その7
くらしの安心と社会的公正を確立する政策制度の
実現を目指します
 
1.雇用と生活の不安を解消する雇用政策の確立
(1)勤労貧困層の解消
連合は、小泉構造改革がもたらした雇用・医療・教育・地域などの格差是正のため、一昨年から「STOP!THE格差社会キャンペーン」を全国展開し、連合北海道も様々な行動に取り組んできました。
昨年秋の米国発世界同時不況により急激な経営悪化に陥った国内企業では、「派遣切り」や期間従業員・パートの雇い止めが続出して、多くの非正規労働者の生活を直撃しました。それを通じて、住まいや明日の糧にも事欠くという「ワーキングプア」の深刻な実態とともに、我が国の社会的セーフティネットが極めて脆弱で機能していないこと、行き過ぎた労働分野の規制緩和による弊害という危機的状況が明確になりました。
連合北海道は「さっぽろ駆け込み寺」などの取り組みを通して、@地域最低賃金の大幅引き上げ(時間給1,000円)、A全ての雇用労働者に対する雇用保険の適用、B雇用保険のセーフティネットから除外された長期失業者、廃業した自営業者に対して公的扶助制度として「就労・生活支援給付制度」の新設、C生活保護制度のもつ生活保障の機能を発揮させるため「扶助」項目の社会手当化、D正規労働者との均等待遇の実現、E労働者派遣法の抜本改正等の課題を実現することが不可欠であると確認し、引き続き制度改善と政策転換を求める取り組みを進めます。
 
(2)国の雇用対策に対する取り組み
連合は、悪化する経済・雇用情勢の中、勤労国民と組合員・家族の生活を守るため、この間、政府に対し各種の政策・制度要求を行い、その中で長期失業者や雇用保険の未加入者を対象にした職業訓練、再就職、生活を総合的に支援する「就労・生活支援給付」制度の実現を求めてきました。その結果、麻生政権下の平成21年度第一次補正予算において、3年間の暫定措置として「緊急人材育成・就職支援基金」を創設させましたが、恒久制度化が課題です。
2009年7月の完全失業率は、5.7%と過去最悪を更新し、有効求人倍率も0.38と2年以上にわたり対前年比マイナスとなっています。また、都道府県別の有効求人倍率についても、地域間格差が依然として大きいままです。
雇用環境が急激に悪化している中では、雇用対策を迅速かつ強力に推し進める必要があります。連合は、雇用・生活の安心と将来不安の解消への道筋を示す「日本版グリーン・ニューディール」【MEMO】政策の推進に向け全力をあげることとしており、連合北海道も連合本部の取り組みに結集して運動を進めます。
 
【MEMO】
日本版グリーン・ニューディール/環境省は2009年4月20日、「緑の経済と社会の変革」(いわゆる日本版グリーンニューディール政策)を発表しました。その主な内容は公的施設のエコ改造、都市・交通のエコ改造、省エネ家電への一斉買換等の促進、次世代自動車等の普及促進、次世代エネ住宅・建築物の普及、先端環境産業に対する投資促進等による温室効果ガス排出削減と環境関連産業の振興による雇用創出であり、140万人の雇用を創出するとしています。
 
(3)北海道の雇用対策に対する取り組み
連合北海道は、経済危機に対応して総合雇用対策本部を設置し、諸対策を講じてきました。
雇用の悪化が進む道内の状況を把握するため「緊急雇用調査(函館市・苫小牧市)」を実施し、結果を踏まえて「緊急雇用対策と雇用の安定に関する要求と提言」を道に提出して交渉を行う一方、道議会議員団との連携により政策の具体化を求めてきました。また、労使が現状認識を共有し雇用への役割と責任を確認するための「労使協同宣言」の発表や、北海道や北海道経営者協会などとの連携による「新規高卒及び大卒等合同就職面接会」の開催に取り組みました。
引き続き、@他の年齢層より失業率が高い若年労働者の国と北海道の責任による就労支援活動の強化、A季節労働者の通年雇用化、冬期生活支援、B地域経済活性化による地域の雇用創出策の具体化など、北海道の実態に即した産業政策と雇用政策が一体となった戦略的ビジョンをもとに、実効ある雇用創出策の推進を求めていきます。
さらに、各地協・地区連合においても、地域の雇用状況や地域産業の実態把握に努め、雇用創出のための政策課題について積極的に支庁・自治体へ提言を行うよう連携を図ります。
 
 
2.社会保障制度の抜本改革、安心の地域医療を確立する取り組み
(1)社会保障制度の抜本改革に向けた取り組み
社会的な格差・二極化を是正し、社会的セーフティネットを再構築するため、社会保障の抑制・給付削減に歯止めをかけ、積極的雇用政策との連携による積極的社会保障政策への取り組みを強めます。
具体的には、@全ての雇用労働者に社会保険を完全適用させる、A年金空洞化の解消と皆年金の確立に向け、基礎年金の税方式化や年金の一元化、B医療・介護・福祉分野におけるサービス供給体制の整備・拡充、C医療・介護・福祉分野における関連労働者の処遇・労働条件の大幅改善、D障害者自立支援法はサービスの実施状況と利用者負担の実態、提供体制を検証し、必要な改善を図る、E後期高齢者医療制度の即時廃止、F年金記録問題の早期解決を図ることなどを、連合本部に結集して取り組みを進めます。
 
(2)地域医療を守る取り組み
医師不足や自治体病院等の経営悪化により崩壊の危機に直面する地域医療をいかに守るかが、道政の重要課題となっています。
連合北海道は、「道民の命を24時間守ることは北海道の責任である」という基本認識で、地域医療の確保に向けた施策に関する対道要求を再三にわたって行い、とくに「自治体病院等広域化・連携構想」に基づく地域での検討に際しては、住民の意見反映の機会を強く求めてきました。また、シンポジウムや地域の各団体や住民へのヒアリング等を通じて、地域医療の課題をより明確にするとともに、安心の医療を求める住民の切実な願いを痛感しました。さらに、各地協では住民が参加する集会や学習会を開催するなど、自分たちのまちの医療を共に考える機会を数多く設けてきました。
このような取り組みから明らかとなった課題は、@住民・患者の生活圏との整合性の視点から、現行の2次医療圏のあり方を検討すること、A患者の受診動向の把握や疾病調査を通じて、地域において整備すべき医療機能を検討すること、B地域医療に関する情報を集約し、住民に発信するためのセンターを設置すること、C地域住民の参加と協働を基本に、地域医療の連携に向けた議論を活発化させなければならないということです。これらの課題について引き続き、関係産別、地協・地区連合をはじめ医療関係者などと連携して取り組みを進めます。
 
 
3.エネルギー・環境政策を充実させる取り組み
(1)地球温暖化防止・CO2削減の取り組み
 我が国においても地球温暖化防止・CO2削減に向けた取り組みが進んでいます。連合では職場や家庭で、「冷房28℃・煖房20℃」、「マイエコバッグ利用」など、ライフスタイルの見直しに向けた「連合エコライフ21」運動が積極的に取り組まれています。北海道でも「ペレットストーブ」や「雪氷エネルギー」などが研究・実用化されています。官民が連携して自然エネルギーの活用に向けた取り組みを支援していく必要があります。
 CO2削減の取り組みについて、各種団体がそれぞれの立場から考え方を明らかにしています。削減の施策が実行に移された場合の産業に与える影響や、国民負担のあり方など多くの課題があることは確かであり、これからの政府の対応が注視されます。引き続き連合本部や民主党と連携をはかりながら情報の収集を行っていきます。
 
(2)泊原子力発電所防災訓練および地域防災体制の充実
2009年度の北海道原子力防災訓練は10月下旬に実施される予定です。連合北海道として調査団を派遣して、調査活動で得た防災訓練の改善課題や住民アンケートの結果を踏まえ、原子力発電所の安全運転を基本として、北海道や地元4町村の防災体制充実のための取り組みを進めます。
 
(3)幌延深地層研究センター事業の監視活動
 日本原子力研究開発機構が幌延町に設置している深地層研究センターは、「放射性廃棄物の処理、処分等の研究開発に関する協力協定」および「道条例」により、幌延に核廃棄物を持ち込まないことが前提の施設です。
 連合北海道は、引き続き機構に対して、事業の実施に関する道民および地域住民への情報公開と説明責任の徹底を求め、今後とも関係地協・地区連合や関係者と連携し事業の監視活動を続けます。
 
(4)道内の石炭資源・技術の有効活用
 国内で唯一、坑内堀採炭を続ける釧路コールマインは、国の「産炭国石炭産業高度化事業」を通じて中国やベトナム、インドネシアなど産炭国に我が国の優れた採炭技術を伝承しており、内外から高い評価を受けています。
 北海道の貴重な採炭技術を継承し、アジア諸国への対外支援策として本事業が引き続き長期事業として推進されるよう、政府に対して求めると共に北海道石炭対策連絡会議と連携して意見反映をしていきます。
 
 
4.地方分権改革と自治体財政確立の取り組み
(1)地方分権改革の基本的視点と具体的取り組み
地方分権を進めるために必要な基本的視点は、@地域で暮らす住民・生活者を支える行政、A住民参加が保証される自治体運営、Bすべての地域で等しく受けられる公共サービスのあり方、C地方財政の健全な運営であると考えます。そのためには、補完性の原理に基づく国と地方の役割分担に関して議論を深める必要があります。連合北海道は、引き続き連合本部における論議に積極的な意見反映を行います。
 国の出先機関の扱い問題は、組織論や行財政改革が優先されるのではなく、国と地方の在り方をどうしていくべきかの議論が必要です。単に地方分権に名を借りた行革、リストラとならないよう取り組みをすすめていきます。
 道州制については、「自由・自治・分権」という地方自治の基本に照らして、過去に政府内で行われていた論議に与することは出来ません。
 道民への必要な行政サービスを保証する自治体財政の確立については、国が、@自治体財政の根幹である地方交付税制度を堅持する、A交付税総額の安定的確保を保障する、B地方交付税制度の財源保障機能および財政調整機能を堅持する、C自治体の安定的財政運営を実現する一般財源を確保を図ることを、連合本部、民主党などに要請していきます。
 
(2)北海道の行財政改革の取り組み
連合北海道は、2010年度北海道予算も含め全ての計画・政策の推進が、単なる財源削減による効率化ではなく、道民生活にとって必要な医療・福祉・介護・保健・教育などの公共サービスが維持される行財政改革となるよう、引き続き「審議会」や「要求と提言」の中に反映して取り組みを進めます。
 支庁制度見直しについては、地域自治体や道民の懸念に対して高橋知事が充分な説明責任を果たさず、本質的な支庁制度論議を尽くしていないということが、混乱の原因であると考えます。
 今次の支庁制度の見直しは、@地域主権型社会を展望して基礎自治体のあり方と一体的に検討されるべきであり、その視点が全くない、A北海道の財政再建問題から端を発したものであり、地域への影響を考慮していないことなどの問題があり、地域住民や自治体の理解が得られておらず、白紙に戻すべきものと考えます。
 
 
5.北海道および国への政策・制度要求の取り組み
 連合北海道は、2010年度道予算要求について、@勤労道民の立場にたったもの、A疲弊する地域の医療・福祉・介護・教育などを再生する住民生活に依拠したもの、B地域経済の基盤である農業・林業・漁業などの振興・活性化、C地域の資源・人材を活用し、環境と食料を中心とした産業と雇用の拡大などを「要求と提言」に掲げ、民主党道民連合との協力・連携を図りながら政策要求の実現を目指します。
 2011年度の政府予算への政策・制度要求活動については、北海道に係わる重点課題について、政策委員会での議論を経て、民主党と連携・協議をして政策実現に取り組みます。
 北海道や国への「要求と提言」作成に当たっては、引き続き関係産別などから積極的な意見と情報提供をいただくとともに、政策委員会の事務局機能の充実・強化を図ります。