2005.05.23


第3回憲法講座
改憲論議はしぼんでしまうと思う 田中
民主党と合意できなければ発議できない 加藤


 第3回憲法講座は、5月22日(土)、13時〜16時まで札幌市ルネッサンスサッポロ・ホテルに連合組合員、民主党党員、各級議員、一般市民など250名が参加して開催された。
 今回は、田中秀征さん(元経済企画庁長官、福山大学教授)と加藤紘一さん(自民党衆議院議員、元党幹事長)をゲストとして招き、各々の憲法観についての講演、そして会場参加者からの質問・意見のテーマによる二人による対談を行った。

田中秀征先生の講演「私の主張 日本国憲法をどう考えるのか」(要旨)

 衆参憲法調査会報告は、「意見を集約しがたいという結果」という印象である。
改憲論の三つの勢力は、@自主改憲派(保守野党、追放派)、A漫然派(時代にあわなくなったところは改正は必要)、かなりの国民がそう考えているのでは。B内外の環境のなかで緊急・重要な必要性が主張されている。既成の政治勢力によって新しい憲法は出来ない。
 集団的自衛権の行使について議論をすべきである。日米安保体制は双務的条約であり、対等条約になれば日本は米国の戦争につきあえるのだろうか。
 米国の有志連合による軍事統制は「もう一つの国連づくり」であり、私は反対だ。イラク戦争をみてもイスラムパワーやチャイナパワーはつぶせない、包み込む体制に転換しないともたなくなる。
私の尊敬する石橋湛山内閣は、「国連に加盟した以上、権利だけでなく義務もはたさないとならない」として、「国連警察軍への参加について憲法に抵触しないか検討している」と発言している。
 国際協調と日米協調について、国連憲章51条(米国の強い要請で集団的自衛権の行使を容認する新条項)も含めてもっと議論すべきである。民主党は、岡田代表は国連軍への参加は「抵触する」、小沢さんは「抵触しない」という考えだと思う。政府は、憲法が硬性(変えるのが困難)のため、解釈改憲で対処してきた。憲法調査会報告はそのことについてボカしている。改憲論議はしぼんでしまうと思う。
そもそも、昭和21年の憲法起草段階では冷戦を想定していない。マッカーサーの起草方針の一つは国連憲章との整合性をあげている。
新しい時代があって新しい憲法が生まれる。

加藤紘一衆議院議員の講演「私の主張 日本国憲法をどう考えるのか」(要旨)

 自民党の憲法起草委員会は、4月4日にとりまとめを行った。
9条は平和主義、自衛軍、国際貢献に寄与出来るようにする、など抑圧的なまとめになっている。改憲するには国会議員の三分の二以上の賛成が必要である。民主党と合意できなければ発議できないのである。
私の見解は、自衛権は当然であり自衛軍は必要。自衛隊は強力な力をもっている。北朝鮮の力は弱い。燃料もなく軍隊の訓練度はゼロに近いと思う。
 二国間の集団的自衛権問題として双務的な日米安保条約は、自衛隊は海外に出さないことを合意している。日本が守っていこうとならないと続かない。変更の場合は、@国連軍の設置、Aアジア地域集団安全保障体制の確立、B日米安保の改訂など条件の変化によってであろう。日米、日韓など数少なくなった二国間の軍事同盟はいつまで続くのだろうか。 日米同盟にとって、「事前協議制」が必要だ。対等な論議が可能なのか、日本の平和主義への理解も不可欠に思う。
 田中先生が言われた「既成勢力によって改憲・改革は難しい」という提起はその通りである。フランス革命、アメリカ新憲法、明治維新等々、エネルギーがないと進まない。
 アメリカに使われないように、国連の復興事業への参加などいくつかの是正が必要となっている。

│対談│
<憲法のなかに国民への命令条項は必要か>
田中 戦後民主主義は要求型民主主義だ。愛国心等ではなく一定の義務規定が必要と思う。加藤 権利ばかりでなく義務も必要である。

<国連改革と日本の常任理事国入りの是非>
田中 多数の国が加盟している国連は、戦勝国体制であり、敵国条項も残っている。当然、改革が必要だ。常任理事国問題は日本がエゴ丸出しでやるのではなく、アジアなど多数の国からの合意のもとで選ばれるべきだ。現在の戦勝5カ国が拒否権のある常任理事国を増やすことに賛成するとは思えない。
加藤 情報の集約などのメリットもあり、拒否権のない常任理事国でも入っていくべきだ。

<小泉首相の靖国神社参拝問題について>
田中 日本は戦後処理として講話条約を受け入れたのであり、戦犯もいる靖国神社に参拝はすべきではない。 
加藤 問題解決としてはA級戦犯の分祀か慰霊碑をつくるべきである。参拝は止めるべきである。

<最後に>
田中 1980年代末から10年間、進路設定を怠ってきたツケが今日の状況である。
加藤 自民・社会とも力をなくしてしまった。小選挙区制度はマイナスだった。過半数以上の支持を得るために7〜8割の有権者が賛同する政策しか主張しなくなる。政策論争が出来なくなってきた。