U.情勢と課題
一、世界情勢
 
1.世界的な金融不安と資源インフレ
@ いま世界経済は、1)サブプライムローン問題に端を発する金融機関の信用不安、2)インフレの引き金になっている原油高、3)住宅バブルの崩壊の三つの逆風により先行き不安が増大していますが、本年開催されたG8においても、景気後退とインフレに何の解決策も見いだせませんでした。
A サブプライムローン問題【MEMO欄】に端を発した米国発の金融危機の嵐は、世界を駆け巡りとどまることを知りません。イギリスやEU、日本を含む先進国、それと中国など新興国、発展途上国など世界経済をけん引している国々も巻き込み、世界経済が総崩れする同時不況への懸念が広がっています。そのためG8の国々が協調し、経営難の金融機関への公的資金による資本注入を柱とする共同行動などで金融危機の影響回避に対応しています。問題は何故このような危機がおきたのか、解明が求められます。
 基軸通貨国であり最大の消費市場である米国経済混迷の出口は、現在まだ見えていません。米国経済の変調は、欧米市場への輸出依存が高い新興国経済や日本経済に深刻な影響が及んでいます。
B かつては安価な労働力で「世界の工場」となっていたアジア新興国【MEMO欄】も、現在は所得水準の上昇により「世界の消費国」となり、世界経済への影響も強めています。特に、貿易・投資を通じて関係の深い日本経済への影響は大きいものがあります。
  その著しい経済成長を遂げてきていたアジア新興国の経済が、原油、穀物など国際商品の価格高騰、金融危機で変調し始めています。原油高は、先進国・新興国の分け隔て無くインフレ懸念を高めますし、家計に占める食料費の割合は新興国ほど高くなり、新興国は総崩れの様相を示しており、ベトナムが急激に悪化しています。
C アメリカ経済は危うい状況が続いています。自動車産業のビックスリーといわれるゼネラルモーターズやフオードが事実上経営破たんしたといわれるほど経営が悪化しており、失業率も高く先行きが厳しい状況にあります。また、アメリカの国家財政は過去最大の赤字となっています。アフガンやイラクの戦費、メデイケアや失業保険補てんなど社会保障費の増大などにより、今年度は昨年度の2倍以上の4500億ドルの赤字が見込まれています。10月に金融再生法が成立し、金融機関に対する救済費用が上乗せされると赤字財政はさらに膨らむことになります。
【MEMO】
1)サブプライムローン問題/ 所得や信用力の低い人向けの高金利住宅ローンで、主に米国の住宅バブル時に普及しましたが、住宅バブル破綻により担保価値を裏付けとした借り増しや借り換えができなくなったことや、FRB(米連邦準備制度理事会)が実施した利上げによってローン金利が上昇したことも影響し、ローンの返済に行き詰まるケースが続出し、米国のみならず各国の金融機関に大きな影響が出ました。
2)アジア新興国/ 中国、インド、ASEANなどの23ヵ国を指す。
 
2.米国新大統領選挙
@ 2006年11月に行われた米国の中間選挙で、与党共和党は敗れ、12年ぶりに民主党に連邦議会上下両院の多数派を奪われました。この選挙結果は、米国の覇権を盾に行ってきた傲慢な一国主義や、正当な理由のないイラク侵攻など一連の外交政策が国民から拒否されたことを意味します。開戦から5年が経過しても出口が見えないイラク情勢やアフガニスタン情勢など課題が山積しています。武力によって他国に介入し、民主化するというタカ派戦略を採るブッシュ外交は破綻し、また、サブプライム住宅ローン問題に端を発する金融危機、株価の下落にドル安など米国経済は厳しさを増し、これに有効な手だてを打てず内政面でもいき詰まりにあります。
A 本年11月には、米国大統領選挙が実施され、共和党ジョン・マケイン候補と民主党バラク・オバマ候補の激しい選挙戦の結果、「チェンジ」を掲げたオバマ氏が勝利し、経験の交代が実現しました。この新大統領選挙の結果は、わが国はもとより国際社会で強い影響力を持つことになります。
B 一例をあげればイラク戦争に関して、オバマ氏は、当初からイラク戦争に反対しています。オバマ氏は、戦闘部隊のイラクからの撤退し、イラクで憲法会議を開催し、和解を目指すと主張しています。一方、マケイン氏は、イラクにおける長期的な成功を達成するために、軍事的関与を強化するスタンスで、アルカイダを解体し、イラク軍の訓練を行い、イラク警察部隊に米軍兵士を配属するには、米軍兵士の数が大きく不足していると主張でした。
 これまで日本政府はブッシュ外交に追従し、協力してきましたが、米国の政権交代は日本の外交はもとより、通商政策、農業政策など幅広く影響がおよぶことになります。
 
3.多発する地域紛争と朝鮮半島の動向
@ イラク、アフガニスタン、そして西アフリカの内戦など世界各地で紛争が多発しています。さらに、本年8月7日、グルジアの南オセチア自治州でロシア軍とグルジア軍との戦闘が始まり、またしても多くの難民が発生しました。いつでも戦争の被害者は一般の国民です。戦争のない平和な世界の実現にむけ、平和憲法を持つ日本が今こそ各国に対し平和への取り組みを強く働きかけるべきです。
A 北朝鮮の核問題をめぐる6カ国協議【MEMO欄】は、朝鮮半島非核化「第二段階」の完了を目指し、北朝鮮の核施設の無能力化と、6カ国による経済・エネルギー支援を10月末までに履行することで合意していました。核無能力化の措置は、2007年10月の6カ国協議の合意に基づき始まり、非核化に向けた実施措置の一つで、寧辺の5千キロワット実験炉、再処理工場、核燃料棒製造施設を対象としています。今年6月の北朝鮮による核申告の提出を受けて、米国は、核無力化を条件に北朝鮮に対するテロ支援国指定を解除する方針です。また、日本政府は日朝間の諸懸案の最優先事項として、拉致被害者の再調査を取り上げ、そのうえで経済制裁を解除するとして対応してきました。
【MEMO】
六カ国協議;アメリカ、韓国、北朝鮮、中国、日本、ロシアが北朝鮮問題の核開発問題に対して解決のため各国が直接協議を行う会議。東アジア安全保障に関する会議。
 
B 北朝鮮の核計画(高濃縮ウラン計画、核サンプル採取、核拡散活動など)検証をめぐり米朝が対立していましたが、10月にようやく合意ました。そして、米国は北朝鮮へのテロ支援国家指定を解除しました。しかし、米朝合意にはあいまいな点もあり実効性に疑問が残っています。核施設の無能力化など6カ国協議は第2段階措置として、その見返りとして経済エネルギー支援の問題が残されています。また、日朝間には拉致被害者の再調査という懸案事項を抱えています。
 朝鮮半島の非核化の実現は、日本の安全と北東アジア地域の平和と安全に関わる問題であり、日朝の国交正常化に寄与する重要な課題です。
 
4.深刻な環境問題と世界で広がる貧困問題
@ 地球温暖化をはじめとする環境問題は、今や待ったなしの状態になっていますが、7月の洞爺湖サミット、更には8月の国連気候変動枠組み条約作業部会においても、CO2排出削減の中期目標数値を定めることはできませんでした。
 さらに、G8の先進諸国と新興国・途上国との間の思惑の違いが強調される状況が続いています。
A また、世界的な新自由主義【MEMO欄】の広がりにより、今多くの国が格差社会へと進んでおり、貧富の格差が拡大して貧困対策が各国で重要な課題となっています。連合は5月に北海道洞爺湖サミットに先駆けITUC(国際労働総連合)等と新潟で雇用・労働政策の課題を討議するレーバーサミットを開催しました。G8諸国労組・労働大臣が参加しました。各国から非正規労働者やワーキングプアが増加し不安定雇用が増え、所得格差が急拡大していることが報告されました。そして、レーバーサミットは「格差解消に向けたG8労働・雇用大臣の決意」を確認しました。その内容は、拡大する経済・金融危機への対応、飢餓、貧困、エイズなど開発途上国へのコミットメントの遂行、グローバル化によって生じるマイナス面の社会的側面に着目し、柔軟で安全性を備えた包括的な労働市場を整備することに労働組合が効果的に関与することことなどです。
【MEMO】
新自由主義(ネオリベラリズム);市場原理主義の経済思想に基づく、均衡財政・福祉および公共サービスの縮小・公営企業民営化・経済の対外開放・規制緩和による競争促進・情報公開・労働者保護廃止などをパッケージとした経済政策の体系。国家による富の再分配を主張する社会民主主義とは極対軸の経済思想。
 
B しかし、洞爺湖サミットにおける首脳宣言では、昨年のハイリンゲンダム宣言で強調された「企業の社会的責任」についての言及は今回は大変弱々しく、また、前回盛り込まれたディーセントワーク・アジェンダ(仕事と生活の調和への行動計画)への支持には全く言及されませんでした。貧困削減を実質的に担保するための重要な要素が欠落していたことは極めて問題です。開催国である日本政府、リーダーの姿勢とも関連しています。
 
 
二、国内情勢
 
1.最長景気の終焉
@ わが国では「いざなぎ景気」(1965年から57ヶ月、約5年)を超える史上空前の景気(2002年から約6年)がついに終わりを迎えました。今回の好景気は一部の輸出産業・企業によるもので、企業業績も史上最高益を更新する企業が続出するその一方で地方の地場企業や流通サービス・運輸など国民生活に密着する産業部門では苦しい経営が強いられるという歪な景気でもありました。
 また、この間、「好景気」の一方で、日本の労働者の賃金は国税庁統計では、9年連続低下し、労働分配率は10年で6.2%も落ち込みました。株主主権主義にたった経営と短期利益追求の企業行動は社会と労働現場に歪みを生み出し、働く者には全く実感がともなわないいびつな景気でもありました。
A わが国の経済の問題点としては、「国際競争力の維持・強化のためには賃上げに慎重にならざるを得ない」(日本経団連・御手洗会長)という経営側の賃金抑制策とともに、政府が、財政再建を最優先させ、負担増・給付削減の政策をすすめ、GDPの6割を占める個人消費など内需拡大に結びつく有効な対策を行ってこなかったことに問題があります。外需に依存する日本の経済には、米国経済の減速の影響は大きく、ドル安・円高、止まらない物価上昇など、多くの懸念材料がひろがっています。物価が上昇しているのに所得が減少しており、「スタグフレーション」(不況下の物価高)【MEMO欄】が進行する可能性を指摘する分析もあります。
【MEMO】
スタグフレーション;インフレ(物価水準の上昇)と景気後退が同時に発生した場合のことをいいます。スタグフレーション(stagflation:景気沈滞下のインフレ)は、スタグネーション(stagnation:沈滞)とインフレーション(inflation)の合成語です。
B いま、日本経済は、大きな転換点にたっています。政府は企業中心・生活者軽視の政策から生活主導型経済への政策転換をはかるべきです。
 その第1は、マクロ経済の成果が国民全体に構成に分配、波及させていくこと。それは、「公正・平等」「連帯・参加」を大切にした分配を重視する方向への経済転換です。第2に、労働者の犠牲のもとに経済成長をはかるという企業行動パターンとの決別です。成長成果を「底上げ」のために分配することで格差社会を乗り越えることです。第3には、外需依存の経済を労働者重視の生活主導型経済へと転換をはかり、あらゆる人に暮らしの安心を保障する社会システムを構築することです。これが連合が目指す「労働を中心とした福祉型社会の実現」の理念にたつ経済思想です。
 
2.求められる正規雇用の拡大
@ 昨年の有効求人倍率は1.04で、パートタイムを除いたものは0.92、パートタイムの求人倍率は1.43と昨年もまたパートタイムの雇用が増加しています。
A しかし、今年の「労働経済白書」では、パートなどの非正規雇用の増加【備考欄】については、労働者の仕事に対する満足度を低下させていると分析し、正規雇用の拡大を求め、年長フリーターなど望まずに非正規社員として働く層の正規雇用化が課題と指摘しています。
B また、非正規雇用の増大によって労働者の満足感が長期的に低下していることから、正社員を増やして賃金を上昇させることが重要としました。特に、生産性が高い製造業の正規雇用拡大が課題としています。
C 労災の面からも非正規労働者の増加による問題点が出ています。
  厚生労働省の発表によると、派遣労働者の労災被災が04年から07年の3年間で、製造業を中心に9倍に増えています。特に、日雇い派遣が多いとされる貨物取り扱いや運輸交通での増加が目立っています。
D 人集めが容易で、人件費を安く抑えようと派遣労働者の雇用に経営者は傾きますが、労災防止は最低限の義務であることを今一度認識すべきです。
 
【備考】
1)非正規労働者の推移(単位:万人)






 
  パート アルバイト 派遣 契約・嘱託 その他
2002年 718 336 43 230 125 1452
2003 748 342 50 236 129 1505
2004 763 333 85 255 128 1564
2005 780 340 106 278 129 1633
2006 792 333 128 283 141 1677
2007 822 342 133 298 137 1732
   資料:総務省統計局「労働力調査特別調査」、「労働力調査(詳細集計)」
2)派遣労働者の被災者数推移(単位:人)

 
2004 667
2007 5885
   資料:労災死傷病報告から派遣労働者分を厚生労働省が抽出したもの
 
3.将来に希望を見いだせず、荒れる社会
@ 国民生活は、税や社会保険料の負担増で可処分所得が減少し、そのうえ物価が上昇し生活を圧迫しています。地方では医療・介護分野での専門家不足など不安が拡がり、少子化が急速にすすむなか、出産・子育て支援は十分ではありません。また、老後の安心を保障する公的年金制度は未加入者が増えるなど、社会保障全般への不安も高まっています。
A 日本の社会は、将来に希望を見いだせない人々が増え、閉塞感がひろがっています。肉親が殺し合う殺人、無差別殺人など特異な事件が多発しています。また、介護事業者の不正請求、賞味期限切れや産地偽装など数多くの企業・省庁不祥事があとを絶ちません。
 労働の規制緩和で非正規労働者が増大し、雇用形態の違いが所得格差に連鎖し、教育や将来の希望に対する格差にまで広がっています。富裕層が増大する一方で生活保護以下で働くワーキングプアーが増大し、日本の貧困率【MEMO欄】はOECD諸国の先進国では米国につぐ高さになっています。労働市場における二極化の拡大が主な要因と指摘されています。行き過ぎた市場原理主義、競争至上主義が人々の道徳観、企業倫理などの喪失を招く一因となっています。
 日本を再生し、公正・公平な社会をつくり、安心・安全な労働と生活をおくるためにも、政策転換が求められているのです。
【MEMO】
貧困率;OECDは「各国の中位所得の50%以下の所得しか稼いでいない人」を貧困層と定義。国民のうち何%の人が貧困層であるかを示す数値。日本はOECD諸国の中で5番目に貧困率が高い。
 
4.政局の動向と総選挙への態勢確立
@ 昨年7月の参議院選挙において自民党が歴史的な敗北をし、参議院で与野党逆転が実現しました。安倍総理の政権投げ出しにともなう自民党総裁選挙に、福田康夫氏と麻生太郎氏が立候補し、第22代総裁に福田氏が選ばれ福田政権が発足しました。福田政権は、内閣改造後、9月に臨時国会を開催することを決め、その開会を前にして、突如、9月1日、辞任を表明しました。安倍前総理も内閣改造、国会での所信表明の直後に突然辞任しており、自公政権のトップが一年足らずの間に二度も政権を任期半ばで投げ出したことになります。
 もとより福田政権は発足当初より一国の総理として適格性と政策軸のあいまいさ、指導力の欠如が問われ続け、6月には民主、社民、国民新党が参議院に共同提出した福田首相に対する問責決議案が可決されました。8月の内閣改造後も低迷が続いたことから、任期途中で政権を投げ出しました。
A 二代続けての「政権投げ出し」で不信感が高まるなか、自民党は麻生太郎氏など5名で総裁選挙を行いました。「政治空白」を招いたことへの反省も国民へのお詫びもなく、「劇場型」に演出し解散総選挙になだれ込もうと目論んだ総裁選挙でしたが、盛り上がらないまま、麻生政権が誕生しました。麻生首相が誕生した直後、「国会の冒頭、堂々と自民党の政策を小澤代表にぶつけ、国民に信を問う」という論文を発表し、10月末解散に標準を合わせた発言をしていたにも関わらず、自民党の独自の世論調査で「与党過半数割れ」という政権が追い込まれた状況の中で、アメリカ発の金融危機、景気対策を口実に解散を先送りしました。しかし、参議院で野党が多数を占めていることに変わりはなく、自公政権が国会運営に困難を来すことは明らかです。総選挙の先送りは、自民党の政権担当能力の衰弱による、迷走であり末期的といえます。
B いずれにしても次の衆議院選挙は、政権選択の闘いとなります。各種調査でも、次回の選挙で民主党への政権交代に賛成する国民世論が大きくなっています。しかし、民主党の政策に対する理解を広げる取り組みや、組織基盤は万全とはいえません、自民党は厳しい状況になればなるほど底力を発揮します。厳しい認識で総選挙を戦っていかなければなりません。
C 連合北海道は、ストップ・ザ格差社会キャンペーンや諸物価高騰に対する生活防衛、本道経済・産業の危機、与党の地方と国民生活不在の政治の転換を訴える運動を展開してきました。小泉政権以降、格差の拡大・貧困など社会の歪みが拡大する一方、外需頼みの経済も頭打ちとなっており、真に政権担当能力のある政治体制の構築が何よりも必要です。「今こそ政策と政治の転換を!」を実現するため、第45回総選挙は最大のチャンスです。
 
 
三、道内情勢
 
1.道内経済の動きと雇用情勢
@ 日銀札幌支店による8月の金融経済概況では「公共投資が低調に推移し、個人消費、住宅投資は弱めの動きで、道内の景気は総じて弱めの動き」としています。
 個人消費では、今年の夏物商品は天候の要因により衣類を中心に伸び悩みました。また、乗用車の販売もガソリン高騰の影響から低調な動きとなっています。
A 負債総額1千万円以上の企業倒産は、対前年比38.5%増(負債総額は2.4倍)となっており、依然、厳しい状況が続いています。
B 道内の雇用情勢は、9月の有効求人倍率(常用)が0.47(全国0.82)、対前年同月比は15ヶ月連続でマイナスとなっております。また、7−9月の完全失業率4.9%は、前年同期に対し−0.2と依然、厳しい雇用環境にあります。
C 北海道経済は、戦後最長とういわれる好景気の恩恵を受けることもなく、いつものように景気冷え込みの影響を真っ先に受けはじめています。
 本道産業の特性を生かした経済の活性化、良質な雇用の創出に向けた政策を早急に策定、実施することを道に求めるとともに、最低賃金の引き上げなど格差の是正に取り組みます。
 
2.課題山積の道政
@ 道は現在の14支庁を9総合振興局・5振興局に再編する支庁制度改革案を、第2回定例道議会に条例提案し、民主党が採決で棄権するという異常な状況で可決されました。財政再建は重要ですが、職員削減と組織の統廃合が先にありきで、「地方切り捨て」との反対意見や慎重な意見に対し、丁寧な説明がなされませんでした。
 道内の市町村は、厳しい財政運営を強いられ、様々な困難な問題を抱えながら地域の活性化に取り組んでいます。今必要なのは、市町村と思いを共有できる支庁機能の拡充です。
A 北海道開発局幹部による談合問題を契機として「開発局廃止論」が勢いを増しています。開発局という行政組織のあり方に関する本質的な論議は、地方分権改革の中で論じられるべきであって、官製談合の発覚に絡めて国の出先機関をリストラしようとする「廃止論」では主客転倒です。
 地方分権のためには、国や道・市町村のそれぞれの役割と連携、税財源や権限の移譲のあり方など、分権に向けた全体の制度設計が必要です。将来に限りない可能性を有する「北の大地」北海道の総合的な社会資本の整備や産業基盤強化をどう展開するのか、将来に禍根を残さない行政組織のありかたを検討すべきです。
B WTO多角的貿易交渉(ドーハラウンド)の閣僚会合が7月に決裂しました。農産物輸入拡大の「最悪の危機」は一時猶予されました。しかし、今後は経済連携協定(EPA)の活発化が予想され、道内農業にとって競争力強化が迫られている状況に変わりはありません。わが国の食糧自給率低下や食の安全などが問題となっているいまこそ、食糧基地北海道の役割は重大です。
 持続可能な農林水産業の確立と地域経済を守るため、オール北海道的運動を構築し、国内外に向けた取り組みも考えていくことが必要です。
 
3.道政奪還に向けて
@ 高橋道政が2期目に入りスタート以来5年が過ぎました。
 北海道には多くの課題が山積しています。雇用創出等雇用対策、道行財政改革、経済の活性化、市町村合併、地域医療問題、道民生活の向上などです。
 高橋知事は就任当初より「道内の景気回復」を強調し、道経済産業局長を勤めた経済のプロを自任してきましたが、自動車関連企業の道内進出があったものの、景気回復による、道民の生活向上、雇用の安定などで見るべき成果を得られていません。また、支庁制度改革、地域医療問題でも、道庁の事情を最優先した姿勢が顕著になっています。だれが知事であっても北海道は厳しく、苦しい情況にあります。地域に出向き理解と協力のもとに難局を乗り越えて行こうという姿勢が知事には求められています。
A 連合北海道は、道政奪還に向け知事候補の早期擁立、道議会議席の拡大に向け民主党北海道と連携して取り組みを進めていきますが、連合北海道及び民主党北海道の地域組織による日常活動を強化し、政治勢力の拡大に努める必要があります。