北海道の地域医療を
考えるシンポジウム
〜今、地域医療の崩壊が始まっている〜
2008年2月16日(土)13時〜16時
札幌プリンスホテル「国際館パミール」6F
主催 北海道の地域医療を考えるシンポジウム実行委員会
■連合北海道 ■民主党北海道 ■自治労北海道本部 ■自治労全道庁本部 ■北海道高齢・退職者団体連合 ■北海道医療
次 第
1.開 会
2.主催者代表あいさつ
3.基調講演
桜井 充 氏 民主党参議院議員
河合 裕秋 氏 北海道保健福祉部保健医療局長
4.パネルディスカッション
コーディネーター 逢坂 誠二 氏 民主党衆議院議員
パネラー 桜井 充 氏 民主党参議院議員
宮川 良一 氏 紋別市長
高橋 正夫 氏 本別町長
河合 裕秋 氏 北海道保健福祉部保健医療局長
城居 将樹 氏 北海道新聞社羽幌支局長
5.閉 会
☆講師プロフィール
桜井 充(さくらい みつる)
1956年5月12日生まれ
参議院議員(2期目 宮城選挙区)
■所属委員会等 予算委員会筆頭理事、厚生労働委員会
■民主党内役職 厚生労働部門歯科医療担当
東京医科歯科大学医学部卒業、東北大学大学院医学研究科博士課程修了。東北大学医学部付属病院第一内科医員、国立療養所岩手病院第二内科医長。
「病んだニッポンを治療したい」との思いから1998年の参議院選挙に立候補しトップ当選、2004年再選。
【基調講演】T
「地域医療にかかわる国の政策と民主党の考え方」
民主党参議院議員 桜 井 充
みなさんこんにちは、ご紹介いただきました民主党の参議院議員の桜井でございます。 今日は、前段にお話ししたいと思っているのは、この国でどういうことが起こってきているかということです。皆さんは医療の問題というと、厚生労働省が悪いようにお考えかもしれませんが、決して悪いのは厚生労働省ではありません。悪者は経済財政諮問会議と規制改革会議、竹中平蔵さんと宮内さんと、この2人によって医療がメチャメチャにされてきている。それにプラスしてアメリカだと思っています。今日は前段にそのお話しをさせていただきます。
日本の医療というのは、私はまだ現職の医者です。月2回だけですが不登校と引きこもりと拒食症の患者さんを診ていますが、その中で皆さんから聞くのは「3時間も待って3分しか診てもらえない」「患者の話を聞いてくれない」「人間らしく扱ってもらってない」とか、様々な不満を聞きますが、実は日本の医療制度というのは世界でbPです。アメリカの医療が、例えばERのような番組を見ていただくとすばらしいように思われるかもしれませんが、実はWHOの評価では、数年前は15位でしかありません。これは後で資料で説明します。日本は3時間も待たなければいけないということになっていますが、アメリカの場合は、民間保険が主体でして、その民間保険に加入されている方々は、まず民間の保険会社に電話をして、それで自分の症状を言って、その上で病院が指定されます。病院が指定されるだけではなくて、いつということも指定されますので、何日も待たされるということがざらです。私の知り合いが、お腹が痛くて熱が出て、実は盲腸だったのですが、その時に病院を紹介されたのが6日後です。ですから日本は「3時間も待たされて」と言いますが、病院に自分が行きたいと思った時に、行って何時間後に診察を受けられるかというのは、この時間は日本が世界で一番短いともいわれています。
イギリスの医療も「シッコ」の映画をご覧になった方はおわかりで、全額無料ですばらしいように思われますが、実はサッチャー政権の時代に医療費を大幅に抑制しまして、治療に年齢制限をかけてます。例えば65歳以上の人たちは人工透析を受けられません。ですから腎臓が悪くなった65歳以上の方々は死ねと言われているようなものですし、ガンと診断されても手術まで3ヶ月、半年待たされることはざらです。現在も入院が必要だと言われている方で85万人ぐらいベッドを待っている方がいます。こういう問題があってサッチャー政権からブレア政権に代わりました。イギリスの医療費は、ブレア政権に代わってから倍になりましたが、一度壊れてしまった医療制度そのもの自体を立て直すということは、極めて難しいということがイギリスで実証されてきています。いま地域医療が崩壊しつつあるということになっていますが、私はもう既に崩壊していると思っていますし、特に産科の医療等は崩壊したものだと認識しています。
戦後間もなくは、日本で出産すると、だいたい千人あたり50人ぐらい亡くなっていました。別に私は助産師が悪いということを言っているのではなく、戦後まもなくは産婆さんが取り上げることも多かった。そこの中で医療が整備されていって、今はどのぐらいかというと、千人あたりの死亡者は2.6人です。世界で一番少ない国です。私の高校の後輩の奥さんなどは、先日、590グラムで出産しましたが、今順調に育ってきております。アメリカの千人あたりの死亡者数が6.8人ですから、それから比較していただいても、日本の医療というのはいかにすばらしいのかということがおわかりいただけるのではないかと思います。
もちろん医療制度そのもの自体は世界一ですが、一方で言いますと、医療の質という点でいうと、本当に世界で一番かというと、お寒いところがあると思っています。それは例えば先ほど言いました3分診療という問題です。私はいま心療内科の医者として不登校の子供さんたちと向かい合っていますが、一人あたり30分ずつ時間を取っております。しかし30分取って私が診療した結果、病院に入る収入はいくらかというと、再診料+900円です。これは窓口負担ではありません。病院に入る収入は900円です。1時間私が診療すると、再診料合わせ4千円にもならない。これではとてもじゃないけど病院経営が成り立っていかないので、心療内科の医者になる人たちがいない。それから話を聞いても、結局は点数に反映されないので、それであれば検査をしてしまった方がいいとか、薬を出してしまった方がいいという医療が行われてきている。そのもの自体に問題がありまして、これは制度上の問題も含めて、医療の質は医療の質として別に考えていかなければいけない問題だろうと思っています。
医療費適正化の効果
限られた時間なので、早速本題に入っていきたいと思います。お手元の資料を見ていただきたいのですが、医療費適正化の効果というのがございます。この医療費適正化の効果というのは、これは適正化でも何でもなくて、医療費を削減したいと思っている人たちがいます。端的に言うとアメリカ政府、それから経済界、それからオリックスなどをはじめとする医療保険といわれるものを抱えている人たちは、この公的給付を抑制したいと思っています。
この医療給付、公的給付というのはいったい何かというと、例えば皆さん、医療費が1万円かかったとします。1万円かかると、皆さんは3割負担の方々は窓口で3千円を支払います。病院はそれだけではなくて健康保険組合なら健康保険組合から7千円を受け取るという形にして病院の収入が1万円になるというシステムになっています。その7千円の分を今後どんどん減らしていこうというのが、経済財政諮問会議からの答申です。それは何かというと、国家財政上難しくなってくるので、どんどん減らせと言っているのが経済財政諮問会議でして、平成27年には35兆円まで減らせと。もともとの予定が40兆円ですが、これを35兆まで減らせと。それから平成37年には、もともとの予定が56兆円だったのですが、これを42兆まで削減しろと言ってきました。厚生労働省としては、これではまともな医療ができないということで押し返しまして、このピンクの部分、平成27年度では37兆円、それから平成37年度で49兆円まで押し戻しました。しかし問題は、この赤い部分はいったい誰が埋めるのかということです。もしくは厚生省が押し戻していなかったら、この赤い部分とピンクの部分はいったい誰が負担するのかということです。医療費を35兆円、公的給付を35兆円や42兆円まで圧縮されてしまったら、今でさえ産科の医療が崩壊しています。それから小児科医も減ってきていますが、そういった採算の悪いところはみんな撤退してしまうことになります。そうすると、彼らが考えているのはいったい何のかというと、ここの部分に民間保険会社が参入できるようなものをつくっていきたいと狙っていることです。
今までアメリカ政府は郵政の民営化を望んでおりました。その郵政の民営化を狙ってきた最大の目的は、実は郵便貯金ではありませんで、120兆円と言われている簡易保険です。あの部分を何とか民営化して自分たちの民間の保険会社が参入していきたいのだという思いで狙ってきた。これが実現いたしました。その次に狙ってきているのが医療保険でございます。私は、民間の医療保険会社が来て、皆さんにとってプラスになるのであれば、これは本当に大歓迎いたしますが、アメリカの実態を見てみると、民間の医療保険会社が参入すればするほどアメリカの医療が酷くなってきているので、そういう点で阻止していかなければいけないという立場を取っています。
例えば財政上、民間の医療保険に入っていると、メディカルロスという言葉があります。メディカルロスというのは、皆さんから集めたお金を医療費としてどのぐらい給付するかというのをメディカルロスと言っています。アメリカの民間の保険会社は、メディカルロスが75%です。つまり残りの25%、皆さんから集めた25%は何かというと、その民間の保険会社で働いている人たちの莫大な給料、それから株主に対しての配当、それから政治家に対しての献金、これに使われています。株主の配当を増やさないと、ウォールストリートでトリプルAの格付けをもらえませんから、とにかく給付を押さえるような方向でずっとやられてきています。
一方で、民間の保険会社に入れない、高齢者であるとか低所得者であるとか、さすがにアメリカ政府も何とかしなければいけないということで、メディケアとメディケイドという制度をつくりました。このメディケアとメディケイドのメディカルロスはいくらかというと98%です。つまり集めたお金のほとんどを医療の給付のために使ってきています。これ一つ取っておわかりの通り、実は医療に関していうと、民間でやるよりも公的な部分でやった方が遙かに効率的だということになるわけです。
いま日本で民間保険会社が医療保険と名の付くものを売っていますが、こんな保険に入る必要性は実はありません。それからこの保険会社のメディカルロスは30%から40%、つまり残りの6割は、皆さんからお預かりしている保険料は他のものに使われているということです。テレビのコマーシャルをなぜあれだけうてるのかというと、それだけの利益が出るからテレビのコマーシャルをうつことができます。
いまアメリカ政府・財界が考えているのは、この民間保険会社にここの部分を担わせていきたいという戦略を立てて、そしていま日本政府に様々な要求をしてきています。
対日要望書による改正項目
これまでアメリカからいろんな要望が出されていて、どういうのが変わったのかというのが一覧になっています。本当は一つ一つ説明したいところですが、とにかくわれわれがいまいちばん酷いと思っているのは労働者派遣法でして、これもアメリカ政府から1993年に日本の労働市場の問題を指摘されて、いわゆるポジティブリストからネガティブリスト方式というのに替えられました。どういうのかというと、日の丸をイメージしていただきたいと思いますが、昔の日本の派遣業は、日の丸の真ん中の赤いところだけ派遣業として認めますという制度でした。これだとなかなか人の移動ができないからというのがアメリカの言い分でしたが、ネガティブリスト方式、つまり赤いところ以外、白地の部分だけを全部派遣労働者で賄えるようにするべきだというのがアメリカの言い分で、これに合意しました。1996年に合意して、1999年から労働者派遣法が変わりました。2003年に大きな改正があって、製造業も派遣労働者として認められるようになって、つまり日の丸でいうと、赤い部分をどんどん狭くされられていますから、そうすると派遣業で認められる業種が増えれば増えるほど派遣労働者が増えて、現在皆さんご案内の通り3分の1の皆さんが非正規雇用になって、年収200万円以下の人たちが1200万人を越える社会になりましたが、これも最初、言い出し始めは、実はアメリカ政府から言われてそれに了解したからこういうことになっています。
保険の第3分野
現在、景気が悪い原因の一つに建築基準法の問題がありますが、これも1990年にアメリカの林産物を日本に輸出促進したいということで90年に要求されて、結局合意していまのような状況になって来ています。そこの中の一つが、実は医療に大きく関係しているのが第3分野、これは保険の商品ですが、第3分野の自由化と言われているものです。
第1分野というのは生命保険です。第2分野というのは損害保険で、昔は生命保険会社と損害保険会社はバラバラに商品を売っていました。そこの間に入っているのがいわゆる第3分野と言われるガン保険とか医療保険とか介護にあたるものですが、これは極めて隙間産業と言われていましたが、いますごく大きくなってきています。いまは第1分野と第2分野、第3分野、誰でもどの商品でも売れるようになっていますが以前は違っていました。
第3分野自由化の流れ
アメリカから言われまして、日米保険協議というのが1990年から開始されました。94年に合意したのですが、どういう合意をしたのかというと、第1分野と第2分野は、どちらの企業がどの商品を売ってもいいですと。要するに生命保険会社がいわゆる自動車の損害保険を売っても構わないというルールになったのです。
ところがこの時、こういう約束をさせられました。保険の第3分野は、外国保険会社の依存度が高いため、その自由化を見送り、2001年まで継続としますと約束させられた。これはどういうことかというと、日本の企業は、この日本の国内で、いわゆるいま医療保険と言っている民間の医療保険や介護の保険を売ることができないという約束をアメリカ政府としたのです。日本国内で、日本の企業が商品が売れないという約束をさせられているのです。それで96年に保険業法が改正されて、生損保の相互乗り入れが実現しましたが、第3分野が自由化されなくて、いま2001年からやっと日本の企業も第3分野を売れるようになりました。これで一つシェアを獲得して行くわけですが、それだけではありません。
ソルベンシーマージン比率規制と外資系保険会社による買収
これは懐かしい中堅の生命保険会社ですが、これがソルベンシーマージン比率規制という規制によって全部つぶされていきました。このソルベンシーマージン比率というのは、健全性と言われましたが、これは健全性でも何でもなくて支払余力といわれるものです。細かいことは省略しますが、何れにしてもアメリカの言い分は、このソルベンシーマージン比率が低くなればなるほど危ない企業だから、いまのうちに何とか処理した方がいいと言ってつぶすのかと思ったら、つぶすのではなくて全部外資系の保険会社が買い取りました。この時に企業を買い取っただけではなくて契約者そのもの丸ごと引き受けを致しました。
つまり生命保険のおばちゃんたちが一軒一軒歩いて足で稼いだものを網をかけて一網打尽にしてしまったというような格好で、それで顧客をまた増やしました。結果どうなっているのかというと、現在、民間の医療保険と言われるもので40%が外資の保険ということになっています。
こうやって民間の医療保険が当たり前なんだという感覚を植え付けておいて、そしてさらに公的給付を抑制してそこに民間保険の出番をつくって来ようと、本当に極めて戦略的に行っています。皆さん、あえて名前は出しませんが、ある労働組合の取り組みが何かというと、アメリカンファミリーにみんなで加入しようという運動でした。私はメチャクチャ怒っております。こんなことを何で労働組合でやっているのかというと、はっきり申し上げておきますが、労働組合の幹部がアメリカンファミリーに天下りするために、顧客確保のために労働組合の人たちが使われている実態があるからです。月々2千円か3千円の保険料かもしれません。でも3千円の保険料で年間3万6千円です。10年も貯めれば36万円になります。いまの高額療養費制度だと、日本の医療制度の場合には、100万円かかろうが1000万円かかろうが、所得が53万円以下の人ですと9万円もかかりません。10万円かからないぐらいです。つまりこんな保険に入る必要性はありません。
もうちょっとインチキをばらしておきますと、例えば健康で10年間この民間保険を使わないと何とか祝い金も出るのですよ、うれしいですねと言っているコマーシャルがありますが、あの保険料は、あの制度が入っているものと入っていないものと比較すると、10年間で15万保険料が違います。つまりもともと皆さんが払っていたものを使わないからお祝いとして出すのではなくて、別途にしかも余分に集めておいて、さも皆さんにとってよかったでしょうと言って商品を売って来ています。こういう話ばかりしているから外資から怒られているのですが、でもこれが実態です。ですから民間保険などに入る必要性がないような制度設計にすればいいのに、いまの政府のやり方というよりも、竹中さんや宮内さんたちのやり方は、公的給付を抑制して、民間保険の出番をつくろうとしているわけです。
第1回規制改革要望 主要要望主体別 閣議報告項目数
私が言っているのが嘘ではないというもう一つの根拠をお示ししておきますが、規制緩和というのはいったい何のためにやっているのかというと、この国の制度を変えて国をよくしていこうというためのものではないと私は確信しています。それはなぜかというと、これは平成15年、やっと情報が公開されるようになった時の第1回規制改革会議の要望ですが、1位が日本経団連、2位がリース事業協会、3位がオリックスです。4位以下、ここは関係ないのですが、右から2番目の閣議報告項目数というのがあります。上から12、15、12と、その4番目から1件しかない。上の3つでこれだけ採択されています。経団連にオリックスの宮内さんが入っています。リース事業協会の会長は宮内さんです。民間企業オリックス、これは宮内さんが社長だったか会長だったか忘れましたが、とにかく事実上トップです。
つまり彼らは自分たちがこういう制度を変えたら有利になるという制度をあげておいて、この議長がオリックスの宮内です。つまり規制緩和などというのは、自分たちの企業の利益が出るように、ここの会議に参加している人たちがその制度を勝手に変えていっているのが規制改革会議だと思っています。
仙台のタクシーの運転手さんたちはメチャクチャ大変です。規制緩和でこれはシャレではなく1000台増えまして、それで運転手さんたちの給料は30万円から15万円ぐらいになりました。だけどこれをやったのもオリックスです。なぜかというと、オリックスはタクシーのレンタルリースをやっているので、台数が増えれば増えるほど儲かる。矢崎総業の社長もいました。この人は何かというと、タクシーメーターをつくっているところです。つまりタクシーの台数が増えれば儲かる人たちがタクシーの規制緩和をやってきている。
この規制改革会議や経済財政諮問会議に農業の代表者がいますか。中小企業の代表者がいますか。医療の関係者の代表者がいますか。誰もいません。こういう代表者がいないところだけみんな苦労しています。そうではないところの人たちだけが利益を上げてきて、いまのすばらしい日本の医療制度を壊して来ている。これが日本の政治の実態です。ここを変えていかない限り、いまの例えば医療制度にしても、農業の問題にしても、地域の経済にしても、解決していかないだろうなと思っています。
国及び地方の債務残高
日本の財政が確かに悪いのです。これが世界の国の借金を対GDP比、国内総生産で割ったグラフです。この国内総生産でなぜ割らなければならないのかというと、例えば10万円の借金をしていて、月々10万円で生活している人と、100万円で生活している人と、1000万円で生活している人では借金の重みが違うので、経済の規模で補正する必要性があります、そうすると日本はどうなっているかというと、圧倒的に世界の中で第1位で、これだけ見ると財政再建をしなければならないということになります。
但し、野党の私が言うのも変な話ですが、日本の国債はそう簡単には破綻しません。その根拠は、どうやって借金をして、誰がその債券を買っているかというのを3つに分類されます。日本の国債は、日本の円で自国の通貨で借金をして、自国民がほとんど買っています。こういった債権は破綻していません。アメリカの債権はドル、自国立て通貨で借金をして、他国民も買っています。アメリカ人以外、日本や中国はずいぶん買い出されていますが、その債権も破綻したことがありません。アルゼンチンの国債は、自国立て通貨で信用力がなくて借金ができませんでした。ドルで立てました。他国立て通貨で自国民が買えない。他国民がみんな買ったこの債権は破綻していますが、それ以外は破綻していません。ですからいま日本の財政が確かに決して良いわけではありませんが、言われるほど危ないわけではありません。いま財政再建と言っていますが、それよりも次の産業をどうするか、そのことをきちんと考えて行く方が先だろうと思っています。
何れにしても、今日の肝心な部分のポイントは何かというと、こうやって増えてきている借金は、医療費が、社会保障負担が重いからだというのが政府の言い分です。しかし後でお話ししますが、アメリカにしてもフランスにしてもイギリスにしてもドイツにしても、日本よりは遙かに医療費が多い。遙かに医療費の多い国々でどうかというと、財政は決して悪くありませんので、医療費を悪者にいわれる必要性は全くないと思っています。
OECD加盟国の医療費の状況(2005年)
日本の医療費は本当に多いのかというと、先進国でついに最低になりました。現在はアメリカが15.3%で世界で第1位です。これは対GDP比当たりです。それからフランス、ドイツが10%を越えました。イギリスはブレア政権が発足する前は世界で最低でしたが、ブレアさんになってから医療費を倍にしまして、現在は日本を抜いて世界で18位。日本はいま世界で22位でしかありません。こんなに低い日本であるにもかかわらず、さらに医療費を抑制しろと言ってきているのは経済財政諮問会議です。
英国に於ける近年の医療費支出の推移
経済財政諮問会議の人たちは、医療費を増やすと財政が悪くなると言っていますが、イギリスでは決してそういうことは起こりませんでした。この一番上のグラフのブルーの部分ですが、これが医療費でして、ブレア政権から急激に増えました。倍近くになっています。じゃあこの借金はどうか。この借金の比率が横目盛りですがほとんど増えていません。イギリスは全額税方式です。よく言われるのは、こうやって増やしても、税じゃないからだと言われますが、イギリスは全額税方式です。税金をこれだけ投入しても国家財政は全く悪くなっていません。理由は2つだと思っています。
一つは、医療というものを産業として捉えたときに、極めて幅広だということです。これは薬だけではなくて医療器械であるとか、雇用の面でいっても相当幅広なので、そういう点で産業として捉えてきたときには相当な雇用になるし、相当な経済効果を産むと考えているからです。
もう一つは、将来の安心なり安全なりを提供するということによって、例えば医療費がいくらかかるかわからないからとにかく貯金をしておきましょう。保険に入りましょうといってお金を使いませんが、将来こうやって大丈夫ですよという保証をしてあげるということによって安心してお金を使ってこれる。そのために内需が拡大していく。様々な理由があると思いますが、少なくともイギリスで税方式でやっている国で医療費を増やしても、全く財政上の問題がありません。
日本の経済をやっている人たちは、こういう根拠を持って説明しない。何となくイメージだけでやっているから竹中平蔵みたいな三流学者が跋扈(ばっこ)していくのだろうと思っています。
公共事業と社会保障への国庫支出額/国内総生産(GDP)
これは、公共事業と社会保障にどれぐらい税金をつかっているかということですが、これを見ていただいたらおわかりの通り、緑色が公共事業ですが、日本一国だけなのです。公共事業費の方が遙かに税金が多い。但しこのイギリスと日本と違っているのは、日本はこの社会保障の部分は、保険方式も導入されているので、必ずしもそうなっていませんが、注目していただきたいのは、この公共事業のところです。
土地代を除いた建設費をドル換算して比較したもの
もう一つは建設コスト。なぜかというと、公共事業というと日本は土地の値段が高いからだと言われていますが、それじゃあ日本一国の建設コストとG7、先進7ヶ国、他の7ヶ国の建設コスト全部合わせたものと比較してどっちが多いかというと、日本一国の方が多いのです。
つまり日本の財政を圧迫しているのは、私は社会保障費ではないと思っています。こういったお金の使い方です。しかもこの中には、公共事業をやるときには建設国債を発行するのですが、借金の利払いのお金が入っていません。もうちょっと分かり易く言うと、皆さんは例えば住宅を3千万円なら3千万円で買ったと。住宅ローンを組みました。倍払うはずです。6千万円なら6千万円。この公共事業費は3千万円の分しか計上されていません。ですから実際は、もっともっとお金がかかっています。
各国道路投資額
道路はどうなのかというと、今いろいろ言われていますが、日本の道路予算はなんと8.2兆円あります。アメリカが15.3兆円で半分しかないと思われるかもしれませんが、一番下に国土の面積を比較してありますが、アメリカは日本の25倍の国土がございます。25倍の国土の国の半分の道路予算を計上しています。いま2.6兆円なくなるといわれていますが、もし2.6兆円なくなっても5.5兆です。フランスが3.3兆円、日本とほぼ同じ面積のドイツが2.5兆円、イギリスやイタリアは1兆円台です。こういう話をすると、日本よりドイツは道路が整備されているからだというのですが、国土面積あたりの道路の距離を表した道路密度というのがあります。道路密度は、日本は世界で一番でして、3.16もあって、ドイツは0.65でしかありません。
だから道路がない道路がないというのは全くの嘘です。何の道路が足りないのかというと、確かに高規格道路だけはドイツと比較すると3分の2ですが、それ以外の一級国道、二級国道、その他道路、このその他道路には実は林道と農道が入っていません。それでもこの数字ですから、道路の作り方が悪くて、いままで相当な無駄遣いをしてきたということがおわかりいただけると思います。
何れにしても、こうやって公共事業費の方にメチャクチャ金を使っていて、国家財政を悪くして、医療費を悪者にしてくるということそのもの自体がおかしいのではないかと思います。
WHOの総合健康達成度評価
先ほど申しあげましたが、総合評価で日本は世界一だと言いました。3つ要素があって、コストとクォリティとアクセスというものです。要するにどのぐらいの時間で診てもらえるか。お金をどのぐらい使ってないか。もう一つは、医療の質がどうかということでして、アメリカは実はいま4千5百万人の人が無保険なのです。民間保険に入れない人がいっぱいいます。それから高齢者であるとか低所得者であるとか、そういう人たちのためにメディケア、メディケイドというのが用意されているのですが、それに入れない人がいま4千5百万人います。この人たちの平均寿命がだいたい50歳ぐらいと言われています。
つまり医療を受けられないというのは、そのようなレベルにあるということです。
医師充足状況
地域医療のお話に入りますが、これは何の数字かというと、病院の医師定数を常勤医でどのぐらいの病院が満たしているかということです。今日は地元が宮城県で東北のデータと北海道のデータを持ってきましたが、医師定数というのは、どうやって定められているかというと、入院している患者さんたち16人に医者一人です。外来の患者さん40人に医者一人です。ですから分かり易く言うと、ベッドが160あって、外来の患者数が200人だと、まず160を16で割って10人。それから外来の患者さん200人を40で割って5人、だから常勤で15人の医者を配置しろというのがいまの医師定数です。
常勤の医者でその医師定数を満たしている病院がどのぐらいあるかというと、北海道で31.8%しかありません。あとは例えば大学からバイトで来るとか、そういうふうな人たちを合わせても実は60.8%の病院しか医者を満たしておりません。しかしいま申しあげた医師定数というのは、入院している患者、外来で診療している患者その人たち。ところがそこの中に手術をする医者も入っていません。検査をする医者も入っていません。当直をする医者も入っていません。ですから医師定数を満たしているといっても、メチャクチャ忙しいです。
私の働いていた病院は、医師定数を満たしてなかったこっちの病院の一つでして、私は外来の患者が70人ぐらいで、病棟が重症心身障害児の患者さん含めてひどいときは70人から80人ぐらい診ていました。はっきり言っておきますが、まともな診療などできるはずがありません。そういうような実態です。特にひどいのが、全国で83.5%ですが、この数字を見ていただけばおわかりでしょうが、東北とか北海道は本当に医者の数が足りません。いまやるべきことは、医者の数を増やすことです。
いままでなぜ医者の数を増やしてこなかったのか。理由は2つあります。一つは医師会が反対してきました。これはなぜかというと、医者が増えるということによって、医者のステータスが落ちるということを考えていて、医師会で医者を増やすなと言ってきたのが一つ。もう一つは、医者の数と医療費とずっと同じように相関してきたので、医者の数を増やすと医療費が増えるからと言う理由で抑制してきました。ですがもうそういう時代ではないので、医者の数を増やすように転換していかなければいけないと思っています。但しそれでも今すぐに地域医療として即戦力としてなるというわけではありません。つまり大学を卒業して2年間研修してと。いまから医者の数を増やしても、あと10年かかります。
そこでどうするかというと、例えばいま大学院に入る人たちが増えてきまして、大学院大学になって、現在1万8千人ぐらい大学の中に医者が大学院生としております。その医者に少なくとも半年ずつ地域の病院に行ってくれというようなことをお願いするとか、それから皆さん信じられないかもしれませんが、私は5年半大学から1円も給料をもらってないので、どこかでバイトしなければいけないという生活をしておりました。ですから大学病院で働いている医者に対して、ちゃんとした給料をわたしてやると、そこのところでやりくりすると、常勤医はもう少し増やすことができて、とりあえずの即効薬にはなるのではないかと思っています。
それから医療クラークというのがいま言われていますが、その医療クラークそのもの自体は、極めて有効だと思っています。私は外来をやっているときに薬の入力だけその人にやってもらったら、1時間半から2時間ぐらい時間が短縮できましたから、そういう点で言うと、医療クラークを置けばいいのですが、財政上厳しくて、いま公的病院の100%が赤字、民間病院の30%が赤字なので、大幅に保険点数を引き揚げるか財政的な補助をしない限り無理なのではないかと思います。
人口千人当たり臨床医師数
日本の医者の数は偏在偏在と言われていましたが嘘でして、日本は千人当たり二人ぐらいしかいなくて、世界で最低のレベルですから、絶対数を増やしてこないとどうしようもないということです。OECDの平均がだいたい3人ぐらいですから、あと10万人以上医者の数を増やさないと追いつかないだろうと思っています。
小児科、産科、婦人科医指数の推移
それから個別の案件ですが、産科の問題です。小児科が減っている問題だと言われていますが、決して小児科の医者が減っているわけではありませんで、こうやって激減しているのは産科だけです。理由は2つです。労働条件が悪いことと訴訟リスクが極めて高いからです。脳性麻痺という患者さんがいらっしゃいます。これは自然に生まれてくる人です。誰も悪いわけではありません。自然にそうなります。しかしこれを裁判やって医療者側が負けると、1億5千万円から2億ぐらい払わなければいけない。この脳性麻痺の患者さんが千人のうち一人ぐらいそういう人が生まれると言われていますから、そこで訴訟で負けるとお終いと。ですからそういうリスクがあって、産婦人科の医者になり手がありません。労働条件が厳しいのは、いつ出産されるかわからないので、365日24時間拘束されていますから、ですから当然のことながら産科のなり手が減っていくのは当然だと思っています。
将来希望する科
もともと産科のなり手がないのかというとそうではなくて、ある学年の時の将来希望する科というのを調べたものがあるのですが、実は学生時代は9人も産婦人科の医者になりたいと思っていたのです。ところが研修を終わってきたらどうなったかというと、誰もいなくなりました。ですからいま言った部分をどう改善してくるのかということが極めて大事なことでして、いまわが党の中で無過失保証制度と言って、リスクを軽減するような施策をつくっているところです。
生涯医療費
最後に二つ。一つは医療費、いま皆さんいくら使っているのか。これは皆さんにお願いしなければならないことです。実は生まれてから死ぬまで2千2百万円医療費を使ってきています。70歳以上でなんと半分の1千百万円使っているのです。これは年を取って病気になりやすいことは認めますが、大変厳しい言い方をするようですが、老化と病気の区別が付いておりません。私も最近固有名詞をしょっちゅう忘れてきますが、年を取ってくれば物忘れが激しくなって来るのは当たり前でして、これは病気ではありませんから。それからちょっと動いて息切れをしてくるのは、病気ではありませんから、ある程度諦めなければいけないのですが、諦めきれない患者さんと何とかしてあげたいという優しい気持ちなのか、儲けたいと思っているのかわかりませんが、なんとかできますからと言って薬を出したり検査をしている医療者側、このことが一番大きな問題だと思います。
もう一つ申し上げると、医療の最大の無駄は、高齢者の医療の中のいわゆる※スパゲティ症候群(輸液ルート、導尿バルン、気道チューブ、動脈ライン、サチュレーションモニタなど、身体中チューブやセンサーなどが体にさしこまれた重症患者のことを「スパゲティ症候群」と揶揄され呼ばれています)と言われている終末期ではなくて、医者の能力が落ちていて、診断がきちんとできない医者が治療し続けているというのが一番の医療費の無駄です。それはそうです、診断が違っていて、全然違った薬を出し続けるわけですから。ですからそういう点で言うと、医者の技量も上げなければならないし、患者さんたちにも努力していただかないと、この医療費そのもの自体全体を削減するというのは難しいだろうと思っています。
年齢階級別に見た一人当たりの所得
最後です。これは誰が負担するのか。いま高齢者の医療制度のところで、高齢者の皆さんにご負担を頂くのは、これはその通りだと思っていますが、ただもう一点わかっていただきたいことがあります。0歳児に所得があるのはなぜかというと、子供に4人家族の場合、6分の1所得移転したということを仮定してこういうグラフにしてきています。そうすると、これでおわかりの通り、再分配されると、当初所得は60歳を超えると急激に減りますが、再分配されると現役世代と高齢者の世代で、この際分配されているのは年金、医療、介護全部です。こういったものを勘案してくると、現役世代より有利になってきているということです。だから高齢者の皆さんの負担を増やしていいというのではなくて、改めて考えなければならないのは、社会保障というのは所得の再分配機能ですから。そうすると、年齢で区切るということではなくて、例えばいま国会議員でも70とか80の人でも国会議員になっていますから、そういう所得のある人たちと所得のない層ともう一度ちゃんと区別をして、所得によって再分配機能を持たせないと、現役世代の人たちがすごく苦労して子供が育てられないとか様々な問題が起こってくるので、そういうことも含めて医療制度全体を見直していかなければならないだろうなと思っています。
雑ぱくな話になりましたが、われわれは、医療制度を大きく変えたいと思っています。一つは、いままでのような医療費の抑制策を転換いたします。それから医者の数を減らしてきたこと自体も転換して、地域に対してきちんとした医療を提供できるようにしていきたいと思っています。
それから産婦人科や他のリスクの高いところは、無過失保証制度というのを設けて、そしてその上でリスクを軽減し、それから医者だけではなくて、例えば患者さんたちにしても、裁判で負ければ、先ほどの脳性麻痺の家族は1円ももらえないということになります。そうではなくて、その時点で国が社会保障政策のような形でお金が給付できるようなシステムにするということは、患者さんにとってもいいことではないかと思っています。
あとはパネルディスカッションのところで言葉の足りなかったことは補わさせていただきます。ご清聴ありがとうございました。
【基調講演】U
「北海道のすすめる地域医療政策」
北海道保健福祉部保健医療局長
河 合 裕 秋
ただいまご紹介いただきました北海道保健福祉部で保健医療局長を務めています河合と申します。桜井先生が全国、あるいは国際的な比較の中でお話をされましたが、私の場合は、北海道の状況ということでお話をさせていただきたいと思います。
1.本道の地域医療の現状
まず最初に北海道の地域医療の現状がどうなっているかということからお話をさせていただきたいと思います。
まず医師の数がどうなっているかというと、北海道にはいま12,300人の医師がいます。これを人口10万人当たりでみると、219.7人ということで、全国よりもほんの少しですが平均よりは上にあるということです。しかしながら、先ほどお話しにもありまあした、医師の養成数というものを抑制するという国の考え方があり、現在、北海道には3つの医科大学がありますが、全て定員は100人です。前は札幌医科大学は80人、北大と旭川医大は120人ということでしたが、札幌医大が100人に人数が増えましたが、あとの2つの大学は、20人ずつ定員が減になっているという状況です。
こうやって全国並ぐらいは人口当たりいると言っても、Aの表をみればよくわかるのですが、この12,300人のうち、その半分が札幌圏におられるということでございます。それから市と町村に分けてみますと、市の方は9割以上、郡部の方は1割もいないということです。そして北海道には21の第二次医療圏というものを設けていますが、最も人口当たり多いのは、上川中部圏306人、最も少ないのは根室圏で89人ということです。その差は約3.4倍ぐらいになるわけです。そして全国平均を上回っているといっても、上回っているのは、この21のうち3つの圏域だけです。地域偏在というのは確実にあるということはありますが、もう一つ、先ほどもお話があったように、絶対数が足りないのではないかと。これは最近では医師会の方でも医師の絶対数が足りないということを大っぴらに言うようになってきています。そうした中で、国では暫定的という言い方をして、各県に5人ずつの医科大学の定員増を認め、北海道の場合は、特別は事情があるということで15人の増ということで、来年度、今年の4月から札幌医科大学は100人を105人、21年度からは、残りのあと10人を旭川医科大学がまず5人、残りの5人の分を札医と旭医で配分をするというようなことで21年度からは15人の定員増が図られてくることになりますが、地域によっては医育大学が必要であるというような意見も出てきているようです。
全体的には医師の数はこうなっているわけですが、次に2ページでその中身について少しお話をします。女性のお医者さんが大変多くなってきているということです。
最近の医師国家試験の合格者の3分の1位が女性ということです。全体でも1割を超えるようになってきている。女性医師が増えるということは、これは別に何の問題もないわけですが、しかしながら結婚、出産、育児というようなことがありますので、フルタイムで働けるというわけにはいかないということからすると、やはりその分の人数だけではなくて、働ける時間でいくと、なかなか人数分だけにはならないということになります。産科、小児科に女性医師が多いということもあり。ですから女性医師が働きやすい環境をどのようにつくっていくかということが課題になってきます。
それからもう一つは、(C)にありますように、病院と診療所の推移がどうなっているかというと、病院の方は平成に入ってから約1割数が減っています。それから19人以下のベッドを持つ有床の診療所が平成に入って約半分近くに減っています。一方、無床の診療所は5割増しで、これにはいろいろな理由がありますが、地域の勤務医の先生たちは大変厳しい勤務環境にあり、9時〜5時で済む無床の診療所を開業指向する医師が増えているということも言われています。それから小児科、産婦人科の医師の推移ですが、こちらの方も本道においては、その数が減ってきているところです。
それから現在、医師の地域偏在という現実がありますが、従前は、地域の方に医師を派遣してきたのは大学であり、その存在は大変大きかった。その大学が派遣する力をだんだん失ってきているということですが、平成16年に卒後臨床研修制度が必修化されたという中で、卒後臨床研修医がどのように変わってきているかというと、16年のところは3分の2が大学に残っていた、3分の1がその他の臨床研修病院に行っていたと。ところがこれがたった3〜4年の間に逆転をして、大学の方に3分の1にしか残らなくなった。その他の研修病院に3分の2ということで、大学を支える人手が著しく少なくなっている。そういったことで大学病院を維持するのに大変な状況になっているということがあります。
もう一つ、北海道の医療機関の特徴として、全国と全道を比較したときに、規模の小さな病院がどうなっているかというと、全体で見ると100床未満の病院は、全国は39.5%、全道は41.8%になりますので、そんなに変わりませんが、これが公立の病院、市町村立病院だけに限って言うと、全国はそうした小規模の病院は3分の1、ところが北海道の場合は3分の2です。市町村数も180で、それぞれのところに病院を置くと、どうしてもその規模が小さくなるということは、やむを得ない部分もありますが、現実的にはこういう状況です。
それから先ほどもあったように、病院の規模によって医師の数がこれだけいなければならないというのがありますが、それを下回ると「標欠」という言い方がされます。これが平成18年度でみますと、市町村立病院の場合は標欠病院が約70%、それから充足率が70%以下の病院が約23%、医師の標準数が7割を切ると、診療報酬を削られますので、大きな痛手になります。ただへき地の病院などは医師の標準数を9掛けをしても良いというやり方があるので、これよりはもう少し緩くはなっていますが、こういった状況でして、地域にはお医者さんがいない。それから医療収入が得られないということで、大変厳しい経営状況に置かれているわけです。
2.北海道医療対策協議会の取り組み
こうしたことに対して、道としてどんなことを行っているかということですが、『北海道医療対策協議会』というものを設置をしています。これは去年の医療制度改革で「各県につくりなさい」ということになり、全ての県に置かれることになりましたが、北海道の場合は、それに先行して設置をしてきています。最初にやってきたことは、道内の各病院はそれぞれがこれまでに培ってきた様々な手だてによって、大学をはじめいろいろなところに医師の提供をお願いしてきた。しかしながら、それでは医師が確保できないというときに、他の大学ではどうだ、民間病院ではどうだということで、全体として調整するための医師派遣紹介連絡調整会議という機能を持たせてやってきたわけです。
しかしながら、それだけではなかなか将来的なことにまで結びついていかないということで、人材の養成について検討したり、あるいは自治体病院をどう上手く使っていくべきか、ということについて検討すべきであるということで、3つの分科会を設置しまして、それぞれ首長が座長になったり、あるいは病院の院長に座長になっていただいて、こうしたことを様々検討してきたわけです。
3.道の主な医師確保関連対策
そうしたものを活用しながら、現在の施策事業ということで言いますと、まず常勤の医師を確保するためにどんなことをやっているか、先ほど言いました『医対協』といいますが、そこで医師確保が困難な病院、公立の病院、診療所というところに対する派遣調整を行っています。要請件数もだんだん増えて、件数に対して人数も増えていますので、たくさん需要があるのですが、なかなか需要に対して応えることができなくなってきています。
それから札幌医科大学は、いま独法化されましたが、道立の大学ということで、ここに20人の枠を設け、4年間各市町村の方に医師を派遣して欲しいということでやってきていますが、なかなかここも20人まで出せるという状況ではなく、やっと14人というところです。しかし4年間行ってもらうということで、けっこう地域においては使い勝手がいいということがあるわけです。
それから自治医科大学の卒業医師を派遣しています。これは14名となっていますが、研修を受けている人もいますので、総数はもっと多い。6年間奨学金を貸して9年間の義務年限。そのうちの5年間は地域の医療機関で働いていただくということで、離島、あるいはへき地の方にも行って働いていただいています。
それから「北海道地域医療振興財団」。これは市町村や道などが、あるいは他の団体なども出資をして作っている財団ですが、ここでドクターバンクという制度を設けてまして、ここからも常勤医師を派遣しています。それから4つの事業につきましては、平成19年度から新たに取り組んだ事業ですが、道職員として医師を採用して派遣をしたいというように考えているわけですが、なかなか道職員になりたいという医師がいないというのが実態です。相当有利なものは付けているのですが、難しいところがあります。
それから短期の医師派遣では、先ほどのドクターバンクの中に短期間派遣する医師、それから定年退職をされたような医師、女性医師、とそれぞれドクターバンクを設けていますが、需要がたくさんありますし、もちろん常勤の方が良いわけですが、こういう短期派遣医師もかなり参加をしていただくような状況になってきています。また地方・地域センター病院からも医師派遣が行われています。
医師の養成の関係では、臨床研修病院等の連絡協議会というのを設けています。どういう研修をすることが研修医にとって魅力のある研修病院であるかということを協議したり、もう一つは、臨床研修医をできるだけ多く獲得するということで、これまで札幌、東京で説明会を開催をしてきていますが、東京の方は他府県も行っているので、この人数がだんだん減ってきている。今年度は大阪でも開催をしたいと考えています。
それから、総合医の養成支援です。※専門医(学会認定専門医(がっかいにんていせんもんい)とは、医学・歯学の高度化・専門化に伴い、その診療科や分野において高度な知識や技量、経験を持つ医師・歯科医師のこと。登録医、認定医、専門医、指導医など細分化された区分が設けられているのが一般であり、各医歯学系学会が認定・付与し、現在約50の学会が本制度を設け、のべ2万4千人ほどの医師・歯科医師が認定を受けている)が増えていますが高度専門医療ということで、そういう医師がいるわけですが地方に行けば、そんな特別専門ではなく、様々な病気を診ていただけるお医者さんというのが求められているのです。そうしたことで総合医を養成すると。総合医といってもプライマリーケア医、あるいは家庭医とか言い方はいろいろありますが、そういった医師を少しでも養成したいと考えています。
それから指導医養成事業というのがありますが、研修医が集まる病院というのは、良い指導医がいるところです。それから臨床の件数が多いところに若い研修医は魅力を感じますので、そうしたためにも指導医の養成事業を行いたいと思っています。また現在、来年度に向け医対協で協議しているものですが、1年生から6年生までの間、奨学金を貸して、その後9年間義務年限を果たしていただく。果たしていただければ奨学金は返さなくてもいいという仕組みです。これについては、先ほどの定員増の分についても適用があり、それから札幌医科大学は定員の中でもそういう5人分の地域枠ということで、先般、新聞に発表されましたが、今年は10人に対して13人の応募があり、そして8人の方が確保されました。せっかく10人の枠があるのだから、10人取ったら良いではないかということもありますが、しかしながら特別な目で見られるというようなことがないように、試験の点数などについても、より点数の高い人たちが誇りと自信を持って学んでもらえるということで8人ということになっているようです。
しかしながら、こうした奨学金制度では時間がかかりすぎる、10年もかかるぞということがあるので、大学院あるいは研修医に対する貸付金を2年間、あるいは4年間にし、それに見合った年数を地域で働いていただくというような仕組みも来年度に向けて考えていますし、また間もなく20日に予算が発表になりますが、この他にももう少し大胆な医師確保対策というものを打ち出して行きたいと考えています。
4.地域医療体制の確保に向けた包括的な地域医療政策の展開
私どもが医療政策を進める上で、制度設計をするのは国です。ですから都道府県としてもその立場での役割を果たして行かなければならないということがあります。先ほどの卒業臨床研修制度、あるいは診療報酬を決めるとか、様々なことについては国が決めているもので、その影響が出てきていることがあります。ですからもっぱら国にかかる分については、国に対して強く要請していかなければなりません。また道の中では「医師確保」が道政の大変大きな課題でありますので、昨年そのための専掌組織、「医師確保推進室」というものを設置して、専門に取り組んでいるところです。
また、医対協の中で議論いただいて、本別の高橋町長からも何だと言われた「広域化連携構想」もこれから地域で議論していただきながら進めていかなければならないと思っています。
関連予算ですが、いま約3億ぐらいのお金をかけ、もっぱら医師確保にかかる分については、この予算の中でやっていますが、来年度については、もう少し強化をしていかなければならないと考えていります。
限られた時間の中では雑ぱくな話しとなりましたが、後ほどの中でまたお話ができればと思いますので、よろしくお願いします。
<パネルディスカッション>
コーディネーター 逢坂 誠二(民主党衆議院議員)
パネラー 桜井 充(民主党参議院議員)
宮川 良一(紋別市長)
高橋 正夫(本別町長)
河合 裕秋(北海道保健福祉部保健医療局長)
城居 将樹(北海道新聞社羽幌支局長)
<逢坂衆議院議員>
みなさまこんにちは、衆議院議員の逢坂誠二でございます。今日の医療を考えるシンポジウムに大勢の皆様にお越しを頂きましてありがとうございます。今日こうやって土曜日の午後にもかかわらず大勢の皆様が来たということは、たぶん医療の問題が根深い、しかもそれに対する国民の関心ではなくて危機的なニーズというものがあるのだと思っています。
今週、実は国会の中ではこの医療に関して一つの出来事がありました。それは衆参与野党を越えて超党派の医療に関する議連ができ、参加人数が100名を軽く越えていると聞いています。私もその中に名前を連ねてはおりますけれども、これほどまでに国会の中でも日本の医療の危機を何とかしなければいけないという状況になっているのだと思います。
しかし、若干の危惧も私にはありまして、これほどまでに数多くの国会議員が党派を超えて医療を何とかしなければいけないという議連をつくったにもかかわらず、結果がもし出ないとするならば、それはそれでいったい日本の政治は何なのだという大きな責任も負っているような気もするわけです。そんな出来事が今週ありましたが、今日はこれからこの後4時までの時間、先ほど基調講演を頂きましたお二人に加えましてパネルディスカッションをして参りたいと思います。後段には皆様からの質疑もお受けするということで質問票を回収しましたので、さらに追加のある方がいたらサインを出していただければと思っています。よろしくお願いいたします。
それでは、まず最初に今日はお二人の首長、紋別市長と本別町長がいらしてますけれども、いまの市町村の現状といいましょうか、医療を取り巻く思い、考えみたいなものをお二人からそれぞれ7〜8分程度でお話を頂きたいと思います。最初に紋別市長お願いいたします。
<宮川紋別市長>
紋別市長の宮川でございます。いま司会の方からご紹介いただきましたが、4期市議会議員を務めまして首長になったわけですが、首長になって2年半ですが、本当に医療問題という部分が市長になった当初から大変な状況になって、議員のままでいればよかったなと後悔をしているところです。そうした中で私がちょうど首長になったのが平成17年ということで、16年から臨床研修制度が行われまして、医師不足が加速をしていったわけです。
まず地域を紹介しますと、オホーツクに面した人口2万6千人ほどの町ですが、このオホーツク第三次圏域の中の遠紋第二次圏域に属しているということになります。私どもの地域の二次医療圏といいますのは、紋別市と興部、雄武、滝上、そして西興部の1市3町1村です。この中で人4万200人ほどの人口ですが、面積が2,900平方キロメートル、だいたい香川県の1.5倍の面積があります。そんな中で紋別市に先ほど河合局長からお話がありましたが、道立病院が二次センター病院として医療を賄っているところです。
道立病院ということでので、道の管理局と連携を取りながら医師確保に努めているわけですが、まず医療崩壊が始まったのは産婦人科から始まりました。平成17年の4月から産科が引きあげられて、紋別市で西紋圏域でお産ができなくなったという状況になりました。そうした中で平成18年の1月に紋別市から隣町の遠軽町の厚生病院にお産のために帰ってきた患者を運ぶ途中、救急車の中でお産が行われたということがありました。私どもの救急救命士も初めての経験ということで、大変緊張した場面だったのですが、幸いなことに母子とも無事に救急車の中で出産ができたということで、本当に幸運だったと思っています。
そこから医療の崩壊が始まってきたわけですが、紋別にあります道立病院は、病床が220床の病院で、診療科目は18科あります。当然西紋地域で唯一の総合病院ですが、こうした中で産婦人科で今のようにお産ができなくなった。そして精神神経科、整形外科、皮膚科、泌尿器科、眼科、麻酔科などほとんどの常勤医師が引き揚げになり、平成16年当時は23人の常勤医師がいたのですが、今は12名ということになっています。その内訳は内科が5名、外科が3名、小児科3名、そして18年に救急車の中でお産が行われたということがあり、18年度の4月から産科の医師1名が配置され、経産婦の方と、あるいは救急の部分については何とかそこで処置をし、そして遠軽厚生病院に運ぶという体制ができました。
今回、北見の日赤病院の内科医が、全員退職されるというような報道がされましたが、この紋別道立病院も循環器の医師2名、そして消化器の医師2名という5名のうちの4名が退職をされるという状況になっています。一番困るものが循環器の医師2名が全くいなくなってしまうということで、人工透析をされている患者が、現在32名いるわけですが、1日おきに人工透析をしなければ生命にかかわるという状況です。この人工透析がこの4月からできなくなるということになっています。こうした中でいま医師確保の部分については、旭川医大あるいは札医大の方にお願いをしていますが、いっこうに目途が立たない状況にあり、いま道立紋別病院では、この患者さんをどうにか他に転院をしていただくための作業を一生懸命していますが、なかなか大変な作業ではないかと思っていますし、是非とも循環器の医師を1名でも常勤をしていただいて「人工透析だけでも…」という藁をもつかむ思いでいま取り組んでいるところです。
この様に総合病院でありながらも一桁台、8名程度の医師しか確保できないような状況になってしまいました。こうした中では救急医療もこの病院では受けられないような状況になってきますので、こうした部分については民間の医師も含めた体制づくり、緊急的な対応をしていかなければならない、といま取り組んでいるところです。
しかしながら、私どもやあるいは近隣の首長と一緒に旭川医大や札医大に行きますが、本当に行けば行くほど空しくなるといいますか、大変厳しい状況だけを知らされながら戻って来るという状況です。いま本当に地域医療が崩壊をしていっているわけですが、医療の崩壊が、地域全体が正に崩壊をしていく大きな原因になっているということですので、今日のこのシンポジウムについては本当に藁をもつかむ思いで参加をさせていただきました。よろしくお願いしたいと思います。
<逢坂衆議院議員>
ありがとうございます。最後の言葉が極めて印象的でしたが、実は医療崩壊が地域崩壊につながるという話ですが、本当に深刻な実態があると感じざるを得ません。
それでは本別の高橋町長、お願いいたします。
<高橋本別町長>
皆さんご苦労様でございます。十勝の本別町から今日は参加をさせていただきました。本当に改めて北海道は広いなと感じるのですが、その中で河合局長も大変ご苦労をされ、北海道の医療について北海道ができること、やらなければならないことを考えていただいているのですが、私どもは特に地域医療を担うということが、東京に行くとよくこういう話をされるのです。「燃料が上がって大変なんだよね。しばれて灯油も上がるしね。ガソリンも上がって車はなくてはならないから大変なんだよね」と言ったら「そうだよね、燃料が上がったら今度は電車で動いた方がいいよ」と。でも電車はない。100年続いた銀河線もなくなった。そこに一生懸命住んでいる人たちが、一つの拠り所が、医療がなければ生きていけないのです。生きていけない医療がいま危ないのです。そして次代を担う子供達を育てる大事な教育の場、人づくりの場の高校がいま危ないのです。一生懸命頑張って地域をつくってくれたお年寄りが、わずかばかりの望みを託した年金からたくさんお金が引かれるのです。
こういう状況になってきて「何とか公的資金」は格好がいいのですが、一般会計のわずかの隙間からそれぞれいろいろな手だてをして、頑張って地域をつないできたのが地方自治体なのです。でもそれが平成12年をピークにして交付税が思いっきり蛇口を閉められました。私のまちで約45億あった交付税、歳入の45%でしたから、100億あった一般会計が、今日ちょうど職員の皆さん方と最終調整が終わりましたが、実質58億になりました。約半分です。半分のやつもできなくて職員の皆さんに給料を減額して欲しいと頭を下げて、組合も大変です。町長に言われたら何でもokするのかと執行部は言われ、毎年連続ですから、それで何とか町民の皆さんに負担を頂いて、私、自称「日本一のボランティアのまち、協働のまちづくり」だと思っている我がまちです。でももう限界に来ているという状況です。医療も大変だし、老人ホームも大変だし、保育所も現業部門もいっぱい持っているからいろいろな意味で財政上大変だねと言ったら、そんなに大変だったら民間委託すればいいでしょうというのが東京です。言っているのは政治家です。民間委託できないから、民間の人も利益を出せないところだから、住むために最低限なくてはならないことだから、自治体が本当に住民の皆さんとしっかりとスクラムを組んで地域をつくってきているのがいまの現状です。改めてよく生きているなと思います。みんな懐からわずかばかりの一生懸命貯めてきた虎の子もいま出して、何とか地域を守って頑張ってということでしょう。
でも顔を見たらみんな元気です。全然暗い顔をしていない。本別の人というのはみんな元気だねと。「いい人いいまち活き活き本別」だから。「豆食べてまめに達者で元気なまち」だから。そして「みんなで支える福祉のまち」だから、自分の町を自分でつくろうという生き甲斐のある最高のまちだと思っていますが、「でも町長、そろそろ何とかならないかい」というのが町民の率直な意見です。こんなに頑張って一生懸命みんなでやっているのに、何とかならないのかと。ここで底を打って欲しいと。もう金なんてなくてもいいから、せめて安心して暮らせるようにならないだろうか、こういう切実な願いを一心に受けながら今まちづくりを何とか頑張っています。でも医療だけは、福祉だけは誰もやってくれません。自分たちがやらなければならない。でもそれにいつもいつも悩みの種はお医者さんがいない、足りないということでした。
何度も危機がありました。私のまちの本別の医師定数が、もとは120床ありましたから、平成12年、ちょうど介護保険がスタートするときに医療・保健・福祉の三本柱で新しい医療福祉ゾーンをつくって、そこに病院を60床にかえて、そして総合ケアセンターを真ん中に建てて、あとは民間ですが老健施設、これを全部3施設を3本柱を廊下でつないで、そして民間と行政が一緒になって、地域一体で町民の安心をしっかりとサポートしようということでつくりました。戦後60年間いつも医者がいないと言ってきました。でもその中でも唯一北海道のそれぞれの3つの大学が、厳しい中でも何とか地域医療を支えてくれました。一生懸命頑張ってくれました。いま私どもは特にこの大学がなければ私どもの病院はもうとっくになくなっていたと思います。そして残念なことに新しい研修医制度ができたとたんに、大学に行ってお願いしても医師は全然いないですから。いま宮川市長が言われたように行けば行くだけ、頼むということをためらうぐらいひどい。大学自体も大変な状況になっています。
なぜこうなってきたのか。やはり国の政策です。国の政策制度がこうしておきながら、大変だ大変だと言ってくれるけれど、かけ声は大変だけれども、具体的に何か出てきたかというと、何も出てこないというのが現状です。それではいくら泣き言をいっても、いくらこぼしても前に進まないから、十勝管内、帯広を入れると19の市町村があるのですが、18の町村で国保直診を持っている病院が8自治体あります。ここの首長が集まって何とか連携をしながらこの危機的な状況を少しでもみんなで乗り切っていこうではないかということで、十勝支庁の皆さんのご支援を頂きながら、そして河合局長にもご支援いただき、十勝ならではの広域のお話だとかそれぞれ共同でいろいろコストダウンできないか、いろいろな方向でいま方向を探っています。自ら動かなければどうしようもないことですから、そんなことを含めて一生懸命それぞれが努力しながら、これがもう少し軌道に乗ってくれば、診療所を開設している町村もありますからここも一緒になって頑張っていこうと思っています。
制度は制度として大変厳しい制度で、診療報酬改定のたびにどんどん地域の、特に国保直診が経営ができない方向に追いやられているということは、私は間違いのないことだと思っています。そして7対1に看護師体制をするということは、全く現場を無視したやり方だと思っています。いまドクターも足りないのはもちろんですが、今度は看護師の取り合いが始まっていますから、看護師がいなくて病院の診療科目ができないということも現実にそれぞれ近づいてきていることです。これだけ頑張っていて政策の中で少しは希望をもたせて欲しい。やはり望みを持たせて欲しいと思うのですが、残念ながらそういう現状になっていないということですから、桜井先生のお話を聞いて非常に私も勇気づけられましたし、こうして頑張って現場の声を、現場の状況を本当に熟知している先生方がいらっしゃるということは、非常に力強く思っていますので、宮川市長が言いましたが、ここに来て改めてよかったなと思っていますので、これからの私どもの地域でも一生懸命頑張りますから、ぜひ国の政策の中で国民に目を向けた政策をしっかり打っていただくように、陳情会ではありませんが、お願いしてちょうど7分になりましたので終わりたいと思います。
<逢坂衆議院議員>
どうもありがとうございます。地域はもう限界に来ているという話がありましたが「豆を食べてまめに元気」という話もありました。そして地域で独自に国保直診病院を持っている8自治体が、広域連携の方向をいま新たに考えているという前向きの話もありました。だかしかし、医師確保については限界もあるのだという指摘でした。
次に城居将樹支局長にお伺いしたいのですが、いままでの桜井さん、それから2人の首長、それから道からの話を聞いて、ある種、総合的な観点、そしてまた同時に羽幌は道立病院もあり、離島もありということで地域医療の面ではなかなか厳しい部分もあろうかと思うのですが、それら含めて総合的な観点からお話しいただけますか。
<城居羽幌支局長>
北海道新聞の城居と申します。今日はこういう機会を与えていただきまして、ありがとうございます。
予め一言だけ、先ほど司会の方から北海道新聞に入社してからの経歴をお話いただいたのですが、言っておいた方がフェアかなと思うので申し上げておきますが、私は道新が3つ目の仕事で、最初の仕事が実は病院勤務で医療ソーシャルワーカーという仕事をやっておりました。その後、いろいろ四国遍路に行ったりアジアを放浪したり、お遍路さんだけは菅さんより先輩ですが、その後に医学書の出版社、ドクターの教科書の本を作っている会社に行って3つ目にいまの会社に行きました。ですからそういうこともあって福祉ですとか医療の方を担当する機会が多かったわけです。
先ほど本別の町長さんから医療がないと生きていけないというお話があったのですが、実は逢坂さんからも紹介があったように、羽幌というところは天売、焼尻という二つの離島を抱えています。北海道に人が住んでいる島というのは8つあります。このうちから択捉、国後、色丹というのは除きまして5つ。そのうちの残りの3つというのは利尻、礼文、奥尻。これはそれぞれ町があります。ないのは天売、焼尻だけなのです。ですからいつも選挙の時は2日ほど早く投票しますが、この島、両方合わせて約700人。高齢化率約50%です。
ちょっとお考えいただきたいのですが、それぞれに火葬場があります。この火葬場はどのぐらい年間に使用されると思いますか。つまり島で何人ぐらい人が死ぬかということです。実はつい先日一人お亡くなりになったのですが、まだ30歳代の若い方で、その前には何年も使われていないのです。先ほど本別町長が医療がないと生きていけないとおっしゃったのですが、それを通り越して医療がないと死ねないのです。死ぬまでいられない。故郷にいられない。そういうふうな現状が実は羽幌にはあります。
今日は札幌もひどい吹雪ですが、もっとひどいのが留萌地方というところで、ホワイトアウトの状態になると車の時速が10q、20qの世界になります。そうなると車では走れません。そうなってくると身近に病院が欲しいなというのが正直なところで、道立病院があっても、これもいろいろすったもんだがありまして、2年半前に新しく建て変わりました。町民はすごく期待したのです。病院が新しくなった、これから医療が充実されるだろうと。当時11人常勤の先生もいました。そして2年半後、町民の期待とは裏腹にいま6人に減りました。さきほどの紋別、本別も然りです。羽幌も同じような状況がいまあります。
そういう中で私たちが思うのは、本当に病院がないことがどれだけいろいろな面で負担になっているかということです。つまりもうそこで人が暮らしていけない、子供が産めないとなると、若い人たちが本当にいなくなってしまいます。そういう状況の中で、いくらまちづくり、経済の活性化、漁業の跡取り、農業の跡取りという話をしても、非常に詮無いというのが現実だと思っています。
つまりお医者さんが札幌に集中し、人も集中されていく。地方からはどんどん歯が抜けるように人がいなくなっていく。地方の崩壊を目の当たりにすると、商業者もどうしようもないのです。動かしようがない。人がいないのですから。いくら活性化しようと思ってもやりようがない、お手上げ状態だ、というのが先日お話しした商工会長の話の中にもありました。でもその中で北海道という資源を考えると、やはりやり方というのはまだまだあるだろうなと。人を呼ぶような方法というのは、いろいろあるのだろうなと。そこで医療を活用する方法もあるのだろうと思っています。
もう一つは、先ほどの桜井先生のお話の中にありましたが、大学院にいる人たちを何とかはき出させるという方法も本気になって考えていただかないと、地方は保たないだろうと思っています。
もう一つ大事なのは住民側です。住民の人たちと病院がはたして「本気で向き合っているのだろうか」というのが私が地方に行ったときの率直な感想でした。先ほど本別町長からそういう取り組みについてお話がありまして、私はある意味うらやましいと思っています。つまりどういうことかというと、これだけ医師がいなくなってきて医師は非常に多忙なのです。いろいろと住民も医師に対して不満が出るかもしれない。ですがせっかく来てくれている医師がいるのに住民が「あの病院は…」といううわさ話、これは地方に行けば必ず一つや二つ耳にすることがあるのです。そういううわさ話を聞くとドクターもやる気を失う。もしくは医局で「あそこには行くな」と話になる。つまり病院と住民の方というのは、本当にきちんと向き合っていないという現状があると感じています。ですからひとつお願いしたいのは、病院側もいかに大変かということや、全てそこの病院一つでできるというのは少なくとも当面無理であれば、ここまではできるけれど、ここからはごめんなさいね、ここからこうしたいということをもっと首長や議会での話ではなくて、住民の方に直で話してお互いに情報を交換し合う。そして住民の中に病院のファンをつくっていく。支える人をもっとつくっていく。そういうかたちで町ぐるみでやっていかないと、とても保たないのではと思っています。
もう一つは横の連携です。羽幌町では、産科の先生は去年の9月にいなくなってしまったのですが、幸い助産師が2人います。通常は看護業務をされているのですが、この助産師を何とか活用できないかということで、道内では初めての取り組みですが留萌市立病院、それと札幌医科大学、もちろん北海道にご協力を頂きまして、留萌の先生が指示をするかたちで、羽幌もしくは周辺の町村の方々は、羽幌で妊婦検診をできることになりました。まともに受診するとだいたい13〜14回の中の安定期の4回だけということで、まだまだ不十分と言えば不十分ですが、地元で、1時間かけて行かなくてすむという取り組みがやっと2月26日から週1回始まります。そういう形で持てる人材を何とか活用していこうという試みというのは、まだまだ小さな針の穴ですが、うまく活用していけばテレビ電話システムやコンピュータなども使って、もっともっとアイディアがあれば広がっていくのではないかという気もしています。
申し上げたいのは、いままでの枠組みで地域医療を捉えていっても、たぶん動かないだろう。本当に先ほど陳情で病院に行ってもなかなか詮無いというお話もありましたが、どこも医師の取り合いです。そこに全てをかけても医育大学も困るしかない。そうしたらまず一方でお医者さんを何とか流通できるようにするシステムを考えることと、もう一つは、それ以外の人材を活用していく方法を考える。そういう意味でいままでのような病院の中だけで解決するということはかなり難しくなっているのではというのが実感です。雑ぱくになりましたが以上です。
<逢坂衆議院議員>
ありがとうございます。冒頭に医療がないと死ねない、生活できない、暮らせないではなくて、医療がないと死ねないという話は極めてショッキングだし、でも事実なんだということを痛感いたしました。
それから人が住めない、生きていけないのに、そこで経済の話をどんなにしても詮無いことではないかという指摘も、まさにその通りだなと感じたところです。
さて、いま北海道の地域の事情などもそれぞれ話を頂いたのですが、桜井先生から、これまでの話を聞いて何かコメントがあれば短時間でお願いします。それと合わせて会場にいる皆さんが、先ほど桜井先生が研修医が病院で無給なのか、それはいったい何なのかということで、よく分からないみたいでしたので、その辺も含めてお願いします。
<桜井参議院議員>
まず最初に、何で研修医制度によって地域の医師不足になったのかというのをお話ししておきたいと思います。
この研修医制度は、施設の要件、要するに「何百床以上の病院でないと研修ができない」もう一つは「医者の数がこれ以上じゃないと研修ができない」というルールを決めてしまいました。そのためにA病院を研修指定病院にするためには、B病院やC病院やD病院、こういうところに配置していた医者を全部引き揚げて、A病院に集中させてやるしかなかったのです。ですからここから地域の医師不足が加速しています。これは研修指定病院で研修をしたから大学病院に医者が足りなくなっているわけではなくて、まずそういう理由で地域の病院から医者の引き上げが起こりました。
東北大学というところはすごく変わっているところで、大学病院で、もともと研修をしていない病院です。これは学園紛争以降の名残ですが、それでもほとんどの人たちが東北大学に戻ってきて、卒業者数の1.2倍から1.3倍が東北大学の医局に帰って来るというシステムでしたから。
ですから地方の病院で研修をやるから戻って来ないということではありません。では、なぜいま地域の臨床研修病院に行った人たちが大学に戻ってこないのかというと、医学博士の価値が全く変わってきたからです。昔は医学博士という学位論文を書いて学位を取らないと、地方の病院の部長になれませんでした。要するにその肩書きがないと出世できないのです。ところがいまはそうではなくて、専門医制度になってきて、医学博士の価値がなくなり、むしろ専門医の方が価値が置かれるようになりました。専門医になるためには、臨床病院で患者さんを多く診た方がいいので、そうなってくると、大学に戻ってくるよりも、むしろ最初からそういう病院に行った方が良いと。特に東京から始まってきましたが、そのために大学に人が戻ってこなくなってきたので、今度は大学から人をいろいろなところに配属できなくなっているというそのステップだということをご理解いただきたいと思います。
研修制度が始まって、私の時代は研修医が確か日当が5千円か5千4百円くらいだったと思います。私は大学で研修をしましたが、それでそういう状況ではあまりに酷いということで、現在、研修医はだいたい30万円ぐらいの所得が保障されるようになっています。ところが大学に戻ると、ここはいま独立行政法人になりましたが、大学の教授から始まって助教授、講師、助手ときて、そこまではちゃんと正規の職員で給料が出ますが、それ以下は非常勤扱いになっていて、そこの枠もないと給料を出してもらえません。私はとても医局員数が多い医局にいたものですから、5年半まったく大学から給料をもらえないという生活をしていました。
そうするとどうするかというと、必ずバイトに行かなければならないのです。どこかの病院でバイトをして、私は秋田や青森とかいろいろな病院に1週間ずつバイトに行きました。もう少し医者を大学に抱えられていれば、こういう方法でまず常勤にできたのです。それは何かというと、いま私たちは1週間に1回ずつどこかの病院にバイトに行くのです。これは皆さん経験があると思います。もしくは縦割りで曜日ごとに、月曜から金曜日5人ずつでローテーションを組んでどこかの病院の医者の定数を満たすためにバイトに行かされています。
ですがそうなってくると、例えば4人でローテーションしているとすると、大学で働いている医者は3人、必ず地域の病院で働いている医者は一人います。これは1週間のローテーションです。これを1ヶ月なり3ヶ月なりにしてもらえば、地域の病院にとっては有り難い話です。ところが大学病院から給料が出ませんから、そうなると3ヶ月間全くただ働きをしなければならないのか。そこに問題があります。
ですから大学で医師を囲っているのであれば、まずまともな給料を出してほしいと。いま文科省、厚労省は了解をしました。いま財務省と折衝中でして、財務省に地域の医師不足を何とかしていくために、まず大学で働いている医者にたいしてまともな給料を出してくれというお願いをしています。
それから大学病院から医者をはき出すためにはどうしたらいいかというと、大学病院で働いている医師のだいたい7割は、われわれ医師がやらなくてもいい仕事です。例えば実験をしている時の薬の調合から、セットアップ、機材の調整、私はハンダ付けまでやっていました。それから動物のモルモットの飼育、犬で実験する場合、犬の散歩、これはみんな医者がやっているのです。こんな無駄なことはありませんで、そういうことを他の人にまずやっていただきたいと。それからデータ整理をして、いまでこそ医者は学生時代からパソコンができるようになりましたが、そういった分野でもコンピュータの得意な人が全部やってくれるとか、医者がしなくていい仕事を医者がやり続けているところに実は医療資源の最大の無駄があると思っています。しかもそうなるとどうなるかというと雇用が生まれてきます。ですからまずそのことをやることによって大学病院から医者をはき出させるシステムを作っていくということが第一条件として大事なことになります。
あと1点だけにしておきますが、勤務医が辞めていく理由というのは医局の条件にもありますが、もう一つは勤務医の労働条件があまりにきついからです。当直をやって寝られないと、だいたい36時間寝ないで勤務になります。私は盛岡の県立中央病院に行ったときに、月12回当直です。大変なのです。いま循環器の医師がいないという話でしたが、もともと私は循環器をやっておりましたが、若いからそれなりにできましたが、いまやれと言われたら、とてもじゃないけどできません。
私の地元の病院でとても医師の数が多いところがありますが、そこは病院の医者に当直をさせていません。全部大学から当直医を雇って、その代わりトラブルが多いので救急もやっていません。そうすると考えていただきたいのは、当直を誰にさせるかということなのです。宮城県の石巻で、救急センターをつくったのですが、その当時は私たちが雇われて大学から行きました。石巻から出されて行ったら、日当が夜だけで1万円だったので、無給の私にとっては本当に有り難くて喜んでいきました。その代わり寝られませんから、寝ないで車を運転してまた帰ってきてまた大学で勤務するということでした。
それで石巻の財政がひどくなってきて今どうしているかというと、開業医がそこで当直をしています。いま開業医はあまり儲けすぎると儲かっているところは税金で持っていかれるだけなので、1日お休みしたりしています。ですから例えばその前日の日に当直をしてもらって、次の日は丸々1日休むとか、いまみんなの発想は、開業医にオープン病院といって病院を貸し、そこで外来をやってもらうという話をしていますが、むしろ開業医に当直をしてもらうようなシステムをつくって行った方が、勤務医の労働条件が緩和されるので、そういうことを考えるべきだと思っています。
ですから勤務医対策としてやるべきことは、大学からはき出してもらって常勤の医師に変えていくということが一つ。それからもう一つは、当直の部分を軽減してもらうように地域の開業医に協力してもらうということが一つ。もっと言えば、例えば札幌市内のようにだんだん医師が余ってきているところで開業するという時には、条件として必ず当直をやるということを義務化するとか、そのぐらいの強制権を持たしてもいいと思っています。そういうことをやらないと開業できませんよという歯止めをかけないと、どんどん楽な方に行ってしまう。ここのところを解決していかなければと思っています。
それから先ほどお話ししましたが、医療秘書をつけてもらいたい。外来が1時間半ぐらい短縮できたといいましたが、それだけではなく入院する患者に対する書類を全部で10枚以上書きます。最悪は、先ほど申しあげました民間医療保険の診断書です。あんなもの私が書く必要性はないのです。事務の人がいつ退院して、何を使ったとか、その辺のフォーマットだけ作っておけば何でもokでして、そういった書類全般を全部書いてもらえれば有り難いと。私は大体病棟に上がって行けるのが6時ぐらいで、終わるのが9時ですから、看護師も嫌がるわけです。看護師たちもこの病棟に来たくないと言っていますが、私たち当直の晩は寝られなくて3時とか4時まで残務整理をしていますから、そういうことを他の人たちにやってもらうとだいぶ変わってくるので、そこを考えてもらいたいのです。ただ問題は、病院がみんな赤字ですから、他の人を雇うことができないのです。ここが一番大きな問題です。ですから私は医療費を増やしていいと言っていたのは何かというと、そこに必ず雇用が生まれてくるからです。無駄な部分はもっといっぱいあるのです。例えば手術をしているときに「鉤引き(こうひき)」といって、胃の手術をしたときにメスを入れてそれで終わりではありません。熊手みたいなもので引っ張っているのです。アメリカは「鉤引き職人」がいます。これは日本では医者がやっています。メチャクチャ無駄です。昨日まで公共事業をやっていた力のあるオッチャンの方が、私などがやるよりはよほど上手いですから。これは本当なのです。そういう人たちの雇用の受け皿にもちゃんとなるのです。そういう意味で医療のところにお金を使って、雇用が生まれて産業の変換を図らせていくということにしないといけないだろうと思います。
それから徳州会病院は、とてもうまくやっていて、出身地の人たちにすぐダイレクトメールを送るのです。ダイレクトメールを送って何とか戻ってきてくれないかと。最後は自分たちの田舎で暮らしたいなと思っている人たちがいるのですが、そういう取っかかりがないのでなかなかできないと。徳州会は極めてうまくて、そういう人たちにダイレクトメールを送って、当たりを付けて雇い入れます。鹿児島の方の島々はいっぱいありますが、あそこは徳州会病院があります。行ってきたことがありますが、あそこはかなり医師が充足されているのは、そういったうまい戦略をしているからです。それから若い医師に給料を良くしてきているとか、そういう営業努力をしているので、この地域から他の県に行った人たちに対して手当てするようなことが大事なのかなと。
最後に看護師ですが、給料を上げれば絶対に辞めません。宮城県の公立病院などは、看護師はみんな年取った人たちで困っていますが、それは給料が良いからです。本当に非常勤で雇っている人たちはメチャクチャ悪くて、常勤の人たちはすごくいいので辞めないのです。その代わり非常勤の人たちはどうしているかというと、農協でレジを打っている方が非常勤よりよほど給料がいいのです。だから看護師の資格を持っていても、そういうところでしか働けない。これも医療費を抑制されていて他の職種の人たちの給料が悪すぎるからこうなっています。ですからここのところもお金を引き上げるようなことを考えていくと、いま休職している人たち、50万人も看護師がいますから、その人たちをもっともっと有効活用できるだろうと思います。
<逢坂衆議院議員>
どうもありがとうございました。会場から「疲弊した勤務医のモチベーションを高める要素は何か?」という質問があったのですが、いまの話しの中でだいたい網羅されていたのではないかと思います。
それと桜井先生にお聞きしたいのですが、会場からこんな質問というか疑問というか不満がきているのですが「地域医療と、地域の医療の定義が不明確だ」というような質問が来ているのですが、地域医療と、地域の医療は差があるのでしょうか。
<桜井参議院議員>
初めて聞きました。どういうことなのか教えていただけたら。
<逢坂衆議院議員>
パネラーの皆さんで地域医療と地域の医療というのを分けて何か言葉をお使いになっている方はいらっしゃいますか。一緒に使っていますね。それでわれわれは統一してよろしいでしょうか。会場の方でこの質問があるということで。もしこの地域医療と地域の医療ということに関して、何かペーパーを書かれた方がいらっしゃいましたら、発言いただけますか。
ずっと不満をお持ちになられたままお話を聞いていただくのも恐縮だと思ったものですから、若干話の流れが滞りますがお願いいたします。
<質問者>
ややこしい質問で申し訳ございません。われわれが一般的に地域医療というふうに考えるのは、いま二次医療圏域の中で地域完結型の医療をめざしていくというのが数年前から言われてきたことで、そのことをもとに地域医療保険計画が作られてきていると思うのですが、時として地域の現在の医療の実態を捉えて地域医療という言い方をしている場合と、地域連携をきちんと確立する、つまりわれわれがめざすものを地域医療という言い方をする場合と二通りあると思っているのです。
ただ一般的に話をするときに、地域の医療の実態を指して地域医療という言い方をしているのではないかと思うのです。ですから私と同じような思いをしている方がいらっしゃるかどうかわかりませんが、聞いているとそれがどこかで、例えば本別町なら本別町の地域医療はというと、想定するに恐らくたくさんの民間病院が他にあって、そして自治体病院があって、そこでオープンベッド化していて、ネットワークがきちんとつながっていてということは、なかなか想定し難い。そうだとすると、それは地域医療という呼び方をしていいのだろうかという疑問が常々あったものですから、そういった意味で少なくとも今日のように専門家がずらりと並んでいるところでは、ある程度整理していただくと大変聞きやすいかなという思いでご意見を言わせていただきます。
<逢坂衆議院議員>
わかりました。事務局からも重要というふうに書かれて私のところにペーパーが回ってきたものですから、もしかするといまのニュアンスは私も理解致しましたが、もしかすると言葉遣いの中でその辺が曖昧になる話になるかもしれませんが、その際はご容赦いただきたいと思います。
<桜井参議院議員>
いまの指摘はかなり重要な指摘でして、たぶんこの医療圏の設定そのものをもう一回見直すということにもつながってくるのだろうと理解しているのですが、それでもよろしいのでしょうか。
つまり道路等が整備された後には、本当は別の地域と一緒になった方が医療圏としては適切なのかもしれない。しかし昔の郡の名残とか、そういう名残があって医師会がそういう形で作ってしまっていると、そこでの連携をするよりも本当は他の地域とやっていった方がいいのかもしれないような感じがしていて、例えば私は宮城の人間なので宮城のことだけ言って申し訳ないのですが、要するに東西に走る道路が中心だったのです。ところがこれは横断化されてくると、むしろ横の地域で連携してもらった方が遙かにいいのですが、未だに縦で医師会が出来上がっているのです。
ですからそういう点で言うと、地域医療というのをもう一度考え直すところでは、いまのような視点を持ってその医療圏そのもの自体を再構築された方が本当はいいのではないかと。
<逢坂衆議院議員>
という話が出たところで、先ほど河合局長から北海道の地域医療の現状と道の取り組みということで話があり、その中で若干言い足りなかったのだろうなということで、今後のネットワークや広域化というあたりについて、いまの論点も含めて多少お話頂けますか。
<河合医療局長>
宮城と北海道との違いもまたあるかと思うのですが、北海道には14の支庁がありますが、医療圏は先ほど言いましたように21で、センター病院は25といように、必ずしも支庁単位だとか郡単位だとか、北海道の人はあまり郡というのはありませんから支庁単位ということが多いですが、あまり固定的に医療圏ができているということではありません。21の中には、渡島と檜山で一つの医療圏になっているところもあります。
今までの医療計画は「ベッドがいくつあっていいんだ」といようなことを中心に書かれていたわけですが、今度は4疾病5事業というものをどうそれぞれに対応していくのかということを医療計画の中に書き込まなければいけません。この時に、4疾病5事業、例えばガンの場合には、ガンの拠点病院が全道の中にどのようにあるか、あるいは脳血管障害の患者の治療ができる病院というのはどういうふうにあるのか。
センター病院というのが全てにオールマイティに対応できるのであれば、それはそれでいいわけですが、しかしながら先程来話に出ていますように、専門化、高度化しているという中で、いま21あるいは6つだと言っていても、それで収まらないものがあります。例えばガン拠点病院を本来的には21の医療圏に一つずつあるのが理想型ですが、どんなに頑張って探しても、あるいはそれをいくらか養成をしてなんとかしようとしても、ガン拠点病院になるだけの機能を持ちあわせていないというところがありますので、そういったところは近隣の医療圏のところに支援をしてもらってカバーしていかなければならないというようなことがあります。
いま広域化連携ということがありますが、このまま行くと地域から医療機関がなくなってしまう恐れがあります。そんなことは何としても防がなければならない。この状態は理想型ではないけれど、現実を踏まえた上でこの時期を過ごしていかなければならないということで医療対策協議会の中で自治体病院等広域化連携構想というものが検討されたわけです。
その必要性ということですが、まず医師、あるいは看護師、こういう人たちが絶対的に不足をしています。それから患者も減っています。また医療費の抑制によって、病院経営というものが大変厳しい状態になっています。医療費を3%強下げたら、地方の極端なところは30%収入が減ったという、そういう厳しい経営環境にあるわけです。
それから自治体病院というのは、これまではなるべく多くの診療科目に対応しなければならないということで「総合病院」という格好でやって参りましたが、しかしながらそれを維持、継続していくことが非常に難しい。そうした中でそれぞれの役割というものを明確にして連携していかなければ成り立っていかないということです。ですからそういった面では、この広域化連携構想のめざすところは地域の医療の確保と、それから経営の健全化、これを両立させるということです。
構想というのは、いわゆる道から市町村、あるいは住民の方々への提案です。ですから先ほど、この構想の中では患者さんたちの需要動向、どこへかかっているかとか、そういうようなことを中心に区域を分けております。その他、区域の中に中心となれるような医療機関があるかどうかといったことを兼ね合わせて考えたところ、30の区域ができました。一次医療というのは、もともとは180それぞれの市町村の中で完結をさせようということがありましたが、それができなくなってきている、そうした中で、一次、あるいは1.5次ぐらいまでサービスできる区域というのはどういうことかということで30という区域が出てきました。そうしたら、例えば高橋町長のところの十勝管内では、陸別町は北見に近いものですから、救急車が走るのも、あるいは一般の方が自分で行くにも、北見の方へかかっている方が多かったというようなことがあって、そちらの方にいま分けられています。他のところでは、西興部は、もともとは紋別の圏域ですが、西興部の方が名寄の方に向いているというようなこともあります。
これは私ども先ほど申しあげた提案という中で、この30という数も、それからその区域の中の構成も絶対的なものではなく、それぞれのところがいろいろ地域に於いて議論をして決めていただきたいと考えています。最近、幌加内が上川の方に行きたいというのがあったり、それから幌延などは、宗谷の方に行きたいというようなことが出てきています。それはやはり暮らしが変わってきた、あるいは先ほど桜井先生からお話がありましたが、交通体系が変わってきたというようなことがあるので、それは柔軟に対応していく必要があると思っています。
もう一つ非常に現実的な課題があるのは、病院を持っている自治体と、病院を持たない自治体との間に大変大きな思い違いというか、考え方の違いがあると思います。病院を持っているところはどうしてもそれを維持、継続していくために医師の確保から、看護師、それから財源をどう確保するかということがあります。ある首長さんなどは「おれの仕事のうちの7割か8割ぐらいは医療のことだ」とおっしゃる方がいます。
一方、病院をお持ちでない首長さんの中には「病院のことは言わないで欲しい」と。「おれのところは関係ないのだから」というふうに思っておられる方、しかしながら病院がないから、診療所がないから病気にならないわけではなくて、その人たちはみんな周辺の医療機関を利用しているわけです。ですから一銭も負担しなくてもいい、あるいは少しも努力をしなくてもいいということにはならないと思います。
ですから、これから地域で医療をどう支えていくかということをお考え頂くときには、経費も含めてその地域の中で持っている、持ってないということではなくて、特に救急や自治体病院が担っている役割というのは、不採算部門だから自治体がやっているのであって、赤字になっておかしいだろうとか、総務省のガイドラインなどでも言いますけれども、最初から赤字になる部分を担うから自治体病院だというところを国にも理解をしてもらわなければならないし、また地域においてもそれをみんなで病院を持っているところでも、持っていないところでも共に支えあうような仕組みにしていかなければならない。
それともう一つは、先ほど本別町長が言ってました中でこれからものを考えていくときに、医療の問題を医療だけで解決しようとしても、それは無理があると思います。やはり人というのは医療を中心に様々なケアが必要だという人がいますが、福祉あるいは介護の方のケアが必要な時期、人にはその時期、時期でいろいろなサービスが必要になります。さらに運動、スポーツのことまで含めて健康づくりというものをしていく。そして病気になったら病院で診る。回復してきたら老健だとか特養だとか、それぞれのニーズにあったそういうサービスを用意しておく。これを一つのまちでおやりになるのもあるし、地域で同様の役割を分担する。私どもたくさんの市町村あるいは公的病院の方から医師確保の要請がありますが、比較的「困った、困った」と言ってこないところは、地域で特色ある保健医療福祉施策を展開しているところです。そういうところはやはりお医者さん同士の口コミで「あそこは一つの考え方を持ってやっているところだから」とか、「あそこは働きやすいところだから」ということが伝わっていて、医師がいなくなっても次のお医者さんがそのうち補充されるというようなことがあります。「白衣着た人だけが欲しいのだ。一人いればいい、2人いればいい」というところは、なかなか次の医者が見つからないというようなことがあります。そういった意味で、やはり魅力ある地域づくりをしていく中で、その中にこの保健医療福祉というサービスもきちんと位置づけてやっていかなければならないと考えています。
<逢坂衆議院議員>
ありがとうございます。会場から「地域センター病院という位置づけに関して、その役割を果たしていないけれど、現状はどう見ているか、その対策は?」という質問があったのですが、いまのお話の中でまさに局長が地域センター病院というのはオールマイティではないという話がありました。だから現状はやはり厳しく見られているということが会場の皆さんにも伝わったのではないかと思います。そして道から道民の皆さん、市町村への提案として今回の広域化、ネットワーク化があるのだと理解を致しました。
さて、それを受けて本別の高橋町長、道がこういうふうに言っているのですが、道の考え方というのは、本当に地域の実態に合うのか合わないのか、それをどこをもっと強化したりすればいい方向になるのか、残りの時間をふんだんにお使いいただいて、思いの丈を発していただければと思います。
<高橋本別町長>
私は、北海道はどうしようもないところだと。どうしようもないというのは、シャレではないけれど、いままでは地域医療というのは、先ほどのお話もありましたように北海道で考える部分では全市町村は地域医療だったと思うのです。私どもがやるのは地域の医療なのです。そういうことで私も思っているのですが、ただ唯一、今回の地域医療に北海道がいろいろ厳しい状況も背景にあるかもしれませんが、やっと目を向けてくれたなと。そういう意味では、実は評価をしている一人なのです。これは河合さんの努力だなと思って、非常にありがたく思っているのですが、ただせっかく向けてくれた目線が、医者が足りないからとか、スタッフが足りないから、そして経済主導主義で金がないからどうすれという視点でもしやるとしたら、これはとんでもないことだと思います。これは命の問題ですから、命の問題として重く受け止めて、いままではあまり具体的には北海道もかかわっていなかったけれども、これからは北海道みんながスクラムを組んで頑張るという姿勢に転換をしていただくということを、私は信じていますので、そういう意味では非常に構想の善し悪しはありますけれども、非常にいつも局長などにお願いしているのですが、北海道も財政的にいろいろ大変だし、いきなりないものをよこせと言っても無理な話ですから、これからに向かってとにかく地域のそれぞれの圏域の状況、事情もよく理解をしていただいて、一緒に汗をかくという取り組みをしていただけないだろうか。そしていろいろな課題だとか、希望だとか、願いだとか、それを受け止めて必要な法の改正、制度の改正は、やはり北海道という大きなバックボーンで国に対してもしっかりとお願いをしながら、地域をより、そして地域がよくなることによって北海道がしっかりと元気になる、こういう体制を取って欲しい。そのためには人任せにしないで、われわれも十勝なら十勝の中で、しっかりと土台をつくるということに考え方をまとめながら努力させていただいているところです。
ただ私どもの病院も、1日に外来が300人を超える病院でして、入院も60人近くいるわけですから、医師がいなくなったら大変ですけれども、残念ながら一時は本当に、どうしようもないぐらい医師の数が少なかったのですが、諏訪中央病院の鎌田先生にこういう話を聞いたことがあります。どうして北海道は医者がいないのと。こんなふうになる前で、こういう制度もできる前でしたから「うちのまちに医者がいないから、医療が大変だから医者来てくれと言っても誰も来ないよ。うちのまちはこういうまちづくりをしている。こんないいことがある。こんなまちで一緒に仕事をしませんかという問いかけができれば、必ずあなたのところは医者の来るまちだよ」というエールを送っていただきました。
十分だとは思いませんが、それでいま私の町は、全国公募で医師を募集して、いま6名の常勤医師がいて、年間に3〜4名の医師が面接に来ていただける町になりました。4月からはまた外科と内科含めて8名体制にできるということになり、その他に大学からの応援をいただきながら、非常にいま一番充実させていただいている時だと思うのです。そういうことの中でいま私どもの、特に第一線の若い先生が非常に多くなりましたから、隣の周辺の自治体の広域も考えようとしています。隣のまちも夜勤をやる、こっちのまちも夜間救急をやる、そうではなくて例えば今月はうちだったら、来月は隣のまち、そしてわれわれ医師もそこにちゃんと勤務地をかえて、看護師やスタッフもお互いに協力することによって、それはしっかりと確保もできるし、そういう救急医療体制も確保できるから、そういう連携をしていこうと議論しています。透析が20床で始まりましたが、いま2部体制をやっても間に合わなくなりました。それを一部隣から来ている患者さんを、隣の病院でもそれをサブ的に受けてもらうとか、またうちの耳鼻科は全道規模で、十勝管内含めてかなりの患者さんが来ていただくようになりましたから、隣りまちは例えば婦人科があるとか、整形があるとか、そういう診療の広域化をしようと。そんなことをたくさんいま提案をさせていただいて、そして帯広市内にある中核の大きな病院との連携、そして私どもこの北海道の構想に反発をしたのは、全部が金がないから、医師が足りないから、診療所化しれと言うのなら、十勝管内の診療所の国保病院含めての200床以下が全部万が一になると、これは十勝の中では、いくら大きな民間病院があると言っても、これは受け入れ態勢が絶対できないわけです、物理的に無理なわけですから、そういうことも含めてしっかりと住民に不安を与えない、頑張っている自治体や病院のスタッフに不安を与えないような気配りを頂きながら、さらにしっかりとスクラムを組んで、この北海道がなくてはならない関係ですから、しっかりといま頑張って、こんなことで実はいましっかりと動かさせていただいていると思っています。北海道も厳しいし、本別も厳しい財政ですが、お金ばかりで解決できることはありませんので、お金はいつか稼げばまた少しは良くなることがありますが、それよりも安心して住んでいただかなければ、この地域が成り立たないというのですから、山河が敗れて国はありませんので、そのことをぜひ思い起こしていただきながら、地域ならではの頑張りをこれからも、私どものまちだけではできませんから、勉強してやっていきたいと思っています。
これは医療があって福祉も成り立つし、全てが成り立つということですから、医療が中心としてまちづくりもできるということがありますので、私のまちもお陰様で福祉は本当に町民の皆さんの町民力で頑張っていただいて、本当にすばらしいネットワークもできていますから、安心して暮らせる、そして認知症でも、物忘れ、散歩のできるまちということですから、ぜひ認知症になる前に本別町に来て、都会にいるとなかなか物理的に介護を受けるというのが無理になりますので、空気のいい、花粉症もない本別に来ていただいて、医療スタッフもしっかりと充実していますので、年金証書1枚持ってきていただければ、ずっと本別で安心して介護させていただきますので、一度是非見に来ていただいて本別のすばらしい特産品もあります、コマーシャルをさせていただいて大変失礼しました。
<逢坂衆議院議員>
それでは引き続き、道のいまの広域ネットワークの中では当然紋別市も道立病院があります。特に紋別の病院の広域のことについて、宮川市長として何か思うところを述べていただければと思うのですが。
<宮川紋別市長>
先ほど言いましたように、紋別市は道立病院でして、60年の歴史があります。近隣の町村から批判されるのは、紋別市は医療にお金を出していないのではないかと。従来から出してないのではないか、というご批判を受けるのですが、それはそれとして今後の進め方としまして、先ほど言いましたように、うちの広域圏とは、滝上町、興部町、そして雄武町、そしていま圏域がどうなるかわかりませんが西興部村があります。そうした中でここが西紋の従来の政治的な部分も含めまして、期成会等もここで組織していたのですが、いま道立病院がなかなか医師が年々減っていって、いろいろな経緯があるのですが、そうした中でいま広域連携というものを本当に早い取り組みで平成15年ぐらいからもう話を進めていました。
そうした中で、この度、広域連合という形の中で道立病院をこの地域で道も含めた広域連合で経営ができないかということで、いまこの検討を始めようという協議会が立ち上がったわけでありますが、その会長を先般仰せつかり、またこの21日には道といろいろな協議を進めるという段取りになっております。
この広域連合によって医師を確保できるかどうかというのは、いまの医師不足という中では非常に不安ですが、道の財政の問題も含めた中で道からも道立病院の改革プラン等が出ているわけですが、一つには道立病院の医師の待遇が非常に悪いという点があり、それを何とか改善をできるのではないかということもありまして、それと旭川医大、あるいは札医大に行きますと、学長からも、それぞれの国保病院を抱えていますが、それぞれが医師を要請をしても、これは無理ですよと。やはり一つのセンター病院に医師を集中させるような考え方を持ってきていただかなければ、なかなか大学の方もそれに協力ができませんよというお話も頂いておりますので、逆を返せばこうした取り組みは早くすれば私どもの方としては優先的に医育大学の方で面倒を見てくれるのかなという思いもありまして、これに取り組むという形になっています。なかなか滝上も興部も雄武も、それぞれ国保病院を各町で経営してきていますし、やはり歴史的な部分もあります。そうした中で町民の皆さんのご理解を得ながら、ある面では医療の縮小にもつながって行く要素があるわけなので、そこを理解をしていただいてこれに取り組んで行かなければなりません。大変道のりは険しいと思いますが、まずはこれに取り組んで行こうといま進めております。
<逢坂衆議院議員>
ありがとうございます。道立の紋別病院は、道も含めた広域連合でこれからやっていくのが良いのではないかとい話です。これについて河合局長は道の立場としてどんなふうに、道としてもそれは良い方向だなと、その方向で応援していこうというようなことで、これの実現に向けて何か課題や問題みたいなものがあるのでしょうか。
<河合医療局長>
広域連合という形で、運営形態も、あるいは地域全体で医療を守っていくということでは、ぜひ地域と共に北海道も一緒に考えていかなければならないと思っていますし、先ほど宮川市長からお話があったように、大学の方も、あっちにもこっちにもというふうにならないときに、この地域の中でどういう種類の医師が何人必要なんだと希望をした時に、じゃあどこどこの大学はどの科目を何人出せるとかというような話になっていくと思うのです。
ですから例えば全部診療所になることはないと思います。というのは、これから特定検診だとかいろいろなことが出てきますし、学校保健もある、いろいろなことがあればそんな簡単に診療所化にすれば良いということにはならない。人口だとかいろいろなニーズに合わせた機能を持たなければなりませんから、どうもあれが新聞で北海道に診療所をいくつ、つくるんだとかとわざわざ数えて書かれたことがあって、いかさま診療所にしろと言っているみたいに取られるように思いますが、そういうことではなくて、やはり適正な規模というものが必要だと。
その時に例えばあるまちで病院だったけれども病院だった時には2人しか医師がいなくて、診療所になったら3人医師がいるようになったと。それからもう一つは、先ほど本別町長も言っていましたが、役割分担と連携の中で、全ての病院に専門医師がいるということにはならなくなってきた、そうした中で、例えば診療所になったけれども、週に1回は隣のところから眼科だとか耳鼻科だとか、何だとかというお医者さんが来てくれるということによって、かえって利便性が高まることもあると思います。それは医師がずっといてくれるのが勿論いいですが、しかしながらいまの中でそれだけのスタッフがいないということと、患者さんも専門の人が一人分だけの仕事量があるかというと、そういうこともありませんから、工夫をしながら地域の中で医療を完結していくということは重要だと思います。
<逢坂衆議院議員>
ありがとうございます。次に城居支局長にお伺いしたいのですが、いま全国的に医療崩壊と言われている。北海道は特にそれが顕著だと。そしてその一つの方向として広域連携だとかネットワークということがそれぞれ本別でも紋別でも、あるいは北海道としてもやろうとしていると。でも先ほど私は宮川市長の言葉の中に、ある面での医療の縮小ということもあるのだということも言っていました。私もネットワークということを聞くと、必ず地域で言われるのは、逢坂さん、そんなことを言うけれど、そばで診てくれる医者そのものがいないのだと。一次医療そのものがうまくいってないのだというような課題もあるわけです。一方で新聞では診療所の数が限定したように書かれているみたいなこともあるのですが、それら不安もあると思うのです。それを含めて何かご感想がありますか。
<城居羽幌支局長>
いまのお答えになるかどうかわかりませんが、ざっと3つの点を挙げたいと思います。一つは、先ほどのような地域センター化にしろ、本別の町長が仰っていたように科をそれぞれ担って連携するという形にしても、大事なのはそこの病院までにどのぐらいの時間で行けるかということだと思うのです。
例えば羽幌、留萌は40分ないし1時間ですが、悪天候になれば2時間近くかかることもあります。そういった点で非常に不安をお持ちで、特に北海道の場合は冬場です。ですからそういうふうな意味で桜井先生のように道路の問題ではないのですが、道路をつくれということではなくてソフトの問題です。交通アクセスをどうするのか、特に過疎地であればあるほどお年寄り世帯ということが増えてくれば、いまでもバスで行くにしても、非常に大儀です。ちょっと離れた限界集落に近いようなところに住んでいる方が町まで出てくる、それだけでも大変だし、先ほど言いました離島の問題もある。極端な例で言えば、認知症のお年寄りが運転しておばあちゃんを連れてくるということも決して珍しくありません。そういうふうな意味で、道路はある程度十分だと思うので、むしろそこにいかに例えばバスなり乗り合いタクシーなり福祉輸送なりわかりませんが、そういうアクセスを十分にして欲しい。
先ほど紋別市長が、桜井先生と知り合えばという話をしていた。私もここでドクターヘリを道北にということを是非お話をしたいなと思ったのですが、特に離島や山間部などのアクセスとしてドクターヘリをもっと活用できないのかというようなところに一つ期待があります。
2つ目の点としては、医療崩壊ですが、先ほど局長からもお話があったのですが、この地域にどのぐらいの規模が適正かということをきちんと見積もるべきだというお話、私はそれは賛成です。なぜかというと、先ほども言いましたように道立羽幌病院は2年間の間で常勤の医師が11人から6人に減りました。いま内科と外科の医師しかいなくて、小児科、整形、産婦人科の常勤医がいなくなりました。2年間でこれだけ減るのだから、さらに減るだろうというのがとても不安なのです。そこで適正規模をきちんとやることの一つの意味としては、ここまでは死守するぞということを明確に住民の方に示していただきたいということなのです。
今回、いろいろな道の計画などを見ても、例えば羽幌などのところを見ても、ほとんど休診に近いような科もやっているかのような形で計画の上に載っていることがあります。そうではなくて、休診として実際には動いていないことを盛り込んだうえで、でもここだけは絶対に守るぞという計画であれば、周辺町村も含めて今後の医療計画というものを非常に立てやすくなると思うのです。そういう意味で、そこの歯止めという目安を立てていただきたいということがあります。
もう一つは、先ほど紋別市長が道立病院について話されましたが、羽幌も同じ道立病院で、羽幌もお金を出していません。隣に苫前町があるのですが、ここは厚生連の病院です。ここもいまは病院ですが、4月から老健施設に変わって無床診療所という形になります。道立とか厚生連であればまだ地域の自治体としてはいいのですが、翻って留萌というところを見ると、本当に病院の存在、赤字というものが、自治体の存在そのものを壊しかねないという不安が非常に強い。赤平もそうだと思います。でも羽幌としても留萌に頼らざるを得ない。共存共栄といいますか共倒れを防がなければならないということもあります。ですから自治体財政における病院の赤字問題というのをやはりきちんと手当をしていただく。そういったことが広域連携を取る上でも非常に重要なことになってくるのではないか。
先ほど道立病院の待遇が悪いというお話だった。確かにその通りだと思うのですが、待遇をよくしようとすると赤字幅が増えるという痛し痒し、二律背反といいますか、昔、根室にいたときに、いまは旭川医大ですが、当時は東京医大から先生が来ていただいていました。正直言って極めて高いお金を出していました。びっくりするぐらいのお金です。それでもなかなか人が集まらないというようなことがあったのですが、金で人を引っ張って来るというようなことだけは、命の糧としては避けなければいけない。となると、やはり土台となる財政的な保証といいますか、そこを国なり道なりというところが自治体に対してきちんとみていただけないと安心はできない。私は主にこの3点がこれからの課題になってくると思います。
<逢坂衆議院議員>
ありがとうございました。総合的な視点から3点ご指摘をいただきました。さて、桜井先生、会場から桜井先生に対して何点か話しが来ていますが、これまでの感想含めてこれから私がお願いすることも含めてお答えいただきたいのですが「後期高齢者医療制度、これの廃止に向けた活動というのは、いったい民主党はどうなっているのですか」というのが一つと「女性医師がけっこう増えていますが、女性医師の場合は、出産があったり様々あって、課題もあると言われていますが、女性医師の問題についてどうお考えですか」というところ2点含めてこれまでの話の感想もお願いします。
<桜井参議院議員>
一つは後期高齢者の医療制度は、民主党は廃止法案を出す予定にしています。但し、先ほども申しあげましたが、高齢者イコール弱者だと思っていないところもあります。お金のある方もいらっしゃいますから。ですからそれを一率に議論するというのはいかがなものかと思いますが、現実を言うと、いま困っている方が数多くいらっしゃることと、年金の制度設計というのは、本来天引きされないことを原則に国民年金の6万6千円が定められています。ここからも介護保険だけで地域によってだいぶ違います。宮城県だと4千円ぐらいが平均ですが、北海道はもうちょっと高いかもしれません。高齢化率が高ければ高いほど保険料率が上がっていますから、ですからそういう点で、全体の社会保障システムとして考えた時に、いきなり後期高齢者の医療制度というのは納得できないので、わが党としてはこれは反対の法案を提出することにしております。
それから女性医師の、問題についてですが、これは人生観として皆さんどちらがいいのか一度逆にお伺いしたいことがあります。うちのかみさんも医者でして、私は隣に義理の両親を呼びました。もういまはマスオさんの世界です。大変苦労しております。だからほとんど家に居着かなくて、バランスが取れているのかもしれませんが、ただうちのかみさんは子どもを決して好きではなくて、出産するまではどうでもよかったらしいのですが、一人子どもを産んでみたら、こんなに可愛い子はいないと、自分の手で育てたい。隣に両親がいますから、子供を預けて自分が働きに行くことは可能ですが、医療を忘れない程度だけやって、とりあえず自分の手で子育てをしたいと言って、いま週4回に増えましたが、この間までは週3回午前中バイトをして生活をしています。つまりこういう考え方、何と言ったらいいでしょうか、一人の女性として子どもを育てていくところに対して、自分の手で子育てをしたいという人の権利まで奪うというのは、おかしな話だと思っています。こういうことを言うと、わが党の女性議員からあんたは古いとかよく言われますが、私は不登校の問題を考えていたときに「三つ子の魂百まで」と言いますが、実は自我の中の親の自我というのがあるのですが、この部分というのは3歳ぐらいまでに獲得すると言われています。この自我の中の批判的な父親の部分が高い人であればあるほど実は不登校であるとか引きこもりであるとか摂食障害になりやすいということがわかってきています。そうすると、女性の権利を主張することそのもの自体、これはこれで大事なことだということは重々わかっていますが、子どもの育てられる権利というのをどう考えてくるのかということを改めて皆さんに問いかけてきたいなと思います。
それから当直をしていて、これはお願いですが、子供さんをきちんと見てたら、よもや夜中に連れてこないで済むという症例が半数以上です。小児科医がみんな嫌になるのは、そこに最大の原因があると思っています。泣きやまないから連れてきました。これはざらです。ですが、その連れてくるときみんな見栄を張るのです。何しているかというと、おむつを換えて、汗を拭いて、肌着を交換して、お母さんが大事にだっこして、子どもにとって一番安心なのは母親の心音ですからそうやって胸に抱きかかえられてダンナが車を運転してきてゆられていていつの間にか寝てしまう。これがほとんどです。
つまり、こういうことばかり言うと「あんたは女性が働くなということか」と言われますが、そうではなくてスウェーデンなど北欧は、1歳半までの保育園はないのです。ほとんどありません。ちゃんと1歳半で終わった時点できちんと社会復帰できる社会になっている。日本のように差別もない。そういう社会を作っていくことが、もしかするといまの医療崩壊を食い止める一つの手だてなのかもしれない。先ほどまちづくりの話がありましたが、ですから女性医師として働きたいと今度は逆に言っている方々に対しての整備は整備としていま言っているような保育所だとかいろいろなことの整備が必要だと思っていますが、全体としてもう一度根本的に考えていかなければいけないだろうと思います。
そういう点でいうと、いま女性と男性の、これはいいかどうか別として、学力の問題ですから、この学力の格差というのは、地域医療の格差に相当影響してきていると思っているのです。私の高校時代は、うちの高校だけで東北大医学部に20人入りました。いま数人しか入りません。宮城県内から10人ぐらいしか入らないのです。東京にやられっぱなしです。そうすると研修制度でみんな東京に戻ります。地元の方に。ですから地元出身の学生の成績上げて医学部に入れることは大事で、ここはそういう意味でいうと、札幌医科大学というのは、相当優遇した方がいいですよ、半分以上。要するに極端な言い方をしたら、北海道関係者だけでもいいのです。その代わり北海道で10年働いてくれることを条件に、どうせ先行投資するなら、授業料などタダにしたっていいです。そのぐらいの大胆なことをやらないと、私は申し訳ないけれど、地域の医師不足というは解決してこないのかもしれないと思っています。
いままでずっと話を聞いていて感じたことは、病院長でその病院はほとんど決まってます。例えば厚生連でいうと、秋田にある平鹿病院と私の行っていた仙北組合病院というのは50qしか離れていないのですが、院長の質が全く違いました。一人の院長は、農村医学会の会長までやるぐらい地域医療に貢献した人ですが、そこの病院には医者が集まって、研修医もたくさん集まってすごくいい病院です。方や何もしていない病院のところは内科の医者が2人しかいなくて、私がバイトで行っていた当時は、そのうちの医師一人が150人の入院患者を診ていました。これだけの差があります。1年半同じ点滴をしています。こんな人が入院している必要があるのだろうかという人たちがいるという、典型的な話です。
つまり病院長が誰になっていくのか、やる気のある医者にとって見れば、どうでもいい病院長だとみんなやる気をなくして辞めます。私が岩手で勤めていた病院長は、人は良いですが、医者として何をしたいのかよく分からない人でした。他の病院の院長と会ったときに、こういう院長の下で働きたいと思う魅力的な院長がいるわけです。そういう点でいうと、病院長はむしろ公募した方がいいかもしれない。地域の病院を建て直していくためには、若い人たちでもやる気のある、要するに医局で助教授だった人を繰り上がりとかそういうのをやめて、自分の手で立て直したいと思う人たちはいますから、むしろそういう病院長を選んできて、やる気のある方たちにやらせればいいのかもしれないと思っています。
そういう点でいうと、いま医者の考え方が問われているところがあると思っています。私の同級生も小さいながら病院をやっていて、この間、憤っていたのは、救急車を誰も受け取らないということです。もう50歳を過ぎているわれわれですが、急患の患者を受け取って、自分の手に負えないから、大学がすぐ近くだから送ろうとしたら、大学の当直医に断られた。だけれども大学の上の先生を知っていたからそこに電話して無理矢理入院をさせたと。
つまりいまの世代の人たちがどこまで地域貢献をしなければいけないかという意識を持っているかどうかです。いまの研修制度の最大の欠点は、要するに大きな病院で様々な検査機会があって、極めて便利なところで治療をして診断に当たります。これは機械がないと診断ができないような医者ばかり育てるということです。地域の医療というところに行けるかといったら、まったく行けないような人たちです。
せっかくですから、今日一つだけ覚えていった方がいいと思いますが、例えば咳とか痰が出て、これはカゼだカゼだと言われて治療してもよくならないという人がけっこういるのです。その時に、足のところにむくみがあるかどうかだけで、スネのところを押すと、心臓の悪い人はスネがへこむのです。心不全だと咳とか痰が出るのです。たった一つのことだけ見えれば、この人はカゼかカゼでないかは簡単にわかるのです。いまの研修制度のあり方だと何でも検査です。すぐレントゲンを撮ります。すぐ心電図を取ります。検査をしないとわからないような医者だけ育てておいて、いったいどうするのか。もっと大事なことは、医者として何をしなければならないのか。どういうものの見方をするのかということを教えることが大事で、私は施設基準など全部外して、立派なお医者さんの下で研修できるシステムを作った方がいいのだということを研修制度のときに言ったのです。このことをちゃんと実現してくれていれば、医者をどこかに集めてやろうという発想はなくて、いまの地域の医師不足などというのは起こってないのです。だけどこのことを残念ながら理解してもらえなかった。どこの施設でやるかじゃないのです。どの医者の下でやるか。これは企業でも一緒です。どこの企業に入ってどこの部署にいるかではないのです。どの上司下にいて学ぶかということが一番大事で、そのまっさらなときにどういうことを教えるかによって決まってくるわけですから、そういう点を考えてこないといけないということです。
最後に、これは先ほどの救急のところでも言いましたが、患者さんの権利というのは大事なことだと思っています。しかし、ある程度医者のことも考えていただきたいこともあります。そうでないと本当に成り立たないのです。つまり皆さんが下手をすると、そこから医者を辞めさせる原因を作っているかもしれない。これは死ぬ死なないの判断はなかなか難しいことがありますが、心臓と頭はすぐ死ぬので、こういう症状だなと思ったら、すぐに行ってください。それから先ほど地域のネットワークセンター化のところは、心臓と頭だと思われるようなものに関しては、きちんと整備しなければならないけれど、ある程度我慢していただきたいところもあります。もう少し言うと、仕事を1時間や2時間休んで、その近くの開業医のところに行ける社会を作るべきです。そうじゃなくてみんな仕事中我慢して8時、9時になって、どうせすぐ診てもらえるという頭もありますが、そうやって夜間の診療所に行かれるから、われわれは大変なのです。これは社会の有り様の問題です。堂々と風邪を引いて具合が悪いから、病院に行ってくるとからとか、高血圧で治療するから薬をもらいに行ってくるからとか、そういう社会全体を考えていかないと、うまく行かないのかなとも思っています。
<逢坂衆議院議員>
いろいろお話を頂きました。最後にそれぞれの方、一言ずつ、30秒ずつですが、地域の適切な医療サービスを守るということのために、最も主体的に取り組まなければならないのはいったい誰なのか、何なのかというあたりについて、それぞれお一人ずつ発言をしていただいて終わりたいと思いますので、まず城居支局長の方からお願いします。
<城居羽幌支局長>
本当に三位一体、四位一体だと思います。ただいまの桜井先生の仰ったように、住民の意識というのが、その病院を育てていこう、大事にしていこうと。病院を育てるのは住民の方だと思います。その意味からも、病院はもっと住民に対して情報公開すべきだし、ひざをつき合わせて話し合う場があればいいなと思っています。
もう一つだけ、先ほど桜井先生が仰ったように、全人的な医療というのは、専門医に欠ける部分というのは、私も感じることがあります。そういう意味からも、先ほどの専門医制度を取る中で、臨床で何人診たとか何件手術したという以外に、1年、2年の地域医療体験、地域医療経験というのを専門医を取る要件として含ませる、そういった制度を取ることによって医者の成長も促せるし、地域も2年間なら2年間若いバリバリの先生に来てもらえるということになって、ウィンウィン(「Win−Win」は人間関係の考え方なのですが、「自分も勝ち、相手も勝つ」ことを考えるということです。たとえば、ビジネスでは「いい競争をすることで両者(社)が儲かる」「お客様が喜んでくれれば、会社も儲かる」「地域が活性化すれば、近所の店がみんな儲かる」というようなこと)の状況になるのではないか。そういった制度の見直しも必要になってくると考えています。
<河合医療局長>
地域に根ざした医師を育てるということでは、来年度、高校の中にも医師なるためのトレーニングの体験をするコースを設けるということがありますし、札医大は約70%以上道内出身者。北大も去年の入学者は半分以上が道内出身者。旭川は逆転して6〜70%が道外ということになっていますが、旭医も再来年度になりますが、50%地域枠にすると。道北、道東から入れるというようなことで、やはり地域のことを知っている医師を育てていくという、時間はかかりますがそういうものに力を入れいかなければならない、大学と一緒に頑張っていかなければならないと思います。
それから先程来お話が出ていますように、やはりお医者さんを大事に使うという。そういうことをしなければ最終的には自分で自分の首を絞めていることになる。いなくなってしまったらお終いです。やはり疲れ果てて、燃え尽きて立ち去るようなことにならないような意識が必要だと思います。あるまちで、お医者さんがいなくなった。あそこのまちでは医者を使い捨てにするという話しがありました。これはみんなお医者さんたちは知っているところだったのです。それが時間をかけてお医者さんを大事にするような仕組みを作りました。そうしたらいま、お医者さんたちがやり甲斐を持って働いてくれるようになってきています。そういうことを自分たちで進めていかなければならないと思います。
<宮川紋別市長>
いろいろお話を聞きまして、我慢するところは我慢しなければならないというのも十分理解しますし、本当に地域はいろいろな部分で頑張っています。例えば先ほど本別町長がおっしゃっていましたが、福祉の切り捨てとかいろいろある中で、財政も本当に縮小して厳しい中で、命を守るために交通も含めて取り組んでいます。行革をやっているのは本当に地方の方がどんどん行革をやって、そういう財源を持ちながら一生懸命やっていますが、これも追いつかない状況になっています。そういう面では、医療制度も含めまして、もっと地方に応援をしていただいて、医療も含めて万全な態勢をつくれるような国にしていただきたいと思います。
<桜井参議院議員>
今日は本当にありがとうございました。地方の実態を改めて認識させていただきました。そういう点では、まず国の方針を大きく変換しなければいけないと思っています。そのためには、別にどこの政権がどうということは思っておりませんが、但し、いまの政権の中でいうと、とても大きな方向転換ができないということになれば、自分たちが政権を担っていかなければだめなのかなという感じがしております。逢坂先生も選挙区が決まりまして、私は実は医療問題を逢坂先生と一緒に勉強させていただいていまして、ぜひまたこの次の選挙で彼を送り出して欲しいなと、まずそのことをお願いしておきたいと思いますが、本当にすばらしい議員ですから。
それと、最後にせっかく今日来られたので、どうやったら簡単にボケないかという方法だけ一つお教えしておこうと思います。
私は医者です。歯医者ではございませんので回し者ではありませんが、私は民主党の歯科医療政策の責任者をやっていて感じていることがあって、実は自分の歯が多ければ多いほどボケないということがわかってきました。それから病気になりにくい。20%ぐらい医療費がちがいます。80歳で20本というのは歯科医師会で言っていますが、不幸にして20本なくなっても入れ歯の方は、ちゃんとした入れ歯が入っていれば入っているほどボケないということも分かってきました。入院したときに一番悪いのは、入れ歯を食事以外で外してしまうことです。ポリデントで洗うのはいいのです。だけれどもその後、外してしまったら、歯茎が浮いてきてるから入れ歯を入れないと言っておかゆを食べてたりしている。こうやると何が悪いのかというと、歯の根もとに神経層がいっぱいあって、ここを噛んで刺激すると、頭の血液の流れがよくなるのです。だからこれはスポーツをやればわかるけれど、歯を食いしばらなければ力は入らないでしょう。それと一緒です。
つまりそういったたった一つのことをやるだけで、実は寝たきり老人を相当削減したという町があります。これは、いま尾道市になっていますが、そこのまちなどは、そういうふうな努力をして、3%ぐらい寝たきり老人がいたのが、いま1%ぐらいでずっと推移してきています。そういった努力をするだけで簡単に減らすことができます。
せっかくですから今日北海道に来たついでに、この会が終わった後、腰が悪い方、腰の痛い方、首が回らない人、簡単にわずか1〜2分でこうやったら痛みが取れますという方法をお教えしますから、興味があったらお残りいただければと思います。それをやるだけで全然医療費が違うのです。ですから私たちは私たちで医療費で必要な分を付けていきたいし、医者の数は増やしていきたいと思いますが、皆さんの協力がないとそういったものというのは無尽蔵になっていきますから、是非皆さんと一緒に本当にいい暮らしができるとか、安心して生活できるようなまちをつくっていくように、逢坂先生と一緒に頑張って参ります。どうぞよろしくお願いします。
<逢坂衆議院議員>
それでは、若干時間が経過しましたが、これで終わりたいと思いますが、何点かだけ時間の超過を承知で整理をさせていただきたいと思います。
日本では、医師の数を絶対的に増やさなければいけない。しかもこれは医師だけではなくてメディカルクラークも含めて医療スタッフ全体を増やすということをしなければいけません。
それから社会保障制度の強化です。しかしそれは民間保険ではだめだということです。公的な社会保険がしっかりしていること。これは先ほどのメディカルロスの例からもわかることです。
それから医師の労働条件の改善ということをしっかりやらなければいけません。いまは医師会というのがありますが、医師会はどちらかといえば個人の開業医の利益を代表する団体ですので、医師全体の利益を代表する団体がないのがいまの実態です。
もう一つが教育の問題です。これは医師の教育だけではなくて、医療スタッフ全体の教育、看護師さん、薬剤師、あるいは臨床検査技師、あるいは療法士の皆さん、医療秘書、医療事務、医療全体のデザインを考えた上での教育というのも必要になると思います。
それから冒頭に桜井先生から指摘がありましたお医者さんの訴訟が非常に増えているわけですが、無過失保証のようなお医者さんの身分を安定させるというようなことも考えなければいけないのかなと思います。
最後ですが、こういうことをつらつら考えてみると、いまの日本の国の資源配分、もっと端的に言いますと、税金の使い方はいいのかどうか。農業は農業、あるいは教育は教育、あるいは公共事業は公共事業というふうに固定化をして予算配分がされているわけですが、この予算配分が人間が生きていくために必要な、柔軟な配分ができる仕組みに変えてていく必要があるのではないかと思います。
それと最後ですが、自治体病院の話が出ましたが、最終的に公共、公のサービスを担うのはどこなのか、このことがやはり突き詰められて考えるべきだろうと。そうなれば憲法25条の規定と合わせて自治体病院が赤字だからといって単にそこのサービスを切り捨てるだけでは問題が解決しないだろうと思っています。
今日の話の中から以上のようなことがいくつか頭出しができたのでは、と思っています。時間がオーバーいたしました。これは私の責任でありますが、パネラーの皆さんそれぞれに感謝を申し上げながら、マイクを司会の方に返したいと思います。どうもありがとうございます。