連合北海道第19回年次大会会長挨拶
 
 連合執行委員会を代表して大会冒頭のご挨拶を申し上げます。
 全道各地からご参集いただいた大会構成員の皆様、大変ご苦労様です。
 この1年間、連合北海道の諸課題に対します、構成組織、地協・地区組織の皆さんの献身的な取り組みに心から感謝を申し上げます。
 また、本日はご多忙な中、多くの来賓に駆けつけていただきました。大会構成員全体の拍手で感謝と歓迎の意を表したいと存じます。
 ご挨拶の前に、まずは、お悔やみから申し上げなければなりません。
 ご承知のとおり、本年4月には竹田現照・元参議院議員、5月には菅野久光・元参議院副議長、そして6月には全道労協最後の議長として連合北海道発足の礎を築いていただいた森尾のぼるさんが相次いで逝去されました。
 何れの方もそれぞれの立場から道内労働運動の発展のために大きなご貢献をいただいた方であります。本大会ご参加の皆様とともに、故人の之までのご功績を偲びつつ、心からご冥福をお祈りしたいと存じます。
 さて、連合北海道第19回年次大会は第9期・後半年度を迎える大会となりますが、連合運動に関係するいくつかの課題について申し述べたいと存じます。
 
 一つは、小泉政権五年五ヶ月と安倍新政権の誕生についてであります。
 小泉政権5年5ヶ月とは何であったのでしょうか。
 中曽根康弘・元首相の言葉ですが、「政治家は歴史法廷の被告人である」と語っています。その意味では、小泉政権の評価が定まるのはずいぶんと先のことになります。しかし、私たち働く者の立場から言えば、勤労国民の痛みにこれほど鈍感であった政権はないと言わざるを得ません。
 「格差社会」という言葉は、こんにちにおいて何らの説明なく、わが国社会が陥っている状況を示す言葉として定着してしまいました。
 勿論、政治、経済、社会の戦後体制がバブル経済対策の失敗と迷走、冷戦構造の終焉によるグローバル経済化の拡大、さらにはIT革命の急速な進展と相まって、わが国経済に価格破壊や付加価値生産力の弱体化をもたらしたことから、産業、企業の熾烈な競争とリストラクチャリングを加速させたことに加えて、急速な少子高齢化の進展が年金、医療、介護などのセーフティネット構築の前提条件を崩壊させ、戦後体制すなわち官主導・政官業癒着の護送船団方式を成立させていた、様々な意味での「再配分構造」が維持できず、1億総中流と形容された状況が一変していたことは事実であります。
 従いまして、戦後経済・社会体制の崩壊の危機に際して、大胆な構造改革を求められたことはゆがめない事実であります。
 しかし小泉政権は、わが国の新たな社会構造の成立要件を市場競争原理に丸投げして委ねるという暴挙を犯しました。之では国民のための政治とは言えません。まさに、冷淡勝無責任な政治であったと断ぜざるを得ません。
 その結果は…
 不安定雇用が拡大し、所得200万以下の世帯が20パーセントを占める事態に至りました。また、貯蓄ゼロ世帯が昭和30年代レベルに迫っています。
 生活保護世帯は104万を超えました。将来の教育格差を生むであろう就学援助児童が、13パーセントに達しています。さらには、社会の闇が拡大し相次ぐ凶悪事件が多発する…という状況に陥っています。
 加えて、年金、医療、介護などの主要な社会保障制度は、負担増と給付減という弥縫策で糊塗し、制度崩壊の危機を覆い隠していることは国民を欺く所業であります。
 安倍政権がスタートしました。小泉改革を継承し、戦後レジームからの脱却、美しい日本づくりを掲げ、憲法改正、教育再生を急ぎ、内閣不統一のままに核武装論議まで飛び出す体たらくにあります。
 急ぐべき改革は、そんなことではない。「こんな政権はいらない」。これは私たち働く者が共通して安倍政権に贈る言葉ではないでしょうか。
 公平・公正そして安全・安心、分かち合い、共生することに高い価値をおくことができる新しい社会の創造を求めて、安倍政権と対決・対峙する決意が求められていると考えます。
 
 二つには春季生活闘争についてであります。
 06春季生活闘争、本部高木議会長の言葉では「真水の賃金改善を求めよう」との呼びかけのもとに取り組みました。北海道の闘い、各地協において地場・中小パート共闘にウエイトをかけて取り組んでいただき、パート共闘では一定の成果を得ることが出来たと思います。しかし、全体を通じて申し上げるなら、よく闘ったけれども経営側の壁の厚さも相当なものであったという結果になりました。
 明年の春季生活闘争は基本構想策定段階にありますが、これも高木会長の言葉としては「臆することなく、躊躇することなく要求していく」という決意が述べられています。
 労働分配率を削り、経営側への配分を拡大していることが顕著に表れているとした上で、労働組合も企業経営におけるステークホルダーであり、利益配分の適正化を巡って両者の主張が折り合わないとすれば、第三者の仲介を求めるまでの取り組みが必要との認識を示しています。
 春季生活闘争の再点検と今後の改革において、労働基本権行使を視野にいれた発言として、北海道においても重く受け止め、闘いの再構築論議を加速していかなければならないと思います。
 
 三つには季節労働者に関わる課題についてであります。
 この課題については、構成組織からのカンパ、地協・地区組織における道季労運動の支援をいただき、暫定二制度の根幹を残す形での新たな制度構築にむけてオール北海道としての協議会設置などをもって取り組んできました。
 しかし、厚生労働省の壁は厚く、暫定二制度の根幹を残す制度構築を図ることはできませんでした。
 国の制度廃止にともなう補完的措置としては、恒久制度である通年雇用奨励金の適用を現在の6千人規模から1万5千人規模に拡大することや、通年雇用促進支援事業組織づくりと地域提案型雇用創造促進事業、いわゆるパッケージ事業などにより通年雇用を促進していくとしています。
 しかし、季節労働者は減少したとは言いながら、現在でも建設業関係だけで8万人を数えており、暫定二制度の利用者も3万8千人に達していることから、補完的措置が順調にいったとしても季節労働者の冬期の生活困窮が拡大することが懸念されます。
 この課題については、国の責任によって通年雇用の促進が図られることを求め続けるとともに、支援事業組織の機能強化、冬期における短期就労機会の拡大、通年雇用進展状況の主体的なチェックなどの取り組みを強化していきます。
 これまでにいただいた支援に感謝するとともに、引き続きのご支援をお願いしておきたいと考えます。
 
 四つには夕張市の赤字再建団体入りと自治体財政に関わる課題であります。
 道内自治体財政課題については、交付税改革との関わりを含めて2003年から対策体制を構築してきましたが、夕張市の問題に加え、旧産炭地域におけるヤミ起債など、自治体財政の困窮が顕在化したことから、地方財政問題対策委員会を再編強化して対策・検討を進めている段階にあります。
 とりわけ、夕張市の再建が大きな課題となっていますが、赤字総額355億円の返済計画を策定することであり、税収が一定程度確保できるという前提のもとでも30年以上におよぶ再建計画になるのではないかと推察しておりますが、医療、福祉、保健などの地域住民生活の確保対策、地域の基幹的産業維持に関わる事業の継続、再建に関連する雇用問題の解決策…などについて、道庁や国の再建支援策との関わりを含めた検討を行い…道内経済団体等との連携を含めて必要な行動を展開していかなければならないと考えているところであります。
 この問題について気になることがあります。
 それは、政府筋あるいはマスメディアによる基礎自治体無能・無責任論、あるいは甘やかし論の台頭であり、今日の状況に対する同情の余地のない厳しい改革断行論であります。
 しかしながら、今日の状況は、いわゆる三割自治とか二割自治とかいわれる戦後体制のもとで、箸のあげおろしまで国が指図をすると形容される状況を経たうえでの財政危機であることを指摘しなければなりません。
 極論するなら、この問題の七割、八割は国側の責任であり、敷延して申し上げるなら、国による自治体財政再建支援スキームの早期確立なくして、自治体財政の再建は不可能であると考えます。
 その意味でこれらの問題に係わる高橋道政の姿勢は、現実味と真剣未に欠けると深く憂慮していることを申し添えておかなければなりません。
 
 五つには、組織拡大についてであります。
 昨年の道内における推定組織率は17.5lであり、ここ数年は0.5l程度減少する傾向にありました。
 本年分の調査結果はまだ発表されておりませんが、組織率の減少に歯止めがかかる状況にはないとしても、減少率の鈍化は見込めるのではないかと感じています。
 これは、連合北海道の組織拡大目標として第9期の2年間で2万人の拡大目標を掲げているところですが、この1年間で1万人を超える組織拡大実績が見込める状況にある一方において、既存労働組合の中における組合員の減少が続いていることによる推測として申し上げているところであります。
 明年に向けては減少率の鈍化ではなく、減少に歯止めがかかる状況の実現に向けて取り組まなければならないと考えます。
 構成組織、地協・地区連合の取り組みの強化を切にお願いしたいと考えています。
 一方、今回の1万に拡大目標達成の特徴点としては、幾つかの構成組織において、パートや非常勤といわれる非正規労働者の組織化に成功したことが挙げられると思います。
 非正規雇用は、不安定雇用、低賃金、公的セーフティーネットからの除外など、正規雇用労働者に比べて大きく見劣りする労働条件下にあり、最も労働組合の庇護が必要なところに組織化の手が伸びていくことの意義は極めて大きいものであり、さらなる努力が求められると考えています。
 しかし、率直に申し上げますなら、職域内の非正規労働者を組合員として迎えることに積極的な組織の数は多くはないと認識しています。
 連合運動を支える産別、構成組織の主要な役割として、少なくとも職域内においては正規、非正規を問わず、全ての人を組合員として迎えることを可能とする組織内合意の形成に取り組んで頂くことを強く希望したいと考えています。
 
 最後に、政治闘争について申し上げます。
 私たちの運動に不可欠な要素は政策・制度実現能力の強化であろうと思います。
 例えば、ワーク・ライフ・バランスを実現するためには、働く者の立場に立つワーク・ルールの整備が必要ですが、現実には使う側の都合を優先したルールが押しつけられる状況にあり、労働契約、労働時間、均等待遇を巡る情勢がそのことを端的に示しています。
 また、公務職場の改変や公務員制度の見直しなどにおいても、公務労働者の労働基本権回復などの主張が封殺され一方的に進められる事態にあります。
 これらは結局のところ、政治に帰することであり、私たちの意を体する政治体制の実現を、私たちの力で実現することが何としても必要であります。
 明年は07政治決戦と形容され、統一地方選挙と参議院議員選挙が相次いで予定されています。
 政権奪取の序章には統一地方選挙の勝利が不可欠の要素となります。
 知事を奪還し、道議会与党として最大会派を構成できる結果が求められます。また、札幌市長選挙を頂点とした市町村における戦いにも多くの勝利が求められます。
 候補擁立の遅れがありますが、年内にはこれを克服して勝利に向けた万全の体制を構築できるよう頑張ろうではありませんか。
 7月には参議院議員選挙が待っています。
 既に北海道選挙区は小川勝也参議の推薦を決定し、連合8候補も決定しいます。北海道における戦いはこの他に選挙区の2議席を制覇する構想があり、比例選挙では北海道ブロック重点候補の擁立も模索されています。
 参議院選挙において現・野党の過半数獲得がなければその先の政権奪取は夢物語でしかありません。厳しい取り組みではありますが、勇気を持ってトライしようではありませんか。
 
 以上、6つの課題について今後の取り組み方向を中心にして申し上げました。
 以降の経過報告、活動方針の提起に合わせてご論議を賜りますようお願い致します。ご静聴ありがとうございました。
以上