その3
春季生活闘争の推進と労働条件・ワークルールの確立
1.春季生活闘争の強化
2010春季生活闘争に向けては連合本部の基本構想と闘争方針を踏まえ、12月に闘争方針を確立(闘争委員会設置)、年明けには方針の徹底と具体化に向けた討論集会の開催など積極的な取り組みを進めることとします。
経済・雇用環境の厳しさが予想されることから「2009春季生活闘争の総括」を踏まえ、格差是正、地場中小・パートの重点化、賃金制度の確立、労働条件改善などポイントを明示しながら、産別・単組と地域が一体感のもてる取り組みを目指します。
2.雇用対策の強化
昨年末からの雇用危機を受け、個人や関係企業に対して各種補助・助成金(雇用調整助成金・中小企業緊急雇用安定助成金)、職業訓練関連(緊急人材育成支援事業)の施策が矢継ぎ早に打たれてきました。しかし、求職者の増に対して企業の求人が減少するという事態に改善が見られないまま推移しています。
求人と求職におけるミスマッチ(産業や地域、技能、処遇…)解消策と雇用拡大に向けた事業への投資・支援、特に、若年失業者の増加は北海道の将来に直結するものであることから早急な対応が求められます。女性、障害者、高齢者の雇用拡大についても個別対応施策を強化するなど関係各方面に対しては更に実効性のある施策展開を求めます。
3.地域最賃の大幅引き上げと公契約条例制定の取り組み
地域最賃は、生活保護費との乖離36円の解消、連合リビングウェイジ(870円)【MEMO】を通過点と位置づけて取り組みを継続・強化することとします。
特に、2009年度北海道地域最低賃金11円の引き上げに伴って未満率・影響率が高まったことからその完全履行と、公務部門・公契約関連労働者の最低賃金確保に関わって「公契約条例」【MEMO】の制定を目指した取り組みを強化することとします。
【MEMO】
1)連合リビングウェイジ/総務省「全国物価統計調査」(2002年)の都道府県別民営借家世帯の物価指数を連合調査の最低生計費(埼玉県 152,000円/月:920円/時間)の地域間格差に修正して計算された時間給(北海道は870円)。
2)公契約条例/公共サービスを担う労働者の賃金、労働条件の最低限の基準を示すもので、公共サービスの質の維持と向上を図り、地域の経済と雇用を支える優良な企業の育成を求める条例。
4.障害者雇用率を高める運動
障害者雇用促進法の改正が継続審議になっています。北海道においては民間企業に課された法定雇用率【MEMO】1.8%に対し1.74%、法定雇用率達成企業の割合は49.5%となっています。率・人数(7,945.5人)は過去最高となり進展がみられるものの、法定未満であることからより一層の雇用拡大が求められます。法定雇用率2%が適用される公的機関(教育委員会など)では1.6%、法定雇用率達成機関の割合は66.7%に止まっており、改善を要すると指摘されています。
ノーマライゼーション【MEMO】の精神に則り、法定雇用率を上回る雇用拡大と賃金・処遇の改善に向けた運動を強化します。
【MEMO】
1)障害者法定雇用率/民間企業、国、地方公共団体は、「障害者の雇用の促進等に関する法律」に基づき、それぞれ以下の割合(法定雇用率)に相当する数以上の身体障害者又は知的障害者を雇用しなければならないこととされている。
○民間企業 一般の民間企業(常用労働者数56人以上規模の企業1.8%)
○特殊法人 (常用労働者数48人以上規模の法人2.1%)
○国、地方公共団体 (職員数48人以上の機関 2.1%)
○都道府県等の教育委員会 (職員数50人以上の機関 2.0%)
2)ノーマライゼーション/ノーマライゼーション(normalization)は1960年代に北欧諸国から始まった社会福祉をめぐる社会理念の一つ。障害者と健常者とは、お互いが特別に区別されることなく、社会生活を共にするのが正常なことであり、本来の望ましい姿であるとする考え方。またそれに向けた運動や施策なども含まれる。
5.健康で働き続けられる労働環境の実現
2010年4月1日より「改正労働基準法」が施行され、時間外労働への割増賃金率引き上げ、年休の時間単位取得が可能となります。年休取得の促進や時間外・休日労働の削減を中心に取り組み、年間総実労働時間1,800時間(註)、仕事と生活の調和のとれた働き方(ワーク・ライフ・バランス)の実現を図ります。適用が猶予されている中小企業においても均等待遇を目指し、全労働者を対象とした「ディーセントワーク(働きがいある人間らしい仕事)」を目指して、働き方のチェックと改善への取り組みを展開することとします。
註:年間総労働時間各国比較
年 |
日本 |
アメリカ |
イギリス |
ドイツ |
フランス |
カナダ |
2003 |
1828 |
1800 |
1655 |
1360 |
1439 |
1727 |
2004 |
1816 |
1803 |
1649 |
1364 |
1466 |
1744 |
2005 |
1802 |
1800 |
1655 |
1354 |
1459 |
1735 |
2006 |
1811 |
1801 |
1648 |
1351 |
1465 |
1734 |
2007 |
1808 |
1798 |
1655 |
1353 |
1457 |
1733 |
※(資料出所) OECD Employment Outlook(2008)
(注) 1 調査対象となる労働者にはパートタイム労働者を含み、自営業者は除く。
2 日本は事業所規模5人以上の労働時間。日本以外の国については事業所規模の区別はない。
3 フランスの2006年及び2007年の数値は推計値。
4 各国によって母集団等データの取り方に差異があることに留意。
6.労働安全衛生対策の強化とメンタルヘルス問題の解決
北海道勤労者安全衛生センターと連携し、POSITIVE(労働組合主導の実践重視型労働安全衛生改善を促進するためのプログラム)普及を強化します。また、職場点検活動と連動させた地場中小企業における労働安全衛生の向上に努めます。
メンタルヘルス問題の解決に向けても、職場復帰プログラムの充実を求める政府要求など、緑愛病院職業病センターとも連携して取り組み、職場の理解・対応の適切化を目指し学習会や宣伝物の充実に努めます。
7.北海道労働委員会・労働審判制度の有効活用と強化
経済危機が問題になり、企業の業績悪化・倒産・失業に係る労働相談が増え出した2008年12月、北海道労働委員会の定数が削減(公益・労働者・使用者各9名→各7名)されました。定員減に伴い各委員にはかなりの負担増となっています。労働委員会の役割が重要になっている時でもあり、その役割を後退させないよう定数の再検討等を道に求めます。また、労働者委員・労働審判員の資質向上と研究支援のため、判例など関係資料の整備と「労使関係問題研究会」の活動強化や定期的な研修会の開催に取り組みます。
組合員、組合役員に対しては「北海道労働委員会」や「労働審判制度」の学習会等を通じて制度への理解促進を図ります。
8.外国人労働者の人権尊重と平等待遇の実現
道内の外国人雇用数は、約5,400名強であり、産業別では製造業(39.6%)、教育・学習支援(19.5%)、飲食店、一次産業の順。国別では中国(65.8%)が突出し、特定活動(研修等)として就労しています。雇用のミスマッチ(労働条件・賃金・地域…)を補う形での就労も懸念されることから、外国人労働者の実態把握などについて取り組みを検討します。
9.「生涯組合員構想」の具体化議論に参加します
「生涯組合員」とは、退職者をはじめ中小・地場労働者、パートなど非正規労働者が地域を基盤とする運動に参加する中で、「生涯支援」を目指すものです。連合は第11回定期大会において市民・労働者を対象に@活動の場の提供A自主福祉事業との連携B社会貢献活動のネットワーク化なと「生涯支援」を目指すとしています。方針具体化と併せ、北海道としての取り組みを検討することとします。