T.はじめに(定期大会の起点) |
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◇ 戦後60年と結成15年を乗り越えて
(1)2005年は、戦後、そして被爆60年の年であり、連合北海道結成(1990年2月1日官民統一)からは15年が経過しました。人生に例えると60歳定年、教育的に語れば義務教育の課程を修了したということになります。
こうした中で、私たちは、平和、自由、平等、地域社会、労働、文化、人権、環境など、戦後の民主主義的価値があらゆる分野で揺さぶられているという、“歴史の峠”をのぼり続けており、さらにいま、小泉構造改革路線の推進によって、少数の勝者と多数の敗者を生み出す格差社会の現状を体験しています。
(2)こうした体験を通じて、私たちは、平和や人権をはじめ、前述した社会的価値を正しく実感できるような社会を創造し継承していきたいと痛感しています。そして、何よりもいまの社会が、不安と荒廃という名の絵の具によってこれ以上塗りつぶされることがあってはならないことを、しっかりと教訓化し、“歴史の峠”を乗り越えていかなければなりません。
だから、連合北海道第18回定期大会は、これまでの体験学習を起点とし、戦後・被爆60年と結成15年を乗り越えた、新しい連合北海道のスタ−トとしなければなりません。
◇ 三つの「2007年問題」を視野に入れて
(1)連合北海道は、向こう2年間の運動を推進していくなか、三つの「2007年問題」に遭遇します。
一つは、2007年の政治決戦です。9月の衆議院選挙では、自民党が圧勝し、自公政権で3分の2以上の勢力となりました。この結果、民主党を中心とした政権の交代は、一時的に停滞を余儀なくされました。しかし、二大政党化への方向性と政治改革に対する国民の期待は依然として継続されており、3分の2以上の議席獲得については不安を抱いています(MEMO欄)。また、選挙期間中、小泉首相と自公与党は、「改革に抵抗する官公労」と非難するなど、分断という政治的意図をもって様々な労働組合攻撃を展開しました。
今後においては、自公の“構造改革路線”と真正面から対決し、いかなる分断攻撃も許さない強固な姿勢で立ち向かうとともに、2007年4月には、知事奪還を頂点に据えた新しい地域政府の樹立をめざす統一自治体選挙、さらに同年7月には、次期の政権交代の試金石となる参議院議員選挙が施行される、文字どおりの政治決戦に勝利しなければなりません。
(2)二つには、2007年から、700万人といわれている、いわゆる団塊の世代(MEMO欄)と称される人々が大量に定年を迎えはじめ、この人々は新しい生き方を開始するでしょう。同時に、社会や労働組合にとっても、これまでの継続・延長ではない、新しい生き方、あり方の創造が求められるでしょう。
そして、三つには、2007年から総人口減少社会(2002年、国立社会保障・人口問題研究所が予測)の始まりが告げられています。今年3月31日現在の住民基本台帳に基づく人口調査(総務省)では、男性人口が初めて減少(1968年の調査開始以来)に転じました。この調査結果には、これからの国のかたちを考える根本問題が潜んでいます。
こうした三つの「2007年問題」は、そのいずれもがこれまでの社会を大きく変えるという予感と期待感を与えるものです。
だから、連合北海道第18回定期大会は、三つの「2007年問題」に真正面から向き合い、これからの新しい社会のあり方を問う転機としなければなりません。
◇ 社会的「連帯」・「協働」をキ−ワ−ドに
(1)連合北海道は、結成以来15年、5万人(連合全体では100万人)の仲間を失いました。2004年の道内組織率は18.0%(全国では、19.2%)であり、労働者にとって最大のセ−フティネットであるともいうべき労働組合は、雇用労働者のなかで少数派なのです。総務省の就業構造基本調査によると、1997年と2002年の5年間で、正規雇用労働者は18万9千人減少しました。一方で非正規雇用労働者は、正規雇用労働者の減少数に匹敵する17万人が増え、全労働者の33%(80万7千人)を占めていますが、労働組合加入は、6.5%(道の労働組合基礎調査)に過ぎません。
(2)さらに、連合北海道が実施した、「2004年パ−ト労働者等実態アンケ−ト調査」では、回答した構成組織の現行組合規約で、「パ−トタイム労働者などが加入できるようになっていない」が64.9%、パ−トタイム労働者等を組織していない構成組織においても、「今後、組織化する計画や方針がない」が58.5%(MEMO欄)という現状があります。働くものすべての結集軸としての連合北海道が、その役割と使命を果たして労働運動の社会性を高めていかなければなりません。あらゆる分野で格差が拡大し、「二極化」の社会であればこそ、社会正義、弱者への思いやり、助け合い、という労働組合の原点に最大限の力点を置いた、社会的「連帯」と「協働」が問われているのです。
だから、連合北海道第18回定期大会は、社会的「連帯」・「協働」をキ−ワ−ドとした連合運動の具体的な第一歩としなければなりません。
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U.めざす進路と運動の力点・達成目標 |
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[めざす進路]
連合北海道がめざす社会の方向性は、「安心・安定・公正」を基本とし、[労働を中心とした福祉型社会][男女平等参画社会][持続可能な循環型社会]の実現にあります。
(1)「労働を中心とする福祉型社会」とは、「すべての人に働く場を保障し、公正な賃金、労働時間、均等待遇など社会的基準が張りめぐらされ、労災や失業、疾病や老後などいざというときに生活を保障するセ−フティネットが組み込まれ、男女が対等な構成員として活躍できる機会を確保され、ともに責任を担うことのできる社会」であり、同時に、自然環境と調和する循環型社会、市民参加の地方分権型社会をめざす取り組みです。
(2)いま、人間社会の根幹をなす労働は、失業者と非正規雇用などの不安定労働者の増大、さらには、フリ−タ−や英国生まれの言葉で呼ばれている「ニ−ト」(MEMO欄)の拡大など、社会全体を不安定にしている最大の要因となっています。これに対して、労働運動がしっかりと役割を果たしていかなければ、労働組合としての存在感と存在意義を失うばかりか、前述した社会の実現は遠のき、人間としての生活の価値そのものを衰退させかねません。
連合がめざす社会の実現には、連合がすべての働くものの力の結集軸となって役割を担い、さらに、政党・政治家や関係諸団体、NPO・NGOとの広く強い連携・協働によらなければなりません。
[運動の力点]
連合北海道が推進する向こう2年間の運動の力点は、[第6次答申に忠実な運動の実践]を第一義とし、さらに、[社会的責任を果し、新しい価値観による運動の推進]と[達成感を実感し、男女がともに担う運動への改革]とします。
○ 第6次答申に忠実な運動の実践
(1)第6次答申は、官民統一から15年、現在の連合北海道を取り巻いている環境がすべてにわたって大きな変化に直面していることを直視し、活動領域や運動のあり方を抜本的に見直していくことを提言しています。この提言の内容には、一方で、組合員の減少やパ−ト・派遣・契約など不安定雇用労働者の増大によって組織率が低下し、労働組合としての組織・財政基盤と社会的影響力の縮小、低下が懸念され、他方においては、「二極化」社会での格差拡大、雇用と生活不安の増大、少子高齢化の加速、環境・平和・地方財政の危機など、労働組合が取り組むべき課題は増大し、社会的役割が一層求められているという背景があります。第6次答申は、一見、反比例的にとらえられる、こうした現状とこれからの役割を統一的にとらえ、明日の連合北海道へと導くための「ベクトル」を意味しています。
(2)最重要テ−マは、第1に、労働運動にとって永遠不変の組織強化・拡大に向けた運動と体制の強化であり、第2に、中小・地場・零細企業に働く労働者との連帯と支援体制の充実・強化、第3には、働くもの、生活者の立場からの「安心・安定・安全」を基調とする公正な社会システム改革の取り組みということになります。
さらに、その抜本的見直しの重点キ−ワ−ドは、「連帯と信頼」「選択と集中」「統一と拡大」です。連合北海道は、この第6次答申を忠実に実行するため、行動計画と目標管理をしっかり詰め切りながら積極的に実践していきます。
○ 社会的責任を果たし、新しい価値観による運動の推進
(1)いま、日本社会は、競争至上主義・市場万能主義に覆われています。そのことが労働者への負担を強い、深刻な格差拡大と社会的不安定をもたらしています。働く現場では、総人件費抑制による正規雇用から非正規雇用への置き換えによって不安定雇用の増大と格差が拡大しています。そして、長時間労働、不払い労働、過労・ストレスが増大しています。思い起こせば、メ−デ−の起源となったいまから120年前の1886年5月1日、シカゴ、ニュ−ヨ−ク、ボストンなどでアメリカの労働者・労働組合が8時間労働制を要求してストライキに立ち上がりましたが、いまなお、日本における一般労働者の総実労働時間は2016時間(平成15年度)であり、連合北海道の「組合員意識調査」では、約半数近くが不払い残業があると答えています(MEMO欄)。さらに、コンピュ−ターやインタ−ネット、さらには携帯電話などの新しい情報通信技術は、家庭や生活を職場や仕事に変えるほど社会構造を激変させているのです。コンビニエンス・ストア−の終日営業にみられるように、経済活動の24時間化と夜間活動人口の増大が、労働生活や消費生活にどんな影響を与え続けているかを、一つの具体例として考え直してみる必要があります。
各労働組合は、原点に立ち返り、「仕事と生活の調和」実現に積極的に乗り出し、労働時間の制限と短縮を真正面から取り組みながら、「明るく働きやすい、働きがいのある仕事・職場」を創造していくために何が必要か、そのメッセ−ジが急務です。そして、この実践と着実な成果の積み上げにより、各労働組合は、問題解決能力と組合員からの求心力、信頼力を高め、企業と社会に対するチェック機能としての役割も果たし得る存在となります。
(2)同時に、依然として高水準の失業者と増大し続ける臨時・パ−ト、派遣などの非正社員労働者、そして、213万人のフリ−タ−(2004年、厚生労働省)、64万人のニ−ト(2004年、同省)、大量に定年を迎えつつある団塊の世代などの存在は、これまでの組織や運動の改革を迫るものとなっています。公平・公正なワ−クル−ルづくりを基調としながら、企業別組合の壁を乗り越え、すべての働く仲間のパ−トナ−であり、その結集軸として社会的な労働運動を推進していくことが、連合に求められている使命と役割です。この使命と役割は、各構成産別と連合北海道、各地協・地区連合との役割・責任分担と有機的連携によって達成されるものです。具体的には、運動の原点である職場と地域において、第一義的には、各構成産別は「職域の課題」連合は「地域の課題」にそれぞれ責任を持ち、社会的課題には、ともに連携して責任を果たすことです。この原則に立って、連合北海道は、「地域に根ざした顔の見える、道民に共感を呼ぶ連合運動」を推進していきます。また、価値観が集団から個人へと変化し、多様な働き方が存在する時代に対応するシステムとして、地域での組合員・退職者などによる生活や社会活動に対するサポ−ト、相談活動を軸とした「生涯組合員構想」を具体化し、さらに、労働組合運動の新しい地平を切り開くため、労働者がインタ−ネット上で結ばれる「サイバ−・ユニオン」などについても検討していきます。
○達成感を実感し、男女がともに担う運動への改革
(1)前述した連合組合員意識調査では、現在の労働組合活動について、「よくやっている」17.0%、「まあまあよくやっている」42.9%、と全体で6割の人が評価していますが、「あまりよくやっていない」20.5%、「やっていない」5.1%と4人に一人が不満を持っています。他方、労働組合活動に参加する意向を持っている組合員は、85.2%と高いものがあります。その内訳で見ると、「役員は無理だが行事に参加する」44.3%、「居住地域や自分に関係ある課題に参加する」32.8%、「求められれば役員を引き受ける」22.4%、「ボランティア活動なら参加できる」20.2%となっています。主役である組合員の組合活動への参加形態と運動の原点である職場実態の検証が必要です。
同時に、ひとつ一つの取り組みが、@自発性と多様性がマッチした組合員の総参加を基本とし、A目標は可能な限り数値などでわかりやすく示し、B解決又は達成すべき枠組みとたたかう方策をより明確にするとともに、C結果については、組合員の納得度、満足度により評価されるよう、運動の改革を推進していきます。
(2)さらに同調査では、職場での「男女平等参画」については、「大いに進んでいる」11.7%、「少しずつ進んでいる」41.9%と半数をやや超えていますが、「あまり変わっていない」28.1%、「全く進んでいない」7.5%となっています。また、連合北海道「第4回男女平等参画アンケ−ト調査報告書」(2005年2〜3月実施、33産別・13地協、34地区連合が回答)では、女性組合員の比率が年々増大(MEMO欄)しているにもかかわらず、産別での執行委員総数に占める比率は8.39%、地協については2.3%となっています。現在、連合は、実質的な平等実現のため、間接差別の禁止、妊娠・出産を理由とする不利益取扱いの禁止などを盛り込んだ「男女平等法」の実現をめざしています。男女平等参画は、時代と社会の要請であり、最も推進役であるべき労働組合が時代遅れと称されないよう、男女がともに担う運動への改革を着実に実行していかなければなりません。
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[2年間の重点達成目標] |
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連合北海道は、向こう2年間で達成すべき重点目標について、次のとおり、組織的、政治的、政策的、運動的目標を設定し、その達成に全力をあげます。
◇組織的目標
○ 中小、パ−ト・契約・派遣労働者等に最大限焦点を当てた 取り組みと組織拡大の推進、組織率低下に歯止め
○ 民主的で透明・公正な公務員制度と公務員の労働基本権確 立
◇政治的目標
○ 統一自治体選挙→知事奪還、道議会与党勢力過半数、
○ 参議院選挙→道内複数議席確保、民主勝利・与野党逆転
◇政策的目標
○ 季節労働者の通年雇用実現
○ 大増税阻止、年金・医療など社会保障制度の抜本改革
◇運動的目標
○ 男女平等参画の積極的な推進と新計画の策定
○ 平和・道民運動の拡大・統一(確実に段階的移行)
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<MEMO>
□世論調査□
※NHK(9/20放映)→@好ましい21%Aどちらかと言えば好ましい23%Bどちらかと言えば好ましくない24%C好ましくない23%
※JNN(9/25放映)→@非常に不安21%Aやや不安43%Bあまり不案ない25%C全く不安ない10%
□団塊世代□
堺屋太一の著書「団塊の世代」では、終戦直後の1947年から1949年の3年間に生まれた日本人を定義、出生数約805万7千人、ピ−クは、1949年生まれの約269万6千人、2000年国勢調査での団塊の世代人口は、688万6千人(全人口の約5.4%)
□実態調査□
○実施時期→2004年11月
○構成組織→26産別8地協276組合(支部・分会含む)が回答
□ニ−ト(NEET)□
Not in Employment Education or Trainingの略「職に就いていず、学校機関に所属もしていず、そして就労に向けた具体的な動きをしていない」若者
□意識調査□
○実施期間=2005年1〜3月/15000人アンケ−ト配布、回収8621人(57.47%)
○不払い残業の頻度はどうか→@「頻繁にしている」15.5、A「月の半分ぐらいしている」6.2、B「たまにしている」26.9、C「ほとんどしていない」40.6
□女性組合員の比率(労働組合基礎調査)□
@2002.6=26.4%、A2003.6=27.79%、B2004.6=29.18%
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