2004年11月29日
 
北海道知事 高橋 はるみ 様
日本労働組合総連合会北海道連合会
会長 渡部 俊弘
 
2005年度 道政に関する「要求と提言」重点事項
 

1.2005年度道予算編成にあたっては、道民生活と雇用の安定・創出を最重点に取り組む。
 
 
(1) 雇用の安定・安心を最優先した予算編成
 
 道の予算編成にあたっては、道民生活と雇用の安定・安心を最優先する。厳しい雇用情勢を改善するため、各部の予算にそれぞれ雇用創出事業枠を設け、財政再建の中にあっても景気回復を後押しする雇用に重点をおいた予算編成を基本方針とする。特に、IT、バイオ、環境、福祉、食、観光、住宅関連などの成長分野における雇用創出に向け施策を拡充する。
 
(2) 財政立て直しプランの見直しと生活弱者への対応
 
 8月6日に最終決定した「財政立て直しプラン」は、医療・福祉・教育など道民生活の根幹に係わる部門においても、聖域なき削減・切り捨てとなっているが、補助金・負担金削減の対象となった当事者の生活に直接影響を及ぼす問題であり当事者等の要望をふまえて、プランの見直しや必要な支援措置を確立する。
 

2.長期に及ぶ、厳しい本道の雇用・失業情勢を打開する。
 
 
(1)雇用機会の創出・拡大について
 
@ 北海道雇用創出プラン見直し拡充
 危機的な本道の雇用・失業情勢を打開し、4%未満へ失業率を改善させるため、「北海道雇用創出プラン」(実施期間H14〜18年・H15見直し・拡充)を拡充し、雇用対策を強力に推進する。
 
A 緊急地域雇用創出特別交付金事業の継続・拡充
 全国と格差のある本道の雇用情勢に鑑み、今年度で期限切れとなる国の緊急地域雇用創出特別交付金事業については延長し、地域実情に応じた対応を国に求める。
 
B 北海道雇用創出推進会議について
 北海道の厳しい雇用情勢を打開するため、北海道雇用創出推進会議は、北海道、道地方労働局、道経済産業局の連携を強化し、各行政機関の各種制度・予算の総合的・効果的活用ができるしくみをつくり、ミスマッチ解消と失業者の早期再就職などを促進する職業相談・職業訓練・トライアル雇用・職業紹介を一貫して実施しうる体制を構築する。
 
C 産業構造転換への対応と起業化支援
 公共事業に依存した産業・就業構造の転換を図るため、農業の再生と第1次産業関連ビジネス、少子高齢化対策と福祉ビジネス、環境と景観保全対策など地域ニーズに応えるコミュニティ・ビジネス等の創出を通じた、雇用転換・雇用創出を強化する。そのため、NPOや地元中小企業事業者、新規開業者の開業・運転資金、人材育成、技術・商品開発など総合的な支援策を構築する。
 
(2)季節労働者の冬期雇用・通年雇用対策
 
@ 「季節労働者対策に関する取り組み方針」について、年次ごと事業ごとの通年雇用目標数の完全達成のために、支庁を含め全庁を挙げた推進体制の確立を図るとともに一層の施策具体化を進める。
 
A 季節労働者雇用対策協議会を通じた国の関係機関、市町村、業界団体等における主体的な役割と取り組みを明らかにし、官需のみならず民需を含めた事業平準化の促進を図り冬期間失業の解消に努める。
 
B 短期特例一時金受給資格が満たされないなど深刻な季節労働者の雇用不安定や通年雇用安定給付金制度の対象制限導入などを踏まえ、冬期雇用を保証する冬期雇用安定奨励金の継続活用、解雇時に翌春の再雇用を約束する雇用予約、短期特例一時金受給につながる雇用の確保など、道の立場から業界団体を指導し全道的な徹底を図る。
 
C 季節労働者問題の根本的な解決のために、冬期間失業の解消に向けた中・長期的なプランを策定し、将来展望を示しながら季節労働者対策の抜本改革を進める。
 
D 冬期間失業問題を解決しているといわれる北欧諸国等における冬期雇用安定施策や発注施策の改善について、調査研究のために行政や道内関係団体等による調査団派遣を行う。
 
E 建設業退職金共済制度(建退共)の公共工事における完全履行について、道内全市町村に対して、毎年現状調査を行い公表するとともに「北海道方式」など完全履行方式の普及啓発を積極的に行う。
 
F 季節・建設労働者の賃金および労働条件などを確保するために、「公共工事における賃金等確保条例(公契約条例)」の制定を急ぐ。
 
G 発注事業において、社会保険制度(健康保険、厚生年金、雇用保険)への完全加入について、元請だけでなく下請末端事業主まで指導の徹底を図る。
 

3.地方分権の改革を進め財政確立に取り組むとともに多様性と自治を重視した自治体を基礎とする道州制を推進し、北海道の自治のかたちをつくる。

 
(1)地方分権の推進と財政確立
 
 地方分権・改革を「三位一体改革」で実現するために、以下の点について国に求める。
@ 三位一体改革として、自治体が行っている事務事業に比べて小さすぎる地方税の割合を税源移譲で高める。一方で、国庫補助負担金を縮小させ、それらに対応した地方交付税の財源保障を行う。
 
A 2004年度政府予算における地方財政計画は、地方交付税が前年度と比較して12%もの大幅減額となり、政府の「三位一体改革」の初年度は、国の歳出削減のためのみに利用され、道内の自治体は予算が組めない厳しい状況となった。2005年度は地域実情を直視して公平な改革を強く求める。
 
B 国が法令に基づく事業実施を自治体に義務づけ、自治体間の財政力格差が大きい現状においては、地方交付税の財源保障機能と財源調整機能を維持する。
 
C 地方財政の自己決定権の拡大をとおして地方分権の徹底をはかるためには、地方に国税から基幹税である所得税と消費税を確実に移譲・配分し、その上で補助金と地方交付税の改革を実施する。
 
D 国庫補助負担金の一般財源化が実現するまでは、すべての補助事業について統合補助金化を実施し、地方自治体が主体的に活用出来るようにする。
 
(2)分権自治と市町村合併・支庁制度改革・道州制の先行実施
 
@ 政府は、市町村合併を継続・推進していくために、現行法を改正して新市町村合併特例法を成立させ、2005年4月1日から施行する。この新法は、都道府県や知事に合併推進のための権限を与え、強権的に合併を強制することが可能である。道は市町村の自主性を損なう合併に反対し、住民合意を基本に対応する。合併を選択しない小規模町村に対しては、広域行政の観点から支援策を検討し、多様な地方自治制度を提起する。
 
A 地方分権を一層進め道州制による地域政府を築ずくために、ア.国と地方の役割分担を明確にし、権限・財源移譲を進め、先行的な道州制の実現、イ.市町村合併や広域連合など多様性と自治を重視した基礎自治体の強化、ウ. そうした市町村を支援する機能を強化した本庁及び支庁制度改革を「三位一体」改革として、北海道の自治のかたちを確立する。
 
B 政府の「道州制特区」への対応方針と道州制の先行実施に向けた道の基本方針について明らかにする。
 
C 道州制の先行実施の基本方針のなかで、道から市町村への権限移譲の検討内容について明らかにする。
 
D 本格的な地方分権の推進のためには、道の補助金・負担金については、市町村の裁量を拡大し、地方の自主性を生かしていくために「総合補助金(交付金)」に改める。
 
(3)道財政の立て直しプランについて
 
@ 道が8月6日に最終決定した「財政立て直しプラン」は、道財政危機の原因が景気対策に地方財政を動員した国、それに追随し自らの財政改革や政策見直しを先延ばしにしてきた道の責任は重大であるという総括が不十分である。同プランは医療・福祉・教育など道民生活の根幹に係わる部門を中心に聖域なしに削減・切り捨ての内容となっているが、厳しい財政の中で何を優先し、何を我慢するのか、道民と市町村との協働で作り上げられるべきであり、よって、指摘した観点をふまえて抜本的に見直し、道民の合意形成がはかれるプランとする。
 
A 8月6日に最終決定した「財政立て直しプラン」は、医療・福祉・教育など道民生活の根幹に係わる部門においても、聖域なき削減・切り捨てとなっているが、補助金・負担金削減の対象となった当事者の生活に直接影響を及ぼす問題であり当事者等の要望をふまえて、プランの見直しや必要な支援措置を確立する。(再掲)
 
B 財政立て直しにあたっては従来型公共事業から、福祉や教育、環境など住民生活に密着し、雇用創出効果の高い公共投資への転換を進めるとともに、事業の必要性・優先度を地域住民と検証評価するシステムを確立する。
 

4.男女が仕事と家庭を両立できる社会的な環境を整備し、子育て支援・少子化への総合的な対応を強化する。
 
 
(1) 次世代育成支援法(2003年7月成立)は、次の世代を担う子どもたちが健やかに生まれ育つ環境をつくるため、国、地方公共団体、事業主、国民の責務を明らかにしたが、少子化が深刻な北海道においては、実効あるものとするため、以下の取り組みを推進する。
 
@ 市町村における「地域行動計画」、事業主行動計画(一般事業主、特定事業主)の策定を促進するとともに道はそれを支援し必要な支援措置を講ずる。計画策定にあたっては労働者の代表も参加する協議会等を設置する。
 
A 企業において子育てと仕事が両立できる職場をつくることは企業の社会的責任であることを周知し、従業員300人以下の企業においても行動計画を策定するよう指導する。
 
(2) 「北海道子どもの未来づくりのための少子化対策推進条例」(04年10月制定)の基本的施策(子育て支援、保育の充実、雇用環境、母子保健医療、児童の健全育成と虐待防止、教育環境、生活環境、経済的負担軽減等の整備)に必要な関連予算を確保するとともに、市町村が身近なところで子育て力の向上を図り、各地域のニーズに応じた子育て支援事業を実施する取り組みなどに助成を行い全道の推進体制を構築する。また、条例に基づく実施計画は、男女平等、ジェンダーフリーの視点に立った実施計画とする。
 

5.義務教育費国庫負担制度を堅持し、教育の機会均等を確保する。
 
 
  三位一体改革の2年次をむかえ、全国知事会は義務教育費国庫負担金の一部を国庫補助負担金から廃止することを求めているが、憲法26条に定められている「教育の機会均等」が地方の財政力によって保障できなくなるおそれがあることから、現行の義務教育費国庫負担制度はこれを堅持するよう国に求める。
 

6.日本の食糧基地北海道の農業・農村振興を軸に地域活性化を進める。

 
 
(1) 消費者重視の安全・安心の食料政策
 
 米国でBSE感染牛が確認され輸入禁止措置(03年12月)がとられ、現在、輸入再開に向けた日米協議が進められているが、消費者の信頼を最重視し、輸入再開にあたっては、わが国と同等の安全対策に基づくものとすることを国に求める。北海道においては全頭検査を継続する。
 
(2) 遺伝子組換作物への対応
 
 遺伝子組換作物による種子汚染や環境等への影響を防止するため、屋外での一般栽培を規制するガイドラインに基づいて対処する。研究・試験栽培については厳格な管理を行う。遺伝子組み換え食品の表示については、情報公開を進める立場から消費者が合理的に判断できる内容にする。
 
(3)  「食の安全・安心条例(仮称)」の制定
 
 安全と安心の食料生産基地北海道を確立するため、「食の安全・安心条例(仮称)」を制定する。
 
(4) 直接支払政策の導入
 
 農業・農村再生プラン及び道農業・農村振興基本計画に基づく、道独自の直接支払政策の導入を検討する。環境や景観、国土保全と食料自給など農業・農村の多面的公益的機能に対する環境等直接支払政策や慣行農法から有機農法への転換に取り組む農業者に対する自然循環機能等直接支払政策を創設するよう国に求める。
 

7.核燃サイクル開発機構と日本原子力研究所の統合に関わり、核燃 料サイクル開発機構・幌延深地層研究センターに関する基本方針を 引き続いて堅持し、必要な措置を国に求める。
 
 
  核燃料サイクル開発機構と日本原子力研究所を統合し、2005年10月1日より独立行政法人日本原子力研究開発機構を設立するため準備が進められているが、その際、これまで核燃サイクル開発機構との間で確認してきた、協定、条例等が新組織に引き継がれることを法律上で明確となることを国に求める。また、核燃料サイクル機構幌延深地層研究所立地にあたって結ばれた、「幌延町における深地層の研究に関する協定書」、「北海道における特定放射性物質に関する条例」などの文書にある「核燃料サイクル開発機構」の個体名は、新たな組織に置き換える手続き、確認を行う。
 

8.在日米軍再編問題に関わり、本道に米軍基地を受け入れないことを明確にする。

 
 
  現在、米軍基地再配置の検討に関わり、小泉首相は在沖縄米軍の「国外移転、本土移転」も含めた考えを表明している。また、日米の外交・防衛当局の非公式協議で、矢臼別に米海兵隊の砲兵部隊を移転させる構想について新聞報道もなされているが、北海道として、米軍基地は受け入れないことを明確にする。
 
以上