季節労働者の雇用と生活の改善を求める取り組み(案)
 
 
T.現状と課題
 
1.季節労働者の現状と冬期雇用援護制度
 
 「季節労働者」とは、12月半ばから翌年3月頃までの3ヶ月間は失業し、春の工事開始(主に連休明け)から雇用される、主に建設業の労働者で、労働者数は、昭和55年の30万人をピークに、現在では13万5千人ほどとなっている(うち建設業は約8万人)。減った要因は建設業全体の減少の面と、毎年少しづつ通年雇用化が進んできたことがあげられる。季節労働者は、年収が1〜200万円、年齢も45才以上が60%をこえ、他産業と比べ高齢化が進んでいる実態にある。
 
 昭和49年(1974年)、それまでの失業保険(最低給付90日)から雇用保険に制度が変わり、その際に創設された短期特例一時金受給制度によって、季節労働者の雇用保険受給日数は90日から50日に短縮された。国会では法案成立に際し、@通年雇用の促進、A不安定雇用労働者の生活安定と福祉向上の制度具体化。B雇用保険三事業の活用、などを内容とする付帯決議が付けられた。
 昭和52年(1977年)には、「積雪寒冷地冬期雇用安定給付金(積寒給付金)」が、国会決議に基づく季節対策の具体化として創設され、短縮された季節労働者の生活の補完として役立ってきた。
 12月の失業に際しては、0.2%高い掛け金の雇用保険から「短期特例一時金(50日分)」の支給を受け、そのうち建設業の約4万人は、「冬期雇用援護3制度(雇用保険三事業)」によって、通年雇用奨励金や冬期雇用安定奨励金・冬期技能講習助成給付金を受けてきた。
 
 この季節労働者の冬期雇用援護制度については、恒久制度である通年雇用奨励金以外の暫定2制度(冬期雇用安定奨励金・冬期技能講習助成給付金)が3年ごとに9回更新されてきた。前回(H16年 2004年)の見直しの際に、政府・厚生労働省は、長期不況による雇用保険財政の悪化を理由に、@ 北海道では通年雇用化が東北に比べ進んでおらず、今後の政策効果が期待できない。A 冬期失業問題は雇用対策だけでは限界があり、地域経済の問題である。など制度の再延長に抵抗を示した。
 結局、連合北海道と北海道季節労働組合・北海道全建総連など労働団体のねばり強い交渉によって、@ 通年雇用化の促進。A 雇用対策としての位置付けの明確化。B 特に、冬期技能講習を効率的かつ実効性の高いものとするとの考え方を示し、9度目の再延長に応じたが、その際、@暫定2制度はH18年度限りとする、A65才以上には不支給、B3制度間の移動禁止など、援護制度を大きく後退させ、その結果、冬期雇用援護制度の利用者は激減している。
(H15年は6.7万人、H17年は推計3.8万人)
 
2.北海道季節労働者雇用対策協議会によるオール北海道の議論
 
 政府の「冬期雇用援護制度はH18年度限り」とする方針を受け、H19年度以降の季節労働者対策について、季節労働がその時点で完全に解消されるとは想定できないことから、北海道知事を筆頭にして「北海道季節労働者雇用対策協議会」が、北海道労働局・開発局・経産局など国の機関を含む18団体によって設置され、季節労働の現状把握と必要な施策方針を議論してきた。その結果、今年2月24日、@通年雇用の促進をはかる制度の創設、A工事平準化の促進、B事業主による訓練への助成などを柱とする8項目の対策方針を決めた。
 これを受けて、上記の協議会から国の機関を除外した運動団体である「北海道季節労働者対策連絡協議会」は、3月30日、事業主を経由した訓練助成金など7項目に集約して国への要請を行った。
 
 この協議会の要請に対する厚生労働省からの答えとして、7月から8月にかけて、「季節労働者対策について」が出された。その内容は、@通年雇用奨励金を休業補償も含めて拡充する。A通年雇用促進支援事業を新規に取り組み、通年雇用にならない季節労働者に就職の紹介をする、Bハローワークの機能を強化し専門窓口を置いて労働移動をはかる、などが示された。
 この厚労省案ついて、雇用対策協議会と連絡協議会の合同会議では、3月30日の7項目の要請のうち、事業主を経由した訓練助成金については否定され、通年雇用奨励金(恒久制度)の拡充や支援事業の新規実施など、要望に添った新規事業が入っていることなどから、示された方向性に沿って、今後、厚生労働省と細部を協議することとして、年末の政府予算作成に向かって要請を続けることとしている。
 
3.連合北海道 季節・建設労働対策委員会の取り組み
 
 連合北海道は、第18回定期大会の方針に沿って、個人署名(33万筆)や事業所・団体署名(6千筆)や、活動資金のカンパ活動(約700万円)に取り組み、また、季節・建設労働対策委員会を中心にして、継続的な政府要請に取り組んできた。
 道を筆頭とした「協議会」の議論が一定の方向性を得た以降、連合北海道独自にも具体的な政府要請を強化し、6月15日には、厚生労働省に対し、@ 通年雇用化を促進する新制度創設、A季節労働を解消する工事平準化の促進。B短期特例一時金廃止反対、の3項目を要請。また、7月20日の概算予算への要求と提言でも同様の要請を厚生労働省に行い、工事平準化の促進を国土交通省に求めた。
 しかし、それ以降の、民主党国会議員と連携した事務折衝を含め、数度のやりとりの中で、@いまの雇用援護制度はH18年度で廃止。A新たな対策は通年雇用奨励金(恒久制度)を拡大して。B通年雇用化されない季節労働者の生活保障は、従来通りにはできない、というかたくなな回答の他には、新規の「季節労働者通年雇用促進支援事業」をつくらせ、また、公共工事の発注期にあたる4.5月の対策として、1〜4月に休業補償を新たに制度化させるなど、一定の運動の成果は上げることができたが、季節労働者の生活を援護する制度の根幹を維持することは実現できなかった。
 
4.根幹を揺るがす短期特例一時金廃止の動き
 
 一方、13万5千人が受給する雇用保険の短期特例一時金については、「財政制度等審議会」の特別会計見直し、国庫負担の廃止などの方針に沿って、厚生労働省が所管する「労働政策審議会」の雇用保険部会で、雇用保険制度の全面的な見直しが行われ、その一環として、廃止を含む見直しが議論されている。
 厚生労働省側は、6月29日の雇用保険部会においても、「季節労働は予定された失業であり、そのような循環的な失業は雇用保険制度になじまない」との理由で、廃止を検討すべきであるという結論を導こうとしている。
 もしこの短期特例一時金が廃止されたなら、13万5千の季節労働者は何の保障もない失業にさらされ、冬期の生活は根底から破壊される。
 このことは北海道における建設産業の崩壊を招き、人口流失につながり、地域経済のさらなる低下や生活保護の増大を招くことは必至である。
 冬期失業などはあってはならないことであるが、現状として、それが解消していないことを考えると、通年雇用が完全に実現されるまでの当分の間、短期特例一時金制度の存続は必要であり、北海道あげての廃止反対運動が必要となっている。
 
 
U.今後の取り組み
 
 いま季節労働者問題は、冬期雇用援護制度の存続をはじめ、大きな山場にさしかかっている。
 それは、国の財政悪化による国庫負担の見直しと、いわゆる“小泉改革”による財政・制度改革の波、また、雇用保険特別会計の運用については、豪華な天下り施設の建設など、被保険者・国民の厳しい批判を受けたことなどがあり、年金制度と同様に雇用保険の信頼が揺らごうとしている。制度全体の事業評価や廃止を含む見直しが迫られているなか、特に地域が限定された援護制度や特例一時金制度などは、真っ先に廃止を含む見直しの対象とされている。
 しかし当面の間、冬期に失業を余儀なくされる季節労働者の生活を守る制度と体制は必要である。また、事態を根本的に解決するためには、官・民の“工事発注の平準化”すなわち、冬期における工事の実施について、関係者の努力により促進しなければならない。
 
 暫定制度が廃止されるH19年以降の季節労働者対策は、政府の概算要求提出をもって当面の決着を迎えた。しかしその内容から見ると、政府・厚労省の基本姿勢は、通年雇用奨励金(恒久制度、H16 6,000名 29億円)を1.5万人に拡大することで全てに終止符を打つもので、結果として、今日まで冬期雇用援護制度を利用してきた約3.8万人のうち、2.3万人を切り捨てようとしていることは、積雪寒冷地における季節労働の現状と、零細な雇用する企業の事情を考慮せず、国が一方的に政策変更するもので、断じて容認できない。
 制度変更を行う全責任は国にあることは明らかである。連合北海道は今後もオール北海道の協議会と連携を取りつつ、抗議行動を含め、あらゆる闘いに取り組むこととする。
 
 しかし、その一方、季節労働は将来的に全て常用化され、解消されることが望ましく、運動の究極的な目標でもある。われわれの運動の成果である、新規の「季節労働者通年雇用促進支援事業」の業務の確立や、支援事業の対象となる季節労働者(通年雇用奨励金の非対象)の冬期の生活維持に向けた短期の就労確保など、新たな観点での運動展開も必要となってきているため、北海道・市町村と十分協議し、制度廃止の影響をソフトランディングさせる施策の実現を進めなければならない。
 
 連合北海道は道季労・全建総連など建設関連組織と連携して、「連合北海道 季節・建設労働対策委員会」を中心に、季節労働者の生活の安定と維持に向けた取り組みを強化する。
 当面、以下の取り組みについて、連合北海道の産別と地域組織の総力を上げた取り組みをすすめ、民主党各級議員の協力を得て、実現をはかることとする。
 
@暫定制度利用者など季節労働者全ての通年雇用化実現を厚生労働省・北海道労働局に強く求める。
A通年雇用促進支援事業組織に参画し、事業体の機能と活動の強化を国・道・市町村に要請する。
B国・道・市町村や民間企業の事業や地域提案型雇用創造促進事業(パッケージ事業)など、あらゆる事業を通じて、冬期における短期就労の確保をはかる取り組みを行う。
C季節労働者の通年雇用化の進展をチェックし、必要により制度周知の体制強化など行政への要請を強化する。また、季節労働者の通年雇用化についてフォーローアップ調査を行う。
 
 
以 上