連合北海道第18回定期大会(2005.12.1〜2)
 第4号議案 
 
 
 
 
    新たな開拓者精神と独立心を呼び起こそう!
真・開拓時代/北海道の創造と展望(案)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
連合北海道
一.はじめに(この方針の取扱い)
 
 連合北海道は、昨年10月の第17回年次大会において、「2007年に向けて体制の構築を進める」との方針を確認するとともに、さらに、2005年1月27日の政治センタ−拡大幹事会では、「2007年は、第16回統一自治体選挙および第21回参議院議員選挙が施行され、そして、それまでには必ず、解散総選挙(第44回)が行われる。『労働を中心とした福祉型社会』をめざす連合北海道にとって、政権交代が前夜から希望の夜明けとなり、同時に北海道においても新しい道政の日の出となることが不可欠となっている」として、当面する課題への諸準備と対応を行ってきた。
 3月26日、国政における政権交代と道政の奪還を主要な戦略目標とする「北海道政権戦略会議」が設立され、連合北海道は、民主党北海道・北海道農民政治力会議とともに参加し、これまで、マニフェスト策定委員会や候補擁立委員会、選挙シミュレ−ション委員会の作業にかかわってきた。
 この方針は、7月1日の連合北海道第31回地方委員会において、特に、知事選挙を焦点とした2007年政治決戦に対する闘争基本方針(第1次案)として提起したものであり、以降、各構成産別、地協、地区連合での組織討議に付し、9月の衆議院総選挙などその後における情勢、課題を加筆し、今定期大会に正式提案して決定するものである。
      
 
二.前回(第15回)の統一自治体選挙を振り返る
 
−前代未聞となった北海道知事・札幌市長選−
 
1.2003年4月に実施された第15回統一自治体選挙に向けて、連合北海道は、@分権時代にふさわしい地方政府としての自治体サ−ビスを高めること、A地域の自治体を中心にした活発な民主主義のシステムを再構築することを目標に据えるとともに、この目標実現のためには、@旧弊を廃する政治理念と強いリ−ダ−シップを持った政治指導者、A立法と調査機能を十分備えた地方議会を創ること、B地方からの構造改革を進め、行政・議会・住民の意識改革と自立した自治体活動を支える行政システムの確立と財政の再生を果たすこと、を課題に掲げ選挙戦を戦った。
 
2.特に、北海道知事選挙と札幌市長選挙が最大の焦点となった。北海道知事選挙は9名の候補が乱立するなか、民主党北海道および北海道農民連盟とともに推薦した「はちろ吉雄」候補は6万票余りの差で惜敗となり、20年ぶりに「再び道政を『中央依存・直結』『利権優先』の保守道政に回帰させてしまい、道政奪還に向けて運動の再構築をめざす」(選挙闘争総括より抜粋)こととなった。
一方、同時に戦われた道都・札幌市長選挙においては、7名が立候補、いずれの候補者も当選基準(法定得票数が有効投票数の4分の1以上)に到達せず、6月に再選挙の結果、44年ぶりに上田文雄・民間市長の誕生となった。いずれも前代未聞の選挙戦となった。
−選挙の質的転換を促した、マニフェスト−
 
3.以上のように、北海道知事選挙や札幌市長選挙においては、候補者が乱立したが全国的にも「無党派」を名乗る候補が乱立し、政党隠しも横行していた。結果として、有権者には多くの選択肢が与えられたが、その数だけ選択が分散して低投票率や政治不信の解消にはつながらなかったといえる。
このことは、無党派層の増大が既成政党や既存組織に対する不信や不満から生まれているのにもかかわらず、既成政党や既存組織がその改革ビジョンを十分に示して役割を果たせず、選ばれる側に立つ候補者は党派色を薄めることに腐心し、そして、選ぶ有権者の側にも、「政治や行政に対し不満を口にするが自らどうするということが希薄」といわれる観客民主主義の現状が起因している。
 
4.だが、統一自治体選挙後に行われた衆議院議員選挙(2003年11月)や参議院議員選挙(2004年7月)では、政権交代への確かなステップが築かれ、その中心的役割を果たしたマニフェスト(政権公約)は、選挙そのものを「お願い」から「約束」へ、政策選択は主権者の責任へ、そして、選挙は政権を選択するものへと質的転換を促したといえる。
今年9月の衆議院総選挙では、「郵政民営化」一本槍の小泉選挙戦略によって、マニフェストに示された内容が争点化され、有権者に選択をせまるまでには至らなかったが、マニフェストの意義と政権交代への流れは何ら変わるものではない。
全ての政党と候補者は、これからの国や自治のかたちを明確に描き、そこに至るプロセスを政策化(この基本条件は、期限・行程・財源の明示とされるが)して他の政党や候補者との違いの部分を明確にする責務がある。
 
−自立した候補者と協働型支援システムを!−
 
5.日本における政治と民主主義は、政党政治を基盤として国民との信頼のうえに成り立ち、さらに、有権者の政策選択によっていつでも政権交代が可能とされることが、成熟した日本民主主義のこれからの姿である。このことは、地方政治や行政についても同様のことである。政党隠しや観客民主主義の増長とならないためにも、既成政党や既存組織が新しく生まれ変わるとともに、いわゆる無党派型選挙と決別し、全てにおいて自立した候補者と、掲げるマニフェストに賛同する政党・団体や市民との協働型支援システムこそが、特に、次回の北海道知事選挙態勢の最大キ−ワ−ドとなる。
加えて、連合北海道は、何よりもマニフェストを重視し、知事候補については、発掘と擁立過程からの「公開」と「参加」が重要と考えている。「北海道政権戦略会議」に対してはこのような基本姿勢で対応し続けていくものである。
 
三.これまでの道政からの教訓
 
−北海道が抱える、中央依存・公共事業依存体質−
 
1.北海道は、開拓に着手以来、特に戦後日本60年の歴史にあっては冷戦時代が終焉するまでの間、一方で仮想敵国とする「ソ連」の侵略を防ぐための「北の防波堤」であり、他方では「日本の食糧・資源・観光基地」という国策上の位置付けが政府によってもたらされてきた。この二つの位置付けによって、戦後の北海道における政治的、経済的な争点が形成されてきたといえるのではないか。
政治的には、北海道が他都府県と比較していまなお二大政党が厳しく競い合い、かっては「革新王国」と称された。1955年、保守合同にはじまる自民党と社会党という保革対決の政治構造は、戦後初の民選知事となった田中敏文、保守道政に転換した町村金五とそれを継続した堂垣内尚弘、24年ぶりに革新道政となった横路孝弘というように、それぞれが三期十二年ずつ政権が交代した歴史に証明されている。その後においても、2期8年の堀道政、そして20年ぶりの保守道政回帰となった現在の高橋道政がある。
 
2.こうした道政における政権交代の歴史は、行政システムや経済構造における中央依存体質を深めた歴史でもあったといえる。1950年に「北海道開発法」が制定され、1951年には、田中知事などの反対を押し切って北海道開発局が設置された。このことによって国の意向を直接的に反映する北海道開発の推進体制が確立され、北海道開発における二重行政がスタ−トした。そして、北海道行政と北海道開発のあり方を長きにわたって規定してきたのである。
振り返って、自民党政府の国策をそのまま実行することを基本姿勢とした24年間にわたる「中央直結」の町村・堂垣内道政、「中央直結」から北海道経済と道民の自立をめざした新・開拓持代の横路道政、自主・自律の北海道のための構造改革を進めようとした堀道政、「北海道新生」を掲げて誕生した高橋道政というように知事と道政の歴史は刻まれたが、同時に、高度経済成長から低成長へ、産業構造の転換、戦後冷戦体制の終焉、バブル崩壊、「都市銀行はつぶれない」という神話が崩れた北海道拓殖銀行の破綻、そして地方財政の危機と景気の低迷や雇用不安、さらに地方分権・市町村合併など、それぞれの時代背景のもとにおいても、北海道庁の対中央政府に対するポジションは、北海道開発予算の獲得(いわゆる北海道特例や公共事業の展開)が軸とされ、結果として容認されてきたものであるといえる。
 
−構造的な依存体質からの脱却を!−
 
3.こうした、中央依存・公共事業依存型の行政と政治体質は、北海道が抱える構造的体質である。いま、国や自治体財政の肥大化と危機が限界に達し、公共事業が縮減され続けているときだからこそ、こうした構造的な依存体質から脱却して、新しい北海道の自立への道に踏み出さざるを得ない。
これからの地方自治は、これまでの政治や行政のあり方の「あたりまえ」を「あたりまえ」とせず、「未来の官の役割とは何か」を問い、既得権益・既成概念・既存体制をこえ、企業やNPO、市民との協働システムの構築とこれからの新しいフィ−ルド「公共の場」(個人でも出来ず、国にも頼り切れない分野)を準備しなければならない。そして、自立への道のりは、同時に地方分権推進の過程でもある。
地方分権の推進は、現高橋道政下での市町村合併推進や事務権限移譲にみられるような、上から分け与えられるものではなく、基礎的自治体と地域を起点として積み上げられるべきものである。新しい道政には、新しい道庁の改革が必要である。しかも大きな改革は、人と組織を変えることをもって推進しなければならない。
 
 
四.高橋道政の現状と課題
 
 高橋道政は、今年4月に折り返し点をむかえ、現在、1年4ヶ月後の知事選を視野に入れた動向が具体化されつつある。高橋知事は、選挙公約で「新生北海道」を掲げ、「新しい発想で、北海道を根底から変え、盛り返す」としていたが、果たしてこの2年半はどうであったのか。連合北海道は、連合がめざす「安心・安定・公正」を基本とした、「労働を中心とした福祉型社会」「男女平等参画社会」「持続可能な循環型社会」の実現に相応しい知事誕生に向けて努力していくことを不動の姿勢としつつ、以下のとおり、いくつかのテ−マを設定して検証を行いながら今後の課題を探っていくこととする。
  「労働を中心とした福祉型社会」とは
   ○あらゆる人に暮らしの安心を保障する社会
   ○働くこと(仕事)の意義と価値を尊重し合う社会
   ○子どもを安心して産み育てられ、子どもが健やかにのびやかに育つ社会
   ○完全雇用と社会保障の完全適用を保障する社会
 
1.雇用労働政策
 
 @:北海道雇用創出基本計画の策定
 
(1)北海道における雇用情勢が厳しさを増す中で、道は、2003年9月に「北海道雇用創出プラン」を改訂し、2003年度および2004年度の2ヶ年を緊急雇用対策実施期間と位置づけし、5万人の雇用創出を目標に一定の成果を上げたとしている。
しかし2005年9月現在、北海道の完全失業率は5.2%と全国最悪水準にあり、有効求人倍率においては僅かに改善されつつあるとはいえ、0.57%となっており、全国(0.95%)と比較しても依然大きな格差となっている。
道は、14万人の失業者の存在という厳しい情勢を打開するため、北海道雇用創出推進会議のメンバ−である北海道労働局・経済産業局との連携を強化し、各行政機関の予算や諸制度の効果的活用をはじめ、2004年7月には若年雇用対策として「北海道若年者就職支援センタ−」(ジョブカフェ北海道)を開設するなどの諸施策を進めているが、予算の確保が裏打ちされた、国から市町村に及ぶより実効のあがる推進計画が求められているといえる。
−自民党会派から異例の条例提案、修正要求を一切拒否−
 
(2)こうしたなか、2005年3月の第1回定例道議会に自民党・道民会議議員会から「北海道雇用創出条例案」が提出された。自民党・道民会議議員会の条例提案は、1955年以降では7度しかなく、異例ともいえる。連合北海道は、条例案に対する意見書を自民党・道民会議に提出するとともに、条例案がより充実し、全会派の理解を得て制定されるように各会派に対しても要請を行った。
道議会では、経済委員会において質疑が行われた。民主党・道民連合からは「完全雇用の達成に資する」などを明記する条例案の修正要求が出されたが、自民党・道民会議議員会は条例の修正には応ぜず、民主党・道民連合が提案した「基本的な計画の策定に当たり、産業・労働関係団体、市町村などの意見を反映できるようにする」などの附帯意見を付して、可決・成立となった。自民党・道民会議が数の力を背景に、基本目標の明示などの修正には一切応じなかったことは遺憾であり、雇用問題に対する姿勢に疑念を抱かせるものである。
 
−完全雇用の達成、安心できる就業環境の整備を重点に−
 
(3)道は、この条例制定を受けて、(仮称)北海道雇用創出基本計画(素案)を4月に作成し、5月20日まで道民へのパブリックコメントにかけた。  
連合北海道は、素案に対する意見書を道に提出した。その内容は、完全雇用の達成や就業環境の整備など、実効性のある施策を求めるものであった。
具体的には、@この条例の基本目標は何かが不明確であり、完全雇用の達成(失業率3%以下に抑制)という中長期の基本目標を明示すべきであること。A計画の実施期間(3年間)について、2007年から団魂の世代の退職が始まるが、この3年間が中長期の視点からどのように位置付けられるか、さらに3年後の計画についても明示すべきであること。B計画の推進力としての道庁の役割として、雇用対策の財政と権限を一元化し、道政の緊急優先課題に相応した体制として、臨時的にも機構改正を講ずるべきであること、について基本的指摘を行った。素案に対する意見募集の結果は、12主体から40件の提出意見があり、道は、一部について修正・追加を行い、6月13日の道議会経済委員会に報告している。
 
(4)さらに、連合北海道は、「雇用創出に向けた課題」として、@若年者の深刻な雇用状況の解決のために、企業が若年求職者の意識改革や職業訓練など、時間と資金を投入として社会人として育てる姿勢と実践が不可欠であり、A安心して働ける就業環境の整備が重要と考えている。
各企業では多様な雇用形態と称して、正社員から非正社員(臨時・派遣等)への置き換えが進み、有期雇用労働者が急増して4割に達する勢いである。その結果、賃金・労働条件の切り下げが進み、企業の持続的発展や年金・医療等の社会保障制度の空洞化など社会の再生産に重大な影響を与えつつある。また、不払い残業問題や効率性のみが強調され安全衛生の違反職場も慢性化しており、早急な改善が不可欠である。さらに、多数を占めるパート労働等契約労働者の雇用安定と劣悪な労働条件の是正について、企業は社会的責任を自覚して対処すべきであり、行政も厳しく監督・指導を強めるべきである。
 
(5)そして、道と市町村などの各行政は、「公契約における公正労働条件の確立」のために自治体入札・契約における法令遵守(労働法、労働条件、雇用継続等)、社会的価値の実現に資する公契約条例(公正労働、均等待遇、男女平等参画等)の制定を急ぎ、環境を整備すべきである。
また、行政指標については、実施期間3年間で8万人の雇用創出をめざすとされているが、この指標は、現在高水準にある完全失業率を抑制し、雇用の増加分と減少の両面をふまえた目標とするとともに、量的のみならず、長期・安定的で、良質な雇用の創出をはかるべきであると考えている。
 
 A:季節労働者通年雇用対策
 
−冬期雇用援護制度の改悪は、季節労働者の切り捨て!−
 
(1)季節労働者の問題は、北海道にとって最重要課題の一つである。連合北海道は、道季労・全建総連とともに、厚生労働省の「冬期雇用援護制度廃止」提案に対して、「制度の存続・延長」を求めてたたかった。その結果、年齢制限や給付金減額などの制度改悪が強行されたが、3年間は存続となっている。
現在、厚生労働省は、依然として、2006年度で「制度の廃止」を行おうとしている。「制度の存続・改善」は、冬場の失業があるかぎり、道内勤労者の6.2%、14万3268名(2004年度)におよぶ季節労働者にとって必要不可欠なものであり、通年雇用が基本的解決課題なのである。制度の改悪を経験して、各地域での受講者の大幅減少、雇用保険期間の不足や就労の減少等、事実上季節労働者が冬期講習から切り捨てられた結果となっている。制度の存続はもちろんのこと、改善が急務であることが明確となった。
  
(2)連合北海道は、今年5月下旬の季節建設対策委員会において、「冬期雇用援護制度の存続・改善をかちとる基本方針」を決定している。その内容は、@知事にリーダーシップを求め、市長会、町村会、経済団体、業界団体、労働団体が一致してオール北海道の運動体制をつくり、A全政党に理解を求め、国会議員、道議、市町村議員との連携を強化する、ことを柱に制度存続をめざし、さらに、市町村から国への要請、道・市町村議会から「制度存続・改善」の意見書採択、100万人署名運動、キャラバン行動を展開することにしている。
したがって、知事は、「季節労働者への支援は一党派への運動だ」と放言した自民党議員の偏見を正し、オール北海道の運動態勢を築きあげ、その先頭に立つべきである。
−3年間で季節労働者1万4千人の通年雇用化の達成を−
 
(3)さらに、連合北海道や道季労、全建総連の強い要求によって、昨年9月、「北海道季節労働者雇用対策協議会」(構成は、道、国[労働局、開発局、経済産業局]、道内自治体、経済団体、業界団体、労働団体[連合北海道、道季労、全建総連]など18団体)が結成された。この協議会は、「平成16年度から3年間で、季節労働者1万4千人の通年雇用化を目標にする」新たな道の施策を支援することにある。
この施策をはじめ、冬期間に季節労働者を6割基準で雇用する、道の「通年雇用化特別対策事業」で基準どおりの雇用を守らせる規制改善など、知事の積極的な取り組みが求められているのである。
現在、北海道季節労働者雇用対策協議会は、総合対策方針を年内にも発表すべく協議を重ねている。その内容は、さらなる通年雇用化の努力と合わせ、2007年度以降の援護制度の存続・改善に向けての中・長期展望を示すものでなければならない。高橋知事を先頭とした、オ−ル北海道としての意思一致と統一行動が問われている。
 
2.道警不正問題
 
−道警本部長「不正経理はない」と発言、知事は追認?−
 
(1)2003年11月23日、旭川中央署の捜査用報酬費の不正流用疑惑がマスコミ報道で浮上した。11月28日には、芦刈道警本部長が定例会見で「不正経理の事実はない」と否定し、そして、高橋知事は、「疑惑を否定した道警本部長の発言は重い」とコメントしたのである。この発言は、当然のこととして道民の猛反発を浴びたのである。
2004年2月10日には、元釧路方面本部長の原田宏二さんが記者会見し、「組織的に裏金をプールし、幹部の交際費や議員接待などに使っていた」と証言、さらに、同年3月1日には、元弟子屈署次長の斎藤邦雄さんが同署の不正を実名で告発した。このような事態をうけて、高橋知事はやっと、「告発者がまた出てくることによって、事実が明らかになることを求めたい」と発言の軌道修正をはかった。
こうして、同年3月12日に道公安委員会は芦刈本部長に内部調査を指示し、3月15日には高橋知事が、道警全部署を対象に道監査委員に特別監査を求めたのである。
−裏金づくりと約11億円の不適切執行認める、道警本部長−
 
(2)2004年9月17日、芦刈道警本部長は、1998年度〜2000年度で全組織において裏金を作っていたことを議会に報告した。
そして、11月22日、道警は内部調査の最終報告を公表し、道費、国費で約11億円の不適正執行額を認めたが、この内、適正執行・会計処理との理由から、道費約2億円、国費約5億円の返還額を決めた。12月3日には、道監査委員は、知事に特別監査結果報告書を提出した。その中で、監査委員が認定した道費の不正総額は約4億9千万円となり、さらに報告書は、道警が否定していた上層部の関与を認めた。同年12月28日、道警は道費約2億5千万円を道に返還した。
また、今年の11月には、会計検査院が道警の内部調査を検証して約600万円(利息を含む)の追加返還が明らかとなっている。
 
−高橋知事自らの幕引きは許さない!−
 
(3)2005年5月27日、道の監査委員は、知事、道議会議長に対し確認監査報告を行った。高橋知事は、6月3日に確認監査が認定した3,770万円を追加返還するように道警に求めた。一方、芦刈道警本部長は、「知事から求められた追加返還」について早期に返還することを表明、合わせて、確認監査報告は道警の内部調査の信憑性を揺るがすものではないとした。
高橋知事は、記者会見のなかで、「道の監査委員の監査報告について、『現行法規上、強制力を伴う調査等は規定されておらず、監査には限界』があった」、「使途不明金が国費を含めて3憶9千万円に上っており、真相は解明されていない。知事の力で真相究明に取り組む考えはないのか。」という意見に対して、「現行の法体系の中で、最も調査権限の強い第三者機関である監査委員ができる限りのことをやったと理解している。」「できることがあればやりたいが、現時点で自ら調査する考えはない。」と答弁した。
さらに、「実名告発者(原田・斉藤氏)と会わずに判断したのか」との問いに、「監査委員が話しを聞いていただいたことで十分だった。」としている。
一方、芦刈道警本部長は、「事実解明は十分だったのか」との問いに対して、「監査委員の捜査協力者への聴取は警察活動に支障があった。その代わりとして、捜査員への聴取、捜査資料はすべて提供した。」と答えた。また、「道警としての立件は元北見方面本部警備課長の書類送検だけだが、多くの部署であった文書偽造なども犯罪にあたるのでは」 との問いに、「現時点で、北見以外に組織の立場を離れた個人的利得を把握しておらず、刑事事件として取り上げる判断はしていない」と答弁している。
 
−全容解明に向け、知事自らの権限で調査を!−
 
(4)高橋知事は、まず道監査委員の確認監査では疑惑の全容解明が出来なかった現状を真摯に受け止めるとともに、あらためて民意は何かを踏まえるべきである。
道新が4月に実施した世論調査では、「確認監査で全容が解明できると思う」と答えたのは15%、「できないと思う」が83.3%だった。また、百条調査委員会設置問題では、81.2%が「設置すべき」と答え、これまで5度にわたって否決した与党自民党の支持層でも80.0%が設置派なのである。道民は、強制力のない監査制度に限界があることを十分承知し、知事の責任ある対応と百条調査委員会による全容解明を求めているのである。道監査委員の確認監査は、「私的流用」疑惑や「使途不明金」の真相解明の必要性をさらに深めるものとなった。
しかし、7月1日に閉会をむかえた第2回道議会定例会は、民主党等が提案した百条委員会の設置を求める決議を自民・公明両党の反対で6度目の否決となった。道民の負託をうけた道議会議員の責務を放棄した自民・公明両党の議員に抗議するものである。
(5)さらに、今年1月、民主党の鉢呂・佐々木衆議院議員から道警不正経理問題に絡み告発を受けた札幌地検(特別刑事部)は、6月26日までに、道監査委員が行った特別監査結果の資料を押収していることが明らかとなり、原田・斉藤氏からも参考人聴取を進めるなど、司法サイドの動きも活発化している。
そして、他県の動きとしては、6月23日、浅野宮城県知事が宮城県警の犯罪捜査報償費(県費)について、「適正執行が確認できず、予算執行権者として執行を続けることは困難」として、本年度の予算の執行を停止する方針を固め県警側に文書で通知している。
知事は、道警への道民の信頼を回復し、市民の安全を守る現場の警察官が意欲をもって仕事に従事できるようにするためには、不正疑惑の幕引きに加担することなく、全容解明のため「知事自らの予算監督権を行使する」、「道議会に百条委員会を設置して真相解明するように各会派に働きかける」ことが、道政の最高責任者としての知事の責務であると考える。前述した道民世論や地検の動き、浅野知事の姿勢を見れば、なおさらのことである。
現在、連合北海道は、「道警不正問題を徹底解明し、信頼回復を求める道民の会」(2005年2月28日設立)に結集して100万署名運動を展開、第4回道議会定例会での百条委員会設置と高橋知事に対する適正な予算執行権の行使を求めている、
3.財政改革/「三位一体」
 
 @:道財政の見直し
 
−財政立て直しプラン、僅か6ケ月で見直しへ−
 
(1)道が2004年8月に策定した「財政立て直しプラン」は、2005年度から2014年度までの10年間で収支均衡をめざすものであった。第1段階を集中対策期間(2005年度から2007年度)と位置付け、第2段階(2008年度から2014年度)を構造改革期間とし、第1段階では、1,700億円の歳出削減・歳入確保を目標としていた。
しかし、2005年度予算編成では、早くもこの「プラン」の見直しが迫られた。道の収支見通しの中で、「このままでは、赤字再建団体転落は避けられない」として、「財政立て直しプラン」をローリング(計画チェック・再編)し、集中対策期間3年間(2005年〜2007年)の2年目となる2006年度に2007年度 分の計画を前倒しすることを明らかにした。このように策定されたプランは僅か6ヶ月で見直しを余儀なくされている。
そして、9月12日に道は、1,800億円の収支不足対策を2006年度から2年間かけて実施する「道財政立て直しプランの見直し方針」と「新たな行政改革大綱の方針」の骨子を策定し、年内に「大綱」と「改革工程表」(数値目標)を決定するように準備している。
 
−道財政の立て直し、温かい改革で−
 
(2)「財政立て直しプランの見直し方針」の策定にあたっては、景気対策に地方財政を動員した国ととともに、結果としてそれに追随して自らの財政改革や政策見直しを先延ばししてきたことが財政危機を深化させた原因であった、という道としての反省と結果責任が重要である。また、景気低迷による道税収入の急激な落ち込みとともに、政府の三位一体改革の初年度(2004年度)は、国の歳出カットのために地方交付税が前年度と比較して12%もの大幅削減がされたことも問題と言える 知事は、道内の地方6団体、農林水産・経済団体、労働団体等を幅広く結集して、政府の地方切り捨てに反対し、地方分権を推進する運動を強めていくべきである。
一方、この「見直しプラン」の骨子は、医療・福祉・教育など道民生活や市町村行政推進に必要な予算を聖域なしに切り込むとなっているが、「厳しい財政の中で何を優先し、何を我慢するのか」「本来の行政の果たす役割は何か」を明らかにし、道民と市町村の意見もしっかり集約し、協働しながら“温かい改革”としてつくり上げられるべきものである。“温かい改革”とは、弱者に対する心配りを基本に、一律カット主義ではなく、応能負担方式や複数以上の選択肢による弾力的な方策、削減効果の明示や削減後のフォロ−アップの提示など、少しづつ・ゆるやかに・できるだけ全体で、我慢と痛みを分かち合う、合意と納得の削減プログラムのことである。このプログラムの作成は、これまでの道庁・財政課主導のみでは不可能である。当事者たる道民や団体等による道庁外での「もう一つの予算編成」が構想されなければならない。
 
(3)しかしながら、道は、10月25日に「一般職職員の給料10%、手当15%削減」という人件費削減案を関係労組(北教組・自治労全道庁)に提示した。人事委員会勧告による削減が平均約28万円となるほか、道独自で提案された縮減案を含めると、総額で平均約115万円という大幅削減の内容となっている。連合北海道は、この提示が、@今後の道財政再建への明確な展望が示されていない、Aこれまでと同様に、その場限りの収支合わせとなる可能性が高い、B提案どおり実行されれば、道職員の生活に深刻かつ破壊的な打撃となる、Cさらに、行政サ−ビス、北海道経済、道民生活に大きな影響を与えるもの、と考えている。
道の財政健全化に向けては、これまで7年間に及ぶ職員給与の独自削減などを続けてきたが、再建計画が幾度も破綻し、財政状況が悪化の一途をたどってきた道当局の経営責任は極めて重大であり、このことをしっかり踏まえた抜本的な再建策が提起される必要がある。
 
−「三位一体」、税源移譲と地方交付税の確保が前提−
 
(4)政府の三位一体改革の対応をめぐって、全国知事会は、2004年8月、2006年度までに3.2兆円の補助金を削り、その見返りに3兆円の税源を地方に移すよう、また、政府と地方との協議機関を立ち上げることも要求した。
3.2兆円の補助金廃止案には、義務教育国庫負担金のうち中学校分の8,500億円だけが含まれ、そして、公共事業6,000億円、施設整備6,000億円、その他1兆2,000億円(私立保育所運営費など)となっており、廃止すべき補助金の数字合わせをした面は否めない。
この案に高橋知事は賛成した。しかも、地方交付税を含めた財源措置がきちんと確保されることが保障されている訳ではなかった。文部省の試算では、義務教育国庫負担金を廃止した場合、北海道は、全国で最も大きく税源移譲額が補助金廃止額を下回る(252億円)こととなっている。厳しい財政状況が続く中、一般財源化によって、機会均等と教育水準の確保という義務教育国庫負担制度の根幹が維持される保障は担保されていないのである。
この問題については、政府は、2006年度分の改革をめぐって昨年11月、国と地方の対立を玉虫色の文書にして中央教育審議会に丸投げした。中央教育審議会では、義務教育国庫負担の廃止か存続かで熱い論争が継続されてきたが、今年10月26日の総会において現行制度の維持を明記した答申を賛成多数で決定した。
しかし、小泉首相は知事会の意向をふまえて対処するように文部科学省に指示しており、そのような政治判断が下される状況にある。
−各省庁の権益擁護から税源移譲への転換をー
 
(5)小泉政権は、2006年度までの3年間に3兆円の税源移譲(その原資は、4兆円の補助負担金の廃止)を公約している。一方、全国知事会など地方6団体は、昨年の3兆2,000億円に続き、今年には1兆円の補助金廃止を提案している。2004年度は2兆4,000億円にとどまっており、残り6,000億円の補助金廃止が現在焦点となっている。この補助金廃止は、各省庁への数値目標として示されているため、厚生労働省は、生活保護費の国庫負担率引き下げの検討をするなど、「三位一体の改革」に名を借りた地方への負担転嫁の動きが出ており、地方の反発が強まっている。
さらに、小規模市町村が多い北海道では、地方交付税制度の財源調整機能と財源保障機能が発揮され、自治体間の財政力の格差拡大を踏まえ行政サービスが保障されなければ、自治体の存続そのものが危うくなってくるのである。
道は、厳しい財政再建に向けて、収入確保を明確するためにも、中央集権型社会から分権型社会へのプロセスを描き、国と自治体との役割分担を明示させるとともに、国からの公正な財源移譲と地方交付税制度が公平に機能するように強く国に求めるべきである。
 
4.「自治」と分権改革について
 
−道州制特区/国と自民党に依存−
 
(1)道州制、支庁制度改革、市町村合併の取り組みは、高橋道政の「自治」に対する考え方、姿勢を明らかにする一つの重要テーマである。前の堀道政は、「時のアセスメント」「政策評価制度」「情報公開制度」「外部監査制度」「オンブズマン制度」など、全国に先駆ける分権型の道政改革を進め、高橋知事は、選挙公約として「堀道政の進める改革を継続していく」と表明した。
道州制については、高橋知事の公約では、道庁改革の断行という項目の施策の中に、地方分権に向けて「支庁のあり方や道州制の検討」と記載され、検討課題の政治テーマとされていたが、2003年の知事選挙で対決した鉢呂吉雄候補(現衆議院議員)が、「政治契約」のなかで「道州制の実現」と明確にしていたことと比べると、スタンスの違いが大きいテーマだったといえる。
 
(2)今、道州制は大きな課題となっているが、「中央とのパイプ」最優先の高橋知事にとっては、もともとランクの低いテーマに過ぎなかった。小泉首相が2003年秋の衆議院選挙で来道したおり、突如「北海道を道州制特区にしてもいい」と発言してから、自民党の選挙公約に盛り込まれた。そして、政府の後押しを受ける形で、2004年の道議会における道政執行方針において、「今年を『道州制元年』と位置づける」と述べ、年頭の職員への挨拶では「各省庁と対峙、勝負する」として政治課題に押し上げた。
しかし、高橋知事には、もともと道州制についての哲学や信念があったとはいえず、庁内に向けた明確なメッセージも、国に向けての主体的な情報発信力も欠けていた。こうした結果、道州制特区構想推進では、内閣府に「推進室」が設置されたが、道の提案は棚ざらし状況で進んでいない。むしろ、国主導の形で道州制が進もうとしている。
そして、自民党の北海道道州制検討小委員会は、10月28日、特区実現のため先行実施を定めた理念法となる推進法を次期国会で制定することを明記し、さらに、国から道の権限移譲に必要な法改正を束ねた「一括法」も併記する中間報告をまとめた。
こうした現状は、官僚出身である高橋知事に、市町村や道民とともに「道州制による地域政府の自治のかたち」をどう創るのかという発想が見当たらず、国と自民党に依存した、地方分権改革に逆行する政治姿勢に起因しているものといえる。
 
−道州制による地域政府の自治のかたちは?ー
 
(3)北海道における道州制を実現するには、総合的な視点から考えると、国から道への分権のみならず、それによって市町村にも財源・権限が移譲され、市町村という基礎自治体がより充実し、強化されることが優先されなければならない。そのためには、補完的役割や調整機能に限定せず、市町村と自治事務をも共同して担う道庁へと改革されなければならない。
道州制の在り方を検討している全国知事会の特別委員会は、10月31日に地方制度調査会に対して、@道州を国の出先機関などではなく、明確に「地方公共団体」と位置付け、国の過剰な関与を排除する。A国と地方の役割分担の明確化、B市町村の役割・権限の強化策、C道州の役割に釣り合う税財政制度の構築、等を求めることを決定した。
高橋知事は、こうした全国知事会の前向きな取り組みについて積極的な問題提起や提言を強めるべきである。
−町村会と対立/支庁制度改革・事務権限移譲・市町村合併−
 
(4)支庁制度改革と事務権限移譲問題について、高橋知事は、「支庁制度改革に関する基本フレーム」(2005年1月)、「支庁制度改革プログラム案」(2005年2月)を発表し、現行の14支庁を6支庁とし、支庁が廃止される地域には経過措置として「地方行政センター」を設置することが、十分な議論もなく3月末に決定された。これは、2008年度から実施される。また、道から市町村への事務・権限の移譲についても2006年度から実施に移される。
この問題は、基礎自治体である市町村の再編などと密接不可分であり、特に町村会が「町村の実情に配慮することなく道の一方的なスケジュール」で進められていると批判したのは当然である。市町村と対等な立場で協議し、十分に実情を踏まえた決定とは到底言い難い。道州制の明確なビジョンが明らかにされないまま、支庁の役割を「最小限の道州行政を担う出先機関」とし、また、町村会が求める、広域連合の活用も明確にしていない。合併だけでなく市町村の広域連合や道・支庁と市町村の広域連合など多様な分権・自治の選択肢がある。
道は、道州制のあるべき自治のかたちを明確にし、市町村と対等の立場で連携・協力する姿勢にたち、権限移譲や本庁・支庁制度改革についてしっかりと協議していくべきである。
 
(5)市町村合併については、2005年3月末をもって合併特例法が失効となったが、道内に於ける市町村合併は大きく進まなかった。2006年3月末には、53市町村(合併済み24、告示済み29)が合併し、道内市町村数は、212から180となる。この間、法定・任意合併協議会に参加した104市町村(10市83町11村)のうち、合併協議が破談となり解散したのは24協議会(96市町村)、合併せず自立の道を選択したのは55市町村という状況である。
4月からの新合併法では、都道府県が「市町村の合併の推進に関する構想」を策定し、合併を推進することとしている。前述の通り、町村会は、広大な北海道において合併という画一的な方針は実情に則したものとはならないことから、「広域連合」なども含む北海道らしい、多様な分権・自治の構想を道に求めてきたのである。
 
−分権推進の起点は、市町村と地域である−
 
(6)しかし、高橋知事は、「合併協議会の設置を勧告することを含め、道の役割を積極的に果たす」と国の方針に沿って対応する判断を明らかにしている。知事の公約では、「市町村合併については、北海道地域の特性、課題を踏まえたあり方について独自の主張をしていきます」となっているにもかかわらず、これまで北海道の特性を踏まえた独自の主張は全く行っていない。
基礎的自治体や地域を起点として地方分権が推進され、これまでの中央集権体制のもとでの都道府県の役割を大きく転換していくことが求められているとき、こうした高橋知事と道庁の基本姿勢は、厳しい評価の対象となるであろう。
●高橋はるみ氏の公約
 道庁改革の断行の項目に、「全国に先駆けた地域主権型の新しい自治体フロンティアを北海道からつくりあげていくことです」。
(施策)
@地方分権に向けての取り組み、支庁のあり方や道州制の検討、さらに市町村合 併への対応については、将来の道、市町村のあり方を見据えながら、体系的に検 討を進めていきます。
A支庁制度改革については、幾つに再編するかという数の議論ではなく、まず、 道民、市町村により密着した支庁行政のあり方に重点を置き検討します。
B市町村合併については、北海道地域の特性、課題を踏まえたあり方について独 自の主張をしていきます。また、合併という選択ができず自力でまちづくりを目 指していく小規模な町村に対しては、北海道として独自の対応策を検討します。
5.北海道自治基本条例について
 
−北海道の憲法として、基本条例の制定を−
 
(1)「北海道自治基本条例」は、北海道の自治の理念、市民自治のシステムとそれに基づく道政運営の原則であり、自治体の憲法ともいえるものであり、その制定は大きな課題である。1999年7月、地方分権一括法は、中央集権型行政制度から国と地方自治体が対等・協力関係に立った新しい行政制度に変えることを目的として制定された。以来、地域のことは地域が決める「地域主権」確立の動きが始まっている。北海道において分権・自治改革を推進し、これから分権が進めば進むほど、地域の実情や道民の判断が尊重され、北海道らしい「自治のすがた」や独自の制度確立が必要になる。昨今の厳しい道財政の状況をみても、道民参加による透明で、効率的な道政が求められ、政策評価、財務会計システム、オンブズマン(注)などの様々な制度の創設や改革が地方自治に委ねられることになる。また、分権改革は、国と自治体、自治体と市民の関係にかかわる改革であり、その仕組みをどうつくるかという課題でもあるのである。
 
(2)堀道政が2002年に「行政基本条例」を制定して以来、連合北海道は、住民投票の制度化・議会の情報公開などを内容とする「北海道自治基本条例」の制定を提言してきた。2005年度の道に対する「要求と提言」でも、「住民の知る権利や参加する権利、行政や議会の情報公開や説明責任、常設の住民投票制度を規定する北海道自治基本条例を制定する」よう、高橋道政に求めました。これに対し、道は、「行政基本条例を基礎に制度や仕組みの充実を図る」「道民投票については対象となる課題について、その都度定めることが適当」と回答し、条例制定には消極的な姿勢にある。
高橋知事は、戦略的な地方自治の展望が欠如したまま国との対応上必要に迫られ、「地域主権の確立が重要」(2005年2月、道政執行方針)と語り始めたものの、高橋道政2年半を振り返ると、「地方主権」確立に向かう戦略・理念を不断に高めていく姿は見えず、自治基本条例制定は念頭にないと言える。地方分権、道州制を展望したとき、住民投票の制度化、市町村との対等協力の関係、議会改革などは不可欠の課題であり、北海道の「憲法」としての「北海道自治基本条例」の制定が求められている。
(注)オンブズマン;行政による国民の権利や利益が損なわれることのないよう国民の苦情の解決及び行政の適正確保を図る救済制度
6.道政の重要政策課題
 
 @:核燃サイクル開発機構の統合問題
 
−3者協定、道条例の遵守、新法人に確認行為をー
 
(1)2005年10月1日より、核燃料サイクル開発機構と日本原子力研究所が統合され、独立行政法人・日本原子力研究開発機構が設置された。昨年11月26日にその法案(新法)が国会で成立しているが、新法附則における経過措置の規定に基づき、道および幌延町がサイクル機構と締結した3者協定は、新法人に継承される。また、特定放射性廃棄物に関する道条例は、本道への放射性廃棄物の持ち込みに反対するものであり、新法人にも適用されるものである。
しかし、道、幌延町、核燃サイクル機構の3者協定が新法に承継されたとしても、地元の関係自治体、議会、住民の懸念や不安を払拭し、将来への安心を確保するためには、道は、法律的な継承だけではなく、新法人・日本原子力研究開発機構に対して、3者協定及び道条例の遵守について、あらためて確認を求めていくべきである。さらに、監督官庁である経済産業省にも同様の取り組みが必要である。
 
 A:米軍矢臼別移転演習問題
 
−明確な約束違反、移転演習の返上を!−
 
(1)在沖縄米海兵隊による沖縄県道104号線越え実弾射撃訓練の国内5ヶ所(日出生台[大分]、北富士・東富士[静岡]、王城寺[宮城]、そして矢臼別)への分散・実施は、1997年から始まり、矢臼別では、2001年を除き毎年実施されている。政府は、演習の実施にあたって「沖縄と同量・同質」「固定化はしない」などを約束した。しかし、沖縄でも実施されていない夜間訓練を実施し、沖縄での年間発射弾数(約3000発)を矢臼別演習の10日間だけで実施するなど、「沖縄と同質・同量」の程度をはるかに超える質・量の実弾演習が行われている。また、「国内5ヶ所の持ち回りにより5年に一度休む」システムや演習場内に米軍専用施設が拡充されるなど、地元関係町も「演習の固定化」を危惧している。
在沖縄米海兵隊による移転演習は、今日的に「沖縄の痛み」の共有・軽減ではなく、拡大・拡散である。この間、道としても、地元関係自治体とともに、演習が将来にわたって固定化しないことや在日米軍基地全体の整理・縮小、夜間訓練の中止などについて、国に対する申し入れをしてきたと認識している。
2005年度の矢臼別での演習は、9月5日から実施され、昨年度とほぼ同様の規模(夜間訓練の量は増加)であったが、夜間訓練が中止されない等、これらの課題が一向に改善されず固定化の現状は「明確な約束違反」と断言できるものであり、受け入れの返上を表明すべきである。
 
(2)さらに、現在、世界的に米軍の再編が進められており、沖縄米軍基地の矢臼別移転構想の報道があった。道は、訓練でさえ固定化されないことを国に求めており、基地移転は仮定・非公式とはいえ、重大な課題であり論外である。この間の経緯を踏まえるとともに、いたずらにロシアとの軍事的緊張をつくらず、北方領土返還のための友好的な平和な環境を維持し、さらに知床半島が世界遺産に登録され、自然環境を維持し守っていくためにも、道は「矢臼別に米海兵隊の砲兵部隊を移転させる構想」については、「現時点では受け入れ難い」というあいまいな態度ではなく、将来にわたっても明確に反対であると主張し、そうすることが日本の国策にかなうことを政府に強く提言すべきである。
同時に、在日米軍再編をめぐる日米政府間協議で、東アジア最大の米空軍基地である「米空軍嘉手納基地」から発生する騒音軽減策として、F15戦闘機訓練の一部を航空自衛隊千歳基地に移転・分散させる、としていることが明らかとなった。この訓練の移転・分散は、「沖縄の痛みを分かち合う」ものではなく「危険の分散・拡大」であり、ましてや地元自治体・住民無視の政府間協議は、断じて容認できないものである。道は、関係自治体と連携し、国に対して明確に拒否すべきである。
 
7.世論調査と組合員アンケ−トから
 
−世論調査65%支持、イメ−ジ先行の高橋知事−
 
(1)高橋道政の任期4年の折り返し点で、報道各社の論評を要約すると、「公約に掲げた政策(105項目)にはすべて着手、北海道新幹線の着工決定など28項目で一定の目標達成」「深刻な失政はないが、真価はこれから」(毎日新聞)「道民の悲願新幹線を誘致財政再建は道半ば」「『国と勝負する』とぶち上げた道州制特区構想は、足踏み状態が続く」(読売新聞)などとされたが、北海道新聞は世論調査結果を発表、支持率が65.6%(「支持する」30.0%「どちらかと言えば支持」35.6%)と急増したことを報じた。特に、女性(68.4%)や町村部(73.3%)、高齢者(60歳以上が70.0%)で高い評価となっている。
この要因は、北海道ではじめての女性知事であることや、126回(定例99回臨時27回)にのぼる記者会見や43市町村での「まちかど対話」(いずれも5月18日現在)など通して、「顔の見える知事」「気さくで笑顔の絶えない知事」に腐心していることが好感度として印象づけられていることが大きい。しかし、高橋知事への「不支持」(17.4%)理由のトップは、「道警裏金問題で十分に対応していないから」(36.8%)であり、今後、今回の結果が実像か虚像なのかが証明されていく。連合北海道としては、高橋知事自身による新しい政策提起がなく、イメ−ジのみが先行した知事像として映るのみであると総評しておきたい。
−連合組合員の支持率26.1%、不支持44%−
 
(2)一方、北海道新聞は、同時期に行われた経営者アンケ−ト(148社回答)の結果についても報道しているが、「支持」は35.8%、「不支持」は22.3%と、北海道経済が依然厳しい状況下で、目立った実績が上がっていないことが背景としてあるのではないか。
さて、連合北海道の組合員はどう見ているのであろうか。連合北海道は、結成15年を節目として、2005年1月から3月にかけて、労働金庫と連携して1.5万人を対象として組合員アンケ−トを実施した。有効回答数は、8.576名(女 性19.7%男性80.3%)であった。
その結果、「評価できる」はわずか3.0%、「まあまあ評価できる」の23.1%を加えると26.1%が評価している。一方、「あまり評価できない」30.8%と「全然評価できない」の13.2%を加えると有効回答の44.0%が評価できないと答えている。どう評価するかわからないと答えたのは、有効回答の約3分の1(29.9%)あった。以上のことから、連合北海道の組合員は、高橋道政について等身大での現実的評価をしており、世論調査との乖離が実感できるものとなっている。
さらに、自治労組合員はどうか、自治労北海道本部が実施した、自治労北海道第11回組合員意識調査(2005年6月)によれば、「支持する」5.4%、「どちらかといえば支持する」22.0%で27.4%の支持に対し、「支持しない」17.2%、「どちらかといえば支持しない」14.9%と不支持は32.1%となっており、38.3%は判断保留である。やはり、世論調査とは正反対の傾向となっている。
 
五.むすび(2007年政治決戦への決意)
 
 いま、地方自治は、民主主義の「学校」としてではなく、民主主義の質を問う「実践現場」でなければならない(イギリスの政治家・歴史家・政治学者であるジェ−ムス・ブライスは、<地方自治は、民主主義の源泉であるだけではなく、学校である>といったが・・・)。そのためには、主権者である道民ひとり一人が、勤労者ひとり一人が、連合組合員ひとり一人が、「観客民主主義」の時代に別れを告げ、自分の住んでいる地域のありのままの姿やまちの将来を真正面からとらえ、2007年政治決戦を地域社会のあり方を考える最高の機会としなければならない。
 そして、連合北海道は、2007年政治決戦の最大焦点である北海道知事選挙が、道民の中に、新たな開拓者精神と潜在化している独立心を呼び起こし、新しい北海道の創造が展望できる戦いとなるよう、組織の総力を挙げる決意である。
 これからの道程は、「自分の前に道はない/自分の後ろに道は出来る」(高村光太郎は、『道程』の冒頭で、“自分”を“僕”と言い換え、人生の開拓者としての自負を決然と歌っている)という、時代の大きな変革期における、真の開拓時代なのである。
 
                              以   上