U.情勢と課題  
一、世界経済の動向
@ IT化の進行により世界の社会・経済は今、時間・距離の概念が失われ、世界の同時化が進んでいる中、各国とも経済は概ね好調な状態にあります。
 欧州とりわけユーロ圏の経済は回復傾向にあり、特に英国の景気拡大は15年目を迎えています。好調な欧州景気の証として、経常赤字問題を抱える米ドルの代替受け皿としてユーロが国際通貨となっており、円も対ユーロでは8月に150円台の最安値を記録しています。それに伴い雇用情勢も着実な改善傾向を示しており、ユーロ圏6月の失業率は7.8%と2001年8月以来で最も低くなっています。
  しかし、ドイツの付加価値税の税率引き上げなど、いくつかの国で大幅な財政引き締めが計画されていることなど、今後への懸念材料も出てきております。

A それに対し、これまで好調を続けてきた米国経済は、原油価格の高騰により好景気を支えてきた個人消費に陰りが出始め、景気の減速感が強まっており、7月の雇用統計で失業率が4.8%(前月比0.2%)と5ヶ月ぶりに上昇したところにも、景気の減速感が出ています。
  今年、米国は中間選挙が行われ、ブッシュ政権の残り2年間と次期大統領選挙を占う重要な選挙となります。9.11の同時多発テロ以降、「戦争経済」で米国経済を活性化してきたブッシュ大統領ですが、米国民もイラク戦争への疑問を持ち始めていることから、米国の政治勢力の図が変わる可能性もいます。

B 米国は、日本社会が突き進んでいる市場原理主義のモデル的な国でありますが、1980年代より市場原理主義が強調され、現在はトップ1%の金持ちが国富の50%を独占する「格差社会」となっています。1965年には最高経営責任者と平均的労働者の賃金格差は24倍でしたが、2003年には185倍までに拡大しています。また、ブッシュ政権のもと経済が回復基調にあったにもかかわらず、「貧困ライン」以下で生活している人は、2004年調査で約3700万人と前年より100万人増え、貧困層は増加しています。そして、昨年のハリケーン「カトリーナ」から1年が経過しながら、未だ復旧の目処がついていないのも貧困層の方々です。
  米国社会の問題は、貧困層が固定化する傾向が強いことで、市場原理主義による競争社会は、一部の者にとっては住みやすい社会ですが、一旦貧困の世界に落ち込むと、そこからは出すのは極めて難し
ことを米国社会が教えています。

C BRICsの経済成長は目覚ましく、世界貿易に占める割合は急速に高まっています。なかでも米国が、今後の貿易相手国の主体と考えている(※)中国、インドは驚異的な経済発展を遂げています。
  かつての低コスト生産拠点で「世界の生産工場」であった中国は、巨大消費市場に変わりつつあって、各国の対中貿易額も上昇しており、日本も2004年には対米貿易額を上回っています。しかし昨年の人民元切り上げと米国に次ぐ世界2位の原油消費国であることから、原油価格高騰などで今後の経済発展の懸念材料を抱えています。
  一方、インド経済は個人消費や設備投資といった国内需要や、製造業の生産増加も輸出向けではなく、国内向けの消費財・資本財が中心となって高成長を牽引しております。今後、特に高い伸びが予想されているのが外国企業の設備投資で、来年度の実質経済成長率は8.5%まで高まる予想もされております。日本企業のインド進出も増加しており、他国においても、鉄鋼メーカーを中心に加速しております。
  このように、各国とも今後の経済活動において中国・インドを外して考えることは出来ない状況になってきており、わが国も新たな経済パートナーとしてこの2国と緊密な関係を構築し、アジアを基軸とした経済圏を形成していくことを考えていく必要があります。

D BRICs、米国や中東地域における石油需要の拡大による、地球規模のエネルギー・環境の危機が現れています。経済発展のウラには膨大なエネルギー消費が有り、特に中国のエネルギー消費は、3年ごとに日本1国分のペースで増え続け、今や純輸出国から純輸入国に転換し、日本を抜いて世界2位の石油消費国となりました。この先、中国が米国並みに石油を消費すると、米・中の2国で世界の石油を消費し尽くす危険性があります。
  そして、石油消費はCO2の増加を招き、地球温暖化に拍車を掛けることになります。各国のエネルギー政策の転換が必要とされますが、途上国では「成長する権利」を主張し、化石燃料の消費増加が続いています。
  また、BRICsの経済発展の要因の一つに各国とも多数の人口を抱えていることがありますが、これは経済発展とともに畜産物の消費が増えることが予想され、必然的に穀物の消費も増大し、食糧危機を招くことになります。
  経済発展の裏側に潜むエネルギー・食糧・環境の危機に対し、世界各国が共通の認識のもと、対策に取り組まなければなりません。

E 本年7月5日、北朝鮮が長距離ミサイルを発射し、日本海に落下
しました。また、10月9日には地下核実験を実施しました。
  日本と北朝鮮との間では、2002年9月の「日朝平壌宣言」において、「核およびミサイル問題を含む安全保障上の諸問題と関連し、関係国間の対話を促進し問題解決をはかる必要性」が確認されており、加えて「ミサイル発射のモラトリアムを2003年以降もさらに延長していく」としてミサイル発射の凍結を確認していました。
  2005年の6カ国協議共同声明においても、「一切の核兵器及び現在の核計画を放棄し、早期に核拡散防止条約に復帰し国際原子力機関の監督下に戻る」ことが確認されています。
  今回の北朝鮮の行為は、対話を通じて安全保障を確立していくとした「日朝平壌宣言」や「6カ国条約」を一方的に反古にするものであり、さらに拉致事件が全く進展を見られないまま今日に至っている中で、北朝鮮が日本に対する挑発とも言える行為に及んだことは、絶対に許されるものではありません。
  国際社会の平和と安定を求める観点から、北朝鮮自らが引き起こした問題の深刻さを認め、国際的な連携と協調の中で一刻も早く事態の解決が図られることを求めます。


二、小泉政治と小泉後の日本(国内情勢)

経済・雇用情勢
@ 本年4−6月期の国内総生産(GDP)速報値では、実質で年率0.8%増、名目で1.1%増となり、3年ぶりに名目成長率が実質成長率を上回り、デフレ脱却が言われ始めています。また、米国経済の減速から輸出が頭打ちになる一方、国内の設備投資と個人消費が堅調で成長主体が外需から内需に移りつつあります。
 しかし、原油高によるガソリン価格の上昇で個人消費が落ち込むことや、米国経済が停滞することによる過剰投資の恐れも残されており予断を許さない状況にあります。

A 我が国の景気は02年1月を底に回復に転じ、現在、いざなぎ景気を超えるのは間違いないと言われていますが、今言われている好景気は一部大都市、大企業を中心としたもので、地方の中小零細企業では倒産数が増加しています。更に、景気の拡大が消費を支える賃金の上昇に結びついていないことを考えると、国民のどれほどが好景気感を実感しているのか疑問であります。

B 雇用情勢は、6月現在の有効求人倍率は0.93倍(常用)で、前年同月比0.10増となっており、完全失業率は4.2%と前年同月比同率となっています。
 地域別4−6月の完全失業率は、北海道と九州で5%を超えていますが、前年同期を比較しますと北海道を除き各地域同率又は最大0.6P減少しており、全体的には回復傾向と言えます。

C 正規労働者34万8100円、非正規労働者22万1300円。同じフルタイムで働く男性労働者の平均月例賃金は、厳然な「格差」が明白になっています。
  パート・フリーターなどの非正規労働者は、900万人(03年)から1600万人余(05年)に増えました。これは、バブル崩壊後の不況下で政府が労働法制の規制緩和を急速に進めた結果によるものです。

小泉以後の日本
@ 5年にわたる小泉劇場が終演し、今後は脱小泉かそれとも小泉政策の継承かが問われ、2007年は将来の日本を占う上で大きな節目の年となります。
  市場原理主義、構造改革によってこの5年間に行ってきたものは、イラクへの自衛隊派兵、牛肉の輸入解禁等々、国民の安全・安心よりも米国の圧力を優先する米国への従属と、儲けることのみを考え道義的観念を捨てた「勝ち組」の優遇です。
  小泉政権の「小さな政府」路線の5年間で所得など経済格差が広がり、競争の敗者がそのまま「弱者」として固定化しつつあり、企業や地域といった共同体も崩れ始めています。
  セーフティネットを整えるのは政府の役割でありますが、その責任を放棄し、市場原理主義、競争至上主義を推し進めるのか、それとも政府の役割を果たすのかが、政治の大きな争点となっています。

A かつての日本社会にも競争やそれに伴うリスクは存在していましたが、地域コミュニティや雇用確保の場としての企業が、弱い立場の個人を守り、支援するセーフティネットの役割を担い、世界に類を見ない安全・安心な社会を築いていました。
  しかし、小泉政権が発足して以来、生活の安定を保証していた日本的な会社組織は、生産効率を追求し、リストラ、成果主義、非正規雇用への置き換えを行っています。

B 頑張って働いているのに生活保護よりも所得が低い『ワーキングプア』と呼ばれる貧困化も進んでいます。正社員と同じ仕事内容でありながら賃金が低く抑えられ、首切りされやすい不安定な雇用環境にある非正規労働者の急増も要因の一つであります。

C 構造改革の地方切り捨てにより、地域共同体が体をなさない状況となり、医療・年金等の社会保障制度も危うい状況となっていることが、人々から精神的安らぎを奪い、自殺者の増大、児童虐待などが増大する結果となっています。
  今後も市場原理主義による競争至上社会を推し進めていくならば、格差が格差を生み出し、あらゆる面での格差、心や社会のひずみは急速かつ広範囲に拡大していきます。

D 小泉政治の外交は、日本の平和と安全の確保を最重視する視点から、戦略的な外交を展開する考えを持たず、ただ米国従属の外交政策を推し進め、中国・韓国の両国に対しては、靖国神社参拝などのように強硬な姿勢を示してきました。その結果が、拉致問題、ミサイル発射問題において中・韓両国から支援を得られない状況となっています。
  今後も米国従属の同じ道を歩むのか、それとも中国・韓国との関係改善に努め、東アジアにおける平和と安定を選び、外交上の主体性・独立性を確立していくのか、わが国の外交政策が問われます。

E 9月26日開催された臨時国会で、安倍晋三内閣総理大臣が誕生しました。
  安倍総理は「美しい国、日本」と題した政権構想を発表し、「戦
後レジームからの新たな船出」を掲げ、憲法改正や教育改革を柱にすえています。
  中国や韓国との関係で問題になっている靖国問題については「行くか行かないかは、外国から指図されるものであってはならない」と述べ、明言しない姿勢に終始したことは、日中、日韓の関係の正常化や重視すべきアジア外交にとって、今後の大きな課題となることは必至です。
  また、政策の具体性が乏しいのは外交問題のみならず、財政問題では「来年度の新規国債発行額を今年度以下に削減する」との表現に止まり、消費税の引き上げについては「ある程度は上げなくてはならない」、さらには、格差が拡大していることに対しては「再チャレンジ政策」としているものの、内容が曖昧なものです。その一方
で「戦後レジームからの新たな船出」の考え方は、国家主義を前面に打ち出し、憲法改正を高々と掲げ、明確したことが特徴といえます。

F 自民党・安倍政権に変わる政治の実現こそが、私たちの最重要課題となります。
  私たちは、これからの日本の国のあり方として、格差を是正し労働を中心とした福祉社会の実現、平和な世界の実現に向けて、来年の統一自治体選挙、参議院選挙、そして、続く衆議院選挙において政権交代を実現させ、小泉政治で荒廃した社会を立て直し、再生日本を創らなければなりません。


三、真・開拓時代の実現に向けて(道内情勢)

経済・雇用
@ 日銀札幌支店は、9月の企業短期経済観測調査でそれまでの「持ち直しの動きに足踏み感が見られる」から、「緩やかに持ち直している」と上方修正しましたが、道外景気の波及効果と夏の猛暑による天候要因に支えられた面が大きく、自力回復したとは言えません。さらに、北海道の冬の暮らしに直結する原油価格の動向も依然不透明で、本道の経済の先行きは、予断を許さない状況にあります。

A 特に、景気回復の要となる個人消費は、薄型テレビを中心に一部持ち直しの動きが見られるものもありますが、雇用者所得の改善が遅れていることに加え、ガソリン価格の高止まりによる出控え、乗用車販売が低調な推移となっています。

B また、雇用情勢は、有効求人倍率は僅かながら改善の基調にあるものの、雇用の増加が非正規労働者が中心であることや、4−6月の完全失業率が5.4%と依然高止まり状態が続いており、前述したとおり全国で北海道のみが前年同期より0.4P悪化していることからも、道内の雇用情勢は完全な回復傾向にあるとは言えません。

地方分権と地方財政問題
@ 道内の自治体財政問題では、特に空知産炭地域が危機的状況にあり、夕張市の財政再建団体入りの他、5市1町の空知産炭地域発展基

金運用問題などにより財政危機が表面化しています。
  今回の問題により地域住民の不安が増大し、人口流出、地域崩壊を招かないためにも、明確な対策を早急に作成する必要がありますが、その対策を検討するに当たって、当該自治体の努力は当然のことですが、同時に、国や道の支援・指導が不可欠であります。

A 昨年から本年3月にかけて道内でも市町村合併が進み、道内自治体数は212市町村から180へと大きく減少しました。
  しかし、道内には財政が逼迫している自治体が多く、今回の合併の中にも地方交付税の優遇や合併特例債を当て込んだものもあり、合併によるスケールメリットを活かせるかどうかは、今後の課題となります。

B 今後、財政事情から行政内容で地域間格差が拡大し、地域衰退に拍車を掛ける結果になる危険性もありますが、道州制など地方分権は時代の要請とも言えるものであり、市町村を起点とした地方分権の推進に努めるとともに、北海道の憲法「北海道自治基本条例」の制定を求めていきます。

高橋道政
@ 高橋知事の任期が終わろうとしています。高橋道政への検証は、雇用労働問題、道警不正経理問題等の重要課題を中心に昨年の第18回定期大会で行い「高橋知事としての新しい政策提起がない」としていますが、この1年間でも改善の姿は見られていません。

A 道庁職員による知事の評価も急落しています。自治労全道庁労組が9月5日に発表した組合員アンケートでは、支持6.5%、不支持57.5%と、1年前の自治労による調査時よりも大幅に支持率が下がっています。
  また、アンケートによる知事への意見では、「官僚的で道民の意見を聞かない」「政策に特徴がない」「国の言いなり」などが多数をしめています。

B 連合北海道は、昨年の定期大会で示したとおり、「2007年政治決戦の最大焦点である北海道知事選挙が、道民の中に、新たな開拓者精神と潜在化している独立心を呼び起こし、新しい北海道の創造が展望できる戦いとなるよう、組織の総力を挙げる決意」であります。




 
<MEMO>










□付加価値価値税の税率引き上げ
16→19%

□原油価格
NY市場では、1985年から2004年夏の間、1バレル=10〜40$だったが、本年7月13日、78.40$の最高値を一時つけた







□貧困ライン
家族3人で年収1万4680$







□BRICs
経済発展の著しいブラジル・ロシア・インド・中国の頭文字を繋げた造語。2039年には米・日・独・英・仏・伊のGDP合計を上回り、2050年のGDP順位は、中・米・印・日・伯・露・英になるとされている

※国務省リポート
『2020年の世界』には、「アメリカと中印との連合が2020年の
世界の主軸になるだろう」と記されています

□日本企業のインド進出
03年8月 231社
06年1月 328社

































□日本の原油輸入価格(CIF価格)
06年1月 41.178
06年6月 47.440
単位は円/KL




□いざなぎ景気
1965年11月から1970年7月までの57ヶ月続いた好景気








□厚生労働省による2005年の調査。(残業代除く)


□労働法制の規制緩和
人材派遣は秘書、通訳など16業種限定でしたが、1996年に26業種に、1999年には一部を除き原則自由となりました。
これに加え、実態が派遣にもかかわらず、請負契約を装う違法な「偽装請負」や製造業の工場の「請負」が増加し、そこでの労災発生率が高くなっていることなど、労働の規制緩和の弊害が社会問題となっています。





































































□有効求人倍率
(常用、8月)
0.52(0.02)
※常用は新規学卒を除き、常用的パートタイムを含む原数値

























■第4号議案
真・開拓時代/北海道の創造と展望



■2005年6月調査
支持 27.4%
不支持 32.1%