T.はじめに
1.2年間の取り組みを振り返って
 
(1)非正規労働センターの立ち上げ、組織の拡大
@ 第20回定期大会後の07年11月に非正規労働センターを設置し、非正規労働問題に取り組む連合北海道の姿勢を明確にし、2年間を通じ、職場生産点から非正規労働者の組織化、労働相談や雇用・労働条件の改善、正規社員化の促進、非正規労働・ワーキングプア問題の学習会、STOP!THE格差社会・反貧困全道キャラバン行動など、すべての労働者の視点にたった社会運動として展開してきました。  
A 今年度では、臨時・非常勤・嘱託などで働く人々の雇用・労働、生活に関する実態調査を行い、雇い止めに対する不安、低賃金、正規との処遇格差など、「北海道非正規労働白書」にまとめ、社会的セーフテイネットの欠如を背景とした非正規雇用をめぐる問題をあらためて社会的に提起してきました。
 また、非正規労働者の貧困問題の広がりが深刻化するとの認識から、労働問題や生活問題等を抱える人々への支援を行っている組織・団体との連携、ネットワーク化にも取り組んできました。
B 個別労使紛争が増加する中で、未組織労働者の権利擁護・確立にむけた訴訟費用を支援する労働者権利擁護応援資金制度を創設し、中小・未組織労働者への支援、無謀な経営者の無法・脱法行為に対する抑止力としての役割を果たしています。
C 一方で、組織人員の減少は、労働組合と労働運動の社会的影響力を低下させ、労働運動の力が弱まったことが、社会の劣化と歪みをもたらした一つの要因となっているとの認識から、2年間で2万7,000人増の組織拡大目標を設定・推進し、1万5,352人を新たな仲間を結集することができました。
D しかし、正規労働者の組合員が大幅に減少する一方で、組織化が遅れている非正規労働者が増えていることから、組織拡大を上回る勢いで組合員の減少が続いています。組織人員の減少は、連合財政の逼迫と運動の制約要因にもなり、抜本的な取り組みが必要となっています。
 
(2)地域に根ざした顔の見える連合運動の前進
@ この2年間、地域の住民生活に直結する地域医療の確立にむけて、医師不足の解消やへき地医療の問題、不採算地区病院や救急医療病院・診療所の問題など、地域の医療機関や関係者、地域住民とともに地協が主体となって取り組み、様々な問題提起を行ってきました。この活動を通じて、地域課題へのアプローチの仕方、地域住民、医療関係者と医師、そして自治体関係者との接点の持ち方など、地域運動を進める上でのノウハウを習得・蓄積、地域に根ざした顔の見える連合運動を前進させてきました。
A 世界的な投機資金の流入などによる原油の暴騰から、灯油・石油製品の高騰、農業・酪農業での飼料・肥料など生産資材価格、漁業・運送業での燃油価格の値上がり等、長引く景気低迷とのダブルパンチで、道民生活や経済・産業活動に大きな影響を与えきました。 この問題に対して、消費者、経済・産業、労働・福祉など各業界団体に幅広く参加を呼びかけ、道民生活・経済・産業危機突破集会や道政・政府への要請行動をはじめ、各地協においても同様に地域の商工・業界団体とも連携し、オール北海道の舞台をつくり取り組んできました。
B また、昨年暮れから米国の金融危機に端を発して世界同時不況に見舞われ、輸出産業を中心とした雇用調整が行われる中で、緊急雇用対策本部を設置し、派遣切り−生活困窮者の再就職支援−さっぽろ駆け込み寺を開設、産別の緊急雇用実態調査、主要都市での雇用調査に基づく知事・関係行政への要請行動、緊急雇用対策及び雇用の安定・創出に向けた労使共同宣言、老舗デパートの民事再生・雇用対策などに取り組んできました。
C 今後とも、この2年間の活動で得られた成果を糧として、それぞれの持ち場・立場を尊重しつつ、道内の産業・経済の再生、雇用の確保・創出、道民生活の課題などに、労働運動の立場からの役割をこれまで以上に果たしていかなければなりません。 
 
(3)衆参「ねじれ国会」、そして、政権交代の実現
@ 2007年7月の参院選で民主党が第一党に躍進、与野党が逆転しました。衆参で与野党が「ねじれた国会」となり、野党による議員立法の提出、与野党協議による法案修正が進む中で、ガソリン暫定税率が廃止、公務員制度改革基本法の成立、さらには国会同意人事におけるチエック機能の強化など、国会運営が大きく変化しました。また、政府・行政に対する監視機能が強化され情報公開が進んだ結果、「消された年金記録」等の問題が明らかになるなど、与党が支配してきた政官癒着の政治構造が大きく揺らぎました。
A 与党の政権運営は混迷し、国民の信を問わないままに小泉政権から安倍、福田と自公政権をつないだが、二代連続で総理が任期途中で職を投げだし、総選挙の顔としてそれを引き継いだ麻生政権の支持率は低下の一途を辿り、大型地方選・東京都議選の敗北を重ねた結果、与党内も混乱をきす中で、2009年7月21日衆議院解散に追い込まれ、8月30日の総選挙となりました。
B 民主党を中心とする野党勢力は「政権交代」を掲げ、官僚や族議員中心政治から、国民生活中心の政治、国民主権の政治への転換を訴え闘った結果、民主党が単独で308議席を確保、道内においても民主党が小選挙区で11勝、比例復活を含め比例代表を併せて15議席に大躍進しました。その他、民主党と選挙協力した新党大地が1議席、自民党が小選挙区の1議席に比例復活を含め3議席、公明党が1議席となり、自公政権は大幅に議席を減らし政権交代が実現しました。
C 連合は、この間、STOP!THE格差社会キャンペーンを展開し、2007年7月の参議院選挙、そして今回の衆議院選挙を闘ってきました。今回の政権交代は連合結成以来の悲願の達成であるとともに、民主政治の確立、国民本位の政治の実現に向けて、連合の果たす役割、責任が格段に大きくなったことを自覚して、労働運動のさらなる前進を目指していかなければなりません。
 
(4)連合結成20年、残された課題、労働運動もパラダイム転換
@ 連合北海道は、1990年2月の全道労協、道同盟、道中立労連、新産別、純中立組合を結集した統一大会から明年で結成20周年を迎えます。
 結成大会のスローガンは、「平和、しあわせ、道ひらく」、そして、働く者みずからつくる働く人たちのための政策、その政策を実現する力という2つの意味を込めた「力と政策」を掲げ、これまで多くの先輩諸氏の高い志、情熱、そして、たゆまぬ努力によって、幾多の困難が乗り越えられてきたことは想像に難くありません。何よりも労働者の、そして労働者の雇用と生活のため、政策実現力と経済闘争力を強化することを労働戦線統一の最大の目的とすることで、多くの仲間が心一つに結成しました。
 今一度、結成の意義を組織全体として確かめ合い、道内における連合運動のさらなる発展にむけ努力していかなければなりません。
A これまでの日本は、高度経済成長を通じて確立されてきた世界に冠たる雇用国家といいながら、世界のグローバル競争激化の下で、効率と競争が最優先され、労働の尊厳が失われ、格差の拡大や貧困問題が叫ばれています。社会的セーフテイネットが不十分な中で、非正規といわれる低所得労働者が急増、日本の雇用は「底割れ」の深刻な状況に陥っています。
B いま、市場経済を軸とする世界経済の「破局」という歴史的な転換点にあって、格差や歪みを是正し、再び、働く者のしあわせを築いていくため、「むきだしの競争社会では人は生きていけない」、「連帯と互いの支え合い」という、協力原理が活かされる社会、ぬくもりのある思いやりのある社会とするため、効率と競争最優先の価値観から公正と連帯を重んじる社会をめざして大きく舵をきる時であります。
C 連合は、労働組合の社会的責任を自覚して、政権交代という歴史的な転換点にあたって、いまこそパラダイムシフト【MEMO】をはかるべく、幅広い国民的な合意形成に努め、そして、「労働を中心とする福祉型社会」の実現に向け、その運動の牽引者としての役割を果たしていかなければなりません。
MEMO
 パラダイムシフト/その時代や分野において当然のことと考えられていた認識(パラダイム)が革命的かつ非連続的に変化(シフト)すること。
 
 
2.運動の力点

〈運動の力点〉
 ○ 社会の底割れに歯止めをかける。そのために雇用の確保・創出、政策制度の実
  現に全力を傾ける。これまで我が国の社会システムを支えてきた中間層を取り戻
  すため、分配の見直しと底上げを図り、非正規労働者、中小企業で働く労働者の
  処遇改善、尊厳ある労働の実現に取り組む。仕事と生活が両立しうる働き方の改
  革を通じワーク・ライフ・バランスを推進する。

 ○ 「地域に根ざした顔の見える連合運動」をさらに前進させ、職場や地域で働く
  労働者が抱える諸問題への対応力を強化する。労働組合ではない様々な組織や団
  体とも連携し、広く社会連帯の輪を拡大する運動を展開する。

 ○ 社会の公器たる労働組合は社会の安心、安定のために不可欠なインフラとの認
  識に立ち、労働組合をつくり、組合員を増やす運動を強化する。非正規労働者も
  包含した労働者代表たる労働組合を基盤として、集団的労使関係を構築し、諸課
  題を解決できる環境を整える運動を進める。
 

〈基本的な考え方〉
 ○ 日本社会を支えてきた層の厚い中間層を取り戻す取り組みの推進
  ・ワーク・ライフ・バランスの推進と労働条件の社会化の推進
  ・良質な雇用の確保、第2のセーフテイネットの恒久化と積極的雇用政策と社会
   保障の連携による新たなセーフテイネットの構築
  ・均等処遇の推進、地域における経済の活性化と雇用の確保
  ・次世代育成など、社会の支えとなるシステムの構築に向けた政策制度の実現
  ・新たな産業・雇用創出支援策とともに雇用調整助成金の拡充
  ・新卒採用の確保と就職氷河期に正規雇用を希望しながら就業できなかった人達
   のための中途採用の促進
  ・新たな産業の創造による産業・事業転換等を伴う雇用移転への対応として、労
   働者の権利や雇用・労働条件の確保に向けたルールやシステム整備

 ○ 地域に密着した運動の推進
  ・連合の認知度、信頼度を高め、労働運動のイメージの向上につながる運動
  ・働く者すべての権利や雇用・労働諸条件の向上に責任を持つとの立場から、目
   的を同じく有する諸団体との連携、連帯を深め、働く者の幅広い世論形成の輪
   を広げる運動
  ・政権交代のもと、道政、市町村行政、政権政党、地方自治体首長、地方議員と
   の関係を強化しつつ、働く者の勢力基盤の拡大、政策実現力向上を果たすため
   の社会連帯形成と連合のリーダーシップ発揮を追求する運動

 ○ 労働者重視の政策実現や労働者重視の企業経営を促す運動の推進
  ・無原則なコスト削減と規制緩和、外国資本投資推進と株主重視経営偏った政策
   の抜本的な見直しを求める運動
  ・集団的労使関係の再構築を進め、相対する勢力としての労働組合の交渉力を高
   める運動
  ・連合に結集する各級組織が各々が相対するカウンターパートに対する拮抗力を
   高めるための運動
  ・企業経営に対しては、従業員や消費者、地域社会に対してもバランスのとれた
   株主主権主義からステークホルダー主義への転換を求める運動