大量失業に対応した雇用政策の拡充・強化に関する要請書
国民生活・経済の最大の基盤である雇用が大きく揺らいでいる中、雇用のセーフティネットを整備し、高度福祉経済社会の構築を目指し、改革に取り組んでいることに対し、心より敬意を表します。
さて、ご承知の通り、本道の雇用・失業情勢は拓銀破綻に前後し、完全失業率が高水準で推移するなど、今日なお改善の兆しは全く見えません。
このような中、政府は不良債権の最終処理や財政再建に向けた公共投資や地方財政の縮減に着手しようとしており、本道の官公需依存の経済構造の現状をみると、これによる雇用の影響は、建設産業中心に全道に拡大することは必至であり、現下の情勢は、将に非常事態下にあるといっても過言ではありません。
つきましては、これらを踏まえ、国、道、市町村の各段階において、以下の雇用のセーフティネットを確立させるよう強く要請いたします。
記
1.公正なワークルールの遵守と失業の防止
(1) 解雇制限法の制定
判例で確立している解雇権濫用法理と整理解雇4要件を法制化すること。(国)
(2) ワークルールの遵守
労働時間法制など、法律で定められた最低限のワークルールを遵守させるため、労働基準監督官を大幅増員すること。(国)
(3) 良質な雇用の確保
雇用の不安定化につながる派遣労働、有期雇用、裁量労働などの規制緩和は行わないこと。(国)
(4) 企業の教育・能力開発事業の支援の強化
失業の未然防止のため「キャリア形成助成金」などの企業内の教育訓練・能力開発事業を抜本強化すること。(国)
(5) 企業の雇用創出事業への支援
雇用対策法に基づく再就職援助計画システムと雇用調整助成金の活用を推進するとともに、企業の雇用創出事業に対する投資融資制度を拡充すること。(国・道)
2.失業者の生活支援と再就職支援
(1) 雇用保険給付の拡大と教育訓練給付の拡充
雇用保険受給対象者のうち、非自発的離職者に対する給付日数を最低210日以上に延長すること。
また、非自発的離職者は、この雇用保険給付期間に加え、最大1年間の教育訓練給付を受けるようにすること。(国)
(2) 職業能力開発事業の抜本強化と訓練者の生活支援
2兆円規模の緊急能力開発基金を創設し、離職者はもとより、学卒未就業者、自営業廃業者に対する能力開発事業の実施や訓練期間中の教育訓練給付・所得保障給付を行うこと。また、委託訓練先については、業界団体、地域労使団体、大学、研究機関等まで対象を拡大すること。(国)
(3) 求人企業等に対する求職者の職場体験事業の創設
求人企業と求職者の仲介機能を高め、ミスマッチを縮小するため、職場体験事業を創設し、求職者に「職場体験啓発奨励金」(仮称)を支給すること。(道)
(4) 雇用に係わる助成制度の見直し
雇用に係わる助成金、奨励金の利用促進を図るため、「公共職業安定所の紹介」要件の撤廃や関係書類の郵便受理など見直しを図るとともに利活用事例集の発行など周知、徹底すること。(国)
3.職業相談・紹介サービスの体制確立と拡充
(1) ハローワークの土・日窓口の開設
離職者、失業者に対する職業相談、職業紹介サービスを充実するため、ハローワークを土曜、日曜日も開所すること。(国)
(2) 市町村の求人・求職の取り次ぎ機能の強化
離職者・失業者の全道的な広がりを踏まえ、インターネットの活用や交通の不便な市町村を地域指定し、求人・求職の取り次ぎや通報・周知事務や無料職業紹介事業を実施すること。(国・道・市町村)
4.緊急の雇用創出策の実施
(1) 政府や自治体主導により、福祉・介護、環境保全、教育・保育などの社会的サービス事業の拡大、および住宅・施設のバリアフリー化などを積極的に展開し、雇用創出を図ること。(国・道・市町村)
(2) 本年度で終了する「緊急地域雇用創出特別交付金」制度を改善・延長し、離職者や地域の実情を踏まえた雇用創出事業を展開すること(国・道・市町村)
(3) ポスト5万人の雇用開発プランの策定に取り組むとともに、策定に際しては、212市町村ごとの雇用創出計画を基礎にし、計画を立案すること。
また、計画には、雇用のみならず、社会政策として道や市町村が講じるべきセーフティネット等を折り込んだものとすること。(道)
5.離職者・失業者の援護、生活対策について
(1) 労働相談事業の充実を図るとともに、急増する離職者・失業者をメンタル面で援護するため、専門的なカウンセラーを増員すること。(国・道)
(2) 離職者・失業者に対する医療、出産、教育、冠婚葬祭などの生活資金融資制度を拡大すること。(道)
(3) 非自発的失業者の住宅ローン返済については、住宅金融公庫の「返済方法の新特例」に準じて、民間金融機関にも返済延長等の返済条件の変更を行わせることとし、それによって生じる損失について政府が補填する制度を創設すること。(国・道)
(4) 離職者・失業者の子弟が継続して高校、大学等で教育を受けることができるよう、授業料の軽減、奨学資金の貸付制度を改善すること。(国・道)
(5) 離職による医療や年金給付に関する相談体制を確立し、継続や市町村国民健康保険、国民年金への移行と保険料の減免措置など適切に対応すること。
(国・道・市町村)
(6) 生活保護による自立支援
雇用保険受給終了者や無年金者、少額年金受給者などの生活に困窮する失業者に対し生活保護を支給し、自立支援を図ること。(市町村)
6.建設産業及び関連労働者の雇用対策
(1) 地域の産業・雇用構造改革(中長期的対応策)
公共事業に依存した建設産業中心の産業雇用構造から第1次産業の新たな発展にむけた支援サービス業や介護福祉、観光、IT分野など、新分野における事業・雇用創出を推進するため、初期投資の軽減や人材育成(建設労働者の職業転換訓練)等について、強力に支援すること。
特に、建設業の農業分野などへの進出を促進する施策として、農業生産法人の資格取得に関する規制緩和、技術取得支援などを進めること。(国・道・市町村)
(2) 公的直接雇用政策の実施と民間建設投資の創出(短期的な対応策)
建設投資の縮減に伴う臨時応急的な雇用の受け皿を地域で確保するため、「緊急地域雇用創出特別交付金」などを活用しながら、農林漁業や観光と連携した事業(いわゆる「ミドリの公共事業」など)を進めること。
・農業については、離職者の新規収納促進、法人化による雇用の確保、コントラクターやヘルパーなどの農作業支援業務の拡大を進めること。
・林業については、間伐、除伐事業など森林景観の整備、自然観察路環境美化など森林利用施設の管理を進めること。
・水産業については、海岸における流木やゴミなどの清掃、遊魚者等の漁港利用に関する普及啓発を進めること。
・観光については、ホームトレッキングコースの整備など体験型観光の基盤整備推進、アウトドアインストラクターの養成のための研修を進めること。
また、劣悪な公営住宅の改良や、庁舎や中心部のバリアフリー化を進めるとともに個人住宅のバリアフリー化など、リフォーム需要を喚起するため、融資制度を拡充すること。(国・道・市町村)
(3) 季節建設労働者に対する職業訓練と教育訓練給付の支給
未就職の季節建設労働者を支援するため、市町村自治体が職業訓練教育施設を開設するとともに、受講者に対し、教育訓練給付を支給すること。
(国・道・市町村)
以 上