その4
春季生活闘争を推進し、総合的生活改善と
安心・公正のワークルール確立を目指します
[現状と課題]
@ 世界経済の拡大を背景に輸出主導とリストラにより企業収益が大幅に改善しているにもかかわらず勤労者の雇用、所得環境は改善せず、地域間、産業間、企業規模間、雇用・就労形態による格差などあらゆる分野における格差が拡大し、経済社会の二極化が進んでおります。
2006年春季生活闘争においては、こうした賃金、労働条件の格差を是正し、同一価値労働・同一賃金の原則による公正な労働基準の確立と歪んだ成果配分の是正に全構成産別が取り組み、その成果を未組織労働者に波及させ、全体的な底上げを図っていく必要があります。
A 企業の人件費をはじめとするコスト削減の流れのなかで、「パートタイム労働者」「契約労働者」「派遣労働者」「請負労働者」など雇用・就労形態の多様化が急速に進み、非正規労働者が増加する一方で、正規労働者が減少しており、その処遇格差が拡大しております。
このため、各産別、単組は雇用不安の解消を図る有期雇用労働者の雇用安定協定の締結や組合員化に取り組むとともに、連合北海道は均等待遇原則を規定した「パート労働者均等待遇推進法」の制定運動を強力に展開する必要があります。
B 規制緩和を中心とする「市場万能主義」に委ねた雇用・労働政策の導入が規制改革・民間開放推進会議などで検討されています。職業紹介事業における求職者からの手数料徴収の拡大、労働派遣業務や派遣期間制限の撤廃、ホワイトカラーイグゼンプション導入など労働時間規制の適用除外、解雇の金銭解決制度の導入、労災保険の民営化、産業別最賃制度の廃止、ハローワークの包括的な民間委託など「雇用の安定」「安全安心な職場の確保」を脅かす政策が軒並み検討されており、これらの導入を認めることはできません。
C 本道の雇用情勢は改善しつつあるものの依然、失業率5.7%(2004年平均)と高水準にあります。失業率3%台への引き下げを図る雇用政策の確立を求めていきます。あわせて若年者の高失業率とフリーター、ニートの増大が大きな社会問題となっており、経営側に新規採用、正規雇用の拡大を求め、企業・産業・社会の持続的発展を図らなければなりません。
D 積雪寒冷という本道の気象条件により冬期間の建設生産が縮小するなかで、離職を余儀なくされる季節建設労働者は依然約15万人に上っています。厚生労働省はこれまで、こうした冬期失業を余儀なくされる労働者の冬期雇用対策や教育訓練を支援する「冬期雇用援護制度」を設け、失業の解消に努めてきましたが、平成18年度をもって廃止することを明らかにしています。
通年施工の実現や冬期施工技術の開発導入という根本的な解決策を放置したまま冬期雇用援護制度の廃止は暴挙に等しく断じて認めることはできません。2006年8月の概算要求期に向けて、連合北海道あげての運動が求められています。
E 非正規労働者が増大の一途をたどっているなか、法定最低賃金の役割は極めて重要です。
本年10月1日より北海道の最低賃金は3円引き上げられ、641円となりましたが、月額では111,405円という低水準であり、若者が経済的に自立できる水準とは言えません。実効性のある水準への引き上げを求めるとともに監督体制の強化を図る必要があります。
また、産業別最低賃金については現行制度の維持存続、機能の拡大強化を図るとともに、ハイタク最賃の創設に向け、引き続き取り組みを前進させることが求められています。
F 工場の爆発や大規模火災、事故が続発しています。企業の安全対策は従業員のみならず地域住民、顧客、社会に対する責任であることを自覚し、現場力の復活と再発防止に全力を尽くす必要があります。
また、仕事や職業生活に対して強い不安、悩み、ストレスを感じる労働者が増加し、「過労死」や「過労自殺」の件数も増加しています。
一、重点課題
[中小労働運動の強化]
企業規模による賃金を中心とする労働条件の格差が拡大しています。また定昇制度のない職場が多くを占めています。2006年春季生活闘争に際しては、格差拡大に歯止めをかけ、縮小を目指し、統一要求額を掲げ、集中決戦方式による中小地場共闘の強化を図ります。
また、道内の中小企業の賃金実態調査結果に基づき、年齢別のミニマム賃金の設定や企業内最低賃金協定の到達目標を示し、底上げを図ります。さらに、地方公共団体の入札、委託契約における公正労働基準の確立や下請け単価や納期など取引関係の改善、中小企業勤労者サービスセンターの設置拡大に取り組みます。
[パート・有期契約・派遣・請負等労働者の均等待遇の実現と権利の確立]
パート・有期契約・派遣・請負などの雇用・就労形態で働く労働者の雇用の安定と均等待遇の確立を図ります。このため、本年2月に連合北海道中小・パート対策委員会が制定した「有期雇用労働者の雇用安定に関するモデル協定」の導入の取り組みを進めるとともに正規労働者との格差是正、均等待遇実現に向けた取り組み指針を作成します。
また、パート労働者や有期契約労働者の均等待遇、有期契約とする理由の明示の義務付けなどを使用者に規定する「パート労働者均等待遇推進法」の制定を目指し、シンポジウム、学習会などを開催します。
[法定最低賃金の引き上げを図る企業内最賃協定の締結促進]
2006年春季生活改善闘争において、全ての産別・単組がパート労働者等を含めた企業内最低賃金に関する要求書を提出し、協定化を図り、低賃金の改善を目指します。この取り組みの成果を法定地域最賃、産業別法定最賃に反映させます。
本道で設定されている産業別最賃の廃止には断固反対し、産別最賃の継承、発展を図ります。
新設を求めている法定ハイタク最賃については、行き過ぎた規制緩和政策の見直しの政策運動と連動し、引き続き、制度化に取り組みます。
また、増加する介護労働者の産業別最賃の新設に向け、連合北海道最賃対策委員会に「調査検討チーム」を設置し、具体的な調査、検討に取り組みます。
[労働者と使用者の権利・義務を定めた労働契約法の制定]
募集・採用、配転・出向・転籍、労働条件の変更、解雇・退職・雇い止めなど労働契約の成立から展開、終了までの労働者と使用者の権利・義務を定めた労働者保護の観点に立った「労働契約法」の制定を目指します。
このため、連合本部の提起に基づき、シンポジウムや学習会などを開催します。
厚生労働省の研究会報告に基づいた労働契約法の制定には反対します。
[健康で働き続けられる労働時間の実現]
年休取得の促進、時間外労働の削減を中心に年間総実労働時間1,800時間の目標継続によって労働時間の短縮を図ります。
また適正な労働時間管理と不払い残業撲滅の取り組みを更に強め、仕事と生活の調和のとれた働き方の実現を図ります。
時間外労働や休日労働の割増率の引き上げの協約締結に取り組むとともに、労働基準法の改正を求めていきます。
[季節建設労働者の雇用対策]
本道の失業率が全国と比べて高水準にあるのは、長期に亘る景気、経済の低迷に加えて、積雪寒冷という気象条件による季節要因が背景にあります。
「完全雇用の実現」を福祉国家の目標とする北欧、西欧の積雪寒冷の国家においては、景気循環による雇用・失業対策の実施はもとより、季節的失業の防止のために内装工事の夏期施工の禁止、冬期施工の誘導策、悪天候手当の創設など冬期失業の解消、通年施工の実現のため政策を投入し、季節による失業の防止に努めてきました。
しかし、わが国においては、冬期施工の技術的課題や増嵩経費などを口実に、政府、地方公共団体、また事業所も建設事業の平準化を怠り、冬期失業を固定化するなど抜本的改革を先送りしてきました。こうしたなかで、今、冬期失業する季節労働者の命の支えとも言うべき冬期雇用援護制度を廃止しようとしています。わたし達連合北海道は断じてこのような政策を認めることはできません。
したがって、わたし達は、冬期失業の解消に向けた抜本改革課題である通年施工と通年雇用の実現を基本政策目標にしながら、過渡期的措置として現行の季節労働者の冬期雇用援護制度の継続、改善を求めていきます。
このため、北海道季節労働者雇用対策協議会が策定した総合方針の周知徹底と冬期雇用援護制度の存続を図るため、年内は、全市町村及び市町村議会、建設業団体、商工会議所、商工会等への要請行動を展開し、第4回定例市町村議会における国に対する要望意見書の採択を獲得する運動を展開します。また、厚生労働省との協議テーブルの設置、道選出国会議員団、連合本部、労働政策審議会雇用保険部会委員、経済財政諮問会議などに対する要請行動に取り組みます。
また、翌年の1〜3月期においては、100万人の道民署名運動や建設、雇用主の賛同署名運動、道民総決起大会の開催、北海道労働審議会の建議採択、調査活動などに取り組み、オール北海道の体制の構築を図ります。
4月以降は、8月の厚生労働省の概算要求実現に向け、知事が先頭に立った波状的な中央行動を展開し、要求の実現に全力を挙げます。
こうした運動を展開するため、連合北海道は組合員一人200円を目標とするカンパ運動に取り組みます。納入期間は2006年1月末とします。
[民主的な公務員制度改革の実現]
財政問題を背景に一方的な公務員給与の引き下げ、定員削減、公共サービスの切り捨てが強行されようとしています。連合北海道としてはILO勧告の遵守を連合本部とともに政府に求め、労働基本権を柱とする民主的で透明な公務員制度改革の実現に取り組みます。
また、「民でできることは民に」というプロパガンダが繰り返され、公務員の削減を企図した公務労働の外注化・アウトソーシングが進められています。しかし、市民にとって必要な公共サービスは、単なる安上がりの外注化ではなく環境や福祉、男女平等参画や公正労働基準などが確保され、社会的評価に応えられる担い手(企業、NPO、市民団体など)によって支えられるべきです。
公務員制度改革と併せて、この様な公務・公共サービスの在り方を道民・市民に問いかける運動に取り組みます。
二、継続して取り組む課題
[春季生活闘争の共闘の強化]
2006年春季生活闘争については、連合本部の基本構想と闘争方針を踏まえ、第18回定期大会で闘争方針を決定し、12月中に闘争委員会を設置して闘いを進めていきます。
闘争にあたっては、第一に労働分配を重視した水準決定と全体的底上げを図る、第二に集中決戦方式を中心とした中小・地場共闘の一層の強化、第三に規模・業種、地域・雇用形態・男女等の格差の是正、第四にパート労働者など非正規労働者などの底上げを図る企業内最賃協定の締結を中心に成果を獲得し、その水準の社会的波及を目指していくこととします。
[雇用対策の強化]
雇用情勢は、失業率の低下や有効求人倍率などの改善など最悪期は脱したものの高止まりにあります。また、パート・契約社員・派遣などの求人が増加しており、雇用の質が劣化してきています。
このため、構成組織の人員整理合理化問題については、要請に基づき、逐次、雇用対策委員会を設置し、産別、単組の労使交渉を支援するとともに、職業安定行政、職業訓練行政が一体となった再就職支援に取り組みます。また、若年者雇用対策については社会全体の問題として経営者団体に対し、新規採用の拡充、正規雇用の拡大、時間外労働の割増率の引き上げによる雇用創出などを求めるとともに、子どもの成長段階に応じた勤労観、職業観を育むキャリア教育、日本版デュアルシステムの導入、若年者に対する労働者の権利教育の実施など道に対応の強化を求めていきます。
高齢者雇用対策については、改正高齢法を踏まえ、65歳までの定年延長や希望者全員の再雇用など継続雇用制度が確保されるよう協約の整備に取り組むこととします。
[労働安全衛生対策の強化]
2004年の北海道における労働災害による死亡者数は、またもや全国最多となり、休業4日以上の労働災害も1日あたり約20件と多発しています。また、健康診断の結果による有所見率は50%に達する状況が続いています。
このため、第一に明年施行となる改正労働安全衛生法下で職場の安全衛生活動の活性化を目指し、職場安全委員会での果たすべき労働組合の役割を明確にする、第二にその取り組みの中心に労働安全衛生リスクアセスメント・マネジメントシステムの導入を位置づけ、すべての職場で取り組む、第三に産別・地域と協力して、職場・地域の取り組みの推進者となる活動家を育成する、第四に長時間労働、過重労働をなくすための労働時間管理、健康管理を徹底するとともに、ストレス・メンタルヘルス対策の充実・交通労働災害の撲滅を中心にした本道の「中小職場の安全衛生改善3ヵ年計画」の推進に取り組みます。
また、アスベスト問題については速やかなアスベストの全面禁止、石綿障害予防規制の徹底による石綿ばく露防止、労働者や家族、地域住民に対する健康相談と健康被害の補償などに取り組むこととします。
[ワークルールの徹底と道労委の強化]
労働基準法をはじめとする労働法違反に関する相談件数は依然高水準にあります。
この間、悪質な法違反については、労働基準監督官による指導、監督を求め、法の遵守と法違反の一掃を図り、公正な労働基準の確立に努めてきました。
しかし、こうした対処療法では限界があり、学校教育の過程や就職内定者を中心に、働く者の権利教育の機会を社会的に確立する必要があります。
このため、道や道教委に対し、副読本の作成や新卒生徒、学生のための権利教育の講習会の開催などを求めていきます。
また、使用者による労働組合活動を否定する不当労働行為の救済に大きな役割を果たしている北海道労働委員会の強化が求められています。先の労働組合法の改正により道労委の機能、役割を後退させないよう対応するとともに申請事件の情報公開によるルールの徹底、道労働者委員の研究支援のための労使関係問題研究会の開催に取り組むこととします。
2006年から労働審判法が施行されます。札幌・旭川・函館・釧路の各地方裁判所単位に配置される労働側審判員がその目的である紛争の解決の迅速化、公正かつ簡易、廉価な機能と役割を発揮できるよう研修会の開催などに取り組みます。