2005.04.18
第2回憲法講座
すべての武力行使は違法
最上ICU平和研所長
民主党の納得がない憲法改正は不可能
枝野民主党憲法調査会長
連合北海道と民主党北海道が共催する「憲法講座」の第2回が、4月16日開催され、国際法・国連の課題でICU(国際基督教大学)最上敏樹平和研究所長が、また、民主党憲法調査会会長の枝野幸男衆議院議員が、全日の15日に出された衆議院憲法調査会の報告に基づき、講演した。
主催者あいさつに立った小川勝也参議院議員(民主党北海道副代表)は、「衆議院の憲法調査会報告が出された特にタイムリーなときに開催されたが、道内には多くの“心配”する声がある。憲法を真剣に議論する講座に期待してもらいたい。」と述べた。
最初に最上所長は、@国連の集団安全保障体制は確立されたものではない。A集団安全保障と集団的自衛権は別個の意味を持つ、と前置きし、国際連盟(戦前)時代に集団安全保障の考えがスタートし、戦後の国際連合(国連)では、日独伊の旧枢軸国対策として再構築されたこと。従って、戦勝国は“拒否権”を持ち、国連の集団安全保障の対象外にあること、いずれにしろ国際法は国連以外のいかなる軍事強制行動も違法と確立していることなどの安全保障に関する歴史を解説された。
また、国連の安全保障体制は未確立である証拠として、60年の歴史で1度しか発動されておらず(朝鮮戦争)、国連安保理の強制行動としては経済・外交・文化制裁がまず先にあること。安保理決議による軍事的措置は各国の自主判断で提供範囲を決める“特別協定”方式となっており、“国際社会のため”とはいえ、軍隊を出す特別な必然性はないことなどのシステムの現状。さらに、イラク戦争を見たとき、法的根拠のない軍事行動は“明確な侵略”であり、国連安全保障体制へを否定する以外の何ものではない、違法行為であることなどを解説した。
また、集団安全保障とは国連安保理であり、集団的自衛権とは軍事同盟のこととの違いが明確であることの上で、日本国憲法と国連の関わりでは、“残念ながら現在の安全保障は「目には目を」の精神を基礎にしているが、日本国憲法の平和(不戦)主義は、これを否定し、国民と国家が平和維持に不断の努力をすること決意したものであり、武力を否定し武力の違法化を大前提とする国連安全保障の先を行くものである”と見解を述べた。その上で、今の米国単独行動主義とそれに同調する多国籍軍事行動は、交戦権の行使であり、国際社会のためにならず国連体制に動揺を与える。今議論されている国連改革はそのような動揺に対して“国連建て直し”をめざすもので、安保理常任理事の拡大は全体のごく一部と、本質的な国連問題への日本国民の理解促進を訴えた。
次に枝野民主党憲法調査会長は、衆議院憲法調査会会長代行として今回の報告全般に関与してきたことから、「今回の報告は議論経過の集約結果であり、マスコミのいうように各党の意見が特別に反映されたものではない。位置づけとしては議論のスタートにすぎない。」と経過を報告。憲法をめぐる日本社会の現状としては、国民の関心は特別高いレベルにはないことから、「手続き上も国民投票で過半数の賛成が必要なので、近未来に改正の可能性はごく低い」と状況を分析した。
また、「国民の手に憲法を取り戻す」ために、行政(内閣)が解釈を勝手に変更してきた結果の“形骸化・空洞化”を是正する改正は民主党として今後提起することを明言した。
その例として、現憲法が地方分権を国会に白紙委任していることについて「立法府の裁量で権限を分配するのではなく、憲法レベルで国と地方の権限分立を進めることが真の地方分権だ」。また、9条について、「自衛隊の存在は憲法解釈のみだから、今は野放し状態。憲法で抑制することが必要だ。同時に集団的自衛権についても、明確な規定を作らないと枠がはまらない。シビリアンコントロールの言葉はあっても憲法上規定がない。」など不十分さを多く抱えていることを指摘した。そして、“自民党の本心が、憲法改正より拡大解釈に傾きつつあることは大きい問題。”と危惧を示した。
今後の見通しとして、「来週(18日〜)には参議院も報告を出すだろうが、改正を提案する国会議員の3分の2以上の賛成には民主党の賛成がなければならず、民主党の納得できる案が現状では自民党から出てくると考えにくいから、近未来に改正の可能性は相当低いだろう」と述べた。一方、「最終的に国民投票で過半数の賛成がなければ、仮に国会から提案できたとしても改正は成立しない。憲法は国民が公権力を付託する基礎であり、国民のしっかりした憲法観と意識が未来を左右する。」と、今回のような憲法論議の活発化を求め、また、民主党としてもこの夏以降全国で展開することを表明した。
連合