2005.06.06


みどり豊かな国 イギリス ロンドンとスコットランドを訪問
 総選挙の視察報告 その2
公務員組合とロンドン大学を訪問 “しばらくは労働党の政権が続く”


 第2日目は、午前中にUNISONという公務員組合を訪問した。公務サービスのUNISON
 対応してくれたのはニック・シグラー国際連絡部長、ケバン・ネルソン構造開発部長など4名で、シグラー部長からは、「UNISONとLAB(労働党)の関係は組合員の半分ほどが支持している関係だが、LAB政権ができる前から、執行委員会等に参加して、運営に参画している。今回の勝利は歴史的だが、闘いは苦しかった。しかしもうしばらくLAB政権は継続するだろう」「公務員組合として公共サービスの拡大は歓迎するが、PFI(民間資金による公共投資)には反対している。とはいえ、現実的には利潤の制限など監視を強めて対応することになる。」「選挙では、組合員を説得するために、パンフレットを作り、運動してきた。」などと、LAB政権との協調を継続する方針であることを表明した。
 ネルソン部長は質問に答え、「公務員の労働条件はサッチャー政権との比較では弾圧が無くなった点でましであるが、競争の導入により不安定要素が増えている。しかしコスト削減のための民営化論は本来成立しないものと考えて対応している。」「これからの労働運動としては、EU規模の対応が課題だ。国に入ってくることだけでなく、こちらから事業規模で出ていくこともあるから、労働条件の均一化や待遇の底上げなどこれから議論する。」「イラク問題は明らかに反対で、このおかげでLIB DEM(自由民主党 英国では左翼政党)に組合員の票が流れたと思う。」と率直に答えていただいた。
 英国でもPFIや、PPPなど公共サービスの民営化の議論が起こっていることは、特に印象に残ったが、同時に、公共サービスの量的拡大が進められていること、特に学校の増設など教育への投資が活発であることは、国の将来に寄与する方向性として、学ぶべき点である。

※ PFI Private Finance Initiative 公共施設等の建設、維持管理、運営等を民間の資金、経営能力及び技術的能力を活用して行う新しい手法
※ PPP Public Private Partnership 労働党ブレア内閣は、「公共サービスへの民間企業参加による改革」を推進しようとしているが、長引くロンドン地下鉄の一部民営化問題を中心に、PPP(パブリック・プライベート・パートナーシップ)に関する論争が巻き起こっている。

 午後からは、ロンドン大学経済・政治学校(LSE London school of Economics and Politiical Science)LSEのバーカー教授
 バーカー教授は、「LAB政権が67の差で勝ったことは大変な勝利だ。政策に一貫性があることが大きいだろう。しかし昔の階級闘争をしていた頃に比べてアイデンティティ(主体性)が薄れたことは欠点といえる。」「保守党は“自分は何か”より“何に反対するか”ばかりが目について、有権者には信頼がおけないと写ったようだ。」「T・ブレア党首(首相)は、自分のやりたいことを明確に持っている。それは自由が平等に与えられる社会をつくることで、政策の柱はそれを源泉としている。」「後継者と目されているG・ブラウン蔵相は資本主義さえも実用的観点から見る人で、平等と貧困対策を重点にしている。ただその交替の時期は今はまだわからない。」などと、私たちの視察が総選挙後すぐで、これからのことはまだ何もわかっていないと、早すぎたことをユーモアを交えて語られた。
 山口教授はこれまで一緒に行動してくださったが、LSEを最後に、6月初旬までの調査研究活動に戻られた。

ロンドン博物館のミイラ展示 この日、バッキンガム宮殿の前で写真を撮り、1時間だけ大英博物館を見学した。ロンドンの余暇としてはこれだけで、“絶対また来る!”と決意した。
第3日、18日は移動日。高安北大講師(通訳兼務)もロンドンに残るため、ろくに言葉のわからないものたちだけで、列車の旅に出ることになる。不安を感じながら、パブでロンドンの総括会議を開いた。(松浦 記)

PS. ロンドンのタクシーに乗って、「Hilton Hotel. Please」といったら、自分の滞在している“Hilton Kensington”までHilton Hotel巡りをした人がいました。ロンドンにはHilton Hotelは10カ所くらいあるようです。タクシー代は4千円くらいかかったようです。