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2005.10.07
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誰にでも信頼される連合に 笹森
労働者の目線の民主党 前原
連合第9回定期大会の笹森前会長あいさつと、前原民主党新代表の来賓あいさつを載せます。
今回の衆議院選挙で明らかになったことは、日本のマスコミが中立ではないと言うことです。ぜひご一読いただいて、それぞれの方の正確な思いを受け止めてください。
連合会長あいさつ
○笹森会長 皆さん、おはようございます。笹森です。連合第9回定期大会開催に当たりまして、代表してあいさつをさせていただきたいと思います。
まず、ご多忙のところ、ご列席を賜りましたご来賓の皆様方にお礼を申し上げたいと思います。
政府を代表しての小泉総理は10時半ごろ、そして尾辻厚生労働大臣は夕方ということになっておりますが、政府を代表してお二人、出席をいただく予定になっております。
そして、政党を代表して、もう既にお見えになっておりますが、民主党の前原代表、社民党の福島党首、そして国際組織からはICFTU本部のガイ・ライダー書記長、OECD−TUACのジョン・エバンス事務局長、ICFTU−APROの鈴木書記長、さらに ILOのソマビア事務局長の代理としてダン・クニアー局長、そして私から見て会場の左側のほうに座っておられますが、各国ナショナルセンターの代表、さらに国内からは関係団体の代表の皆さん方にお集まりをいただきました。大会構成員を代表して、ここに厚く御礼を申し上げ、皆様方の拍手で歓迎をさせていただきたいと思います。ありがとうございます。
そして、代議員の皆さん、構成組織の傍聴の皆さん、報道関係の皆さん、本大会にご参集をいただきましてありがとうございます。
本日、ここに連合第9回定期大会が、このように盛大に開催されましたことを心より感謝申し上げますとともに、本大会の成功に向けて皆さんとともに喜び合いたいと思っております。
今回の大会で私は退任をすることになっておりますので、私の副会長として政治委員長を4年、さらには事務局長を4年、そして会長を4年、連合の12年間の三役を務めさせていただいた思いも込めてのあいさつをさせていただきたいと思います。
2001年の第7回大会で、全構成組織の皆さんからご推挙をいただきまして連合会長に就任をし、この4年間、草野事務局長と専従のコンビを組んで2期務めさせていただきました。この間、多くの仲間の皆さんからいただいたご支援、ご協力によりまして、幸いにも連合会長の重責を果たせたものと感謝をいたしております。‐
思い起こせば、連合は1989年11月、世界の中でも歴史的な変化があった、ベルリンの壁が壊れたときとちょうど時期を同じくして、この厚生年金会館で結成をされて16年になります。今でもまぶたに残っておりますが、この後ろに「平和 幸せ 道ひらく」をメインスローガンにいたしまして、「力と政策」をスローガンに掲げて連合運動の展開をスタートいたしました。
この前に、この連合を築くために労働戦線統一推進会を結成したのが1980年、今からちょうど25年前になります。このとき、労働界の統一を悲願として、それをなし遂げた先輩諸兄の熱い思い、民間先行から官民統一をした連合、この原点は何だったのか、この大会を通じて改めてまた皆さん方と想起をし、確認をさせていただければと思っております。
8年前、私が事務局長に就任をしたときに、高まっていた危機感を自らのもの、組織のものとして立ち向かおうという思いを込めて、三つのメッセージを出させていただきました。何のために連合を結成したのか、そして労働運動は必要ない、組合離れや組合無用論が大きく言われているのはどこに起因をしているのか。企業別組合の限界、呪縛からどう抜け出したらいいのか。その上で、高度経済成長時代、次第次第にものわかりがよくなってきた労働運動の体質を、意識的にものわかりの悪い労働運動を徹底してみようではないか。これまで労働運動がやってきた大切なことを忘れてしまうと取り返しのつかないことになる。この三つについて訴えさせていただき、そのことをするために、組織の機構・運営・予算・人の配置など抜本的な見直しをさせていただきたいと提案をいたしまして、労働組合再生の取り組みをスタートさせていただいたのがちょうど8年前になります。
そのことを実行に移すために、まず連合の中に連合労働運動の『フレッシュアップ委員会』をつくりました。2期目には、現状の問題点を改めて認識をして、うみを出そう、社会に対する労働組合の方向性を明確にしたいという考えのもとに、学者を交えた『21世紀連合運動挑戦委員会』をつくり、報告書をまとめ、ここで目指すべき社会、今、連合の皆さん方のキャッチコピーになっておりますが、労働を中心とした福祉型社会を目指す方針を確定いたしました。
しかしながら、当時は、この労働を中心とした福祉型社会を実現するために、労働運動がどういう役割をしたらいいのか、どういう運動を展開するのか、その仕方や役割、機能まで、運動方針には書き込まれておりませんでした。
そこで、2001年、私が連合会長に就任をしたときに、二極化が進展をし、さまざまな不安が増すデフレ不況の真っただ中で、連合が日本の一翼を担い、支え、牽引していく組織になるために、どうしも労働運動の再生・活性化をなし遂げる、この思いを強く持ち、『アクションルート』と銘打ちまして、その「パート1 47都道府県を回る直接対話」を行いました。
ちょうどこの4年前からの直接対話のときには、当時は経験をしたことのない高失業時代に入っておりまして、失業率が5%台に高どまりをしており、さらにインフレ経済からデフレ経済に変わって、失われた10年が15年になろうとする中で、経済変化に対応し切れず労働運動の切りかえができていないということが課題になっておりました。
そこで、メインテーマに「ストップ・ザ・失業」を掲げて、労働運動の再生・活性化をなし遂げるために、さまざまなジャンルの人の意見を聞くことにいたしました。このことについては何回も申し上げておりますけれども、行政や経営、NP0、パ−ト労働者など組合以外の方々と、いろいろな立場の人と意見交換をいたしましたが、私は大変うれしく思いましたのは、どういうジャンルの人とお話をしても、労働組合が要らないと言った人はだれもいなかったんです。逆にこんな時代だからこそ労働組合に頑張ってほしい、今の社会変革の牽引役は連合しかない、そういうエールを送られました。
この体験を通して、私は率直に申し上げて、私の40年近い労働運動、組合活動をやってきた私の労働運動観は大きく変わったと申し上げた経過はご承知のとおりだろうと思います。
その上で、夢や理想を語っていても労働運動の役割が果たせた高度経済成長時代がありました。しかし、今は夢や理想を語っていると、現実にはばたばたと切り落とされていく人たちがいるんではどうしようもないんです。中央委員会や大会で労働組合が総括をすれば一件落着、たとえ内容が悪くても責任をとらされない。しかし、今は回答がもらえた時代とは違うんですから、建前を言い、その責任は人に押しつけて、言いっ放し、やりっ放しの労働運動ではいけない、このことを何回も呼びかけさせていただきました。労働組合自らの力で、われわれ自身の力で必ず答えを出す。そういう運動に変えようということを私自身も痛感をし、皆さん方に呼びかけた最初の2年間だったと思います。
それまで労働組合が企業の社会的責任を問うことがあっても、自らの社会的責任を自問自答したことはなかったと言えます。労働側の不祥事があったとき、内部的な問題も含めてそのことをどう是正するのか、自らのチェックに限界があるならば、労働組合、労働運動が外部の人にどう評価をされているのか、このことを率直にとらえて受けとめてみるべきだ、こういう思いの中で皆さん方にお諮りをし、連合労働運動評価委員会をつくらせていただきました。
この評価委員会の報告は極めて刺激的であり、われわれにとっては耳の痛い内容だったのは皆さんもご記憶のとおりだろうと思います。労使協調路線にひたり緊張感が足りない、組合員は恵まれた層であることを自覚して、弱い立場の人たちのために活動するべきだという指摘をいただきました。この指摘について、提言については、神棚に上げるな、座長の中坊さんから言われました。私は神棚に上げずに実行するということを約束いたしました。
その後、2期日に入った2003年の大会で、この提言を受けとめて、「組合が変わる、社会を変える」をスローガンに、本気で連合労働運動の意識と行動を変えようという訴えに出ました。意識と行動をほんとうに変えるためには率直な意見交換をするしかない。それで加盟58産別すべてと直接対話をする『アクションルートPart 2』、全組織との直接対話を始めさせていただき、1年半かかりましたが、今年の7月20日に58産別すべてと直接対話を終わることができました。
私は、会話を重ねる中で改革への思いは醸成をされ、改革への芽は完全に芽ばえたと確信することができました。そして、この現場の人との対話を通して、労働組合として現場の問題に対して絶対に背を向けないで直視する、このことが必要だ、その上でいろいろな働き方をしている今の雇用の多様化の内容に対して、正社員でユニオンショップに守られた人たちを対象にする労働運動ではもうだめだ、改めて痛感いたしました。
社会性を持った労働運動とは何なのか、企業別労働組合やメンバーシップがある人たちの労働運動でいいとは思いますが、しかし、ナショナルセンターはいわゆる社会運動をやるシステムに取りかえていかなければならない、このことをぜひ共通の思いとしていただきたいと思うんです。そうでなければ役割が果たせません。
そこで、組織率について申し上げたいが、組織率が20%を割り込むまでになったのは何が原因だったのかを突き詰めてほしいと思います。もちろん労働組合がいろいろな面で役立っているのは事実でありますけれども、一般的に見れば、職場から仲間がいなくなることに対して労働組合は何もやっていないと映っているんです。交渉の過程の中では多岐にわたる条件をかち取っているのかもしれませんが、最終的に雇用が守られなかったことは事実であります。私は、雇用を守ることが労働組合の最大の生命線だ、それをやるのが労働組合だと言いつつ、できなかった、私が三役に携わっていたこの12年間、じくじたる思いがあります。
名分的には、国際競争に勝ち抜かなければならない、企業が生き残らなければ元も子もなくなってしまうといって、企業との共存を選択した労働運動がこれからもほんとうにそのままでいいのかどうか、よく考えていかなければいけないと思っております。
さらに、フルタイマー正規型で働く人が多かったのが、雇用形態の変化の中でどんどんそうでない人たちが増えてきている。残念ながら、これまで同じ事業所で机を並べていて一緒に働きながら、そういった人たち、特にパートの人たちの労働条件を見てこれなかったのは事実であります。しかし、今やそういう考え方を変えざるを得ないという局面に追い込まれております。
非典型労働者をカバーすることで、自分たちが逆に支えられていることに気がついてきたはずです。そういう経緯があって、連合がパート労働者の時間当たり賃金10円引き上げを4年前に要求のメーンに出すことになった。これは連合にとって大きな変化だったと言えると思います。
その上で、中小・零細の地場企業、非典型雇用労働者の組織化の問題について申し上げたいと思うんですが、これまで問題視をしてこなかった組織の数に注目をしていただきたいと思います。
19.2%の組織人員で登録されている現在の労働組合の組織率、これは厚生労働省の統計でありますが、その中で労働組合基礎調査によりますと、この19.2%の労働組合員は約6万3,000組合であります。連合加盟の単組は2万8,500組合であります。企業法人として登録をされている企業の数は幾つか。270万社です。したがって、労働組合が組織されている企業の数は全体で2%、連合にとってみれば1%強しか組織していないことになるんです。
組織をされていない98%、これは中小・零細企業で、その多くは地方にあって、労働組合なんて戦前も戦後も見たことない、当然、労使関係や労働協約なんて経験したことがないという人たちなんです。この人たちに対して、労働運動は間接的には影響力を及ぼしてきたといっても、直接的には何の手出しもできてこなかった。組織拡大については、ここをどういうふうにわれわれが対応していくかということなんです。
連合は、ナショナルセンターは組織拡大に手を出さず、産別、単組がやることだというのが今までの日本の労働界で不文律的になっておりましたけれども、これについては直接やろうという思いの中で、人も予算も組織拡大に集中をし、今まで産別や単組でできなかった大きなグループに対してアプローチすることも始めさせていただきました。既に全業種にくさびを打ち始めてはおりますけれども、残念ながらまだ効果が出ておりません。しかし、組織拡大に関して大きく変えていくきっかけはできつつあると思っております。
そして、きょうの朝日新聞の社説に載っておりましたけれども、パート労働者の組織の問題について、もっと深刻に真剣に、そしてほんとにこのことをどうやるかという思いを皆さん方が共通の思いとして持ち合わせ、これからの対応をお願いしたいと思っています。
そういう中では、1%程度だったのが3.3%、自慢できる数字の多さではありませんが、とにもかくにも3倍にはなってきた。このことをどう広げていくのか。そして、全国ユニオンが連合に抱いていた今までの思いを超越して加盟を決断してくれたこと、このことを全国の非正規雇用労働者の人に、われわれ自身の運動としてどう広げていくのか、こういう問題について、パートの組合費の問題にも一応結論が出ましたので、今後は各組織でパートの組織化について全力投球をしていただきたい。そのことができ上がってくれば組織率も反転できるだろうと確信しております。
そのことをやるために、地方連合会・地方協議会の充実・強化を私は申し上げたいと思っています。もともと労働運動は福祉・共済・労働、すべてを扱ってきたわけです。ところが、歴史の流れの中で分離をしてしまいました。利用している人たちは生協にお世話になっているとは言いますけれども、一体的活動をすることで地域や働く人たちへの生活にどう貢献できるのかということが重要だろうと思います。全労済、労金、生協連、そういったところとも今会合が持たれておりますけれども、これらが一体となって地域福祉活動、地域労働相談活動に乗り出そうという話になっておりますし、今年の連合の労働方針ではそれが大きなポイントになってきております。
恵まれない人たちや未組織の人たち、働き方の違いも関係なく、一括して面倒が見られるような組織をつくりたい、本気で変えられるか否かは情熱次第でありますけれども、今回、私は『アクションルート』を通じて情熱は伝わったと思っております。問題意識は収れんをされております。運動を変えていかなければいけないという意識も共有できております。産業別縦型で活動を限定するのではなくて、地域活動を強化する方向に軸足を移していかなければいけないということを申し上げておきます。
その上で、今の社会の中で福祉型社会の実現と税制・社会保障の抜本的改革を実行するために何をするのかということについて、申し上げておきたいと思います。今の日本の社会、生き方、暮らし方、働き方をつくりかえていく、これが連合の提起であります。労働提供側からのかかわり方をどうするかを示している。今、給与生計世帯・サラリーマン家庭は国民の82.7%、働いて生活給与を得ているという人たちが約1億人。この人たちの生活の安全保障をどう張りめぐらせるのか、そのことが張りめぐらされた社会が労働を中心とした福祉型社会ということになります。
この社会をつくるためには、男女ともに家庭と生活を担う男女共同参画社会が必要であり、その実現のために最も欠けているのが均等待遇。経営側とこの問題では入り口の議論でぶつかったままでありますけれども、この問題を放置しておいては日本社会が壊れてしまいます。また、働く人たちの生活の根幹にかかわる税制と社会保障にどういった効果を与える運動ができるのか、これらについて労働運動は今まで単発的にやってきました。しかし、今は、システム、制度をどうつくるのかに初めて労働運動として、その根本にかかわれるという状況がつくり上げられています。
今度の税制改革で政府は、選挙の中では触れなかったのを、終わった途端に直ちに策のなさをすべて働く者に押しつけるという大増税をもくろんできておりますけれども、これに対して労働運動が徹底的に立ち向かい、その上で税と社会保障を一体的に見直して抜本改革をさせる、こんな壮大な制度づくりにかかわれて、かつ労働運動が主導権をとれるかもしれないというのは初めての日本の経験になります。
家族を含め、地域の人たちも巻き込んで運動を展開していけば、労働運動の活性化はあっという間にできるはずです。今起きている事象に対し、労働組合役員としてはどういう感性で受けとめ、どう反応するのか。今ほど鋭敏性を求められている時期はないし、今ほど労働組合がおもしろいというときはないはずなんです。このことをおもしろがってやっていただきたいと思うんです。
その上で、連合のアキレス腱について申し上げたいと思います。国の基本政策への意思合わせの問題です。きょうも表でセクトがビラまきをしておりました。これについてはこの基本政策が一番大きな問題になると思います。この問題については、今までも政治方針の中で論議をしてきました。ほんとうにどうしていくのかというところまでの議論の突っ込みは今まで持てておりません。まだまだ建前が多いんです。それをいかにつぶすのか。
そこで、冒頭申し上げた、25年前に労働戦線統一推進会ができたときの1年余にわたる議事録の公開に踏み切らせていただきました。当時の議論には、25年前ですよ、今の連合が抱えている問題点がすべて入っていて、残念ながらいまだに解決をされていないんです。これは連合の最大のウィークポイントであり、アキレス腱です。今この議事録を公関すれば、25年前と何も変わっていない、連合が今、改革しようよと呼びかけていることに対して何も動いていないというのが、皆さん方共通の受けとめ方になるでしょう。問題になる諸課題に対して、なぜそういうことが突っ込めなかったのか。私は昨年の7月以降、電機連合の大会を皮切りにして、会長自ら明確にこうしたいという意思表示をすべきだということで、かなり突っ込んで申し上げさせていただきました。その一番の問題が憲法・平和問題だと訴えさせていただいたんです。
憲法9条の扱いについては、「国の基本政策の在り方委員会」で論議をして、先ごろ中間的な答申を出させていただきましたが、その中間取りまとめについては14の産別から意見書が出ております。いろいろな意見があります。これは国民の縮図ですから、連合の中はしようがありません。しかしながら、今度の小泉内閣があれだけの多数、憲法改正も発議できるという 3分の2以上の議席を獲得したという、その上であの思っていることがほんとうに〜やられたときどうなるのかということを考えますと、これは連合の中で方向性についてはまとめておかないと、何の論議にも参加できないということになってしまう。
しかし、国会の中で5年、衆参両方とも論議をやって、出た答えが両論・三論併記です。9条絶対死守という組織から、こういう考え方もいいのではないかという、連合も幅広い考え方があります。今の状況ではなかなかまとまるはずがありませんが、タブーでさわることすらできなかった問題に対する意見がやりとりできるという状況になってきた。このこと自体、連合にとっては大きな変わり目なんですけれども、本気でこのことに対して、世界の平和に貢献をし、そして国連決議に基づいたわれわれの国際活動がどう展開をできるのか。その上で世界に唯一と言っていい平和主義の憲法を持っている日本のこの根本精神を変えないで、専守防衛に徹しながら日本の安全を守り、国民生活の安全を守っていくという、こういう憲法に変えていくことができるのかどうか。
憲法をさわると言った途端に9条という今までの不幸を乗り越えながら、この問題についての結論は、私は、新体制の中でできるだけ早くやっていかないと、国会や国の論議の中に間に合わないということを申し上げておきたいと思います。
そして、そのことをやっていく中では、今までの四団体時代のしがらみを乗り越えてほしいということをここで申し上げたいと思うんです。今の若い組合員たちは四団体時代のことなんか知りません。連合ができて16年になります。おそらく組織の約半数は四団体を知らない若い人たちでしょう。こだわっているのは古手の役員なんですよ、四団体時代を知っている。そこに、四団体ふるさと会議みたいなムードが漂っていることは残念に思うし、このことを早くぬぐわなければ再生・活性化のスピードは速まりません。ぜひ、しがらみを取り除いてほしい。
先ほど申し上げた統一推進会の記録、ここの中には問題点が列挙してあるし、そのことのこだわりがどう取り除けるのかということについては、処方せんはもう中坊委員会の提言で出ているわけですから、ぜひ皆さん方が思い切った論議をしながら、しがらみを取り除くという努力を続けていただければと思うんです。
その中で、これから前原代表のお話にも出てくるかと思いますが、既得権益を打ち破ることができるのかどうかというのが、今、われわれに課せられていることだということを申し上げたいと思うんです。公務員の対応の問題で、連合がほんとうそこそのことをとりきれるか否かが問われております。
官公労の皆さん方には、私は今までのさまざまな権益をはっきりさらけ出して、世間の評価を受けるべきだ、行き過ぎた部分は思い切って自分たちから是正をして、当然の権利はとり続ければいいけれども、世間一般から見ておかしいと思うことは直そうよということを申し上げてきました。そして、その際には、公務員の場合に、民間のサラリーマンと一番違うところ、このことをきっちりと認識をしておけ。それは基本は税金で賄われているんだということを忘れてはならないということを申し上げてきております。この認識の薄さが今起きている現象につながっている一因だと私は考えたからで、これをさらけ出さない限り、公務員労組と民間サラリーマン労組のギャップは埋まりません。連合の中で官民融和ができないと指摘されていること、このことをどういうふうに、同じ働く人じゃないかということの中でつくり上げられるかどうかなんです。
その中で公務員制度改革について申し上げれば、連合はこれを否定していないんです。きのう、公務労協の代表と前原代表がお会いになって、いろいろな意見交換をされました。残念ながら新聞の報道は一方的です。前原代表の発言だけ載っているんですね。公務労協が言ったことに対しては何も載らない。この状況をどう直すのかということなんですが、私は、前原代表が代表に就任後、お話ししに来たときにこう申し上げました。公務員制度改革は、政府の2000年の大綱確定以来、4年間、政労協議をやってきた。そして、昨年12月に、この政府案は白紙撤回をされた。そして、ILO勧告も再三にわたり出ている中で、連合は連合として働く立場から公務員制度改革の抜本的な改革内容をもう既に提言をし、政府・与党、そして民主党に提起をしてあると。
われわれは公務員制度改革をやってはいけないなんて言ってない。公務・公共サービスを国民のサービスの利便向上をどうするのか。そのことを基本にし、今までの国家公務員、地方公務員、そして、そこにブランチをしているいろいろな法人の人たちに対して、十把一からげではなくて、それぞれの部分の働き方に応じ、そして、その契約の状況に応じて制度をどうつくっていくか。特に国家公務員に対しては、そのことをまず急ぐべきだ。公務員制度改革については抜本改革案を出して、そうすると、そのあり方を決めていく中で、じゃ、その制度ができ上がれば、働き方のシステム、ルールをどう変えるのかというのを次にやらなければいけない。抜本改革案は西尾先生の研究委員会報告を出させていただいた。働き方のシステム、ルールについては、今、東大の神野教授のもとに委員会をつくって検討しております。これはもうすぐ出ます。セットになります。
そこで初めて、そのシステム、ルールに基づいた雇用条件や賃金、各種処遇条件というのが出てくるわけです。そのことをやっていけば、結果として賃金や労働条件がどう変わるのか、これは当たり前の話なんだ。このことをどういうふうにとっていくか。その基本は、これは前原代表の発言で救われましたが、労働基本権を保障するという中で、そういう問題についての切りかえをできるかどうかということなんです。
そして、もう一つのポイントは、小さな政府論が出ておりますが、大きいか小さいか、政府の経済支出の中でGDP比較をやっていくと日本は小さな政府なんですよ。大きな部分は何か、国債発行の中で利払いと元本返還が幾らあるかということ。全体支出の中の22%ですよ。人件費にすぐ目が行って、そのことばかり適用されるけれども、人件費のフローの部分から見れば、アメリカと徴差で、世界の中で2番目の小さな支出なんです。圧倒的にヨーロッパや東欧諸国は大きい。こういった問題について、一方的な見方の中で押しつけてくるということに対して、これは官も民も働き方にすべてそのことが影響されてくる問題だから、ぜひ皆さん方の知恵を絞っていただきたいと思うんです。
そのことを連合は既得権擁護だから逃げているんじゃない、当該組合も逃げているんじゃない、全面的にどう変えるか、それが日本のためにどうなるのかということをやっているんだということをもっともっと大きな声で訴えましょう。私は、この大会でそのことを明確にマスコミの皆さんに申し上げておきたいと思う。
その上でもう一つ言及をすれば、郵政民営化法案の問題です。連合の中でも、確かに民営化のやり方、中身については意見が一致しておりません。しかしながら、私は今回の小泉総理、そして小泉内閣のやり方は許せない、こう思っています。なぜならば、強大な権限を持ち、法律を変える数を有していれば、そのときの為政者の意図によって新しい法律を出せば旧法を全部駆逐できるということを利用されて、何でもやり放題だということなんです。今回の民営化の中身ももちろんひどいけれども、その手続、手順の問題に私は疑義がある。
憲法違反、現行法違反、信義則違反だ。憲法19条、良心及び思想の自由、これを侵してはならないと書いてある。小泉さんは侵したでしょう、いろいろな局面の中で。そして、憲法73条、政府は国民のために法律を誠実に執行すると書いてある。この法律を誠実に執行するというのは、現行法に基づいて、きちんとそのことをやるかやらないかなんだ。現行法違反、二つあります。郵政公社法24条、そして、省庁等改革基本法33条、明確な違反ですよ。
私は、郵政行政審議会の業績評価委員をやっています。郵政公社に移行して2年です。4年間の経営目標を立てて、単年度ごとに評価を得、そして4年たったときに、そのことを総括をして、どの部分を民営化、官に残すのかということを決めようという内容でそのことはつくられた、これが公社法に書かれている。今年の春、その委員会に麻生総務大臣が出席をされて、こう言ったんです。郵政公社に移行して2年、国民へのサービスは向上した。働く人の意欲が高まり、生産性は上がった。コストは削減できた。3事業トータルをすれば黒字が達成できた。皆さん方が評価をしていただくことを積み上げて4年後、方向性を決めさせてもらいたい。郵政民営化は手段であって目的ではありませんと明確に言い切ったわけなんだ。なのに、なぜああいう法律が出てくるのか。
そして、信義則違反というのは何か。国会の中で大臣答弁が、このことに対して、省庁等改革基本法の中に、第33条にこう書いてある。6項、1項から5項までの各項を施行した上で郵政民営化などは行わないこととすると書いてある。この解釈について大臣が歴代の中で求められた中で、これは公社に移行した後、民営化はやらないということだという大臣答弁が出ている。これに対して、小泉さんや竹中さんは何を言ったのか、政治家の個人的心情を述べたにすぎないと言ったんです。だったら、それぞれの法案論議をしている中での大臣解明というのは今までどうだったのか。全くそのことが信じられないということだったら、国会論議なんて大臣とやる必要はないんだ、ということを平気で踏みにじって、最大の問題は、時の為政者が新しい法律を出して古い法律を消せば、自分の思うことは何でもできるということをさせてはいけないということなんです。私は、そのために初めて連合会長として訴訟の原告人になりました。この重みをぜひ受けとめていただきたいと思うんです。
その上で、政治政策とのかかわりについて申し上げます。296対113、民主党がこれほど議席を失うとは思いませんでした。解散に持ち込んだまでは流れはわがほうにあったと思っております。しかし、直後の総理会見から強烈な反撃が始まり、小泉劇場の幕が開いた。そのときの小泉さんの覚悟と迫力、あれには参ったですね。観衆も、そして国民も、そのことに飛びついた。そして、郵政民営化一本の脚本の演出を主演“ 助演のすべてが国民の心をつかんじゃった。テレビの影響だとか何とか言うけれども、やっぱりあの迫力を打ち破れなかったというのが、民主党以下、野党が負けたというところにつながるんでしょう。
その上で、日本人の気質が変わったんではないかと思っています。これは判官びいきが薄れて、勝ち馬に乗りたいという方向に票が流れたということです。これからのいろいろなムードをつくっていく中で、このことをぜひ次の選挙のときの教訓にしていかなければいけない。しかしながら、選挙戦の中盤、潮目が変わったと私自身は全国を飛び回って感じた瞬間がありました。しかし、そこで切りかえすことができなかったというのは、それは小泉自民党が最後までぶれなかったということが、相手側の勝利点としては一つ。そして、わがほうが反省をするべき点としては、民主党は戦略・戦術・政策・宣伝、そのすべてに負けたと私は断定をしたいと思います。
総括を試みれば幾つか特徴的な点が指摘をできますけれども、一つには、小選挙区制の威力が如実にあらわれた選挙だと思うんです。しかし、このことは悲観することはありません。これは流れが変われば、その逆も大いにあるということですから。しかも、あれだけの逆風の中で得票数では微差に迫り、113議席を確保できたというのは、今まで風頼みだ、風頼みだと言われてきた民主党が自力がついたというあかしだと私は思いたいし、思う。そして、民主党が戦略・戦術を立て直して、国民の要望を受けとめて、施策をしっかり打ち出していけば、近い将来、大逆転は十分に可能だということを立証できたと受けとめておきたいと思うんです。
二つ目に見れば、これは歴史的な問題として申し上げると、55年体制が完全に終わり、05体制とも言うべき新しい体制が明確になった選挙と位置づけられるのではないかと思うんです。もともと自民党、公明党連立のかなめは選挙協力でした。しかし、今回はそれを超えて、まさに合同へと踏み込んだとしか言いようがない。公明党は自前候補を出した9の選挙区を除いて、選挙区は自民、比例は公明とやったでしょう。自民党も比例は公明と全部の選挙区で連呼しましたね。それぞれが、それが与党勝利に貢献したことは間違いありませんけれども、別の政党だと言いながら離れられない関係になったという意味で、一体的な党の運営になっていくんじゃないか。このことは私どもがしっかりと受けとめていかなきやいけない。今までばらけるかどうかなんていうことを期待するなんていうことはもうないんだということです、あそこまでのめり込んじゃえば。その上で選挙戦術をどう立て変えるかということです。
そして、三つ目の注目点は、これは政権交代可能な二大政党的体制における選挙が経営対労働という対立構造を鮮明にして戦われたという今年の選挙の特徴だったということを申し上げておきたい。私は、9月 5 日、ちょうど川端幹事長の応援演説で滋賀県に入っていて、朝立ちをして宣伝カーからおりてきたときに、話を聞いていた人が「これを見てくれ」と言って新聞を持ってきました。中日新聞の朝刊一面にこういう見出しが載っている記事だった。「自民も驚く大変身、トヨタが全面支援。奥田会長、財界に大号令」という記事なんですね。トヨタの副社長2人と武部幹事長が握手する写真が載っておりました。
今回の選挙で、日本経団連の奥田会長は「経済団体は自民党を支持し、応援する」と明確に表で宣言をしました。戦後の60年、いろいろなかかわりが与党・自民党と経済界はあった。しかし、裏側で献金だとか、いろいろな応援をやってきたことはあるけれども、公然とマスコミに対してそのことを語り、傘下の企業に協力を通達するというのは、これは初めて。経営が政治献金、後援活動、ここまで露骨に選挙支援の表に踏み込んだのは、これは初めてのことだと思います。その上で、経営イコール自民党は既得権擁護をする公務員の組合、このことを種に民主党と労働組合の関係を徹底的にたたくという選挙戦術で攻撃をかけてきました。私は、この間、それは敵は敵、味方は味方、いろいろなやり方ですから、いろいろなことがあってもいいとは思うんだけれども、この間の武部幹事長の発言は許せないものがあります。しかし、この発言の真意はしっかりと見きわめておくことが必要だということを申し上げたい。
これはどういうことか。新進党と民主党があった時代、それぞれの応援団がありました。私は同盟系に入っておりましたから、新進党の中で公明党、創価学会と一体的な選挙を戦ってきた。しかし、あのとき、野党に落ちた自民党、10カ月の中でどういうふうに執勘な攻撃をかけてきたのか。創価学会の最大の指導者である方を国会証人喚問せよということを執拗に繰り返し繰り返しぶつけてきましたね。そのことだけではないけれども、公明党は連立に走りました。応援団の力量から言えば、自民党の敵対側の最大の応援団が第1列にいた、そのグループだった。のほほんと2列目にいた連合、われわれ労働組合が民主党応援団の第1列にいや応なく出たんですよ。たたくのは当たり前です。ここで申し上げておきたいのは、脱労組、いろいろなことを言われておりますけれども、私は、敵の味方をたたけという敵の戦術に乗って、こちら側もそうだそうだと言われたんじゃ、一生懸命、選挙を戦っている組合員がかわいそう過ぎるということなんだ。
そういうことを含めて、労働組合は利権を求めて、利権を守るための集団ではないんです。経営と政治の関係は政官財の癒着構造の中で、いかに自分たちの利権構造を守るかということをやりたいという、このことが見え見えになったということなんです。労働組合は既得権擁護。今回、小泉さんのうまかったのは、改革を阻害するものは守旧派で、労働組合は既得権擁護の抵抗族だと断じられたことなんだ。しかし、この労働組合が徹底的に悪玉にされたということをわれわれはどう受けとめるか。
ここに二つだけ私は申し上げておきたいのは、選挙が終わった後、二つの記事に目を引かれました。一つは、こういう,見出しがついていました、「都市部でサラリーマンの反乱」、サラリーマンは自民党に票を入れたというんですよ。われわれはサラリーマン大増税を阻止しようというキャンペーンを張りながら、選挙戦を通じても、組合員や地域やいろいろな人たちに、こんなことを終わった後やられたらたまらないということを言ってきた。しかし、その一番の味方であったサラリーマンが何で自民党に投票するのか。そのことを阻止できなかったわれわれは一体何だったのかということね。
もう一つは、「ニートの時代に労働貴族の党」と、民主党と連合の関係をやゆした記事がありました。われわれが働く人たちのためにとやってきたことが全く違って受けとめられているというこの事実について、もっと深刻に受けとめていかなければいけないのではないかと思っ
ています。
その上で、9月20日、民主党の前原新代表と三役が連合を訪ねていただいたときに申し上げたことですが、就任早々、組合との関係を見直すという話。今日の新聞にもそのことが載っておりますけれども、マスコミも民主党は労組依存体質から脱却すべきだというキャンペーンを張っております。それについて私は前原代表に直接お話を申し上げました。脱労組、大いに結構じゃありませんか。私は今まで、民主党結党以来、いろいろな場面で党と労働組合の関係について何回も発言をしてきました。民主党イコール労働組合の関係なんていうのはわれわれも組合員も望んではいないんだ。応援団のワン・オブ・ゼムでいいですよ。そして、民主党自体はもっと地力をつけて応援団をいっぱい増やしてくれ、そういうふうに申し上げてきた。代表の発言はストレートに書いてあるとおりではありませんけれども、全力で選挙戦を戦った組合員に対して、ちょっとデリカシーのない言い方ではないかと私は指摘を申し上げておきたいと思うんです。
その上で、われわれ自身も、民主党の候補者だから何でもかんでも全部推薦するんだという時代ではないはずなんだ。きのうは地方連合会の代表者の方にもこのことを申し上げました。地方連合会は民主党公認だと全部推薦を挙げてくる、全くノー選択だ。今度は、私は前原代表に申し上げたのは、今回の選挙戦の結果を踏まえて、私どもは日常の交流の仕方、そして政策協定の形、さらには候補者選定基準、選挙支援の方法、一から考え直させていただきますと、こういうふうに申し上げました。組合も各候補者の人格と政策を見きわめて峻別する対応、このことを考えながら、われわれの働く側にとって、ほんとうに政策と要求と目的を一致協力して支持・協力関係ができるという政党・政治家というのをわれわれの手でつくり、そのことを見定めていくということが必要だと思うんです。
しかし、文句ばかり言っているのもあれですから、一つだけ褒めさせていただきますと、希望がつながるのは、前原代表が温かみのある政治を心がけたいとおっしゃられたことです。今までの民主党は、残念ながら生活感が感じられませんでした。その方向を出していけば、私は国民が安心してこの党だと言っていただける状況がつくれるんではないかと思っています。その意味では、連合が掲げてきた笑顔で安心できる日本を取り戻そうという運動にも重なってくる。民主党のこれからの政策と実現構造になっていただけるだろうと思っています。43歳の代表、前原さんが世代交代を訴えて代表に当選したこと、民主党の新しい風を感じます。連合も新しい関係を築きながら、新しい日本の政治の体制をつくり上げる、その一翼を担う役割を果たしていきたいなと思います。
最後に、職場意見を大切にして組合の再生をということについて申し上げたいと思うんですが、アクションルートを始めたときに、できっこないとか、やっても意味がないとかいうことを言われました。しかし、中身の議論や問題提起の仕方、それに対する受けとめ方に対しては、効果の有無に批評があってもこれはいいんですが、対話をすることへの否定意見は全くなかったと申し上げます。終わった後も番外編として、会長退任後もこの対話を続けてほいという要請がかなりの組織から今来ておりまして、このことを続けたいと思いますが、労働運動は職場が原点、現場が最優先なんだ。このことを最大のわれわれのこれからの財産にしながら、連合労働運動の再生・活性化ができるかどうか。私は、この直接対話を通して、より多くの仲間と直接向かい合い、率直に真剣に前向きな意見交換をしたことで、運動の現状への不満や期待、疑問や反省、そして、現場が求めていること、改善すべき点などの認識が共有できたと思っておりますし、今までの理屈や建前、過去からのしがらみ、そして、手前勝手なご都合主義などは、勇気を持って改めることが確認でき合えたと思うんです。今、それぞれが現場最優先を基本に、連合労働運動の再生・活性化に向けて強い意思合わせができて、皆さん方もそのことは実感していると思いますが、既に改革はスタートしたんだ、このことを共通の思いとして、本気で連合労働運動を変えてみましょう。そのことを私は最後に皆さんに呼びかけをさせていただきたいと思うんです。連合は、労働運動は、人間一人ひとりが連帯する組織として、働く人たち、働きたい人たちの喜怒哀楽やさまざまな思いを真塾に受けとめて、ほんとうに困ったときに頼りになり、よりどころになれるナショナルセンター連合、こうありたいということを皆さん方と申し合わせをしてきました。皆さんもわれわれも、労働組合、労働運動に携わってきた人たちには、助け合い、分かち合い、心から信頼し合える仲間がたくさんいてくれるはずです。どんな時代にあっても、人の心、人の力にまさるものはありません。そのことを私は自信を持って断言できると思います。
私の会長4年間の任期の中で一番思い出に残りますのは、昨年12月のICFTU(国際自由労連)の大会を日本の宮崎で、アジアで初めてという開催ができたことであります。私は、その中で、世界の労働組合の代表の方に、宮崎の特性を生かし、初代の山田事務局長の心がこもった武者小路実篤さんの言葉を話させていただきました。それは、宮崎につくられている武者小路実篤さんの新しき村の入り口に、大きな石碑に彫られている詩でありました。「山と山とが賛嘆しあうよに、星と星とが賛嘆しあうように、人と人とが賛嘆しあいたい」という句であります。物言わぬ山が、動かぬ星が、それぞれの形を眺めながら、慰め合い、讃え合う。何で人がそれができないのかということであります。
この会場に集まっている各級機関の役員の皆さん、「組合が変わる、社会を変える」といり、このスローガンを掲げさせていただきました。人と人の心のつながりの中で、この先、日本の進路を切り開き、日本再生に向けて、その牽引役をわれわれ労働組合が担おうではありませんか。連合は、その先頭に立って、社会変革、日本再生の旗を持ち、走り続けていくんだということを、この大会での総意として確認をさせていただきたいと思います。
思いを込めて、会長あいさつをさせていただきました。
ご清聴ありがとうございます。
○前原民主党代表
皆さん、おはようございます。ただいまご紹介いただきました民主党の前原でございます。
第9回の定期大会にお招きいただきましたことを、まず御礼申し上げます。
また、9月11日に行われました衆議院総選挙におきましては、連合の皆さん方には、民主党に対しまして多大なお力添えをいただきましたことを改めて御礼申し上げますとともに、皆さん方のお力添えをいただきながら、また、皆さん方も含めて、小選挙区の候補者では2,480万票もの票をいただきながら、議席を大きく減らし、そして、与党を圧勝させてしまったことにつきまして、皆さん方に心からおわびを申し上げたいと思います。
私は、民主党の大敗を受けまして、菅直人前代表との代表選挙で、わずか2票差ではございましたけれども、代表に就任させていただくことになりました。何か運命といいますか、天命みたいなものを感じました。今まで、地方議員を含めて、国政5回、計6回の選挙を私自身やらせていただきましたけれども、当選というものはものすごくうれしいものでありますが、今回の代表選挙の当選ほど重苦しくて、今もその気持ちが続いておりますけれども、非常に大きな職責、重責を担いながら仕事をさせていただいているという気持ちを感じたことはございません。
私は、今回の選挙の敗因をこう受けとめて再スタートを切らせていただきたいと思っております。それは何かといいますと、政権交代、あるいは二大政党制を訴えながら、本心で、あるいは党の態勢、先ほど笹森会長がおっしゃいましたように、戦略や戦術、宣伝、すべての面で本気で政権を担うような準備、心構え、そしてまた信念を持っていたのかということが、私は厳しく問われたんだろうと思っております。
確かに、小泉劇場とかホリエモンとか刺客とか、そういったものに踊らされたというような見方もございますが、神聖な国民の民意が下されたということは重い。そして、その大きな原因の一つが、政権交代をうたいながら、この民主党というものが骨の髄まで、その準備ができていなかった、心構えなり、その思いというものができていなかったことが最大の敗因ではないか。それを立て直すことが、私は真に政権交代、あるいは二大政党制の一翼を担い得る資格を持つのではないかと思っております。その意味で、私は、こういったことを党内でも対外的にもお訴えをしております。
それは何かといいますと、今までの大きな問題を抱えるに至ったのは、これは与党の責任であります。莫大な借金、増え続けるニート、自殺者の問題、そしてまた二極分化、地方と中央との格差、すべてが今の与党がつくり出した問題であることは間違いありません。しかし、先ほど申し上げましたようそこ、それを批判するだけでは、ずっと野党にい続けることになる。ほんとうに政権政党になるんであれば、今までの与党がつくり出した問題も、自らのものと受けとめて、もしわれわれが政権をとったときには、それをどのように解決をしていくのかということを提示しなければ、多くの皆さん方の信任を得ることはできない。
したがって、重要法案については常に対案を示させていただく。あるいは、政府が取り扱わない問題については提案をさせていただく。そういった提案型、対案型の政党を目指し、党の末端まで、議員の一人ひとりがほんとうに政権をとったときにはこれをやるんだという意識を共有する、また、そういうコンテンツをしっかり持っている、そんな政党に生まれ変わらなければいけないという思いを私は持ち、対案路線というものを打ち出させていただきました。
その中で、皆さん方には、不愉快な発言、あるいは、先ほど笹森会長がおっしゃったように、デリカシーを欠いた発言と言われても、私は仕方がないと思っております。応援をいただいた皆さん方に対して、先ほど申し上げましたようをこ、感謝の気持ちにたえません。私も、自分の選挙を戦っていて、どれほど多くの組合の方々にお支えをいただいたか、ご協力をいただいたかということは、過去、私は4回の選挙で、連合の皆さん方にもお力添えをいただき、選挙戦を戦わせていただきました。その思いは、私は人一倍強く持っているつもりでございます。
しかし、政党の考え方と組合、それぞれがお考えになる考え方と違いがあるのは、私は当たり前だと思っています。その違いというものはもちろん、胸襟を開いて、しっかりと議論をしながらも、しかし、それについて意見が合わないときには、是々非々の対応をさせていただく、それが本来の政党の姿ではないかと思っております。
しかし、繰り返しになりますけれども、応援をいただいている皆さん方は、われわれ政治家、政党にとっては神様であります。神様をわれわれから切るようなことは、今までの政治活動で一度たりともしたことはありません。したがいまして、皆さん方との連携、協議というものは、まさに多くの皆さん方とともにしっかりとやらせていただきたい。そして、そのことは皆さん方にもお約束をしたいと思っております。
私は、大学を出ましてから4年間、松下政経塾というところで勉強させていただきました。その中で一つ、強烈に覚えている研修がございます。経営の神様と言われた松下幸之助さんが、私が塾に入ったときに、信頼を持って、全幅の信頼で塾長に指名をされたのは、新日鐵、鉄鋼労連、IMF−JCでリーダーとして頑張ってこられた宮田義二さんでありました。宮田義二塾長のもとで、私は労働実習に行かせていただきました。たった2カ月でありましたが、千葉県の君津というところにある新日鐵の製鉄所に行きまして、2カ月間、転炉という、高炉の後に、いろんな成分をまぜて、鉄のいろんな用途に対応するようなものに変えていく場所でございますけれども、転炉で3交代の実習をさせていただきました。
私がちょうど労働実習をさせていただいたころは、プラザ合意の直後でございまして、輸出産業は大打撃を受けて、鉄鋼大手5社は軒並み赤字、高炉を閉じる、そして配置転換、そういったものが目まぐるしく行われている中での労働実習をさせていただきました。私が最も胸が痛かったのは、今まで工場で帽子の色が、例えば黄色だった人が、ある日突然、銀色にかわっている。なぜですかと聞いたら、新日鐵から新日鐵の子会社に出向されたんだ。でも、あの人はおそらく戻ってこないだろう。配置転換、出向、そういったもので、まさに今までプライドを持って働いてこられた方々が、世界環境の変化の中、そして、会社の方針の転向の中で、まさにプライドを傷つけられながらも、今までの、家族を守るためにも一生懸命に同じ職場で、しかし、違う形で働いておられる姿を見せられて、私は、なぜ、幸之助さんが宮田義二さんを、労働組合の雄を塾長にされて、われわれに短い間であったけれども、現場での研修をさせていただいたのかという意味が、私はわかったような気がいたします。
われわれ民主党は、どこに視点を当てて政治を行っていくか。それはまさに、働く皆さん方の目線に立つ、国民の多くの皆さん方の目線に立つ、その政治姿勢だけは微動だにしてはいけないと思っております。だれのために政治をしていくのか、国民の皆さん方、働く皆さん方の目線に立って政治をしていく。この思いだけは貫いていきたいと思っております。
先ほど申し上げましたように、それぞれの労働組合との意見の違いは出るかもしれません。しかし、その視点だけはぜひ皆さん方には信じていただいて、そしてまた、民主党をご支援いただきたいと私は思っております。
先ほど、笹森会長のごあいさつの中に、選挙が終わった途端、3分の2以上の議席をとった途端、自民党は、マニフェストに書いていた「サラリーマン増税を行わない」政府税調も言った。それをもう、今なお覆すように、そういう暴挙に出ようとしております。しかも、むだ遣いはいっぱいある。この間も、特別会計の問題をさせていただきましたし、公共事業の談合の問題、あるいは国と地方の関係の中での補助金の問題、さまざまなむだを削らなければいけないのにもかかわらず、増税をして、まさに働く皆さん方から、取れるところから、取りやすいところから取ろうとする税制改革をしまうとしている。まさにこれは、働く皆さん方の立場に立って政治をしていきたいというわれわれ民主党の琴線に触れる、一番怒らなければいけない部分だと私は思っております。
皆さん方には、これからの民主党のあり方というものを厳しく見据えていただくと同時に、おかしなことについては徹底的に追及していく。しかし、われわれが政権をとったときには、一体どういう政治をしていくのかということもあわせて、ただ単に反対をするだけではなくて、対案・提案をしていきたいと思っております。その中で、繰り返しになりますけれども、支援をしていただく皆さん方には、門戸を開いて、ご意見をいただき、最終的には党の主体的な判断の中で政策を決めさせていただきたいと思います。すべては国民のために、働く皆さん方の目線に立って政治を行っていくことをお誓いさせていただきます。
結びに、長らくの間、連合の中にありまして、指導的な役割を果たしてこられました笹森会長、草野事務局長をはじめ、多くの方々が退任をされることになります。われわれの最大の理解者であり、厳しい意見を言っていただく最大の批判者であり、しかし、その批判にも常に愛情が満ちあふれておりました。そういった笹森会長、草野事務局長をはじめ、今まで厳しい視線で、しかし温かくわれわれを育てていただいた皆さん方、ご勇退される皆さん方に心からご慰労と感謝の誠を捧げたい、御礼を申し上げたいと思っております。ありがとうございました。(拍手)
結びになりますが、この第9回定期大会を契機に、さらに連合が結束を強められまして、ますますご発展をされますことを心から祈念申し上げまして、民主党代表としてのごあいさつとさせていただきます。お招きいただきまして、ありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。(拍手)
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