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2005.11.17
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北海道労働協会の労使・労働フォーラム
活力ある職場づくりのために 講演を聴いて
16日午後、北海道と北海道労働協会などが共催した労使・労働フォーラムが開催された。
その講演を聴いたメモを報告する。(内容と文責は連合北海道)
同一価値労働をめぐる先進諸国の状況と日本の課題
国際人間環境研究所 木村 愛子 所長
女性労働における法制度の国際比較研究を行ってきた。
先日、北京でUNESCOと中国法学会が共催して「グローバル経済と法治」の研究会が行われたが、「同一価値と見られる労働における男女賃金格差」については、先進諸国も試行錯誤しているところだ。
1.男女同一価値労働の意味
ILO100号条約は1951年に制定された、同一価値労働に同一報酬を求める条約である。
ILOはご承知の通り、修正資本主義と人道主義に基づく国際機関で、第1次大戦前から設置されているが、国際労働基準や競争のフェアなルール、社会正義の実現などを原則としている。ILOの人権委員会は、国連の女性の地位委員会と双璧をなす。
この100号条約がなぜできたかというと、これは世界大戦が招いた。それは、各国とも共通して、戦地に男性労働者が出て行ったため、その同一労働を女性が担うことになったが、賃金は著しく低い(三分の一程度)ことに起因している。
この段階では、明らかに同一労働であったが、その後、同一価値労働に範囲が広げられた。同一価値労働とは、職務が違っても、使用者が労働から手に入れる価値が同一のもののこと。カナダでは、警察官と看護師が州という同じ使用者であった場合、賃金格差に合理性がないという判決が出たこともある。同一価値労働であると考えられるのである。
100号条約は同一報酬、あるいは同一報酬率を規定し、その際性別は考慮しない制度を作るよう求めている。
しかし弱点もある。それは、第3条で法執行の評価は各国に委任されていることにある。それで、ILO勧告90号では、性別に関わらない職務分類を分析し、客観的に評価するよう求めている。
このILO100号条約はILOの基本条約8に含まれて、批准・未批准を問わず、国際社会は条約の尊重を求めている。
2.日本の賃金と100号条約
日本は100号条約を1967年に批准している。その根拠は労基法4条だが、その文中には“価値”の言葉がない。制定にいたる国会議論も、人権の視点のみで、ほとんど労働価値に関するものは行われなかった。
問題は“平等な賃金”の実現であり、そのためには処遇の平等も必要である。労基法3条をもとに均等待遇が求められるが、そこには“性”による差別の考えがない。
100号条約のほか、111号条約もあるが、これは100号条約の実体化をめざすもので、1958年に採択された。
1985年に男女雇用機会均等法が制定されたが、罰則が付けられなかった。これは、75年の国際婦人年を出発に、1979年に国連の女子差別撤廃条約が採択され、日本でも1985年に批准されるに至り制定されたものであるが、時あたかも女性の社会進出が盛んになりつつあった。しかし世の中は不況の時代で、日本型年功賃金と終身雇用制度から能力主義がもてはやされ、以降経済のグローバル化にいたるのである。
そしてその結果、企業間・地域間さらに正規・非正規、男女の格差が広がり、若年失業の深刻化も起きてきている。
3.各国の取り組み
米国では63年に同一賃金法や公民権法が主に男女差別賃金を規制しようとしたが、その影響がカナダでは、1977年に人権法となり、この問題に取り組んできている。
その中では、職務を技能や努力など4要素で点数化し、異なる職務の同一価値を規定してきている。その動きは州が先に進め、賃金衡平法として連邦国家にも影響を及ぼした。
スウェーデンでは、その実現のための賃金実態調査が政府の手でおこなわれているし、EUでは97年に差別係争の立証責任を使用者側に規定する指令が出され、仏・英でも法改正が行われた。またILO82号条約、158号条約など監督機能を強化することも求められている。
日本では、女性労働者の能力発揮を促進するための積極的取組(ポジティブ・アクション)が取り組まれている。問題は、最賃とILO条約で、底辺労働者の多くが女性であることは間違いなく、その底上げにつながる最賃制度の充実が必要だ。
4.日本の課題
わが国の男女賃金格差は100:65くらいでかわりない。これはコース別人事の弊害でもあり、子育てをする女性には昇給の機会がないに等しい。
ILOでは92年から日本に強く改善を求めてるし、2000年からは労働者自身がILOや国連に提訴してきている。
日本の政府はILOの問いかけに真摯に答えなければならない。それは労基法の改正か単独立法として“平等賃金法”を制定することにある。同時に外国人を含む雇用平等法、評価の公正の実現、国際常識であるジェンダーの平等の実現であり、ILO事務局長の“decent work”(上品な労働形態)を実現するための運動を継続しなければならない。
企業の活性化と魅力ある職場作り
JIL独法労働政策・研修機構 伊藤 実 統括研究員
1.情報の非対称性
地方にはよい商品がたくさんある。一例として旭川にあるHOB(ホーブ)と言うイチゴ供給会社はもともとバイオテクノロジーの会社だが、学校に頼んでもホームページをつくっても人が来なかった。いわゆるベンチャー企業で将来性を疑われていたからだ。
しかしJASDAQに上場してからは従業員も集まりやすくなり、いまではセブンイレブンにもおろしている。
この会社が上場するまでは情報の対象化が図られなかったという例になるだろう。
2.技術の伝承が進んでいる
いま日本の社会ではそれまで蓄積した生産技術の伝承が進められている。農業が典型的だろうが、後継者がいないところでは、伝承が見込めないことでやる気が失われてきている。
これに関連して伝承先である若者の労働気質も考慮しなければならない。いまの若者は段階を踏んでその気にさせたらきちんと仕事をする例はいくらでもある。ところが企業側が、「あたりまえだ」とコミュニケーションしようとしない傾向が強い。いまの若者は自分中心だから、気分次第で平気で会社を辞める。会社側がやり方を考えなければだめだ。
例えば、従来は社長が中心の社員旅行も、社長が参加しないで、社員だけで、しかもテーマを持って調査旅行にすると、結構生き生きとやってくることになる。
会社経営も“イエスマン”だらけでは発展しない。多少バランスの悪い人もおいて、透明性と納得性の確保がキーポイントになっている。
経産省の調査でも、規模50人が分岐点になっていて、人材の集まりが明暗となるようです。ただ、50人以下でも、以上でも、いまの若者の気質から言うと、職種別の募集を明確にした方が定着率はいいようです。
是非、従業員管理をされるセクションの方は“コーチング”の講座を受けるといいと思う。
3.コミュニケーション能力が足りない
いまの会社にはコミュニケーション不足が往々に見られる。例えば社員の新人研修でも、いきなり大ベテランが行うのでは、情熱ばかりで知的レベルに欠ける。上司の条件には教養の有無も入るものだ。初めは3年くらい先輩が担当し、3〜5年後に仕事を一巡したら、次の先輩と言うようにしなければ、受ける方も教える方も不幸になる。くれぐれもコミュニケーションがうまくいけば、問題の把握が楽になることを忘れてはいけない。
その意味で、成果主義賃金の限界も明らかになる。成果主義はチームプレーが加味されない。それぞれがスタンドプレー化してしまうことになり、最後に合成の誤謬が起きてしまう。例えば国立大学の図書館で成果主義を導入しようとしたが、どのように評価できるのかわからなかった。本の貸し出し数なのか、それとも、教授の出題傾向を教えて顧客満足度を上げる方なのか、自明だろうと思う。
とにかくいまは自分主義の労働者が増えている。教育のせいばかりにしていないで、社内にコミュニケーションのシステムを導入し、納得性を高めることが必要だ。
(以上はあくまでも聴講メモなので、転載等の利用はできません) |
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