その7
  くらしの安心と社会的構成を確立する
政策制度の実現を目指します
 
【取り組みの総括と課題】
【格差是正、不公正税制改革の取り組み】
 政府・与党は、2003年から続いている株式配当や売却益にかかる課税についての優遇措置を継続しようとしています。少数の富裕層に対する、典型的な不公平税制の見直しは行われないなかで、一般の勤労者世帯は、賃金が増えないなか、定率減税の廃止などで負担が続いています。
 そのようななかで、道路関連整備事業と税の使われ方のでたらめな実態が明らかになり、暫定税率維持を含む租税特別措置法改正案が第169通常国会最大の焦点となりました。参議院で主導権を握った民主党が暫定税率延長に反対、一般財源化を主張するなかで大きな国民議論となり、一度は廃止させましたが、政府・与党は衆議院において再可決を行い復活させました。
 連合北海道は、この間「ガソリン税等」暫定税率廃止を求める諸行動(署名、街頭宣伝、学習会、チラシ配布)を全道的に展開し、その世論喚起・形成を積極的に行いました。さらに、格差是正のため、2008年5月から全道キャラバン行動を行い、自治体首長、議会、経済団体などに、連合の考えを説明し、多くの地域で賛同を得ました。

【医療制度改悪反対の取り組み】
 北海道がこれからの地域医療のあり方の「たたき台」として示した「自治体病院等広域化・連携構想」に対応するため、2007年11月から「連合北海道地域医療を守る対策委員会」を立ち上げるとともに、各地協においても「地域医療検討委員会」の設置を確認し、取り組みを行いました。
 連合北海道は、2008年4月の第7回執行委員会決定を受けて、「住民本位の安心・安全・信頼の地域医療を求める要望書(署名)100万人目標」行動を始めとする諸行動を、全産別、地協、地区連合とともに当面する重要課題として取り組みを進めました。2008年8月26日、個人603,477万筆、団体3、729筆を高橋知事に提出するとともに、引き続き開催した対策委員会と関係団体による集会において、今後も運動の強化をはかって行くことを確認しました。
 2008年4月からスタートした「後期高齢者医療制度」は、医療費の削減が目的であり、負担増となった保険料は、僅かな年金から天引きし、医療内容も制限し、高齢者に医療不安を招くだけのものであることが判明しました。
 連合北海道は、北海道高齢・退職者団体連合とともに、医療制度改悪反対の取り組みと連係して運動を展開しました。

【エネルギー・環境政策課題】
 泊原子力発電所3号機でのプルサーマル計画を実施することについて連合北海道は「エネルギー・環境政策委員会」において検討してきました。そのなかで「第6回エネルギー・環境政策委員会」で基本認識【MEMO】を報告しました。
【MEMO】
(1)エネルギー源にはそれぞれ課題があり、そのことを常に認識し、省エネに向けたインセンテイブを高めることが重要。(2)連合本部による「核燃料サイクルの研究開発、プルサーマル計画は、安全体制の確立、十分な国民理解を前提として、先を急ぐことなく進める」(3)連合北海道は、第6回年次大会(1994年8月5日)「多様な電源の中から適切なものを選択するよう協議します」を堅持している。(4)今回のプルサーマル計画・核燃料サイクル計画についても(1)(2)(3)を基本とする。なを詳細については【経過報告】参照
 北海道電力は、2008年4月18日、泊原子力発電所3号機でのプルサーマル計画実施にむけて、北海道と地元4町村に安全協定に基づく事前協議を申し入れました。
 これを受けて、連合北海道は、これまでの対応方針および基本認識を踏まえるなかで、2008年5月7日、北海道と北海道電力に、広く道民の意見を聞くことなどを基本とする内容の要請を行いました。
 現在、北海道は、有識者検討会議において最終的判断にむけた検討を行っています。

【地方分権改革と自治体財政の充実・確保の取り組み】
 2008年7月2日、福田首相は、北海道開発局の存廃について「できるなら(廃止)したほうがよい」とコメントしました。国の出先機関見直しについて、原則廃止を勧告する方向で、分権委・出先機関改革作業部会が調整を進めています。しかし、住民に開かれた議論ではく、密室状態でのものです。このような経過で示される内容は、とても容認できません。今後も関係団体とともに動向を見守って行きます。
 夕張においては、人口流出は止まらず、街はさらに衰退を続けています。現行再建計画では市そのものが存在できなくなるという認識が市民は勿論、市長からも言及されています。実現可能な市民のくらしが成り立つ再建計画への見直しが急務です。
 連合北海道は、2008年3月26日「ゆうばり市民・生活サポートセンター」を設立しました。最低限まで落ち込んだ行政サービスの補完、市民とともに共同で実施できる事業を策定しながら、行動を展開しました。
 新しい自治体再建法制である地方財政健全化法が2008年度決算から導入されました。新法により、財政再生団体に移行する新基準が適用されることになる病院や水道事業などを含む全会計の連結実質赤字比率は、市町村では30%以上(経過措置あり)で再生団体となります。各自治体は今後、自らの全体の財政状況を客観的に判断可能となる、また、財政悪化を早い段階で把握できるという肯定面はありますが、多くの自治体は依然として、厳しい財政状況に置かれています。
 小泉政権の「三位一体改革」による大幅な交付税の減額は、各自治体において公共サービスの切り捨てを余儀なくさせました。結果として、多くの労働者が不安定な身分と、劣悪な労働条件の下に放り出される状況を作りだしています。

【道および国への政策要求活動】
 連合北海道は、道議会議員団・国会議員団会議との連携と協力を得て、2008年度道予算(2007年11月29日)・2009年度政府予算(2008年7月24日)に対する政策・制度要求の実現を目指す「要求と提言」活動を進めてきました。
 道に対しては、重点課題について各部長交渉、国に対しては、国会議員の参加を得て各省交渉(民主党道民連合議員会と合同交渉も含む)を実施してきました。特に@
地域における医師不足と北海道の特殊事情A原油暴騰による灯油と道民生活の危機および食料品の値上げB北海道の基幹産業である農林水産業の危機的状況C景気回復の実態がない北海道経済と雇用D季節労働者の置かれている困難な状況などを重点課題に位置付けて実施してきました。
 
 
 
【重点課題】
1.格差是正,不公正税制の改革
 連合北海道は、格差を是正し全ての勤労国民が生涯を通して安心して暮らせる社会を実現するために、@地域最低賃金の大幅引き上げ(時間給1,000円)、A正規労働者との均等待遇の実現、B労働者派遣法の抜本改正を引き続き取り組むとともに、格差問題やワーキングプアの象徴であるパート・契約・派遣労働者に対し、自らを守り、生きるための手段である労働組合への参加、結成のキャンペーンを展開していきます。また、不公正税制の改革に当たっては、@所得税の最高税率、相続税などの見直し、A株取引・配当に対する優遇税制の廃止、B子育て世帯や低所得世帯への配慮などを連合本部に結集して取り組みます。
 
2.道の雇用創出に対する取り組み
 連合北海道は、とりわけ@他の年齢層より失業率が高い若年労働者の国と道の責任における就労支援強化、A懸案である季節労働者の通年雇用化と生活支援、B地域経済の活性化による地域雇用対策、を重点にして長期安定的で良質な雇用創出に向けた道の施策推進を強く求めていきます。さらに、各地協・地区連合は地域の雇用状況や地域産業の実態を把握し、雇用創出のための政策課題について積極的に、支庁・自治体への提言を実施します。
 
3.社会保障制度の抜本改革、安心の地域医療を確立する取り組み
 信頼と安心の社会保障制度の構築のために、@被用者年金一元化法の成立、A政管健保の国庫負担削減阻止、B後期高齢者医療制度の廃止、C年金記録の確認・点検徹底などを、連合本部に結集して取り組みます。
 地域医療の問題は、この先3年、5年、10年と続く道民にとって重要な課題の一つです。今回の署名行動をステップとして、真に住民本位の地域医療となるよう、引き続き地域における議論への参加や情報公開などを求め、連合北海道・各地協・地区連合は、地域に根ざした医療のあり方について、地域住民とともに作り上げていきます。具体的には、@道への申し入れを足がかりに、要請項目の具体化をはかる、A各地域で開催する「検討会議」への参画や情報公開を引き続き求める、B各自治体立病院の改革プラン策定スケジュールの期限が迫っていることから、その検討状況を明らかにさせ、地域住民とともに意見反映を行う、C各地協・地区連合での学習会の開催、D各地域での活動状況の報告などを行うため、秋から冬にかけて全道規模の集会を札幌で行うこととして取り組みを進めます。
 
4.「炭鉱技術移転計画」の長期的推進、エネルギー・環境政策を充実させる取り組み
 釧路炭鉱(釧路コールマイン梶jの事業が2009年度以降も長期事業として推進されるよう北海道石炭対策連絡会議に結集して引き続き取り組みを進めます。
 今、北海道では、北の大地に根ざした「くらし方」の取り組みとして、「ぺレットストーブ」などの実用化が進んでいます。その目的は、化石燃料からの脱却、ひいては地球温暖化防止・CO2の削減です。これらの取り組みを積極的に支援していかなければなりません。
 また、現在北海道は森林環境税の導入を目指しています。連合北海道は「北海道森林づくり審議会」での意見反映とともに、民主党道民連合との連携をはかりながら取り組みを進めます。
 
5.地方分権改革、道州制、支庁制度見直し、自治体財政確立の取り組み
 連合北海道は地方分権の基本的視点を、@地域の支えとしての住民・働く者の視点、A地域住民の視点に立った自治体・地方議会・役割の整理、B地域が選択できる公共サービスの提供の在り方、C地方財政の健全な運営であると考えます。引き続き議論を深めます。
 道州制については、地方分権改革の切り札として位置づけることなく、自治と統治のバランスや、自治体の自立と相互連帯の観点から十分に検討を行った上で、地方自治を実現するための一つの手段・仕組みとして、その具体像を検討していきます。
 支庁制度の見直しについては、道州制も含め地方分権が、行政を住民の身近なものとする地方重視・地域重視という基本理念であることからも、今日、道が示した方向性が既にあやまりであること、道が振興局という実質的に格下げとなる組織にしようとしている地域こそが、地域として苦しんでいる現実からも、地域との信頼関係を喪失することなく、市町村の意思、市町村・住民との合意が得られることを前提として支庁制度見直し議論が行われることを、強く要求していきます。
 2007年6月に成立した「地方公共団体財政健全化法」の適用にあたっては、自治体財政の根幹である地方交付税制度を堅持し、交付税総額の安定的確保をはかり、地方交付税制度の財源保障機能および財政調整機能の堅持、自治体の安定的財政運営を実現する一般財源を確保するなど、地方自治体の要望を十分取り入れた運用となるよう取り組みを進めます。
 
 
【継続課題】
1.国の雇用創出に対する取り組み
 連合は、改正地域雇用開発促進法(2007年8月施行)等にもとづく地域雇用対策の推進として、2008年度予算においても、前年度に引き続き、雇用情勢が特に厳しい地域における雇用対策として268億円規模の予算措置をさせてきました。また、2008年度予算では、雇用保険二事業の助成金として、雇用失業情勢の厳しい地域で創業し、労働者を雇用した中小企業に対して支給される「地方再生中小企業創業助成金」などの新設をさせることができました。しかし、正社員の有効求人倍率は、相変わらず0.5〜0.6倍台で推移しており、雇用の質という点での改善は不十分です。また、都道府県別の有効求人倍率についても、地域間格差が依然として大きいままです。
 連合北海道は、良質な雇用の創出・確保にむけた実行ある雇用対策の強化を、引き続き連合本部に結集して取り組みを進めます。
 
2.泊原子力発電所防災訓練および地域防災体制の充実
 今回は、2009年1月中旬から2月中旬にかけて、2008年度の北海道原子力防災訓練が実施されます。これは、積雪時期の困難事項も想定するべきという意見を反映してのことです。連合北海道として調査団を派遣して、調査活動で得た防災訓練の改善課題や住民アンケートの結果を活用し、原子力発電所の安全運転を基本として、北海道や地元4町村の防災体制充実のための取り組みを進めます。
 
3.幌延深地層研究センター事業の監視活動
 資源エネルギー庁が先に発表した「最終処分」とは、核廃棄物を半永久的に同じ場所で管理することを意味しています。幌延を最終処分場としないことは「道条例」だけでなく、北海道と幌延町そして幌延町深地層研究センターの三者における「協定」においても明らかな「道民の意思」です。この前提を無視してのいかなる計画の実施も認めない取り組みを進めます。
 
4.北海道の行財政改革の取り組み
 連合北海道は、2009年度北海道予算、全ての計画・政策の推進が、単なる財源削減による効率化ではなく、道民生活にとって必要な医療・福祉・保健・教育などの公共サービスが維持される行財政改革となるよう、引き続き「審議会」や「要求と提言」のなかに反映して取り組みを進めます。
 
5.郵政民営化による郵便事業の公共性を維持させる取り組み
 連合北海道は、国民のための郵政事業の目的達成のためには「郵便局全国ネットワーク維持」「事業の社会性・公共性の維持」などが損なわれないように監視・検証するとともに、郵政労組と連係をはかりながら、国民・利用者の声が反映されるように関係機関への提言活動を強めます。
 
6.道および国への政策・制度要求の取り組み
 連合北海道は2009年度道予算要求については、@勤労道民の立場にたったもの、A疲弊する地域の医療、福祉、介護、教育などを再生できる、住民の生活に依拠するもの、B過疎地域にこそ存在する、農業、林業、漁業など都市とは異なる活性化、C環境と食料を中心に、人材が育成できる地域のセーフテイネットの再構築などを「要求と提言」に掲げ、民主党道民連合との協力・連携をはかりながら、政策要求の実現をめざします。
 2010年度の政府予算への政策・制度要求活動については、北海道に係わる重点課題について、政策委員会での議論を経て、来年7月に関係省庁交渉、予算確定期における重点交渉を配置し政策実現に取り組みます。
 道や国への「要求と提言」作成に当たっては、課題に応じて関係産別などから積極的な情報提供をいただき、政策委員会の事務局機能の充実・強化をはかります。