第18回定期大会  会長挨拶
 
全道各地からご参集いただいた大会構成員の皆様、大変ご苦労様でございます。
この一年間、連合北海道の諸課題に対しまして、構成組織、地協・地区段階で主体的かつ創造的な立場からご支援、ご協力を賜りましたことに心から感謝を申し上げます。
 また、本日はご多忙な中をご来賓各位にかけつけていただきました。用務の都合で明日おいでいただく方々もいらっしゃいますが、大会構成員全体の拍手で歓迎の意を表したいと存じます。
 
さて、先ほどは本年3月16日にご逝去された、私の前任の会長であり北海道労働者福祉協議会々長を務めていただいておりました故・笠井正行さんを偲び黙祷を捧げていただきました。
全道庁労働運動に始まり、自治労、連合北海道そして道労働者福祉協議会と活躍の場を広げながら、それぞれの場でしっかりとした足跡を残すとともに、労働運動の継承と発展に並々ならぬ意欲を持ち続けた方でありました。2003年大会で連合北海道運動のバトンを私に渡していただき、これからはさらに労働者福祉の充実のために頑張るという意欲を示していた矢先の病の宣告でありました。
「簡単な病気ではない。迷惑をかけられないので全ての役職を整理して欲しい」と私に告げるなど、自らの病気を厳しく、冷静に見つめていらっしゃったことを思い出します。
容態が悪化した苦しい息の下にあっても、ご家族はもとより看護についておられたご兄弟に感謝の言葉を絶やすことは無かったとお聞きしています。
社会人としての大半の日々を労働運動の渦中におき、疾風のごとく、そして爽やかに駆け抜けた人生であったと私の記憶の中に留めています。あらためて笠井前会長のご冥福をお祈り申し上げたいと存じます。
 
さて、この1年の経過を振り返りながら、幾つかの課題について所感を申し述べてさせていただきます。
昨年大会終了後は、中越地震災害ボランティア派遣、第6次答申に向けた組織財政特別委員会の論議、組織拡大センターによる新たな運動、国の基本政策、すなわちこの国の姿に関する価値基準収斂にむけた取り組み、道警不正経理問題の追求、サラリーマン大増税阻止運動、郵政民営化反対闘争、第44回衆議院議員選挙闘争、冬期雇用援護制度存続・延長に関わる取り組みなど、多くの団体のご協力をいただきながら、構成組織、地協、地区連合が力をあわせて取り組んでまいりました。
 詳しくは後ほどの経過と方針で触れられますので、私からは5つ程の課題について所感を申し上げます。
 
§1.組織拡大について
先ず、組織拡大についてであります。
申し上げましたとおり、昨年の大会終了後に設置した「組織拡大センター」による新たな取り組みについて構成組織、地協・地区連合のご支援をいただいて進めてまいりました。
新たな統計数値は出ておりませんが、道内の組織率に歯止めがかかるという感触を得る状況にはありません。
とどめのない組織率低下は、連合運動トータルの力量低下に直結することは申し上げるまでもありません。
戦後の組織率の推移を振り返ってみますと…
組織率の最大を記録したのは戦後まもない昭和24年(1949)です。その時の組織率は55.8lでしたが、雇用労働者の数は1193万人と現在の22l程度でありまして組合員は665万人とそう多くはありません。
前後した話になりますが、組合員数の最大を記録したのは平成6年(1994)の1270万人です。ただし、組織率は24.1lまで下がっています。
組織率が明らかな低下傾向に入るのは昭和51年(1976)からです。
これは第一次オイルショック以後の企業行動の変化、つまり正規社員の抑制と非正規社員へのシフトが要因として考えられます。いわゆる本工主義というのでしょうか、企業別組合の大半が非正規社員を組合員に加えなかったことが組織率低下を誘引し、それが今日の組織率5分の1以下というところにつながっていると思われます。
連合本部の高木会長は就任時の抱負として組織率を2年間で20lに回復させようと訴えています。
下げ止まらない中での回復目標であり、2年後に減少分をカバーして20lに回復させるには2年間で100万人近い組織拡大が必要になると思われます。
誤解がないように申し上げますが、本部におけるチャレンジ目標について批判をしているのではありません。
本部の目標を視野にいれつつも、北海道として実現可能、あるいは実現しなければならない最初の目標は、組織率低下に歯止めをかけること、すなわち2004年の18lを組織率の静止点にする取り組みであります。
道内の最近の雇用労働者数は約220万人、組織減少率は概ね年率0.5l程度と思われますので静止点実現のための組織拡大目標としては2年間で2万人を越える組合員獲得が必要になります。
先ほど、実現可能と申しましたがこの目標とても、今までにない活動・行動がなければ実現は困難でしょう。
申し上げたいのは目標値設定ではありません。そのような目標を掲げることが可能な対策体制を本当に創り出すことができるのか、本当にやろうとしているのかを関係者が真剣に自問自答することがなければ目標値は意味をなさないということです。
皆さんにご要請することは、昨年来、組織拡大に向けたルールとシステムの構築さらには人材育成の充実を訴えているところですが、運動資源集中分野の一つとして活動体制強化を図ることと、連合北海道と構成組織ならびに地協・地区連合組織の有機的な連携について特段のご理解をいただきたいということです。
どうかよろしくお願いいたします。
 
§2. 季節労働者課題について
次に季節労働に関わる課題について申し上げます。
本来、雇用全般について触れなければなりませんが、多岐にわたる課題に及ぶものでありますので、後ほどの経過報告ならびに議案審議の中で詳細の提起をさせていだきたいと存じます。
ご承知のとおり冬期雇用援護制度は2004年をもって制度の一部変更、3年間に限っての措置となりました。
1977年創設の“積寒制度”に端を発するこの制度は2006年度末をもって29年間にわたる延長の歴史に終止符を打たなければならない局面を迎えています。
道内の季節労働者は最盛期で30万人を数えましたが、この制度を含め行政、事業団体、季節労の皆さんによる通年雇用への努力の結果、今日的には14万3千人にまで減少しました。
しかし、道内の公共工事依存型の産業構造と通年施工を阻害する積雪寒冷という気象条件は、完全な通年雇用を実現するにはあまりにも大きなハンディとなっています。
この制度がなくなれば、冬期の生活に困窮し、結果として労働の場から退出して生活保護を受けなければならないところに追い込まれる方々も少なくないと思われます。
幸い、先の制度変更の折に何とか制度存続、あるいは新たな制度創設を視野に、国の機関も参加する形での協議会設置を求め実現したところであります。
閣議決定を経ての制度変更と廃止であり、制度存続の闘いは極めて厳しいと認識せざるを得ませんが、積雪寒冷地における季節労働者の通年雇用促進はいまだ国の責任の範疇にあると考えます。
従いまして、現制度の延長存続あるいは現制度の根幹を残した新たな制度創設について、道内の政治、行政、経営、労働の各分野がオール北海道の立場から実現を求めいかなければなりません。
この問題はこれまでも構成組織、地協・地区を挙げて要請行動を展開していただいたものです。
いよいよ最後のところまで来てしまいました。制度存続に向けて最後のご支援を切に要請いたします。
§3.地方財政と地方公務員人件費削減課題について
次に地方財政ならびに地方公務員人件費削減に関わる課題について申し上げます。
国の財政再建問題が様々に論議され、政府筋での2010年断面におけるプライマリーバランス均衡に向けた歳出削減と国債発行の抑制、さらには三位一体改革の名による地方への税源委譲にあわせた国庫補助負担金改革に関わる国と地方のせめぎ合いが続く最中、北海道は赤字再建団体転落回避に向けた厳しい財政再建を迫られる事態に陥ることが明らかになりました。
 それにしても変化の予測が一定程度可能な行政組織において、財政立て直しプラン策定からいくらも経たずにそのプランが破綻するという事態には、国の交付金削減などの問題があったとしても釈然としないというのが本当のところではないでしょうか。
しかし、そのことは兎も角として、赤字再建団体転落は何としても回避しなければなりませんし、この問題の経過から言えば道民が理解納得できる形をつくりながら再建策を構築するとともに、再建策実行過程においても道民への透明性を確保してとり進めることが求められと考えます。
しかし、道庁と道議会はこれまでの経過、つまり財政立て直し計画の相次ぐ破綻の責任を負う立場にあり、新たな再建策の策定、推進をこの二者の関係だけで対応していくことは道民感情に沿うことにはならないでしょう。
 その意味では道内各界から選出するメンバーで例えば、「財政再建推進懇談会」などを設置して、道民の立場からの意見を反映するシステムをつくるべきではないでしょうか。また、その懇談会には当事者の労働組合代表も参画させるなど、道庁組織の隅々からの意見を把握するなどの措置が不可欠ではないかということを強く指摘しておきたいと考えます。
次に、この財政再建に関連する道職員等の人件費削減についてであります。
基本的には当該組織の労使関係において、互いの誠意ある協議のもとに決定されるべきものと考えます。
しかし、道民世論はより厳しく給与水準の引き下げや人員削減を求める方向に流れるのではないかと考えます。したがって、雇用労働者としての私の個人的経験を踏まえてあえて発言をしておきたいと思います。
サラリーマンはつつましやかな計画経済で生活するのが常です。勤め先によって所得の水準は異なりますが、それぞれの水準の中で予見可能な所得水準を求め、時々の教育、マイホーム、病気あるいは老後問題に対処していきます。しかし、教育やマイホーム購入はその時だけの収入で賄うことができないことが大半であり、借り入れなどにより対処し後の収入で返済をするというのが大半ではないでしょうか。
このような計画経済のもとで、月例給与10パーセント、期末手当15パーセント削減、年収で80万円あるいは100万円を超える削減は、子どもの教育や生活を破壊するとともに、地域経済にも深刻な影響を与えることは容易に予測できます。もちろん、道庁職員等の立場から財政再建に協力することは、これまでも財政再建のために何年にもわたり給与自主削減に応じてきたことで理解をいただけるものと思います。
生活破壊に陥らないための措置としては、削減年数の延伸による削減率の緩和などの措置が十分に可能であると思われます。また、時限的措置期間後の回復の可能性は、これまでの自主削減も結局のところ反故になっているのではないでしょうか。このことも現実的に不誠実とならない当局側の決断が必要と思われます。
大変に難しい課題であります。また、再建は成し遂げなければならないものでもあります。直接の関係者のみならず道内各界・各層が一致して対処していくという視点を大切にし、その範疇において連合北海道と地公三者共闘が密接に連携して対処しなければならないと考えています。
 
§4.政治活動について
    @第44回衆議院議員選挙について
次に政治活動についてでありますが、先ず第44回衆議院議員選挙について触れます。
道内12選挙区そして比例代表選挙における戦い、大変にご苦労様でした。
結果として小選挙区は8選挙区を制し、4選挙区で敗北、荒井さんと松木さんが比例復活当選し、比例単独1位の逢坂さんが当選することによって前回同数の11議席を獲得することができました。
5区の小林千代美さんと11区の石川知裕さんの当選がならなかったことは極めて残念でありますが、全体としては勝利したと言えるのではないでしょうか。この厳しい戦いに競り勝てたのは、各選挙区に結集した党、そして連合は現職と退職者組織さらには農連の総結集のなせる業であり心から敬意を表したいと存じます。
しかし、民主党政権の実現は夢のまた夢、小泉自公政権に3分の2以上の議席を許し、結局のところ参議院の存在が実質の意味を持たない事態にまで追い込まれてしまいました。
おそらくは勝利した小泉さん自身もビックリする結果であった思います。また、その後の世論調査では自民党を選んだ側においてもここまで勝利させてしまったことへの戸惑いもあるようです。
そして私自身は格差拡大し二極化する中で生じる閉塞感の中で、フィクションとしか言いようのない「改革勢力と抵抗勢力という二元論」に惑わされた国民意識の若干の揺らぎを現在の選挙制度が増幅したものと受け止めています。しかし、いまだに高い支持率を維持する小泉政権と、現状において国民の信頼感や安心感からはほど遠く映る民主党を見比べる時、本当にフィクションの構図や小泉流パフォーマンスに惑わされただけだと言う確信を持てるだろうかと問い直す心境にあります。
負けるべくして負けた選挙でなかったのか、それはある意味では天の配剤であり、今は民主党の時ではなく、解党的出直しを経た後にこそ新しい時が訪れるのではないかと…
 そして解党的出直しは政権政党に相応しくこの国の姿、骨格を明確に描ききることから始まり、同時に国民のどの層に依拠する政党であるのかという選択も迫られると思います。
組織内の一部にせよ、先ずは脱労組という考え方が本当にあるとすれば、余りにも安直かつ無邪気な政治家であると言わざるを得ません。
解党的出直しに相応しい、地に足がついたしっかりとした、かつ激烈な内部論議の上に、強固な意志と闘争力さらには国民に対するミッションが確立されることを心から期待したいと思います。
北海道においてはこれまで同様に、互いにデリカシーと優しさを保ちつつ、緊張感あるパートナーとして共闘関係を強化していくことに何の迷いもありません。
 政治関係ではこの他に07年政治決戦に向けての課題もありますが、これは方針の中で詳しく提起させていただいておりますので後ほど十分にご論議を賜りたいと考えます。
 
§5.結びにあたって
「組合が変わる、社会を変える」…これは連合本部が数年来にわたり活動方針の冒頭に掲げるスローガンです。
勤労者階層がこのままサイレント・マジョリティー(声なき多数者)の誹(そし)りを受け続ける限り明日は明るくならないだろうと思いつつ「勤労者の中のマイノリティー(少数派)たる連合がマジョリティー(多数者)の代弁者になり得るのだろうか?」…これは、私自身が連合北海道の会長に就任して以来、いつも耳の奥から聞こえてくる私自身への問いかけの言葉であります。
幸いにして、私が会長に就任する以前の7期、足かけ14年間の運動は、連合以前の道内労働運動の良き伝統を継承しつつ、さらに幅広い勤労道民との連帯を求める運動に努めてきたものと思います。
私自身も運動の社会化、道民との共闘の場をいかに拡大するかという点を重視してきたつもりです。
しかし、絶対値として道内勤労者のマジョリティーを代弁できる存在になっているかと問われれば、いまだ不十分と答えざるを得ません。
1990年2月発足の連合北海道はこの18回大会で9期18年に向けて再スタートします。
私たちが懸命な努力を続けても、戦後初期のように労働組合組織率が50lを越えるような時代が来るとは思えません。しかし、「いつの日か連合北海道の運動に共鳴、共感し様々な形で共闘してくれる勤労者が過半数を超える時代は来る」そのような夢と確信を胸に運動を継続しようではありませんか。
以上、大会冒頭にあたってのご挨拶に代えさせていただきます。ご清聴ありがとうございました。
以上