T.はじめに
 
1.結成から18年を迎える連合運動
@ 連合北海道は、「平和 幸せ 道ひらく」を統一大会スローガンに掲げ、官民統一のローカルセンターとして結成(1990年2月1日)から18年目を迎えます。
 この間、日本経済のバブル崩壊、IT革命とグローバリゼーションの進展による経済構造の大変化、市場万能主義による企業の熾烈なコスト削減競争・国際競争力強化を最優先の過程で、雇用形態間、産業間、企業規模間、地域間における労働者の所得格差が拡大、二極化が急速に進んでいます。
 
A また、税や社会保険料の負担増、給付の削減、地域における医療・介護の人手不足など生活不安が増大する一方で、自己責任論が強まり、連帯と共生といった価値観の低下、社会の発展と繁栄の基盤をなす労働の価値が軽視され、労働を喜びとして生きる社会システムの劣化がすすみ、私たちの生活を脅かしています。
 こうした世の中の動きを振り返るとき、あらためて時代の大きなうねりの中で、労働運動への期待が高まっていることを認識しなければなりません。
 
2.労働運動の反転攻勢に向けて
@ いま、私たちは、連合結成から今日までの運動の軌跡と時代の変化を振り返り、パートタイマーや派遣労働者、契約社員など非正規労働者が急増する一方で労働組合の組織率が低下、働けど、働けど自立できないワーキングプア問題など、労働の環境が大きく変化する中で労働運動が「衰退か、再生か」の岐路に立たされているという自覚をもって、労働運動の再生・活性化に邁進していかなければなりません。そして、「人を大切にする」という当たり前のことを、再び世の中の常識にしていくためにも、労働運動の反転攻勢が不可欠であることを改めて確認していく必要があります。
 
A そして、いま、我が国全体の経済・景気が元気を取り戻している中で、北海道の地域経済・社会は、景気回復の遅れ、医療や福祉の縮小、財政の悪化などに直面し、多くの市町村が立ち往生しています。加えて、地域間の経済格差が地域の人々の生活に重くのしかかっています。
 疲弊した地域社会を立て直し、道民生活の安全・安心を取り戻していくためのにも、地域に根ざした顔の見える、道民に共感が得られる連合運動に発展させることができるよう、一層の努力が求められています。
 この夏の参院選の結果により、政局は政権交代実現にむけて大きく動き出しています。私たちは、自らの手で「人が主役の社会をつくる」ために、衆議院解散総選挙への備えを含め、十分な対応を図っていかなければなりません。
 さらに、4年後の道政奪還に向けた基盤づくりを着実に進めていかなければなりません。
 
3.この2年間の取り組みを振り返って
 
(1)最優先課題としてきた組織拡大運動
 連合北海道は、05年10月の定期大会以降、組織財政特別委員会の「第6次答申」を運動方針に反映させてきました。そして、この2年間は、中小、派遣・パート・契約社員などに最大限焦点を当てた活動と組織拡大の推進、組織率の低下に歯止めを掛ける取り組みを進めていきました。
 組合づくり「第3次アクションプラン21」では2年間で組織拡大を2万人とする目標を掲げ、組織拡大強化月間の設定やユニオンスクールの開設、非正規労働者の組織化に向けたオルガナイザー研修会など精力的に取り組んできました。組織化実績(2007年9月現在 約13,700人)は、残念ながら目標達成には至らなかったものの、中小労働者や非正規労働者の個別労働相談から組織化に結びつけるなど、着実に運動が前進してきました。しかし、非正規労働者が急増するなか、産別間での取り組みに差が見られるなど、足元からの取り組み強化が求められています。
 
(2)公務員制度改革と労働基本権の確立
 公務員制度の改革、公務労使関係の抜本的な改革と労働基本権の確立に向けては、行政改革推進本部の「専門調査会」で検討されていますが、社会のセーフテイネットとしての公共サービスの重要性を再認識し、「新しい公共」の創造にむけて「公共サービス・公務員制度のあり方に関する学習会」や「より良い公共サービスを考えるシンポジユウム」の開催、公共サービス憲章のための請願署名、市民意識調査、街頭宣伝などに取り組んできました。「新しい公共」の具体化をどのように実現していくか、連合内において引き続き議論を深めていくことが重要です。
 
(3)07政治決戦の取り組み
 07政治決戦の焦点であった道政奪還と参議院選挙における複数議席確保については、知事選において現職2期目の厚い壁を破ることができず荒井候補が敗北を余儀なくされ、また、参議院選挙(北海道選挙区)においても小川参議が史上初の100万票を突破し3期目の当選を果たしたものの、2議席独占には至りませんでした。
 しかし、道都札幌市における上田市長の再選や道議選挙・札幌市議選挙をはじめとする地方議員選挙では、連合推薦の民主党公認・推薦候補が議席を伸ばし、民主党の躍進が見られました。また、参議院の比例代表選挙では、民主党が北海道で過去最高の121万票を獲得し、自民+公明の得票を上回る結果を出しました。
 07政治決戦において、掲げた目標こそ実現出来ませんでしたが、参議院選挙における民主党の大勝で参議院与野党が逆転し、政権交代へ大きく第一歩を踏み出しました。
 次期衆議院総選挙では、「市場万能主義と強者の政治」路線の転換、労働を中心とする福祉型社会の実現にむけ、民主党を基軸に与野党逆転で政権交代の実現をめざして、常在戦場の支援体制が必要であります。そして、次期衆議院総選挙の勝利を4年後の道政奪還へのステップとしていかなければなりません。
 
(4)季節労働者の通年雇用対策
 季節労働者の生活安定に大きな役割を果たしてきた冬期雇用援護制度の存続に取り組んできましたが、その大部分が廃止、雇用保険の短期特例一時金も20%削減が強行されました。
 国が示す季節労働者の新たな通年雇用促進支援事業では、「国の委託事業」と「地域の独自事業」を担う市町村を中心とした「地域協議会」が、道庁計画の44のうち39地域で設立されましたが、今後は、「地域協議会」のスムースな運営、市町村における短期就労確保事業の取り組み拡大などが課題となっています。
 
(5)大増税阻止、年金・医療など社会保障制度の抜本改革
 サラリーマンを狙い打ちにする大増税阻止にむけた給料日の街宣行動や街角アンケートの実施、医療制度に関する学習討論集会、チラシ配布など、世論喚起に取り組んできましたが、所得税の最高税率や法人税率の見直しを行わないまま定率減税を全廃、高齢者に医療費の負担増を強いる医療制度改革関連法案が相次いで強行採決されました。
 政府は、市場万能主義政策に加え、財政再建を最優先させ、国民生活を省みず負担増・給付削減の政策をさらに進めようとしていますが、税や社会保険料の負担が増大する一方で、地域における医療・介護分野での人手不足や介護事業者の不正請求、消えた年金記録など、公的な社会保険制度への不信は従来にも増して強まっています。さらに、少子高齢化が急速に進む中で、地方の過疎化に拍車をかけ、福祉制度全般への不安も高まっており、くらしの安心と社会的公正を確立する政策・制度改革の取り組みがますます重要となっています。
 
(6)男女平等参画の推進
 連合北海道は、第19回年次大会(2006年10月)で「第3次男女平等参画推進計画」を決定し、全ての分野で男女が対等に参画できる労働組合の組織づくりに取り組んできました。毎年実施している「男女平等参画推進アンケート調査」では、連合北海道の組合員数に占める女性の割合が高まっている反面、産別・単組の組織や連合・地協組織における女性の役員登用をはじめとする労働運動への女性の参画は依然として進んでいません。
 こうした実態の改善にむけ、男性のための「男女平等講座」の開催、道政、市町村に対する「要求と提言」を提出するなど、男女平等参画を推進する活動に努めてきました。
 構成産別、地協組織は、産別、地域労働運動における男女平等、組織運営の改善、組合員の意識啓発など、第3次推進計画に基づく、数値目標の設定など、男女平等参画推進にむけて一層の努力が求められます。
 
(7)平和運動の統一・拡大
 連合北海道は、組織財政特別委員会の第6次答申に基づき、平和・道民運動の統一と拡大にむけて、いわゆる「不一致課題」であっても、可能な限り真正面から向き合いながら議論する場(憲法講座、教育を考える対策委員会、エネルギー・環境対策委員会など)を設定し、一致点の拡大と合意形成に努めてきました。
 こうした経過から今日では、「不一致のため取り組めない課題」やそのための「継承組織」は存在しないとの基本認識に立ち、一層、連合を結集軸にすえた平和・道民運動の拡大・統一を推進していく努力をしていかなければなりません。
 
4.今後2年間に向けた運動の重点目標
 連合北海道が推進する向こう2年間の重点目標は、第18回定期大会で確認してきた組織財政特別委員会の「第6次答申に忠実な運動の実践」、さらに、「社会的責任を果たし新しい価値観による運動の推進」と「達成感を実感し男女が共に担う運動への改革」とする運動を継続発展させていくことを再確認するとともに、前述した過去2年間の成果と課題の上に、非正規労働センターの立ち上げ、自立生活ができる地域最低賃金の実現など新たな課題を加え、次のとおりとしていきます。 
 
              〈2年間の重点目標〉

 □ 組織的目標
  ○非正規労働センターの立ち上げ・ネットワーク拡大、組織拡大の推進
  ○労働運動の再生・活性化に向けた労働教育の強化や次代を創る人材の育成
  ○公正な公務員制度の改革と労働基本権の確立

 □ 政治的目標
  ○次期衆院総選挙→道内選挙区の完勝、民主勝利・政権交代の実現
  ○4年後の道政奪還に向けた戦略方針と取り組み体制の確立
 
 □ 政策的目標
  ○自立生活ができる地域最低賃金の実現
  ○季節労働者の通年雇用にむけた新たな支援事業の確立
  ○「安心・公正」社会の実現にむけ、格差是正施策の推進

 □ 運動的目標
  ○地域に根ざした顔の見える連合運動の前進
  ○第3次男女平等参画推進計画の積極的推進
  ○平和・道民運動の拡大と統一の推進