20007年10月30日
 
連合北海道 第20回大会会長挨拶
連合北海道会長 渡部俊弘
 
 全道各地からご参集の大会構成員の皆様、大変ご苦労様でございます。
この一年間の連合北海道の運動展開にあたりまして、構成組織、地協・地区連合の皆さんからいただいた献身的な支援と協力、そして退職者連合、北海道農民連盟、民主党北海道をはじめとする多くの組織の皆さんから熱いご支援とご指導を賜りましたことに心より御礼を申し上げます。
 
 さて、大会開催にあたり、連合北海道執行委員会を代表してご挨拶を申しあげます。
 本大会は、連合北海道の定期大会としては10度目。すなわち2年後において結成から20年の節目を迎える大会となります。
 過去二年間の取り組み状況、そして新たなる2年間の運動については、佐藤事務局長以下、それぞれの責任者の立場から報告と提案がされますので、私からは重複を避け、運動に取り組む組織全体の意気込み、あるいは運動に対してどのように総結集を図るかという観点から若干の提起をさせていただきたいと考えます。
 
 一つは、雇用と労働に関わる課題についてであります。
 完全失業率は全国平均では回復していますが、地方は依然として高止まりする状況にあり、北海道においても5パーセント台のままで推移しています。
 一方、雇用の質という面では、雇用者に占める非正規雇用の率が40パーセントに迫る状況にあり、不安定雇用と低賃金、さらには社会保障からの除外など、劣悪な労働条件に起因するワーキング・プア、あるいはネットカフェ難民などが大きな社会問題化となっています。今日、ディーセント・ワークという言葉が多く聞こえるようになりましたが、言葉が一般化することにとどまらずに、その概念である「労働者とその家族が、人としての尊厳を保って生活することを可能とする労働の場」を具体的に保障する仕組みづくりに、意を決して取り組まなければならない時点に差しかかっているのではないかと考えます。
 
 しかし多くの課題があります。それは組織労働者の多くはディーセント・ワークの域内にあり、深刻な状況に置かれている労働者の大半は未組織労働者であるということです。
 つまり、そのような状況にあるのは、その人の努力が足りないなど自己責任の問題であって、自分たちの問題でも責任でもないということから、組織だった対策が取り難いという側面があるからです。
 しかし、政府の規制改革会議の労働タスクフォース・中間報告が意図していると思われる、労働者保護という労働法制の流れから決別することで、より弾力的で流動性のある労働市場、すなわち産業・企業にとって雇用安定とか、生活保障などの負担が少なく、切り捨て自由の実に使い勝手が良い労働市場を出現させようという“労働ビッグバン”の企てに見られますように、今日の労働市場の劣化は労働者個々の力で変えられるものではありません。現在の流れが続くとすれば、まさに労働ビッグバンの業火に追われ、働く者の多数が格差社会の下層部に追いやられる事態を避けることはできないと思われます。
 一方、その規模は大きくはありませんが、北海道におけるディーセントワーク実現の闘いが続いていることを忘れてはなりません。一つは季節労働者の冬季雇用援護制度に関わる取り組みと通年雇用促進の取り組みであり、今ひとつはハイタク最賃設定申請に向けた多くの仲間が結集した取り組みに象徴される、ハイタク労働者の生活を守る闘いが挙げられます。雇用労働者の十分の一程度しか結集していないとはいえ、連合組織は決して小さな組織ではありません。また、労働者の雇用と生活について、連合が動かずして他のどの組織がどのような力をもって動けるでしょうか。
 
 先の連合本部の第10回定期大会で掲げられた「非正規労働センター」による取り組み、そして組織化ありきではなく、先ずは未組織労働者との連帯行動が最優先されるという運動の方向性を含め、全ての労働者の“ディーセントワークを実現する”という大きな目標に向けて、連合北海道に結集する組織末端までの合意形成が大きな課題であるということを提起させていただき、論議に供したいと考えます。
 
 二つには、「連合運動の代表性をいかに高めるか」という課題についてであります。
 連合運動においては、本部レベル、地方連合レベル、地協レベルそれぞれに政策・制度課題に対する諸要求を掲げその実現に取り組んできましたが、これは連合運動の主要な部分を成すものであろうと思います。
 また、要求の範囲は経済、財政、分権、金融、税制、年金、医療、介護、公務員制度を含む労働法制など多岐にわたります。
 そして、これらの要求を集大成した時に、連合運動として求める、この国の形と地域の姿が描かれることになりますが、それは国民、道民の概ねの価値観と多くの部分で合致することがなければ連合運動の代表性に疑義が生じることになります。
 また、具体的な内容には触れませんが、例えば 民間労働組織において産業・企業の様々な事故や不正の隠ぺい、雇用等における不正義が生じた時に、そこにある労働組織としてどう対応したのかということに自信をもって答えられるかどうか。
 公務労働組織においても、行政レベルの不正と、怠慢とも言える不作為の発生に対して、そこにある組織としてどう対応したのか、胸を張って答えられるか否かということも代表性の要件に関わることであろうと思います。
 それは連合を構成する組織の各級レベルにおいて、常に問い続けられなければならない課題であると同時に、構成組織内の運動そのものが組合員との関係においてどれ程の代表性を保っているのかということが起点になると思います。
結果として一部活動家だけの信託にとどまる運動であるとするならば、その運動の代表性は大きく損なわれているという疑念を生じます。
 連合関係組織の内的な運動における代表性が揺らぐとすれば、それは外に打ってでる運動の場合の国民、道民との関係における代表性はより低くなり、結果として運動の成果に翳りをもたらすことになります。
 
 申し上げていることは、実は私自身の青年活動、分会・支部、そして本部あるいは産別道本部、連合北海道とそれぞれの運動を経る中でいつも、この代表性という課題に惑い、悩み続けてきたとことの告白でもあります。
 労働組合組織率が大きく改善されれば、運動の代表性も高まりますが、微減にとどまることすら難しい状況にある中でそのことに期待する訳にはいきません。
 つまり、組織内の組合員名簿の数も大切ですが、本当の組織率の向上、つまり何らかの形で運動の一端を担ってもらえる組合員をつくるという原点の営みこそが、運動の代表性を高める宝庫となることに目を向けなければなりません。
 21世紀中に労働組合は消滅すると予言する人がいますが、私はそんなことはないと思っています。何故なら、いろいろと批判はあっても労働運動は働く人々の最終的な保証人の役割を営々と果たし続けているからです。
 また、連合運動に代わることができる社会的運動体も存在しません。
 運動の代表性をより高めるための取り組みに全ての組織が様々な形で取り組むことによって、労働運動はさらにグレードアップし存在し続けることが可能です。
 このことについて、少なくとも連合北海道の運動に結集する活動家の共通項として確認をいいだければ幸いです。
 
 三つ目は、政策・制度要求実現に最も近づくための政権交代へのチャレンジについてであります。
先ずは07政治決戦、4月の統一地方選挙、7月の参議院議員選挙に結集いただいた全ての皆さんに御礼を申し上げます。
 知事選挙は荒井聡さんが道政空白の8年は何としても避けなければならない。放っとけないという義憤にかられた衆議院議員を辞しての闘いでありました。
 残念ながら、現職優位現象は変わらず、空白の4年の不作為も不問に付す雰囲気から脱することができず敗北に至りました。しかし、高橋道政二期の出だしは、前代未聞の実質赤字予算編成、医療体制の一方的な改悪、支庁制度改革にいたっては朝令暮改のごとき扱いで迷走を続けており、私たちが危惧したとおり、道民は知事再選を許した付けを払わざるを得ない状況を迎えています。何れにしましても、素晴らしい知事候補を得ながら敗北をさせてしまったこと、知事選挙の責任者の一人として、改めて力不足であったことについてお詫びを申し上げなければなりません。しかし、知事選挙を頂点とするこの統一地方選挙の闘いは、結果として参議院議員選挙における民主党躍進への大爆発に繋がる導火線の役割を果たしたものと受け止めています。道内においては小川勝也参議の101万票を超える得票、比例区における120万を超える得票を得て大勝しましたが、自民党議席ゼロを目指した戦いは、自民候補が私たちの想定を超える75万票を超えたことによってその目標を達することができず、喜びも半分というのが率直なところです。
 
 民主党と新党大地の共闘は次の衆議院選挙においても俎上に上がっているところでありますが、具体性と実効性という観点から後に不信感を残さないための枠組みについて、政党間のしっかりとした合意形成がなされることを要望しておきたいと考えます。
 さて、07政治決戦は、年内に三度目の闘いがあるのかどうか分りませんが、常在戦場の体制に入っていくことが求められます。
 数日前に民主党の小沢代表が、次の衆議院議員選挙に向けた全国行脚のスタートの地としてこの北海道を訪れ、私たち連合北海道と意思疎通を図ったところであります。
 基本的には全国300小選挙区の過半数である150を超える議席獲得を目標にして野党共闘を構築することと、この北海道は12選挙区全てで勝利することが可能な地域として期待していることなどが述べられていました。
 
 帰り際に、「自分の政治生命を賭して、政権交代に向けた最終の選挙にしなければならない」と…自らに言い聞かせるように話したのが印象的でありました。
 道内12の選挙区は、8区の金田誠一・衆議院議員の次期不出馬を受けて、逢坂誠二・衆議院議員が既に地元からの出馬要請を受諾しているところであり、12選挙区の全てに候補予定者が出揃いました。
 
 政権交代は民主国家としての普通の姿であり、何ら恐れるものではありません。
 国民生活をないがしろにする政権は、いつでも政権から引きずりおろされるという普通のことを現実のものにするという、価値ある変化をもたらすものであります。
 私たち連合は、「労働を中心とした福祉型社会」の入り口を開くための最後の闘いとして次の衆議院議員選挙に臨まなければなりません。
負ければ「労働ビッグバン」に吹き飛ばされ、格差社会の片隅で5年、10年と臍を噛むことになるでしょう。絶対に勝たなければならない、働く人々の近未来の安心を規定する戦いでもあります。
 その意味では、大きなチャンスであると同時に、大きな試練の時と認識すべきであろうと思います。連合運動のこれまでの成果を総結集する、そのような闘いを組織すべくお互いに精一杯、頑張ってまいりましょう。
 以上、三点について所見を申し上げ会長挨拶といたします。
 ご静聴ありがとうございました。
 
以 上