持すべき」などの労働組合批判の声が高まった。
こうした動向に対して連合は、「これは背後にある企業と家計の歪んだ配分構造問題にフタをするものである。企業体力が増強されてきた中での雇用問題の発生であり、賃上げによって景気が回復すれば、雇用問題も改善できる」と強調する一方で、11月初めから雇用への緊急対策を政府へ申し入れるなど、産別、地方連合会を含め総力をあげて取り組みを推進した。
連合は、雇用を守ることと実質生活の維持は、労働組合として当然の取り組みであり、2009春季生活闘争は雇用と生活のため、賃上げによって消費を喚起し景気悪化を阻止するための闘いである。景気が回復すれば雇用も改善する。このため、「賃金も、雇用も」必要との姿勢を堅持し闘争を推進した。
 
(3)道内の状況
全国的に厳しい経済情勢は、低迷を続けてきた北海道経済にも大きな影響を及ぼした。
木の城たいせつの倒産ショックが抜け切らない中で、道内デパートの老舗・丸井今井の民事再生法申請は道民に大きな衝撃を与えた。企業倒産、派遣切りや雇い止めに遭い失業者が増加する中で、一方で、新社会人として期待を大きくしていた新規学卒者の就職内定も進まず雇用環境においてもかつてなく厳しい状況となったが、本部同様「賃上げも雇用も」の旗を降ろすことなく産別・地協の結束を強く訴えての取組みを展開した。
 この期間中、連合北海道としては「総合雇用対策本部」を設置し、数次に亘っての道・労働局・経営者団体への要請行動や函館・苫小牧・旭川への視察・現地要請行動を展開した。また、厳寒期の中でも求職活動を続けている人や失業者支援として「さっぽろ駆け込み寺」を開設するなど、実態に触れ現場と一体となった対応を行ってきた。
 
2. 賃上げの結果
(1) 全国の結果
2009年の闘争方針は、これまで3年間続けた「賃金改善」という取り組みの考え方から、賃金カーブを維持したうえで、過年度物価上昇分に見合う賃金アップ分を純ベア獲得目標として闘争を進め、未曾有の経済危機と言われる中で、「賃金(ベア)も雇用も」必要との考え方にもとづき、最後まで、連合全体が粘り強い交渉を展開したことは、運動の前進として評価できる。同時にこのことは、「定昇さえも困難」とした経営側の姿勢を跳ね返し、ほとんどの組合で賃金カーブを維持し、一部の組合ではあるもののベアの獲得につながった。 
産別による単組への指導を強化し、これだけ経済・雇用情勢が厳しい中にあっても、全体として賃金カーブ維持のための財源を確保し、ベアを獲得したことは評価できる。
しかし、回答結果を見る限り、物価上昇に見合うベアの獲得によって「組合員の実質生活を維持する」、「消費の拡大、内需主導型経済への転換」、「労働分配率の歪(株主重視、従業員軽視)を是正」するとの闘争方針からは、決して満足のいくものではなく厳しく受けとめなければならない。
 
*最終妥結結果(7月1日)
平均賃金方式 4,848円(1.67%)昨年比−675円、−0.21ポイント
注1.平均賃金方式は加重平均(約191.5万人)。
2.ベアを獲得した組合は486組合、うちベア額が把握できる406組合の加重平均は810円、単純平均は905円。
 
 
(2)北海道の取り組み
大手産別が苦戦を強いられる厳しい状況下での闘いとなったが、道内においては「サービス・流通」「交通・運輸」が先行奮闘し、対前年を上回る回答を引き出した。数次に及ぶ粘り強い交渉の成果でもあり「要求なくして成果なし」を現実のものとした。また、UIゼンセン同盟がパート・契約社員の処遇改善に向け平均12.5円の時給アップを他に先行する形で引き出したことは、最低賃金に張り付く道内賃金水準のアップに直結することであり、非常に大きな成果と評価される。
 同時に、本部方針に沿って取り組んだ「エントリー単組」の拡大においても、昨年280余のエントリーだったが今年度は369に増加した。これは地域・産別における賃金水準を設定する基礎となるものであり、今後、秋季闘争を経てより確かな地域・産別賃金水準の確定に結びつけて、地域連帯の原動力となる取り組みに発展させなければならない。
 今回の賃上げ交渉結果は、ベア、一時金とも厳しいものとなったが、加えて、人事院における一時金一部カット勧告、賃金引下げ勧告は地場・中小の未決着組合の交渉にも色濃く影響するものと危惧される。
 
(3)北海道の賃上げ結果(9月28日現在 別紙参照) 
  @エントリー  369組合(賃金以外の要求含む) 
  A妥結報告   260組合
  B賃上げ(妥結金額が確定または推計できる182組合)  加重平均4,047円(1.64%)
 
 
3.労働条件改善に向けての取り組み
(1)パートなど非正規労働者の処遇改善と均等化
「中小・パート労働条件委員会(委員長:森副会長)」を期間中3度開催し、2008春季生活闘争の柱とも言える産別連絡会議や地域単組の連携強化・「縦横の網かけ」、未組織労働者の組織化、未成熟組織への援助など、春季生活闘争勝利に向けて意思統一を行ってきた。特に、産別最低賃金の対象拡大や賃金制度・企業内最低賃金協約の締結など全体の底上げにつながる取り組みの必要性が強調された。
 6月5日には「中小労働者研修・交流会」を地協・単組から45名の参加で開催し「公契約」「財務諸表」「安全衛生・メンタルヘルス」の課題について学習するとともに、交流を深めた。
(2)平成21年度最低賃金の取り組み
2009年度の北海道最低賃金は、8月12日の「北海道地方最低賃金審議会」において、専門部会答申の11円引き上げて678円とすることを公労使一致で決定した。発効は10月10日。なお、全国加重平均は、703円→713円の10円アップとなった。
今回の改正により北海道における生活保護費との乖離額は36円となったが、3年以内に解消すること。また、未満率(4.083%)・影響率(8.129%)とも過去最高値(パート労働者限定数値は倍近い)となることから完全履行に向けた指導・監督の強化を付して結審した。
 
4.政策・制度要求の実現に向けた取り組み
「派遣切り」「雇い止め」が多発し、社会問題となったが、産別・単組、そして地域においても雇用維持・確保に対するスタンスや情報交換について、更に連携を強化するべきだったと総括される。
経営側から経営環境の悪化に伴い「賃上げはもってのほか」「ワークシェアリングをすべき」と叫ばれ出したのを皮切りに、「派遣切り」「雇い止め」が半ば公然と強行され、多くの労働者が仕事も住む家さえも奪われた。前日まで普通に働いていた労働者が雇用保険受給資格も与えられず、生活保護や路上生活に追い込まれた事実を重く受け止めなければならない。
派遣切りで失業した青年がTVインタビューに「将棋の駒のような存在だった…」と話していた。今回の不況により今も期間労働者のみならず正規社員の雇用が失われ始めている。人としての尊厳、生活・労働の権利を回復する取組みを強め、ワークルールを2の次に置く経営姿勢に厳しく対応することが求められる。
労組としての対応力・交渉力の強化を図り、特に身分の不安定な非正規社員との関わり方について大胆に内部議論を進めるとともに、組織化、組合結成などを急がなければならない。
 また、今回の経済危機を通して労働を巡るセーフティーネットの不備が明らかになった。
労働者派遣法の抜本改正はもとより、失業から再就職・自立に向けたサポート策、産業再構築とリンクした雇用の創出など、関係機関に強く求めることとする。
 
5.組織拡大に向けた取り組み
労働環境が悪化する中、「さっぽろ駆け込み寺」や「労働相談ダイヤル」には失業・雇用問題、賃金やハラスメントの問題など悲惨な現状や声が集約された。同時に、「トブ太カンパ」を通して多くの援助や心配する声が多数寄せられている。本来、職場の同僚や労働組合、地域の組織が苦しんでいる仲間の最も身近な存在としてなければはならないが、これらの取り組みを通して十分・不十分さの一端を知ることができた。「顔の見える組織」「頼りになる組織」を意識した運動の強化が求められる。その意味でも、現在の組織率18%程度という事実に甘んじることは許されない。
連合北海道が主催する「ユニオンスクール」「オルガナイザー会議」では、組織拡大に向けた理論と実践学習が開始されており、各産別から多くの参加者が集まっている。
各労働組合の影響力発揮、未組織労働者の組織化、「労働を中心にした福祉型社会」の実現に向けて、構成組織の力量アップに全力を挙げることとする。
 
Y 2010春季生活闘争に向けて
  具体的には12月に方針を提起することとなるが、09春季生活闘争の総括と「本部・地域ミニマム運動」の取組み方針が示されており、また、別紙「2010春季生活闘争基本構想(骨子)」に添い運動を進めることとするが、具体化については別途提起する。
 規模別集計
 部門別集計
 【単純平均】
 【加重平均】
 
 一時金集計〔9月末〕


 
加重平均 単純平均
組合数
 
金 額
(昨年比)
月数
(昨年比)
金 額
(昨年比)
月数
(昨年比)
年  間
 
964,288
(−137,859)
2.97
(−0.99)
884,596
(−15,556)
3.74
(−0.13)
96
 
夏  季
 
313,769
(−153,259)
1.30
(−0.44)
444,397
(+23,090)
2.14
(+0.28)
57
 
2010春季生活闘争の基本構想(骨子)
 
 
T 本部段階における取り組みの「柱」
 
1.2010春季生活闘争の役割と基本スタンス
 2008年後半からの世界同時不況は、日本経済にとっても生産調整・設備投資への慎重感を生み、収益動向も大企業はやや持ち直し感が生じてきたと言われるが中小は低迷を続けている。
 一方、失業率は5.7%(助成金者を含めると8.8%)を記録するなど、雇用環境は悪化し続けており、来春の新規学卒者の就職にも不安が大きい。
この間、賃金も急激に低下し、13ヶ月マイナスとなるなど生活困窮を強いられ、他方、非正規化・ワーキングプアのなかで将来に展望を開けないままでの労働を余儀なくされている。
以上の環境から「労働分配の歪み・貧困状態・長時間労働」などの課題解消が求められる。
 
2.2010春季生活闘争「要求」の基本的な組み立て
(1)内外需バランス経済の実現
(2)配分のアンバランス(労働分配率)是正
(3)雇用維持と処遇バランスの確保
 
3.具体的取り組み「4つの柱」
(1)賃金・労働条件の改善
@非正規労働者の処遇改善に向けて、正規労働者との均等・均衡処遇の実現に努める。
A賃金水準維持のための統一的取り組み
B企業内最賃の締結拡大
(2)ワーク・ライフ・バランス実現の取り組み
@総実働時間の縮減に向けた取り組み
A時間外・休日割増率50%の実現
(3)雇用の安定・創出
@180万人雇用創出と雇用の安定に向けた取り組み
A雇用維持への取り組み
Bセーフティーネットや能力開発の拡充
C雇用創出と時短の取り組み
D非正規労働者の正規雇用化などの取り組み
(4)共闘連絡会議体制の強化
@共闘連絡会議の機能強化
A地場共闘の強化
 
 
 
U 北海道段階における取り組み
 
1.取り組みの「柱」
@春季生活闘争の役割は、生活の維持・向上をめざし、社会的な分配のあり方に労働組合として積極的に関与し、マクロ経済への影響力を発揮することにある。
A同時に、未組織を含む全雇用労働者を視野に入れ、中小企業労働者の格差是正やパート労働者などの非正規社員や低所得層を重視し、全体の底上げをはかる。
B連合と産別の役割分担を踏まえつつ、中小共闘、パート共闘等の強化、産業部門別連絡会の連携強化、地域内共闘強化など相乗効果が発揮できる共闘体制を構築する。
C最低賃金の取り組みを強化する。
D未組織労働者の組織化、未成熟組合の活動強化に取り組む。
 
2.すべての組合が取り組むべき課題(ミニマム運動課題)
@賃金カーブ維持分を確保したうえで賃金改善に取り組む。
A非正規労働者を含め、全従業員対象の労働条件の改善に取り組む。
B時間外労働割増率が法定割増率と同水準の組合はその引き上げをはかる。
C連合リビングウェイジの水準を上回る企業内最賃協定締結に努める。
 
3.今後の進め方
@「基本構想」について、「中小・パート・労働条件委員会」で議論し具体化する。
「賃金・労働条件実態調査」の実施等について検討する。
A12月の地方委員会で「2010春季生活闘争方針」を決定する。
 
 
以 上