連合北海道第18回定期大会(2005.12.1〜2)
第3号議案
第44回衆議院選挙闘争のまとめ(案)
連合北海道
T.はじめに(闘争の意義等)
(1)8月8日、参議院本会議において、郵政民営化関連6法案の採択が行われ、民主党をはじめとする野党に自民党からの一部造反(反対22、欠席8)が加わり、反対125票、賛成108票で法案否決となりました。この郵政民営化関連法案は、国会審議を通じても「なぜ、民営化なのか」の議論が深まらないばかりか、「郵便局ネットワ−クの維持」をはじめとする15項目に及ぶ膨大な「付帯決議」は、法案への疑問を一層深めるものでした。したがって、この時点で、廃案とすべきであったのにもかかわらず、小泉首相は直ちに臨時閣議を開いて衆議院を解散、こうして総選挙は8月30日に公示、9月11日を投票日として実施されました。
(2)「郵政民営化」に対して連合本部は、関連法案の廃案をめざし、6月に笹森会長などが原告となって法案提出行為の違憲確認を求める訴訟を提起しました。そして連合北海道は6月15日、民主党北海道、JPU道地本、全郵政道地本とともに「郵政民営化法案の廃案を求める共闘会議」を設置し、地協・地区連合を軸に産別のみなさんの協力を得ながら全道的な取り組みを展開して道民世論の形成に努めました。7月31日に開催された「守ろうみんなの郵便局7.31道民集会」(主催:郵便局ファンの会)は、4千人を超える参加者によって札幌大通公園が埋め尽くされました。
(3)参議院における郵政民営化関連法案の否決は、こうした共闘運動がもたらした成果であり、良識の府として参議院の存在を示したものと受け止めましたが、小泉首相は解散総選挙で、「郵政問題に対する国民の信を問う」と明言、両院協議会での調整やあらためて衆議院での賛否(3分の2以上で再議決)を問うことは行いませんでした。5票差で可決した衆議院を、参議院での否決を理由として解散・総選挙を行ったことは、解散権の乱用であると指摘しなければなりません。しかし、連合北海道は、その上に立ってもなお、参議院での否決が「市場原理主義と国民生活無視の小泉政権と政治に対する不信任を意味しているものであり、国民の審判を問うべきである」、さらに、「自民党による長期政治支配と決別し、日本の政治を変える絶好のチャンス」であるとの見解とたたかう決意を内外に表明(8月8日)し、超短期の選挙戦に突入しました。
(4)こうして、実施された第44回衆議院総選挙は、全国的には「自民単独過半数の勢い、民主苦戦」と報じられた事前の世論調査がそのまま反映され、さらには、予想を超える投票率アップ(小選挙区=全国7.65%増、道内8.08%増)のなか、想定外ともいえる自民圧勝と全衆議院議席の3分の2以上を占める巨大与党が誕生し、政権交代をめざした民主党は、大幅議席減の大敗北という結果に終わり、岡田代表が辞任となりました。
一方、道内では「民主・自民の拮抗」との事前報道のとおりの展開でしたが、結果的に民主党が競り勝ち、全国の民主党獲得議席の約1割を占める11議席(現状維持)を獲得し、道内全議席の過半数と道内第一党の地位を確保、継続しました。
以下、今回の第44回衆議院総選挙を振り返って検証し、来る2007年の道政奪還と参議院選挙の勝利、そして、次なる政権交代の実現をめざしていきたいと思います。
U.選挙結果の概要、評価について
1.全国的な選挙結果と評価
(1)8月30日に公示された第44回衆議院総選挙は、小選挙区(300)と比例代表(180)を合わせての計480議席をめぐり、1132人が立候補して戦われました。この立候補の中には、「郵政民営化に賛成か反対か」の国民投票と位置づけた小泉・自民党による、造反者に対する女性官僚などの対立候補擁立や、その結果として追い込まれた造反者によって結成された新党からの立候補が特徴づけられます。
小選挙区の立候補者は、民主289人、自民290人、公明9人、共産275人、社民38人、国民新党10人、新党日本6人、新党大地1人などです。
小選挙区の結果は、[表1]のとおり、得票率と議席数を見ると、自民党は、47.8%の得票率(前回より643万票増)で議席の73%(議席占有率としては、1960年池田内閣につぐ戦後2番目の高さ)を獲得し、一方民主党は、候補者擁立増によって前回比で299万票と得票数を伸ばし、36.4%の得票率でしたが、議席数では、17.3%というように、小選挙区制度の特徴が顕著に現れた結果となりました。このことは、次回の総選挙においては、一気に逆転することが可能であることも意味しています。
[表1]全国における党派別小選挙区得票数・率
|
党派名 |
得 票 数 |
得票率 |
前回 |
議席数 |
前回 |
議席率(前回) |
備 考 |
自民党
民主党
公明党
共産党
社民党
国民新党
新党日本
新党大地
諸 派
無所属 |
32,518,389
24,804,786
981,105
4,937,375
996,007
432,679
137,172
18,255
0
3,240,521 |
47.8%
36.4%
1.4%
7.3%
1.5%
0.6%
0.2%
0.0%
4.8% |
43.8
36.7
1.5
8.1
2.9
−
−
−
0
4.6 |
219
52
8
1
2
18 |
+51
-53
-1
|
73.0%(56.0)
17.3%(35.0)
2.7%( 3.0)
0.0%( 0.0)
0.3%( 0.3)
0.7%( - )
0.0%( - )
0.0%( - )
0.0%( 0.0)
6.0%( 3.7) |
|
計 |
68,066,291 |
100% |
|
300 |
|
|
|
|
なお、自民党と民主党が直接対決した280小選挙区では自民党の214勝52敗、都道府県庁所在地のある「1区」では32選挙区で自民党が勝利、首都圏(1都3県)の71小選挙区においては、自民党が63対5と民主党に圧勝しています。
(2)一方、比例代表では180議席を重複立候補者を合わせた779人で争い、その結果、自民77(前回選挙+8)、民主61(−11)、公明23(−2)、共産9、社民6(+1)、国民新党2、新党日本1、新党大地1という議席配分となりました。比例代表の得票数および率は[表2]のとおりです。
そして、小選挙区と比例代表を合わせると
自民党が15年ぶりとされる単独過半数を [表2]党派別比例代表得票数・率
大幅に超える296議席(解散時249、公 示前212)と圧勝、公明党の31議席(公 示前34)を合わせると全議席の3分の2(3 20議席)以上を占める327議席と巨大与 党となり、衆議院での憲法発議など「何でも 出来る政権」ができあがりました。
民主党は、113議席(公示前177)と 大幅に議席を減らし、以下、共産9(同9) |
|
自民党
民主党
公明党
共産党
社民党
国民新党
新党日本
新党大地 |
25,887,798
21,036,425
8,987,620
4,919,187
3,719,522
1,183,073
1,643,506
433,938 |
38.18(前回34.96)
31.02(前回37.39)
13.25(前回14.78)
7.25(前回 7.76)
5.49(前回 5.12)
1.74 −
2.42 −
0.64 − |
|
社民7(同5)、国民新党4(同4)、新党日
本1(同3)、そして、新党大地1、無所属18(同32)の議席となり、新しい勢 力分野([表3]を参照)が確定しました。
なお、選挙結果 [表3]衆参両院の新勢力分野
を特徴づけたいく つかの点にふれる と、@都道府県別 の比例代表選挙に おける自民・民主 の得票率比較では、 自民が41勝6敗 (前回25勝22 敗)、A政令指定 都市の選挙区では 自民の37勝12 敗(前回は民主が 33勝16敗)、 |
|
党派名 |
小選挙区 |
比例代表 |
新議席数 |
解散時 |
参議院 |
自民党 |
219 |
77 |
296 |
249 |
112 |
民主党 |
52 |
61 |
113 |
175 |
83 |
公明党 |
8 |
23 |
31 |
34 |
24 |
共産党 |
0 |
9 |
9 |
9 |
9 |
社民党 |
1 |
6 |
7 |
6 |
6 |
国民新党 |
2 |
2 |
4 |
0 |
|
新党日本 |
0 |
1 |
1 |
0 |
|
自由連合 |
0 |
0 |
0 |
1 |
|
新党大地 |
0 |
1 |
1 |
0 |
|
無所属 |
18 |
0 |
18 |
3 |
7 |
欠 員 |
|
|
|
3 |
1 |
合 計 |
300 |
180 |
480 |
480 |
242 |
|
B東京都において
は民主が1勝24敗となっており、自民党が圧勝したことを裏付けています。さらに無党派層の動向についてマスコミ報道によると、小選挙区有効投票総数の約2割を占めた無党派層(1300万票)は、総体では民主党が自民党を上回っているものの、その比率は2対1から5対4に接近したことを報じています。
(3)9月12日、投開票の結果を受けて新聞各社は、自民党の圧勝を伝えるとともに、それぞれの社説において、「国民は、・・・小泉政権を選択した。改革路線の後戻りを許さないという、『変革』への期待を込めた民意と受け止めたい」(M)、「今回の選挙戦の特徴は終始、小泉首相が主導権をとり続けたことであった」(N)、「有権者は、政権交代による政治の大きな変化は求めなかった。むしろ郵政民営化などの改革を進めることで既得権に切り込み、古い自民党を壊すとした小泉首相の気概にいま一度かけてみよう、ということなのだろう」(D)、「自民の圧勝は、郵政民営化の賛否に絞った首相の劇場型手法が、予想以上に功を奏したのだろう」(Y)、「半世紀にわたってほぼ一貫して政権を担ってきた自民党だが、郵政民営化にかける首相の気迫が保守政党のイメ−ジを打ち破り、改革を望む民意を圧倒的につかんだ」(A)と論評を行っています。これらの論評に共通しているのは、今回の結果を生み出した要因が郵政選挙と位置づけた小泉戦略にあったとしていることです。
(4)確かに、もっと優先すべき年金制度改革や少子化などの社会保障をめぐる課題が山積していたのにもかかわらず、「郵政民営化」の賛否に一本化・単純化されてすり替えられ、その結果、“自民が変わったように見える”“今回だけは自民党に”との有権者の声が多く聞こえました。そう言わしめた小泉自民党の方が、いま抱いている閉塞感の打開に応える姿勢として、有権者にはより明確に映ったのではないか、さらには、「何となく」「みんながそうだから」という同調行動がともなったということを、連合北海道は重視したいと思います。一方、選挙結果を受けて多くの有権者が、自ら下した判断と選択について、反省の心を持って見つめていることにも注視しておかなければなりません。次の[表4]は、ニュ−スの中で放映された世論調査(聞き取り)の結果です。
[表4]世論調査(9月20日/NHK・午後7時台ニュ−ス)
|
◇ 自民の大幅議席増について
@ もっと多い方が良かった(6)
A もっと少ない方が良かった(53)
B この程度で良かった(36)
【原因について】
a 他の政党に魅力ない(36)
b 小泉行動、主張わかりやすい(32)
c 郵政民営化に賛成が多い(22) |
◇ 民主の大幅議席減について
@ もっと多い方が良かった(56)
A もっと少ない方が良かった(7)
B この程度で良かった(30)
【原因について】
a 年金・少子化争点にならず(40)
b 岡田主張わかりにくかった(25)
c 郵政民営化反対評価されず(16) |
□ 自公の3分の2議席について
@ 好ましい(21) A どちらかと言えば好ましい(23) B どちらかと言えば好 ましくない(24) C 好ましくない(23) |
|
2.北海道における選挙結果と評価
(1)北海道においては、12の小選挙区と比例代表8を合わせ、20議席をめぐり重複立候補を含む38人が立候補して争われました。民主党は、11区の新人候補に加え6区では勇退にともなって現職の道議を擁立するなど、すべての小選挙区において候補者を擁立しました。比例代表では、比例代表単独一位の逢坂・ニセコ町長(8月26日辞表提出)をはじめ4名が単独名簿登載候補となり、鉢呂代表は、自らの決意として小選挙区単独候補となりました。自民党は10区において、造反議員への対抗馬として道外から女性候補を擁立、道内版“小泉劇場”を演出しました。公判中の鈴木元衆議院議員は、昨年の参議院選挙の実績(48万5千票)から新党大地を立ち上げ、1区で小選挙区候補者を擁立するとともに、自らは比例代表一位の候補としました。共産党は、民主、自民とともにすべての小選挙区で候補者を擁立、公明党と社民党は、比例代表重視の選挙戦となりました。
(2)小選挙区の結果は、民主と自民がともに得票数を伸ばしましたが、民主党が、激戦・接戦の選挙区を競り勝って8議席(前回選挙+1)を獲得、自民党は前回より1議席減の4議席にとどまりました。前回との比較においては、3区において競り負け(比例で復活)したものの6、7区における劇的な民主の勝利がこの結果を象徴づけました。
しかし、得票数・率 [表5]北海道における党派別小選挙区得票数・率
では、[表5]のとお り拮抗しました。
民主党は、札幌市内
で前回より3万5千票 増しましたが、得票率 では、50.35%か ら45.10%(市部 |
|
党派名 |
前回(得票率) |
今回(得票率) |
民主党
自民党
共産党
社民党
新党大地
無所属 |
1,223,595 (42.89%)
1,225,935 (42.97%)
236,721 (08.30%)
52,935 (01.86%)
113,676 (03.98%) |
1,451,165 (44.86%)
1,434,994 (44.36%)
253,196 (07.83%)
16,698 (00.52%)
78,604 (02.43%) |
|
全体では、45.52
%から45.04%と微減)に減少し、町村部では、8万2千票(得票率は39.30%から44.28%へ)増となりました。一方、自民党は、札幌市内で13万9千票も増しましたが、町村部では、1万4千票減らしたことがそれぞれ特筆されます。さらに、札幌圏(1区〜5区)における民主対自民の勝敗は、3勝2敗(前回は4勝1敗)となり、全道平
均を上回った9.9 [表6]民主党公認候補の得票結果の前回比較
%増の投率(全道は 8.08%増)を考 え合わせると、全国
的な“都市劇場型” 選挙の荒波が北海道 においても押し寄せ ていたことの証とい えます。その中でも、 5区においては、民 主候補が前回より4
千票増やしたのにも かかわらず、自民現 職は4万5千票も増 |
|
選挙区 |
当落 |
得票数 |
得票率% |
自民候補との得票差(前回) |
1区 |
◎ |
− 423 |
− 9.71 |
+15398(+54229) |
2区 |
◎ |
+ 21517 |
− 0.30 |
+02325(+24267) |
3区 |
○ |
+ 11314 |
− 3.05 |
−13320(+02879) |
4区 |
◎ |
+ 7355 |
− 1.86 |
+07853(+16889) |
5区 |
△ |
+ 4355 |
− 4.93 |
−49400(−08843) |
6区 |
◎ |
+ 32863 |
+ 6.72 |
+02761(−00687) |
7区 |
◎ |
+ 22965 |
+ 6.03 |
+08549(−13077) |
8区 |
◎ |
+ 29932 |
+ 7.55 |
+20822(+33804) |
9区 |
◎ |
+ 8608 |
− 0.76 |
+18920(+22484) |
10区 |
◎ |
− 12094 |
− 8.42 |
+47302(+14956) |
11区 |
△ |
(+32231) |
+ 11.54 |
−22430(−59815) |
12区 |
○ |
+ 19104 |
+ 4.21 |
−22630(−35527) |
|
やしています。 <注>「当落」欄は、◎(当選)○(比例復活)△(落選)、
[表6]は、民主 10区は自民公認候補との比較、11区の前回は社民候補(民主が推薦)
党公認候補の得票結果を前回との比較で表したものです。1・9区では1万票台に差が接近、2・4・6・7・8区は激戦を制した結果を示しています。10区は自民内対立に埋没せずに議席確保、11・12区は大健闘(12区は比例復活)、3区は激戦を制することが出来ず(比例では復活)、5区については、健闘しましたが現職大臣の壁を打ち破れず再選することが出来ませんでした。
(3)比例代表選挙では、[表7]で示されているように、民主党をはじめ、すべての既成政党が得票率を減らし、その分を新党大地が獲得し、得票率では、7区で比較第一党、全道では公明党を抜いて第3位となりました。民主党は、得票数・率とも減少(6万2千票、7.03%)
させ、比較第1党は維持しまし [表7]道内における政党別比例代表投票数・率
たが、特に札幌市では、10. 28%の減となりました。
また、7区(24.27%)、11 区(28.03%)、12区(30.14 %)では、全道平均(33.79%)
を下回り、新党大地の影響を
受けた結果となりました。さ |
|
政党名 |
今回(得票率) |
前回(得票率) |
民主党
自民党
公明党
共産党
社民党
新党大地 |
1,090,727 (33.79)
940,705 (29.14)
368,552 (11.42)
241,371 (07.48)
152,646 (04.73)
433,938 (13.44) |
1,153,471 (40.82%)
876,653 (31.03%)
394,843 (13.97%)
253,442 (08.97%)
147,146 (05.21%)
|
|
らに、市部全体では42.22
%から34.33%、町村部では36.61%から31.99%と減少し、1議席減となりました。以上の結果、比例代表の議席配分は、民主党3、自民党3、公明党1、新党大地1となりました。
(4)民主党北海道は、民主党本部からの要請と協議に基づき、逢坂誠二・ニセコ町長を比例代表単独1位として擁立しました。この擁立は、衆議院の解散以降、小泉・自民党によって展開される候補擁立劇とそれを演出したメディアによって、民主党の埋没感は着実に進行していたのであり、その潮目を変える戦略として位置づけられるものでした。しかし、「原則として比例名簿単独上位登載は認めない」とするこれまでの取り扱いや事前に具体像がイメ−ジされないままに即公表となったことへの「戸惑い」や「疑念」が出されたことは、今後の反省として残されました。連合北海道は、選挙本番の直前でもあり、産別・地協代表者会議で論議の上、この擁立を前向きに消化していくことを確認しました。逢坂候補は選挙戦において、各小選挙区候補と連帯し、「小泉改革は地方を切り捨てるものである」と地域の声を代弁し、政権交代を訴え続けました。その結果、全国的流れとなっていた“小泉旋風”下での埋没感の中から、少なからず、北海道における民主党の存在を示すことへの一定の役割と効果をもたらしたものと認識します。また、各選挙区での得票状況を総合的に判断すると、新党大地は、自民党や民主党、無所属候補への傾斜がそれぞれうかがわれ、選挙区ごとに是々非々の対応であったことが見てとれます。同時に、小泉改革には明確に拒否の姿勢を示していたことから、道内における小泉旋風の拡張にも一定の歯止めをかける役割を果たしたのではないかと考えられます。
3.投票率について
(1)全国の投票率は、小選挙区で67.51%(前回59.86%、+7.65%)、比例代表は67.46%と予想を超えたものとなり、小選挙区制(1996年以来)のもとでは最高の投票率となりました。投票率が67%を超えたのは1993年以来で、このアップによって、有効投票者数は857万人も増えました。一方、北海道においては小選挙区(71.05%)、比例代表(71.01%)ともに、1990年以来の70%台となり、有効投票者数は、38.2万人増えました。都市部では、8.86%、特に札幌市は、9.89%(17万人増)伸びて68.97%(戦後5番目)、もともと投票率の高かった町村部では、5.56%の伸びとなりました。予想を超えた高い投票率が自民圧勝という結果をもたらした背景には、メディアによる選挙報道が大きく影響したことを選挙後に実施された世論調査は伝えています。「メディアの選挙報道から『影響を受けた』人は、『大いに』と『ある程度』を合わせ53%」となっており、「今回の総選挙を『おもしろかった』と答えた人は52%」で「とりわけ20代では男女とも6割以上だった」(A)ことを報じています。「見る選挙」がもたらした、「おもしろさ」「わかりやすさ」の背景とその先にイメ−ジされるのは何か、その本質を見極めなければなりません。
4.主体的な評価にかえて
(1)以上のような選挙結果となりましたが、全国的に民主党が大敗北し自民党が圧勝する中、この北海道でなぜ民主党が現状維持出来たのか、についてです。民主党北海道は、「北海道の民主党が過半数の議席を維持・確保出来た背景の一つには、党及び各級議員の日常活動や選挙活動、並びにそれを支える連合や農民政治力会議、議員後援会等とのパ−トナ−シップが、比較的しっかりしていたことがあげられる」(第44回衆議院総選挙闘争総括)としています。しかし、マスコミ報道は、「民主党北海道の選挙を支えているのは、・・・『三軸だ』。その『三軸』も、連合北海道は労組の組織率低下に悩み、道農民連盟にもかっての力はない。小泉旋風が吹き荒れる中、結果的に自民党を上回ることが出来たのは、改革に伴う痛みに鈍感だった自民党が、北海道の無党派層を引きつけられなかったからだ」と指摘しています。
(2)連合北海道は今回の総選挙が、かってなく接戦・混戦・激戦であり、紙一重で民主党が北海道の首座を維持したという実感を持っています。自民党道連は、「競り負けた」と総括しています。全国的な比較で言えば、基礎体力の差や歴史の重みということができます。要約すると、第1にこの間、統一自治体選挙から国政選挙に至るまで一貫して民主党を軸に合同選対を設置して戦ってきたという実績があること、第2に選挙時以外においても、イラクへの自衛隊派遣中止や道警裏金問題の真相究明、さらには地方財政確立道民会議などの道民運動をともに推進するなど、不十分ながら活動に日常性や社会性があったこと、第3に北海道知事選挙での候補擁立と推薦知事による道政担当の歴史と蓄積が、政権担当能力や政権交代に対する信頼度や期待度として道民の中に醸成されている、ということです。そして何よりも、「郵政民営化は、地方の切り捨てになる」「年金制度改革などもっと優先すべき課題がある」という主張に共感をもって支持してくれた、道民のみなさんの良識であったと思います。ただ、「地方出身者は高齢化し、都会で生まれ育った有権者が大勢を占めるようになった都市部で、『郵政民営化は地方の切り捨てにつながる』などの野党側主張が実感を持って受け入れられなかったのではないか」(道新、佐藤克広北海学園大学教授)との指摘にも耳を傾けたいと思います。
V.各種取り組みの展開と検証
1.選挙闘争態勢の確立
(1)連合北海道は8月8日の衆議院解散と同時に政治センタ−代表幹事会を開催し、郵政民営化法案否決に対する見解と闘う決意を表明するとともに、道合選および各小選挙区候補選対への任務分担などを確認しました。また、今年3月に発足の「北海道政権戦略会議」を構成する民主党北海道、北海道農民政治力会議とともに、第44回総選挙北海道合同選対本部(「道合選」)を同日設置しました。さらに連合北海道は、8月13日に臨時執行委員会および政治センタ−拡大幹事会を開催し、小選挙区12名の候補を推薦して連合本部に申請するとともに、具体的な対応方針の柱として、@候補者の推薦決定と組合員・家族等への周知徹底、A闘争態勢の確立、B知友人紹介活動、C期日前投票・完全投票の徹底を確認しました。各小選挙区候補選対本部や地区選対の発足については、超短期決戦の中にあって比較的スム−ズに進行したものと考えています。
(2)選挙情勢は、小泉・自民党が「郵政民営化」を最大かつ唯一の争点に仕立て上げ、法案反対者への女性官僚をはじめとする“落下傘”と称された対抗馬の擁立、さらには、反対派による新党結成などが連日ワイドショ−的に取り扱われ、世論調査では内閣支持率の上昇が示され、民主党の埋没感が否定できない実態となっていました。そうした中、8月25日、民主党北海道が逢坂・ニセコ町長を北海道ブロック比例代表単独1位として擁立したことを受け、連合北海道は緊急政治センタ−拡大幹事会(産別・地協代表者会議)を開催し、「小選挙区において惜敗率で復活する道を狭めることへの理解」や「2003年知事選の突如とした不出馬表明に対する組織的感情論の払拭」などについて課題を指摘しつつ、民主党北海道の決定を重く受け止めることとし、残された期間、すべての推薦候補の必勝と比例区議席の拡大をめざすこととしました。
(3)選挙戦が8月30日の公示から4日目を迎えた9月2日、道合選は、緊急戦術会議を開催しました。この戦術会議では、公示日直後の選挙情勢分析として、全国的には280に及ぶ小選挙区での民主、自民の接戦に敗れれば「小泉自公政権」の圧勝・継続を許すこととなり、北海道の状況についても、@12の小選挙区ではいずれも混戦・激戦で、強く読んでも過半数に届いていないことや、A比例区では、公明の議席確保が確実、新党大地の1議席確保の可能性大である、との情勢認識で一致、異例である非常事態宣言を発しました。そして、これまでの目標・計画の進捗状況を総点検し、課題克服に向けた緊急対策方針の確立と完全達成への総行動を展開するよう、各候補選対および支援団体などに要請しました。連合北海道も全構成組織に対し「一斉・職場集会」の開催や「家族対話デ−」の実施などを緊急対策として要請しました。この非常事態宣言は、危機感を共有しながらの選挙戦終盤の取り組み展開に、一定の効果をもたらしたものと認識しています。
2.各小選挙区の得票目標と結果
各小選挙区の得票目標と得票結果について比較しました。この得票目標は、投票率を65%と想定し設定されました。達成率の評価については、各地域ごとの検証に委ねること
こととします。
選挙区 |
得票目標(A) |
得票結果(B) |
達成率(B)÷(A) |
1 |
151,603 |
143,564 |
0.9470 |
2 |
123,200 |
129,357 |
1.0500 |
3 |
130,000 |
125,445 |
0.9650 |
4 |
103,050 |
108,023 |
1.0483 |
5 |
130,100 |
124,547 |
0.9573 |
6 |
143,950 |
143,860 |
0.9994 |
7 |
89,500 |
95,473 |
1.0667 |
8 |
128,100 |
134,963 |
1.0536 |
9 |
153,320 |
150,050 |
0.9787 |
10 |
128,000 |
109,422 |
0.8549 |
11 |
90,000 |
84,626 |
0.9403 |
12 |
108,500 |
101,835 |
0.9386 |
3.マニフェストと争点について
(1)民主党は、@3年間で10兆円のムダづかいの一掃とサラリ−マン狙いうち増税なし、A年金制度の一元化、B「子ども手当」支給などの人材育成をはじめとする8つの約束をマニフェストに掲げ、政権交代の実現を訴えました。前回の総選挙と比較して積極的な配布活動は不足していましたが、街頭などでのマニフェストの受け取りにはそれなりの感触が得られていました。しかし、小泉・自民党によって展開された候補擁立やそれを演出するメディアの“劇場”、さらには郵政民営化一本槍のパフォ−マンスによって、短期間の中、自民党と明確に対峙する大きな争点とすることが出来ませんでした。その結果として、前回の総選挙と比較してマニフェストの比重は低下させられたといえます。
(2)連合本部は、8月12日、民主党との政策協定を締結しました。政策協定では、連合が民主党を全面的に支援し、民主党は連合のめざす「労働を中心とした福祉型社会」の実現に向け、政治の場における課題実現に最大限努力することとされました。また、「サラリ−マン大増税阻止・不公平税制の是正」「安心・安全・安定の社会保障制度の抜本改革実現」「小泉構造改革路線の転換、弱者切り捨ての二極化・格差社会解消」という3つの基本目標をともに掲げ、民主党が政策協定の内容を十分考慮してマニフェストを作成することとしました。さらに、社民党とは8月25日に政策協定を締結しています。
(3)北海道段階では、道合選・各候補選対において以上のような経過を確認するとともに、「4年にわたる小泉政権の改革とは、郵政問題を含め、弱者や地方を切り捨てる改革である」ことを主張し、また、今回の総選挙が「政権選択」を問うものであることを一貫して訴えるとともに、サラリ−マン増税反対などマニフェストの浸透にも努力をはらいました。連合北海道は、労働組合が当然果たすべき社会的労働運動として、青年委員会を中心にサラリ−マン大増税阻止のための全道キャラバン・キャンペ−ン行動(8月26日〜9月10日)を実施、全道拠点地域での街頭演説やチラシ配布(4万枚)など行いました。サラリ−マン大増税阻止は、これまで連合北海道が、定率減税縮減・廃止反対と合わせ世論喚起や自治体議会での意見書採択に取り組んできたものでした。この運動は、結果において自民党が最大・唯一の争点とする「郵政民営化」に対峙し、道民生活に直結する、より重要な政治課題であることを地域に広げる運動として一定の成果と役割を果たしたものと考えています。
4.地域・職場での取り組み
連合北海道は、地域や職場での取り組みついて、産別・地協に対してアンケ−トを行いました。以下、その内容について報告します。
■超短期決戦の下で、各選対本部の体制確立が十分であったか。地域での構成産別の各種取り組みに対する結集度は十分であったか。
【回答内容と評価】
体制の確立については、産別では回答の7割が、地協でも6割が「十分であった」と考えており、結集度についても概ね同じような評価となっています。以上のことを考え合わせると、超短期決戦というもとで、集中力は全道的に高かったといえます。
○ 意見のなかには−
「官公労の関わりが弱まった」「一部産別が地域運動に参加しない」などがあり、小泉首相と自民党が展開した労働組合攻撃の影響度を含め、検証していかなければなりません。
■各選挙区毎の得票目標と基本戦略の評価、各種取り組みの評価についてどうか。
【回答内容と評価】
得票目標などの評価においては、産別6割、地協7割が「達成度はまあまあであった」と回答しており、選挙結果によって裏付けられますが、具体的な取り組みである「知友人紹介」では、産別の7割が“まあまあ”と評価する一方で、地協では8割が“不十分”に終わったとしています。このことは、超短期の期間であったために、地域として十分に集約しきれなかった現状を示しているものと考えます。
○ 意見としては−
「横集約にすると取り組みが不十分になる」「労組の体力が落ちて、選挙区ごとの対応は無理となってきている」「小泉改革を評価する声が組合員のなかにもあった」「職場末端までおりきっていない」「濃淡は今まで以上に大きかった」「選対構成者に未経験が多く理解に時間がかかった」「知友人カードは様式を統一してほしい」「縦集約をしてもいいが数くらいは横に出してほしい」などが出されています。いずれも今後克服していくべき課題です。
■期日前投票などの投票推進キャンペ−ンの実施や宣伝物の活用などの状況はどうか。
【回答内容と評価】
期日前投票のキャンペーンについては、産別のほとんどが「十分行われていた」と答えている一方、地協では7割が「まあまあであった」となっています。
連合マンスリ−や投票に行こうチラシなどの宣伝物活用については、地協の6割が「十分活用されていた」と答え、産別においては6割が「まあまあであった」としています。さらに、職場集会の開催や組合役員による職場オルグの実施等では、産別・地協ともに「まあまあ」の評価をしています。
○ 意見としては−
「まず12選挙区全部のものを示し、その後各選挙区ごとの浸透を図ってはどうか」
「一部産別で配らないと決めたところがある」などが出されています。
■地域における日常活動を含めた民主党との連携については。
【回答内容と評価】
民主党との連携については、産別の5割が「民主党としての対応が不十分である」との認識であり、地協においては、「十分な連携がとれている」としているのは3割となっています。地域に根ざした、顔の見える運動は、民主党と連合が共有して実践すべき課題です。
○ 意見では−
「産別の課題について民主党の認識が弱い」「道レベルの共闘態勢を各地区レベルでも日常的にすべきだ」「民主党の体制を強化すべきだ」「民主党の議員活動が地域で見えない」というように、今後の課題を提起しています。
■投票率の伸長を裏付けとなる相手陣営の動きがあったか。
【回答内容と評価】
投票率が伸びたことに相手陣営の作戦が感じられたかどうかについては、地協の9割は「感じられなかった」と答え、産別では3割が「具体的にあった」と答えています。
■今後の課題について
選挙戦の全般を通しての課題については、次のとおり提起されており、その中には、かってなく展開された官公労働組合攻撃や今年4月から施行された個人情報保護法などの影響が反映されているものもあり、今後の活動に生かしていかなければなりません。
○ 意見として−
「組織労働者の姿が演説会等で少ない」「短期選挙は戦略を明確にすべきだ」「前回選挙で単独比例を認めず今回認めたのは一貫性がない」「対立政策軸の提起が課題ではないか」「総括は各選挙区の責任者により本音ですべきだ」「企業を通じた関連・非組合員の情報収集は限界でないか」「民主党のマスコミ対策が遅れていないか」「メーカーから販売会社に今まで以上にプッシュがあった」「市民団体などを入れた軸体制をつくるべき」「官公労の政治活動のあり方を整理すべき」「退職者会の強化必要」「電話をかけたら、どこから知ったと問われて大きな問題になった」などが寄せられました。
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W.まとめ(今後、教訓化していく課題)
1.「郵政民営化」の今後について
(1)小泉内閣は、昨年9月に「郵政民営化の基本方針」を閣議決定し、以降において「民営化ありき」の政治姿勢を最後まで貫徹しました。当該労組であるJPU・全郵政は、「郵政事業に関する労組政策協議会」を立ち上げ、@郵政公社における4年間の経営改革(業績結果)を検証して今後のあり方を検討すべきであること、A基礎的金融サ−ビスを含むユニバ−サルサ−ビスの提供は国の責務であること、B4分社化による民営化は、3事業一体の郵便局ネットワ−クを崩壊させる、ことなど、郵政民営化の問題点を広く国民に訴えてきました。政府が法案提出以降、連合北海道は民主党北海道、JPU道地本・全郵政道地本とともに「郵政民営化法案の廃案を求める共闘会議」を結成し、地協・地区連合の協力を得ながら全道的な取り組みを展開しました。そして、前述したように、7月31日の「守ろうみんなの郵便局7.31道民集会」(主催:郵便局ファンの会)では、4千人を超える参加者が札幌大通公園を埋め尽くし、8月8日の参議院本会議における法案否決や北海道の選挙結果にも少なからず反映されたものととらえています。
(2)しかし、郵政民営化関連法案は、8月8日での参議院本会議での法案否決(17票差)からわずか2ヶ月後の10月14日、総選挙で圧勝した小泉・自民党と衆議院全議席の3分の2を占める巨大与党のもと、参議院本会議(衆議院は10月11日)において、今度は34票差で可決・成立しました。このことによって、郵政事業は、持株会社である「日本郵政株式会社」の下、4分社化(「郵便局株式会社」「郵便事業株式会社」「郵便貯金銀行」「郵便保険会社」)されて2007年10月からスタ−トします。しかし、法案審議で争点となった「経営の採算性」「生活インフラ機能」「郵便局ネットワ−ク」「経営の自由度」などについては、引き続く重要な課題となっており、積極的な意見・提言が重要となっています。また、郵便局ファンの会(会長=岡野元明大学長)は、「小泉首相の退陣時期に合わせ、この会を『郵政オンブズマンの会』に衣替えし、引き続き論陣を張り、利用者の目から民営化プロセスを監視していく」(10月15日、「私の視点」朝日新聞)としています。連合北海道は、こうした取り組みを積極的に支援していきたいと思います。
なお、小泉・自民党の選挙戦略によってつくられたものであるとはいえ、現実として最大争点化された「郵政民営化」に対し、民主党の対応が「一貫性を欠き、選挙戦に影響した」との指摘が出されています。連合北海道は、こうした指摘に同様の認識を持ちますが、小泉構造改革路線が押し進める「小さな政府」に対峙し、民主党がめざす“国のかたち”を提示することがもっとも本質的課題であり、郵政事業の将来のあり方もその一環として位置づけられるべきと考えています。さらに、民主党に対して、選挙戦略と戦術はもとより、政策、組織と活動の全般にわたって検証し、次期政権交代めざして再起動することを期待してやみません。
2.小泉・巨大与党政権に真正面から
(1)小泉政権の4年半は、国民生活を破壊し、地方を切り捨て、二極化と格差拡大の社会をもたらしました。総選挙では、小泉「改革」なるものが争点として国民の評価を受けるまでに至らず、何でもできる巨大化した小泉自公政権が誕生しましたが、その本質に何ら変わりがなく、むしろ、国民により犠牲を強制して格差社会を促進することは明白であるといえます。だからこそ、連合全体として真正面から立ち向かい、具体的課題を社会的に高め、国民・道民運動の展開を通して「小泉改革」の実態を暴露していく以外にありません。年金をはじめとする社会保障制度の抜本改革、サラリ−マンに対する大増税を阻止し不公平税制の是正を柱とした税制改革、徹底した歳出見直しと地方分権の積極的推進を伴った国・地方の財政再建などが喫緊の課題の柱となっています。これまでの取り組みを検証し、@民主党を中心とする目に見える国会共闘、A中央・地方が一体化した院外活動、B世論形成のためのメディア対策、C各自治体議会と国会との連動が絶対的4条件といえます。
3.労働組合攻撃と分断攻撃に抗して
(1)小泉首相と自民・公明両党は、総選挙において、改革の本丸として「郵政民営化」を最大・唯一の争点に仕立て上げる一方、「改革に抵抗する官公労」「既得権擁護の労働組合・連合」「労働組合の支援を受けている民主党は改革に反対している」と、選挙戦のなかで一貫して卑劣な労働組合攻撃を展開しました。終盤においては、「労働組合でも民間と官公労は違う」「一部民間労組が自民党支持を決めた」と、根拠のない発言で挑発すら行いました。この狙いは、@小泉改革に対する「抵抗勢力」と規定づけることによって選挙戦を有利に展開しようとする戦略であり、A民主党と連合の分断、さらには連合内の官民分断をねらったものであり、B官公労を焦点に攻撃することによって郵政民営化を強行し、「郵政民営化」の次は公務員課題である、という宣戦布告にあったととらえる必要があります。
(2)残念ながら、この攻撃は、功を奏したといわざるを得ません。なぜでしょうか。それは、二極化・格差社会の加速によって国民の間につくられている亀裂を巧妙に突いていたからといえます。その亀裂とは、@大都市と地方都市、又は都市部と非都市部の生活者の感覚のズレ、A正規(組織労働者)と非正規労働者(未組織労働者)の意識のズレ、B官(官公労働者)と民(民間労働者)の意識のズレのことです。そして、こうしたズレが、本質を見極めることなく、「わかりやすい」「何となく」「みんながそうだから」という物差しで投票行動につながっていった背景にあったことを認識しなければなりません。このことから、どの層に依って立つ政党なのか、民主党は解党的出直しが求められ、同時にすべての働くものの結集軸としての連合運動への早期改革が問われていることを確認し合わなければなりません。
4.民主党と労働組合・連合との関係とは
(1)選挙結果を受けて、民主党と連合の関係について、この間の総括論議のなかで様々に取り上げられました。連合北海道としては、全国的には、都道府県単位での差異や地域格差が存在している中、連合本部と民主党本部において公式・正式に協議し、その基本的あり方を明確にすべきだと考えています。民主党は、結党以来10年たちましたが、これまでの統一、拡大という生成過程を通じて、骨格となるべきものが希薄になっていることは否定できません。まずは、国家観、歴史観、社会観をどう持ち、自公とどう対峙するのかが明示されなければなりません。次に、依って立つ基盤はどこかということです。民主党の前原新代表は、連合本部大会(10月5日〜6日)のあいさつで、「われわれ民主党は、どこに視点を当てて政治を行っていくか、それはまさに、働く皆さん方の目線に立つ、国民の多くの皆さん方の目線に立ち、その政治姿勢だけは微動だにしてはいけないと思っております。」と述べていますので、その実体化が課題です。
(2)さらに、「脱労組」という言葉も数多く投げかけられました。それぞれの地域で検証が必要ですが、いずれからの「一方的な依存」も「もたれ合い」も正常な関係ではありません。政党と労働組合は、「自立と協働」の関係が基調でなければなりません。民主党を基軸とした政権交代への期待と連携・協力の立場は変わりませんが、大切なのは、@将来の社会ビジョン(民主党が指向しようとする「国のかたち」「自治のすがた」と連合がめざす「労働を中心とした福祉型社会」との整合性)や国家観、歴史観などの基本理念、さらに、社会保障、外交・安全保障などの基本政策の基調についてどれだけ共有できるか、A働くものの立場にどれだけ立っているか、ということです。その上で、連合は最大の応援団であり理解者であるという実感を持っていますが、民主党は、さらにより幅広い支持を得る主体的な努力を行う必要があります。連合もまた、積極的な社会運動を通じてすべての働くものを構造的に代表する存在感を高めていかなければなりません。こうした役割を相互に確認しながら自己責任をもち、十分な政策協議、院内外での共同行動を追求することが正常な関係であると認識します。連合北海道は、こうした前提に立ち、民主党が主体的改革を行うという意味で「脱労組」というのであれば、積極的に評価を与え、歓迎したいと思います。
(3)なお、民主党本部は11月8日の第351回常任幹事会において、選挙総括を行い、今後の課題について、【別記】のとおり確認しています。
【別記】
第44回衆議院総選挙総括
「深い反省と再生への決意」
−真の改革の旗を掲げる−
<関係分抜粋>
5 今後の課題について
(1) 決定したことには一致して責任を持つ党風の確立
民主党が、政権担当能力を持った政党として国民に信頼されるためには、政権 交代の実現に向けて一致結束した党の姿を明確にしていくことが不可欠である。 そのためにはタブーを恐れず、仮に党内意見に違いがあっても、それを活発な 議論の中から克服するとともに、一度決定したことには全ての構成員が責任を持 って対処するという民主党の党風を確立しなければならない。
(2) 「国民の視点」からの骨太の対案・提案で、真の改革の旗を掲げる国会・政 策対応
有権者の改革への期待は、全ての改革課題を白紙委任したものではなく、民主 党は、国民の立場を代弁して巨大与党政権を厳しくチェックし続けると同時に、 重要課題について「国民の視点」から骨太の対案・提案を明確に提示して改革を 競い、真の改革の旗を掲げていかねばならない。
(3) めざすべき社会像の明確化
個々の政策やマニフェストの前提となる「めざすべき社会像」を明確にし、二 大政党制の一翼を担う民主党の基本ビジョンを確立し、かつ、民主党にしか成し 得ない改革テーマを提示していくことが必要である。
(4) 攻める選挙対策と負けない選挙対策
解散総選挙を想定した日常的な準備を前提に、攻め続けて議席を拡大する選挙 対策と、攻められても負けない選挙対策を必要としている。より融合した自公に 対抗するためには、日常活動の徹底と足腰の強化により、候補者自前のしっかり とした後援会組織の整備と、地域における党組織の強化が絶対条件である。
(5) 「最強の候補者軍団」づくりと地方組織の強化
何よりも次期衆議院選挙で勝ち抜ける、「小選挙区で勝てる」候補者、「最強の候 補者軍団」づくりが至上命題である。また、これらの候補者集団を支える都道府 県連・総支部組織についても、次期統一地方自治体選挙を見据えた地方議員の拡 大など、より一層強化していかなければならない。
(6) 政権交代のためのリソースを集中投下する党改革
戦略的な政治判断に基づいて実行される、一元的な広報メディア戦略体制や、 政策立案についても、シンクタンク等を活用しつつ、魅力的な政策がよりスピー ディーに打ち出される必要がある。財政基盤を確立しつつ、あらゆるリソースを 政権交代のために集中投下する党改革が求められている。
|
5.2007年政治決戦への決意
(1)連合北海道は今回の総選挙における民主党の全国的な敗北は、次の政権交代のステップとして、これまでのいずれの総選挙よりも貴重な経験であったと認識したいと思います。民主党は、結党以降10年間の国政選挙で一度も前回より議席を減らしたことがありませんでした。今回の選挙結果は、いわば、風頼みでもない等身大の実力なのであり、一時遠のいた政権交代への課題と展望を示すものとして総括し、今後につなげていきたいと思います。当面は、小泉・巨大与党政権と真っ向から対決するとともに、総選挙については、常在戦場の姿勢を堅持します。そして、2007年政治決戦はもうすぐです。連合北海道は、北海道政治戦略会議への働きかけを強め、知事奪還、道議会での過半数議席獲得を焦点とする統一自治体選挙勝利、政権交代への重要な試金石となる参議院選挙では、道内における最低複数議席の獲得と連合推薦候補の完勝をめざしていきたいと思います。
以 上