政策調査情報

第22号 2004.12.10
 
内容;所得税の定率減税縮小・廃止反対運動
 
■定率減税の縮減・廃止問題の動きと問題点
@ 政府税制調査会が11月25日、2005年度の税制改正答申。定率減税は、2006年度までに廃止すべきだと提言した。ただ、経済への影響を配慮して、実施は段階的に行うのが適当とし、05年度からの縮減を打ち出した。与党税制調査会が具体的な数字を盛り込んだ議論を行い、年末に決定する。
  定率減税は個人の所得税(国税)と住民税(地方税)を、それぞれ20%(最大25万円)、15%(同4万円)軽減するもので、1999年に小渕内閣の景気対策の柱として導入された。
A 年間減税規模は両税合わせて約3兆3千億円になる。完全に廃止されると、給与年収1千万円の夫婦と子供二人の世帯では、年間約18万円。年収500万円の家族4人・専業主婦世帯では、年間3万5千円の税負担増になる。
B 政府税調は、現在の経済状況が99年ごろに比べて著しく好転したことを廃止の理由に挙げている。しかし、ようやく回復してきた景気の足取りが万全ではなく、不透明感が増しているのが最近の状況である。
C 定率減税の縮小・廃止について、竹中経財相は(1)景気の先行き不安の解消(2)税負担が過大でない―ことが実施の条件になると指摘している。中でも、景気の動向については特に慎重で、「景気ウォッチャー調査では、不安感も出ている」と懸念を示し、企業や消費者の心理を見極めるべきだとしている。
D 国の財政が危機にある中、その再建のために増税策をとろうとの狙いだが、財政再建のために肝心の経済がおかしくなるようなことがあっては本末転倒で、景気回復・経済の状況の好転がなくして、財政再建も進まないのではないか。
 
■連合の取り組み
@政府税調「平成17年度の税制改正に関する答申」に対する談話発表(11月25日)
A経済運営および2005年度予算編成に関する連合と自民党との政策協議で、笹森会長は「定率減税の縮減・廃止は行うべきではない。勤労者の可処分所得は減少を続け、年金保険料の負担も増えている。恒久減税法は定率減税廃止は経済情勢の好転と抜本的税制改革が条件としており、問題がある」と反対を表明した。(12月1日)
  ※この他、民主党、公明党、社民党にも要請
B連合北海道は定率減税の縮小・廃止問題で自民党税調委員宛の要請文送付を指示(12月7日)
C連合北海道は定率減税の縮小・廃止問題で、第3定例北海道議会ならびに市町村議会において、意見書採択を緊急指示(12月8日)
D第3定例北海道議会において意見書採択(12月10日)
 
■関連資料
資料1
連合発 談話 第08-00068号
2004年11月25日
日 本 労 働 組 合 総 連 合 会
事 務 局 長  草 野 忠 義
政府税調「平成17年度の税制改正に関する答申」に対する談話
1. 本日、政府税制調査会は、「平成17年度の税制改正に関する答申」を取りまとめた。答申は、深刻な財政状況を打開するための増税路線に走り、しかも、その中身は産業界や高所得者層に配慮し、中低所得者層をはじめ個人に対してより多くの負担を押し付ける内容であり、到底容認できるものではない。
 答申では、いわゆる定率減税について、2006年度を目途に段階的に縮減・廃止することを明記した。しかし、定率減税を所得税の特例措置として規定した「恒久的減税法」では、所得税の最高税率や法人税率の引き下げも特例措置としている。今回、定率減税のみを縮減・廃止し、同じ特例措置である所得税の最高税率や法人税率について、全く議論をせずに継続しようとしている。
2. 勤労者世帯の可処分所得も、定率減税を導入した当時から約1割減少したままである。その上、今年10月からは年金保険料の引き上げが強行されている。景気の持続的な回復には個人消費の回復が不可欠であり、いま定率減税を縮減・廃止すべきでないことは明白である。
 現在の日本経済は、大企業を中心とする景気回復であり、なかには史上最高益を見込むような企業も見られる。しかし、経済の巡航速度を表す潜在成長率は、ようやく定率減税を導入した1999年時点まで戻ったに過ぎない。産業間、企業規模間、地域間の業績には格差があり、個人所得や消費の格差拡大も進んでいる。
こうした状況を踏まえれば、まず先に、法人税率や所得税の最高税率に関する特例措置から見直すべきである。連合はこうした点を繰り返し主張してきた。これを無視した答申は、景気回復を危うくするだけでなく、拡大が懸念される経済社会の二極化を容認するものと言わざるを得ない。
3. 国から地方への税源移譲については、所得税の一部を住民税に移譲し、住民税率をフラット化することが掲げられた。基本的枠組みは連合の要求に沿うものであるが、税源移譲後も住民税と所得税の合計負担が変わらないような措置が不可欠である。その上で、中低所得層に配慮すべく定率減税を所得税の税率構造に反映させ、同時に所得税の最高税率を引き上げることによって、税制が持つ所得再分配機能を強化すべきである。
 消費税については、複数税率の導入は税率が一桁の間は行わないとしている。しかし、消費税が持つ逆進性は税率に関わらず改善すべきものである。複数税率など低所得層への配慮や、免税点や簡易課税制度の更なる見直しとともに、インボイス制度を導入すべきである。
4.引き続き連合は、定率減税の廃止に強く反対し、定率減税の制度化に向けた取り組みを強めるとともに、不公平税制の是正や、地方分権を支える税源移譲の十分かつ確実な実施を求め、組織を挙げて取り組んでいく。
以上
資料2
(与党税調委員要請書)
「定率減税の縮減・廃止」の反対について
 
 日本経済は回復基調にあると言われておりますが、一部企業の好業績が牽引しているにすぎず、肝心の個人消費を含め、未だ持続的な成長軌道に乗ったといえる状況ではありません。北海道では今なお、高失業率のもと個人消費は冷え切った状況が続いており、地域間、企業規模間、業種間、雇用形態の違いによる「格差」が拡大し、景気回復はどこの国の話かと思える状況です。
 
 先日、政府税制調査会は、いわゆる定率減税について2006年度を目途に段階的に縮減・廃止することを明記した答申を公表しました。
 恒久的減税法では「わが国経済の状況党を見極めつつ抜本的な見直しを行うまでの間、所得税法および法人税法の特例を定めるもの」としており、制度見直しは抜本的な見直しが前提となっているはずです。しかし、政府税制調査会では、あたかも「定率減税縮減・廃止ありき」で議論が進められ、そのまま答申に盛り込まれましたことは、法の前提を無視しており、遺憾と言わざるを得ません。
 
 われわれ働くものは、国際競争力の名のもとに賃金が抑制され、可処分所得は定率減税導入時と比較して1割も減少しています。また、先般の配偶者特別控除の廃止や年金保険料の負担増などの制度変更に伴い、さらに可処分所得が減少することが明らかとなり、生活の将来不安は増すばかりです。そこに加え、定率減税の廃止はもとより縮減でも実施されたならば、働くもの家計はさらに逼迫し、そして、定率減税の縮減・廃止は、経済の冷え込みと一層の低迷を招く、誤った政策になることは必至です。
 
 つきましては、勤労者の生活を破壊する「定率減税の縮減・廃止」を是非とも回避するようよろしくお願い申し上げます。
以上
 
資料3
所得税等の定率減税縮減・廃止に反対する意見書案
 
 政府税制調査会が11月25日、定率減税の廃止などの必要性に言及した2005年度の税制改正答申を小泉首相に提出した。 最大の焦点であった定率減税は、05年度から段階的に実施し、2006年度までに廃止すべきとしている。
 
 定率減税は所得税(国税)と住民税(地方税)を軽減するもので、1999年に恒久減税として、小渕内閣の景気対策の柱として導入された。 年間減税規模は両税合わせて約3兆3千億円になる。完全に廃止されると、廃止の影響の大きい中低所得者世帯では、所得税・住民税の税額が2倍強も上乗せされ、年収500万円の家族4人・専業主婦の世帯では、3万5千円の増税、年収1千万円の夫婦と子供2人の世帯では、年間約18万円の増税となる。
 
 勤労者の可処分所得も、定率減税を導入した当時から約1割減少したままである。そして、今後は、配偶者特別控除一部廃止、年金課税強化、年金保険料・雇用保険料の引き上げ等国民負担増が続く。政府税調は、現在の経済状況が99年ごろに比べて著しく好転したことを廃止の理由に挙げているが、景気動向は不透明な状況にある。景気の持続的な回復には個人消費の回復が不可欠であり、いま、定率減税を縮減・廃止すべきでないことは明白である。
 国の財政再建のために増税策によって、 肝心の経済がおかしくなるようなことがあってはならない。
 よって、国においては、所得税等の定率減税の縮減・廃止を行わないよう要望する。
 以上、地方自治法第99条の規定により提出する。
 
   年  月  日
 
衆議院議長
参議院議長
内閣総理大臣
総務大臣
財務大臣
経済財政政策担当大臣